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2024-04

「脱しつけ」具体的方法 前編 - 2019.01.07 Mon

昨日の「脱しつけ」について、言いっ放しでは無責任ですので、その具体的方法を挙げておきます。

本日は座談会の告知を前記事で出しておりますので、一日に2記事UPになっています。座談会にご興味ある方は、前記事の告知を見落とさないようにして下さい。

また、長くなったので、記事を二分割して後編は明日UPします。




僕が子育てを、「愛情」だとか「親の努力」などの精神性に持っていかないということは、このブログを以前からお読みの方はよくご存じかと思います。

では、「しつけをしない」といざ考えたとき、それでもそれを精神主義に持って行ってしまう人はおそらく少なくないでしょう。

その場合は、

しつけをしないこと → 親の我慢

となりかねません。


「しつけ、つまり子供の支配をするのは良くないのだ」と僕が伝えたことによって、子供が好ましくない行動を取ったり、野放図な姿になってしまった状態を我慢して受け止めていくという、親の自己犠牲の状態をもたらしてしまいます。

ここには、日本独特の愛情解釈が背景に関わっています。

「愛情とは自己犠牲すること」
「相手の尊重とは自己犠牲すること」

ここに精神主義を重んじる日本独特のある種のゆがみがあります。
このゆがみは日本の子育てをしんどいものにすることに直接の影響を与えています。

「しつけ」の手法を使わないことは、子供の姿をなんでも我慢しなさいということではありません。

そこで、少し例を紹介して、ふたつのメソッドをお伝えします。




僕がある晴れた日、駅に向かって歩いていました。
すると前を、本当にまだ歩き始めて間もない1歳児の女の子とそのお母さんが、特に大きな荷物もなくベビーカーも押していなかったのでおそらくお散歩していたのでしょう。のんびりと歩いています。

あまり一般的には気にも留められていないですが、発達段階と子供の遊び(楽しみ、達成感)というのは常に一致していて、子供は発達的に「できるようになったこと」が楽しくなります。(ここに着目して教育要素を盛り込んだのが、フレーベルやモンテッソーリ。また、ボタンを押せば音がでるおもちゃが遊びとして必要なものでない理由もここにある)

その子は、おそらく外に出て自分の足で歩けるようになってまだふた月と経っていないくらいだろうと思います。歩くことの楽しさを思い切り味わっているのがありありと見えました。
僕はそんな親子の姿を後ろから見ていて、子供って本当にかわいいな、子育ては本当に素晴らしいなとまざまざと思っていました。
そのお母さん自身も、のんびりと歩いて微笑んで子供の姿を見ており、そういった子育ての喜びを感じていたのではないかと思います。

少し歩いていたところ、病院に続くゆるやかで長いスロープが道路のすぐ脇に見えてきました。その子がそこを歩いて行こうとします。
その子もまだ走るほどではないですし、他に誰もいない、またなにか危険なものがあるわけでもありません。
お母さんも、別にあわてている風でも、怒っているわけでもありませんが、その子供の姿に接してこう声をかけました。

「おいてっちゃうわよ」

そのお母さんは、規範意識ゆえにそこで遊ばせてはならないと考えたのかも知れないし、なにか用事があって実は急いでいたのかも知れないし、転ぶことや未知の危険を警戒したのかも知れない、または単にとっさに言葉が出ただけかも知れません。

でも、この言葉は支配の言葉です。

「置いていく」
実際に子供を置いていくことはないでしょう。
つまり嘘です。しかし、そう言われると子供が嫌がり言うことをきくので、脅しとしてそのフレーズを使います。それも無意識に。
日本の子育てではあまりにも一般的なので、この「置いていく」という子供に向ける言葉になんの違和感も覚えない人は多いでしょう。

このまだよちよち歩きの子にすらそういった支配の言葉が出てしまう。それ以外の明確な方法がわからないというのが、日本の子育ての現実であり、しつけというメソッドの不全さを端的に表しています。

赤ちゃんから、子供になったばかりの段階です。
早くも、ここから子供の支配がスタートしてしまいます。



子供に限らず、人は誰かからの支配を好みません。
支配されれば支配されるほど、その人、または大人全般への信頼を減らしていき、かえって支配から逃れようという性質を持たせます。

これを続けていくと、一部の素直だったり、従順だったり、我を出すことが不得意な個性を持っている子を除いて、子供は日に日に言うことをきかなくなります。

そうなると、支配の度を強めていかなければならなくなります。
怒る叱る、怒鳴りつける、叩くといった方へといかざるを得ません。

そういった強い関わりが不得手な人は、無視や無関心、疎外といった方向へと派生してしまいます。
僕が痛感するところでは、子供が4~5歳になる頃、この子供に関心を持つことが辛い、それゆえにスマホへと逃避したり、無視や疎外をせざるを得ないという人がいまではとても多くなっています。(僕はこの状態を未然に防ぐことが現代の保育士の子育て支援の重要な役目だと考えています)

この状態はかなりの部分防ぐことができます。
そのためにいいのは、できたら最初から支配で子育てをスタートしないことです。
でも、「しつけ」つまり支配の方法しか知らないというのが、現在の子育ての諸問題の原因となっています。


◆事実と私 ふたつの手法

さて、では先ほどの歩き始めた1歳児の子のケースに戻って考えてみましょう。

まず、子育てにウソは必要ないということを覚えて置いて下さい。
自分に置き換えて考えてみましょう。
相手がどんなに自分のことを考えているからといって、自分に関わることでたくさんのウソをつかれるのは気持ちのいいものではないですよね。

