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2024-03

僕自身の怒りについて - 2018.03.14 Wed

これまで、子育てと怒りについて書いてきました。
まだ少し書くことがありますが、その前に僕自身のそれについても少々述べておきます。





僕自身、僕と同世代やそれまでの世代の多くの人と同様に、強い支配と、親の意に沿うような管理的な子育てをされてきました。

そういったことのひとつひとつを思い起こそうとするのは、正直つらいことだし、記憶が封印してしまっていることもあるし、また覚えていても言葉にしたり書いたりするのもつらいことがあります。

いまここで書けることとしては例えばこんなことがありました。

僕が小学校3年生くらいのことだったと思います。


うちは料理店をしていたので、調理場の勝手口が出入り口だったのですが、そこが外からは階段を上がって二階になっています。

あるとき、靴が脱ぎっぱなしになってしまっていなかったという理由で、母が激高しその二階から外の道路に靴を放り投げ、裸足で拾ってこさせられたということがありました。

人によってはそんな些細なことと思われるかもしれませんが、僕はこのことを40年近く経ったいまでも覚えていますし、それはたまたま思い出したというわけでなく、これまでの人生のなかでずっと忘れず何度も振り返ってきました。

なぜそのようなトラウマめいたものになっているかというと、おそらくそのとき子供ながらに深く傷ついたからだろうと思います。


その靴をしまうということが必要だったにしろ、それならばそれでそれを通常の手段で伝えればいいことです。
例えば、「ここに脱ぎっぱなしにされたら、仕事の迷惑になるので必ずしまってください」など。

それを伝えられれば、子供なりにそれを受け止めそのように努力したことは間違いありません。僕自身、もともと非常に素直で大人に従順な性格をしていたから、それはあきらかに言えます。しかもそのことを母親自身も知っていたはずです。

でも、わざわざ子供の自尊心を踏みにじる方法で、それを伝えています。
ここにあるのは、実は「子育て」ではないのです。
それは母自身の持つ怒りが制御できないという問題です。


いまは理屈をともなってそれを理解しますが、当時も実は理屈は抜きにしても子供である自分自身そのことを理解していました。

それが余計にこのケースを悲しいものとしているのです。

なぜ、悲しいかというと、それは母親のために悲しいのです。
自分の母は、誰かに理由をつけて怒りをぶちまけなければならない苦しみを抱えているのだなぁということが、子供である自分には自然と理解できており、それが自分自身の自尊心を踏みつけにする関わりをされたこととは別に、よりこのケースが忘れがたいものとしています。


母にもいろんな辛さがあったでしょう。
いろんな事情もしっていますし、そのことはよくわかります。
子供として、僕は母を恨みには思っていないけれども、自分がされた分と母が負っている負の分で二人分の苦しさを抱えています。

しかし、客観的に言うとすれば、子供は子供であり、大人が自分がつらいからといってそれのはけ口に子供を使うべきではなかったのです。


僕はその後、自分が母から受けたことを通して、母のそのメンタリティと同じものを獲得させられていきます。正論を盾に人の自尊心に踏み込むような関わりをある程度身につけてしまいます。
ただ強く外に出すタイプでなかったので、萎縮傾向の性格も身につけ、結果的にはその他者へ攻撃的な行動がたくさん表面化はしませんでした。

一方で、自分自身の持っている部分や、他の人に受け止めてもらえた部分があって、そこにはある種の葛藤を持ち続け、それが自分の性格の全てをそのように染め上げずにすみます。
僕は保育の仕事を通して、その他者の自尊心を傷つけてしまうような関わりや、自身の心のあり方を乗り越えることができました。
このことは大変幸運であったと感じています。

幸運であったというのは、乗り越えられない可能性も少なからずあったからです。

いろんな保育士をみていて、僕と同じような経緯を持って乗り越えた人もみていますし、乗り越えられずに苦しんでいる人もいます、そもそもそれを自分が抱えていることに気づいていない人がたくさんいるのも知っています。

