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2024-03

子供と死の問題 Vol.1 幼児期のトラウマ化 - 2011.03.21 Mon

ニュースで流れる震災の様子を子供とみていて、子供にどのように伝えればよいのかわからないというようなコメントやメールを頂きました。

日々明らかになっていく惨状や、増大していく死亡・行方不明者の数をニュースで見るにつけ、痛ましく子供にもどういう風に伝えていけばいいのか悩んでしまいます。
このたびの震災でなくなられた方に謹んでご冥福をお祈りいたします。

今日は子供と死の問題についての話です。
そのような意見を頂いたということもありますが、このことについては震災とは関係なく以前から書こうと思っていた事柄でした。
ただなかなかに重いテーマなので機会がありませんでした。

今回は幼児期に死を深く知ってしまうことによるトラウマの問題。Vol.2では思春期における死の問題について扱っていく予定です。


幼児期における死の問題・トラウマ化についてはいずれ書かなければならないと考えていました。なぜなら僕がその経験者だからです。

僕が小学校にあがる少し前くらいに祖父が亡くなりました。
年子の姉に母を取られてしまうので、僕はとてもおじいちゃん子だったそうです。
とても穏やかな人でキセルで煙草を吸っていたのをなんとなく覚えています。

そんな祖父が短い入院のあと亡くなりました。
お葬式のときなどはまだどういうことかわからず悲しさとかはありませんでしたが。

しかしそれからしばらくして、祖父が亡くなった悲しさが出てくるよりも、『死』というものが怖くてしかたなくなったのです。
小学校に入る少し前くらいのことです。

それから毎晩寝るときになると、『死』におびえる様になりました。
日中は普通に過ごせるのだけど、寝るときになるとどうしても『死』が頭から離れないのです。
それがおそらく小学校の2~3年生になるまで続きました。
結局のところ時間が解決するしかなかったのでしょう。

子供なのにそんなことで悩むなんて自分はちょっと変わっているのかもしれないと思いつつ、大人になりこんな仕事に就きましたが、あるとき「児童心理」という本を読んでいて幼少期に近親者の死などに直面することで、精神的・身体的な発達の上で問題を引き起こしてしまうという事例があることを知りました。
僕だけが特殊な子だったのではなく、こういうことはまま引き起こされることのようです。


子供にも包み隠さずなんでもきちんと伝えていくべきだという考え方をする人がいます。
僕も基本的にはそれでいいと思うのですが、『死』に関してだけは幼児期にはあまり直視させないほうがいいでしょう。
それはけして解決不可能な問題だからです。
死が解決不可能なのは人類の普遍的な問題だから当然なんだけど、子供の精神的な発達段階では「死」そのものを理解・受容することが非常に困難だからね。

だから、例えば火葬場でお骨を拾ったりするような場面には小さい子供は連れて行かないほうがいいと思われます。
死について触れなければならないときも、あまり直面させすぎずにオブラートに包んであげたほうがいいでしょう。
そのことについては理解・受容可能な発達段階に達してから受け入れればいいのだから。

また、いやおうなしに直面してしまった場合には、その後の様子を大人がきちんと見守ってあげる必要があるといえます。
子供が一人で「死」の問題に悩むのはあまりにつらいことだからね。

僕は大学で専攻したのはドイツ哲学で「生の哲学」なんかを研究するようになり、まあこんな理屈っぽいたちなのだけれどもおそらく幼児期のこの死について悩みぬいた影響が少なからずあってこうなっているような気がしますよ。


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● COMMENT ●

こんばんは。震災で日本中が意気消沈してる感じがします。
おとーちゃんも色々大変な経験をされたのでしょうね。心からお見舞い申し上げます。

私は、広島在住なので、揺れや津波の被害も全く受けず、停電もありません。

でも、震災からずっと気分が重いです。テレビはいつもほとんど観ないので、震災後の2.3日しか観てないのですが、それでも受けた刺激が強く、こんなに大変な人がたくさんいるのに、ぬくぬくと暮らしている申し訳なさみたいなのがあったりして、とてもドンヨリしています。

大人で、実際の被害が自分にも親戚、知人にもない私でさえ、こんな気分になるので、子どもにとって、「死」とはどう受け止めていいのかわからないもので、精神に少なからず影響があるのでしょうね。おとーちゃんは、実際に体験なさったんですね。

これと、似たような意味で、早すぎる性教育にも、私は懐疑的なのですが、おとーちゃんはどう思われますか?


