子育てのパラダイム転換 vol.2 ー本当の尊重ー - 2018.10.04 Thu
前の記事では、「させる」ではなく、子供自身が「する」を目指しましょうというお話をしました。
この字面だけだと実際の子供への関わりが、大人がひたすら我慢して子供が自分から行動するのを待つといった、自己犠牲的な子供への関わりになってしまう人が少なからずいることでしょう。
これなってしまっても子育てはなかなか安定化しません。
なぜなら、子供が大人に対して依存的になってしまったり(大人が待つのが当たり前といった子供の心理)、子供が周囲の状況を考えることもなく自ままな状態になってしまったりが起こるからです。
ですので、子供が「する」を目指すということを自己犠牲的にする必要はありません。
しばしば聞くのが、子供が自分から行動するのを待とうとしてしんどくなるケースです。
例えば、お風呂になかなか入らないことが慢性的になってしまっている子に、自分から来るのを待とうと、大人がひたすら裸になったまま待っていたり、お風呂で1時間も待っていたり。
こういった自己犠牲的な「待つ」をする必要はありません。
子育ては滅私奉公ではないからです。
家族は大人である私という構成員がいて、子供であるあなたという構成員がいて、それで日々の生活を営んでいます。
どちらかがひたすらに我慢や自己犠牲を重ねていくことで、その家族という共同体はなりたちません。
「私も大事。あなたも大事」
だから、私が困ることをし続ける必要はありません。
「私が困るので、いまは待てません」とか「これ以上待てません」といった関わりがあっていいのです。
日本では、この「私」を押さえ込むことが、相手の尊重であるという誤解があって、子育てに一生懸命な人、子供が大事と思う人ほど自己犠牲的な関わりにおちいりやすいです。
「子育ては愛情こそ大事」といった一般的な感覚も、この自己犠牲状態を後押ししてしまう場合があります。
むしろ、相手をひとりの人間として、必要なことを嘘偽りなく伝えていくことが、本当の意味での尊重ということになります。
ですので、私の気持ちや思い、感情を押さえ込むのではなく、それを子供にも堂々と提示して考えさせるプロセスをもっと意識していいのだと思います。
子供との関わりの前提に、受容やそこから生まれる信頼関係があれば、子供は子供なりにそれを踏まえ考えた上での行動をだんだんと取るようになっていきます。
お風呂のシーンで言えば、生活のルーティンを第一に考えて最初から「お風呂にいま入ります。来て下さい」と言ってもいいし、「私はもう待てません。お風呂に入ります」と子供に伝えてしまってもいいわけです。
これは、前記事で書いたことと何ら矛盾しないのです。
ここには「必要なこと」という視点があります。
必要なことという視点については過去記事でも書いたことがあったと思います。
上の例で「お風呂に入ります」という「言いきりの形」を使っているのは、あえてそうしています。
昨今では他者との関わりへの難しさから、婉曲ないい方を使う人が増えています。
例えば、同じシーンで言えば「そろそろ私お風呂入らないといけないんだけど、あなたにも来て欲しいな」といった遠回しないい方です。
これで伝わる子供相手であればそれでも全然かまわないでしょう。
しかし、この言い方は、言葉への認識の力が未発達な子や、自分の注意が自分の興味に向きやすい子(つまりほとんどの子)にとっては、伝わりにくい表現です。
あえて言えば、「来て欲しいな」という問いかけは、「来なくてもいいですよ」ともとれます。
こういった子供にとってわかりにくい言い方をしながら、大人がイライラを募らせていくというのは、互いにとっていいことではありません。
だったら、最初からやわらかい言葉を使わず、子供にとって伝わりやすい形で言った方が本当の意味で親切なのです。
婉曲な言い方は、一見優しい言い方に見えます。ごまかしや釣りなども近いものがありますね。
これは「優しさ風味」にしてしまうだけで、子育ての安定化から言えばさほどプラスにならないことです。
であれば、大人が必要と思うことに対して、それだけのトーンで最初から伝えた方がはるかに子供も動きやすいというものです。
別の視点からいうと、これは「嘘のない関わり」ということです。
子育てというか、安定的な対人関係というものは、自分も子供(相手)もあざむく必要はないのですね。
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でもおとーちゃんさんが「必要なことはやる」てどこがで言われてたな~と思ってごはん、おふろ、睡眠は「○○します!」て言い切るとやるようになりました。子どもはよく大人のこと見てますね。
言葉の運用
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そういえば、同じ幼稚園のお母さんが、子供に何か言う時は「一回しか言いません!~してください。」と言うと「はい。」と言ってやってくれるよ~と言っていました。その時は心のなかで「いやいや、うちのわがままぼんはそんな一筋縄ではいかないよ。」なんて思っていましたが。分かりやすく伝えるって大切なんですね。