誤解のないように補足しておきますが、保育の仕事をすればこういった問題が乗り越えられるようになるわけではないと理解して読んで下さいね。
自分の生育歴になんらかのトラウマを抱えている人が保育士になってしまうと、それゆえに余計に苦しんだり、預かる子供たちを傷つけてしまう事態になってしまうこともないわけではありません。



しかし、いまでも時々この怒りのプールがザブンと波打つことはあります。
例えば、我が子が食器を倒したりしたときに、頭を叩きたくなるような怒りが瞬間的に出てきます。でも、自分はそれを自制することができます。

僕がそれをできるのは、仕事で多くの保育の経験があるからと、自分自身や、自分の子育てにそうとうに向き合うことができたからであって、誰しもに同じことができるようになりなさいといった風には考えません。

そういった自分だからこそ、子育てに悩む人の力になる役目があるのだと感じています。



ただ、乗り越え方はその人その人で違います。

・親と話し合って和解して乗り越える人
・親を一方的に許すことで乗り越える人
・親と対決したけれども、和解にならずあきらめから乗り越える方に進む人
・親と決別することで進む人
・親をうらむことで進む人


これは、人それぞれです。
そしてどれを選んでも悪いことではないと思います。
たとえ善意や一生懸命だったからといって、そこでしたことが間違っていたらそれが許されなければならないわけではありません。


もし、その人が親を憎むことや、うらむことを選ばざるを得ないのであれば、どうかそのことでご自分を責めないで欲しいと思います。

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● COMMENT ●

おとーちゃん、辛い記憶を思い出しながら、記事を書いてくれてありがとうございます。「子育ての問題、しつけの問題」と思っていた私に、自分自身の子どもの頃の親に抱いた満たされない思いが解決していないんだ、ということを気づかせてくれました。
おとーちゃんのブログがきっかけで、自分に自信が持てるようになり、子育てに心に余裕ができ、毎日が楽しくなりました。改めて感謝。

私の父親はザ・支配管理体罰野郎なので、今はまだ幼い娘を可愛がっていますが、これから大きくなるにつれ躾とも呼べないようなそれを押し付けて来ることは目に見えています。
そして私自身今後も父を許すつもりは一生ないので、父と会っても目も合わせないのですが、そういう姿を娘に見せるのも悪影響ですよね。
縁を切ってしまうのが一番いいのか、でも娘から祖父母を取り上げてしまっていいのか?
こうしていつまでも悩まされる事も腹立たしいです。

私の両親は離婚しており、父は養育費を払わない・定職に就いていない人でした。母は3人の子どもを身を粉にして働いて養いました。3人とも大学まで行かせてもらっています。母はいつもヒステリーを起こしており、たまに母が笑うと「お母さんって笑うことがあるんだ」と思ったものです。母は「お前たちの父親は、サラ金に土下座して金を借りとるんや」というような父の悪口をよく言っていました。「(父に)カメラを質に入れられるから、洋服箪笥に隠した」などお金に関することもよく言っていました。
私が自身の家庭環境について自分なりの理解を得て「乗り越えた」と思えたのは、地方の大学に進学し一人暮らしを始め、「アダルトチルドレン」に関する書籍を読み漁ったからでした。
自分の子には「怒鳴らない」「父親の悪口は言わない」を心がけています。

>怒りの波を自制することができます。
と言い切るおとーちゃんに勇気づけられました。些細なことでイライラしない人は、小さいことで怒りを感じたりしないのだと羨ましく思っていましたが、そうではないのですね。みななんらかの手段を持って乗り越えているんだと気づき、自分もきっと変われると前向きな気持ちになれました。また親子関係で自分の中でモヤモヤしていた部分をズバッと明解に書いてくださったことで、自分の気持ちも整理がつきました。おとーちゃんのブログにいつも大事な気づきをもらっています。感謝です。