まさに今

はじめまして。
被災地に住んでいる者です。

まさに今日、私の祖父が亡くなりました。
明日通夜の予定です。
震災による死ではありませんが、
なにしろ高齢でしたので震災後
急速に肺炎と心筋梗塞を併発し
あっという間の旅立ちでした。

うちには6歳の子どもがおります。
入院中も、自宅での焼香の時も
子どもは立ち合わせていません。

でも、私が焼香をしていたときのことを
後で子どもに「お母さんは何をしてたの?」と
聞かれて、ありのままを伝えた方が
いいのかと迷っていました。

私たちは震災で被害をほとんど受けませんでしたが
実際大きな揺れを経験していますし、
報道を見せてしまったこともあり、
今子どもの心は不安でいっぱいなはず。

おとーちゃんさんの実体験による記事、
本当に参考になりました。

亡くなったということは伝えてもいいのか、
亡くなったらどうなると聞かれたら何と
答えたらいいのか、その辺りはまだ迷いもありますが
繊細な所のある子ですので、気をつけたいと思います。
ありがとうございました。

私は小さい時「死」に直面したことはなかったけど小学校に入る前くらいだったかなぁ
親が自分より先に死ぬことを考えるとすごく悲しくなってずっと考えてて悩んで涙が出て夜眠れなかった時がありました。
これも時が過ぎたら悩まなくなったんですけどね~

子供には死を直視させない方がいいんですか。
生と死は見せた方がいいと聞いたことあったんでそう思ってました。

でも近親者の死のショックからか死を境におかしくなる子供っていますもんね。
以後気をつけます。

kyomiuさん

ありがとうございます。

家をなくしてこの寒い中避難所で過ごしている人がいると思うといたたまれなくなりますよね。


>これと、似たような意味で、早すぎる性教育にも、私は懐疑的なのですが、おとーちゃんはどう思われますか?

↑鋭いですね。実は「死」についてと「性教育」のふたつがあまり早期に子供に伝えすぎないほうがいいことだと僕も考えています。

「性教育」については早くからきちんと伝えていくべきだというのが、現在の日本の主流な考え方なのですが、実は世界でもそうでした。
しかし、諸外国では日本よりも早くこの考え方にたどりついて実行してきたのですが、いまではもう見直しの時期に入ってきてしまいました。

というのも、早期に正しい知識を伝えることで性の問題を少なくできるという考えでいたのですが、あまりに早期に知識を伝えすぎることでむしろ性に対する興味を高めてしまい、結果としてより多くの問題を生む結果がでてきてしまっているからです。
ある国では小学校1年生くらいからかなり生々しい性教育をしてきたことで、小中学生の妊娠の増加などが増えたりという問題も起こってしまいました。

ただ、文化・環境により何歳ごろが適切なのかというのは変わってくることなので、一概にどのくらいがいいと言う事も難しい問題ではあります。

まるこさん

まるこさんはじめまして。

お祖父さんのこと心からお悔やみ申し上げます。
このような状況の中でみなさん大変ご心痛のことと思います。

一日も早く復興の日が来ることを祈っています。

震災・またお祖父さんの死を経験したお子さんの心をどうかしっかりと見守ってあげてください。

以前、阪神淡路大震災が起きた後も、あまりニュースなどでは取り上げられていませんが、震災を経験した子供たちの心のケアを専門的に計る必要がでてきて、日本育英会はレインボーハウスという子供の精神的なケアをするための施設をつくったりしました。

子供の心は柔軟ではあるけれども、一方でとても繊細なものです。
人の心の問題ですから、どうすればいいという答えみたいなものははっきりと言えませんが、いつにもまして見守り親子の心のきずなをしっかりと結んでおいてあげることが必要だと思います。

大変な折だとは思いますがお体をどうぞお大切に。

きららさん

>親が自分より先に死ぬことを考えるとすごく悲しくなってずっと考えてて悩んで涙が出て夜眠れなかった時がありました。

子供にはこういう繊細な心があるのですよね。そういうのって親など周囲の大人との心の結びつきによってもつらい状態を乗り越える力になったりするのではないかな。

>生と死は見せた方がいいと聞いたことあったんでそう思ってました。

確かにこういう考え方もありますよね。
僕もそれはわかるのですが、人の心の問題だからなかなか一概には言えないことなのだと思います。
子供といってもその子その子の違いはもちろん、年齢的な幅もありますしね。

僕の考え方としては、「命の大切さ」という「生」の方向で伝えるのはいいのだけど、人間とくに身近なひとの生々しい「死」という方向では強く伝えないほうがいいのかと思います。

No title

初めまして。5歳(年中)の男子を育てる30代の母です。
相談があって書込みさせてもらいました。

息子はヤンチャで口が達者です。
陽気ですが、神経質な面もある子です。

2月に曾祖母が亡くなりました。
息子は、曾祖母との面識はありませんでした。
お通夜のみ参加し、手も合わせ、お顔も見ました。

それから時々、就寝前に死というものについて怖がるようになりました。
泣きながら寝ることも多々あります。
最初は嘘にならない程度に死について話していましたが
(いっぱい生きて疲れておばあちゃんになったらお星様になるんだよとか)
最近はもう「お母さん、頑張っておばあちゃんにならないわ!大丈夫!」と言っています。
そうじゃないと寝てくれません。