ウソをつけばつくほど、その大人の言葉に信頼感を持てなくなります。
「子供だからわからないだろう」と考える人は、自分の子供時代を振り返ってみるといいでしょう。きっと、大人の都合で丸め込まれたことなどをまざまざと思い出せるはずです。
「子供だからわからない」などということはないのです。
むしろ子供こそ、大人の心の機微に敏感です。だからこそ、その言葉のニュアンスをより深いところで察知しています。


一緒に生活を共にしている家族であれば、信頼関係が0になるということはないでしょう。しかし、ウソを重ねたり、否定や命令、支配をすればするほどその人への信頼感は低下してしまいます。

「子供は信頼できない人の前ではいい子になる」加藤諦三先生の言葉です。

一見、矛盾しているようにも感じられるこの言葉ですが、まさに子供の姿の本質をついています。
子供は、信頼度合いに応じてその本当のところを出します。
だから、一番信頼できる人に対して、甘えやゴネや、わがままといったネガティブな姿を出すことができるわけです。


ウソは必要ない。むしろ、事実が必要なのです。

・急いでいます
・そこはあぶないです

このケースであれば、こういった事実が考えられます。
もちろん、「急いでいる」とか、「そこに危険がある」という事実が存在しているときにそう言うわけですよ。
子供をうまくコントロールするために、ありもしない「そこはあぶない」といった言葉を使うという意味ではないので、この点注意して下さい。


「うまい言い方やテクニックで子供をコントロールすること」
世の中には、この手の子育て情報がたくさんあって、しかもそれは声を荒げたり、疎外するわけでもないので、一見スマートな関わりに見えて人気があります。子育てに関する大学教授と言った人たちですらこういった子育てのテクニックを平然と口にしています。
ですが、それはスマートな支配、優しい支配でしかありません。

子供はそれを確かに理解します。
もし、スマートな支配が上手な優しい感じの保育士と、ぶっきらぼうだけど嘘のない関わりをする保育士のふたりがいた場合、ほとんどの子供が後者に強い信頼を寄せます。
このことは子供はうわべではなく、人の本質を理解していることを示しています。

つづく。

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● COMMENT ●

いつも読んで、とても助けられています。本も、初版を持ってる事になって嬉しいです📕

>一部の素直だったり、従順だったり、我を出すことが不得意な個性を持っている子

一部なのですが、ここが気になりました。上の子(7歳、小1)がこれで、今は良い子ですが、このままで大丈夫なのか不安です。
彼の頭の中の辞書で、優しさ=自分が我慢する事、となっているようで、どう教えたらいいのか…
下の子(3歳、未就園児)は、年齢と時期もあると思いますが真逆な感じなので、接し方も迷います。

後編も楽しみにしています。

ありがとうございます

おとーちゃんさんのブログに助けられてる者です。事例にあった親子さんのようなシチュエーション、うちにもありました。「おいていくよ」は言わなかったけど、「嘘」「優しい支配」は現在もあるあるです。このブログに逢って本当に感謝しています。3歳2ヵ月目の娘がいますが、先回りした関わりをしながら、「嘘」「優しい支配」にならないよう気をつけていきたいと思います。後編の「私はこう思う」の話し方の具体例も参考になりました。ありがとうございました。

>あるなぎさん

これは、個性の理解という問題になってきます。

>優しさ=自分が我慢する事

その子は、こういった個性として獲得しているというわけです。

これが親としては将来が心配という気持ちになります。しかし、難しいのはじゃあ「それ、よくないよね。こうしてみたら?」というアプローチをいくらしてもそうそう思い通りにはいかないということです。この方法ではどんなに善意であれ、親心であれ、優しく言ってであれ「現状の否定」であることは変わりません。


それに対して、

「ああ、そうなんだ。あなたってそういう風に考えるんだね」
「ああ、そういう個性なんだね。それでも私はあなたのことが好きよ」

と、一旦そのあるがままを受け止めるところからスタートするといいです。

その子の個性として受けるだけにしておき、その上でそこは一端保留しその子のポジティブな部分を見て、そこを認めていくようにします。
これにより、自己肯定感や意欲を培います。

もし、将来にその子自身も自分のその「優しさ=自分が我慢する事」という個性ゆえに、難しさに当たった場合。
その自己肯定感や意欲が、それを自分で乗り越えさせるための助けになります。
これがその子の主体的な成長と言うことです。

だから、親は子供のネガティブと見えるところがあったとき、そこを粘土細工して直そうとするのではなく、基礎的な力を持たせておくことで自分で乗り越えられる準備をしておくことが大切なわけですね。

ただ、子供の姿は時間と共に大きく変わることも多いので、もしかすると先々ではその姿そのものが自然解消されていることもあるでしょう。

ありがとうございます

お忙しい中、ご返信下さり、ありがとうございます。

子供を変えようとしなくても良いんですね。

子供を育てる中で、子供を変えなきゃいけない、自分も変わらなきゃいけない、そのままじゃ駄目なんだ…そんな気持ちがずっとあるように思います。
その不安から、子供を支配したくなり、正しい(ように見える)ものに縋りたくなり、上手くいかずにイライラが募り、子供にあたってしまい自己嫌悪、不安…というループがあるなー、と気付きました。

ありがとうございます。おとーちゃんの言葉は心の支えというか、魔法の杖みたいです。これからも楽しみにしています。


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楽しく無理のない子育てを広めたいと2009年ブログ開設。多くの方の応援があって著作の出版や講演活動をするようになりました。 現在は、子育て講演や保育士セミナーの他、『たまひよ』や『AERA with Baby 』等の子育て雑誌の監修やコラム執筆。『ジョブデポ保育士』の監修や育児相談などをいたしております。

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