おとーちゃん自身の怒りの記事を読んで、母親自身の問題から来ていることを子どもの頃に気づいていたと書いてあって驚きました。また、お子さんの粗相に一瞬カチンとなるけど、それを自制しているのも凄いと思います。
私は、子どものワガママ、永遠に続く欲求、待てずに癇癪、わめき声、ずっと続くグズグズ、を聴くと私の脳にズキズキと響いて、自分が責められている気がして、耐えられませんでした。頭では、分かっているんです、育児本にも書いてあるし、こういうときは大らかに対応するとか。頭で分かっているのに、感情がついていかなくて、「もう知らない、いい加減にして」と2歳児に本気で反論する。余計泣くという負の無限ループに陥っていました。
私自身のことですが、カウンセリングを受けて、子どもの頃の自分の気持ちを聞いて貰って癒してもらって、そしたら、ガラリと景色が変わりました。先日も子どもが、無理なことをしたいと、1時間近く駄々を捏ねてギャンギャン喚いていたのですが、全然平気でした。なだめながら、今日は、一段と凄いなあと、観察する余裕もありました。
自制できるというのがひとりあるきすると、真面目な人ほど、自制できなかったときに、自分はダメなんだって追い詰めるかもしれないと心配になったのでコメントしました。

おとーちゃんにもこんな経験があったのですね。私も似たような思い出がたくさんあります。
この話の場合、もし親が靴を出しっぱなしにしていたとして、それを子が放り投げることは許されないですよね。
本当にその対応が正しいのなら構わないはずですが、それは口答えであり屁理屈とみなされ更なる怒りを呼びます。

親が感情のままに行動し、子の心を傷つける連鎖がなくなることを願います。子に対して素直に接することを心がけていきたいです。

先日こどもの通園鞄を投げました

仕事を始めてから、毎朝こどもの通園準備が全く進まずイライラする日が続き、
先日あらゆる方法でいくら言っても「ママがぜんぶやって~」と、ゴロゴロ着替えもしない様子に腹がたち、ついに「じゃあもう幼稚園行かなくていい!」と、通園かばんをほうり投げてしまいました(子供に当ててはいませんが・・)。
最近の様子から、泣いて怒って私にぶつかってくるかと思ったら、この時はハッとした顔をし、黙って着替えを始めた様子を見て、とんでもないことをしてしまった、と激しく後悔しました。
元々は物凄く素直でやさしく大人しい子なので、延長保育の疲れや、母親と過ごす時間が減ったことからの甘え行動だと頭ではわかっているのに、感情を抑えることが出来ませんでした。
夜寝る前に「かばんを投げてしまってごめんね、悲しかったよね」と言ったら
「ぼくのだいじなかばんこわれちゃうって思ってすごくかなしかった」と静かに堪えながら泣いていました。
もう二度と大事な鞄投げないこと
どうして朝ママが忙しくて急いでいるのか
悲しい思いさせてごめんね、ママもあなたが悲しい気持ちになったのわかって悲しかった
という事を話した上で
「そういえばさ、ママも鞄投げた時、壊れちゃったらどうしよう!って焦ったんだけど、鞄どこも壊れなかったね。鞄って強いんだね、すごいね」
と言ったら「ほんとだー!鞄壊れなかった!強い鞄だ!すごーい!!」と、ケタケタ笑っていたので、ただ強いショックを受けた悲しい思い出にはなってないかな、、、なんて思っているのですが、
今回の記事を読んで、改めて子供を傷つけた事実はしっかり忘れずにいなければならないな、と思いました。
子供は可愛くて仕方ない何よりも大事な存在なのに、日々の忙しさや時間な追われる気持ちの余裕のなさで、感情的になってしまうことが多々あり、それこそが子育てで何よりも難しく感じます。
仕事ならば人にここまで感情的になることなく、どんなに嫌な事があっても流すことが出来るのに。
そして母には子育て助けてもらっているのに、ちょっとした言い回しや甘やかしかた、ごまかしかた(根本解決にならずあとでこじれる)に自分の欠点が作られた過程を見せられてるようで嫌な気分になります。
そうは言っても沢山頼ってしまっているんですが・・、


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楽しく無理のない子育てを広めたいと2009年ブログ開設。多くの方の応援があって著作の出版や講演活動をするようになりました。 現在は、子育て講演や保育士セミナーの他、『たまひよ』や『AERA with Baby 』等の子育て雑誌の監修やコラム執筆。『ジョブデポ保育士』の監修や育児相談などをいたしております。

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