いい加減こちらも疲れてきて、子供が変なのかもと思い始めて、悩んでいたところ
ふと昔おとーちゃんさんのブログで死について書いてあったことを思い出しました。
慌てて検索して、おとーちゃんさんの幼児期と息子の様子がとても似ていると思いました。
おとーちゃんさんも随分辛い思いをされたのだと知りました。
私は幼児期に死について悩むような事はありませんでした。
だからなんと声掛けしていいのかわかりません。
今は「おばあちゃんにならない約束」をして寝かしつけています。
これから3年は続くかもしれない今の事態を母親は根気よく見守るしかないのでしょうか。
なんと声掛けすればよいのか。よい対応などないでしょうか。

お忙しい所を申し訳ないのですが、ご意見を聞かせてください。
よろしくお願いします。

きみこさん

面識のない曾祖母さんの死でもそのように感じてしまったのだからきっと繊細なものを持っているお子さんなのでしょうね。

基本的には、子供には未来が大きく開けているのですから時間の経過とともにいずれは乗り越えられることだと思います。


もし、お子さんの寝るときの様子があまりにも辛そうなものだったり、日中の生活にまで影響を与えているほどでしたら、これは専門の医療機関、心療内科や小児精神科などで相談してみるのもいいと思います。


僕の場合は本当に誰にも言えなかったし、誰にも気づいてもらえな方tので、辛かったし長引きましたが、お子さんの場合はきみこさんが理解して上げているのですから、きっと一人で乗り越えるよりもずっと力強いと思います。


基本的には時間の経過と成長で自分で乗り越えていくことでしょうけれども、親からの受容や、なにか夢中になれる遊びなどあればより助けになるのではないでしょうか。

私も同じ経験をしました

いつもブログを読ませていただいています。
過去記事をさかのぼって読んでいたらこの記事にあたりました。
まさに私もおとーちゃんと同じ経験をしました。

私も祖父が5歳の時に亡くなりました。
同居していてとても祖父に可愛がられており、幼稚園の送り迎えをバイクでしてくれたり、両親が共働きだったので幼稚園後の遊び(おもに山登りです)も祖父としていました。
病院で亡くなり家に帰ってきたときは、亡くなった祖父の横で寝そべってみたり全く平気。
お葬式でも「なんでお母さんは泣いているのかな?」なんて思っていて「死」については全く分かっていませんでした。
それが突如(たぶん小学校の低学年だったと思います)「何でおじいちゃんがいないの?」という思いに駆られ、「死」=「この世に存在しないこと」と思うようになりました。
そこから日中でも夜でも怖くて怖くて仕方ありません。面白いテレビを見ようが笑えない、誰と話していても楽しくない、「死」が頭から離れない、そんな時期がありました。
どうやって乗り越えたかは定かではないのですが、たぶん祖父を神様にして毎晩寝る前にお祈りして寝てたので、自分でそういう風に儀式化して心の安定を図ったのではないかと思います。
中学生くらいまで怖いことがあると「おじいちゃん助けて」と心の中で祈っていましたから相当なトラウマです。
そして今でも時々「死」について考えると無性に怖くなるので、考えないようにしています。

娘もたまに「死んだらどこに行くの?」と聞いてくるので、今は「ここには居ないけどお星様になってお空から皆のことみてるんだよ」と言っています。
そしたら「サンタクロースみたいだね」って言っていました(笑)
私も幼児期にはオブラートに包んで「死」について教えていこうと思っています。
おとーちゃんと同じ経験をしたので、思わずコメントをしました。
そういう子って私だけじゃなかったんだと安心しました。

なおりんさん

このことは経験した当事者にしか理解しにくいことですが、子供がひとりで死に悩むというのは本当につらいことですよね。
これが大人であれば、宗教的な救いを求めたり、それこそとことん死に向き合うことで乗り越えるというようなこともできるかもしれません。

僕も誰にも相談できずにずっとなやんでいたものですから、自分はちょっと普通ではないのではないかということも影を落としていて、自分だけが異常だったのではないと知ったときにはずいぶん安心したものでした。


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楽しく無理のない子育てを広めたいと2009年ブログ開設。多くの方の応援があって著作の出版や講演活動をするようになりました。 現在は、子育て講演や保育士セミナーの他、『たまひよ』や『AERA with Baby 』等の子育て雑誌の監修やコラム執筆。『ジョブデポ保育士』の監修や育児相談などをいたしております。

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