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2024-04

いじめについて考える  Vol.9 - 2015.10.23 Fri

前回の続きから。

似たようなケースでは、「虐待」の問題があります。
これは、かつてといまでは社会通念が変わって、以前よりは対応が踏み込めるようになりました。
なにが変わったかというと、それは「通報義務」ができたことです。








「たとえ確証が持てなくても、虐待の疑いがあるときは必ず児童相談所などの関係部署に連絡しなさいよ。もし、それをおこたった場合は罰せられますよ」
と罰則つきで制度ができました。

それが学校、幼稚園、保育園などの児童施設、医師など子供に関わるところに義務づけさています。

それによって、以前に比べるとかなり問題を未然に防いだり、事態の悪化に歯止めをかけられるようになりました。
それでもまだまだ完璧ではありませんが、着実な進歩が見られています。



そのように、いじめ問題に関しても現行の方法以外の、社会通念を変えるようなあらたな切り口を作ることでより効果的な対応を模索していくことが必要ではないでしょうか。

例えばの考えですが、子供と家庭への支援のノウハウをふんだんにもっている児童相談所の機能を拡充して、いじめ問題に関しても学校と児童相談所とが連携して対応するなどです。


学校であれば難しい、家庭に踏み込んでの対応にも、児童相談所がなんらかの法的裏付けをもって取り組むのであれば、より実効的なアプローチが可能になります。

また、学校外部の組織が加わることで、ニュースになるような深刻ないじめ問題に見られた、学校側の隠蔽体質、いじめ被害者ばかりが泣き寝入りさせられるような不誠実な学校側の対応などにも歯止めをかけやすくなります。
学校側にとっても、家庭問題への高い専門性を持っている児童相談所と協力してことにあたれることは大きなメリットではないでしょうか。



そのように、いじめをする側への援助を適切に行うことの方が、「罰則を強化」するといった「押さえつけ」の対応をするよりもはるかに児童に対する教育としてふさわしいはずです。
また、実際にいじめ問題を元から解決することにつながることでしょう。



試みに、もし厳罰化を行ったときどうなるかを考えてみましょう。

学校でいじめ行為を行ったときに厳しい処分をされるというのであれば、いじめをする側が狡猾な場合は、学校以外の例えば塾などでそれをするようになるでしょう。
もしくは、学校外の子供に対して、例えば公園で遊んでいる子や、乳幼児に対して意地悪やいじめをします。

部活などで、後輩指導の名のもとにパワハラや過剰な”しごき”などをすることもあります。

学校を卒業するまでは出さずとも、社会にでてからパワハラやモラハラなどをするかもしれません。
それでは、学校に在籍している間、厳罰があることによって問題を顕在化させていないだけで、やはり「臭いものに蓋」の教育的とは言えない対応です。

掲示板などを使った、ネット上での匿名のいじめになることも考えられます。
すでにそれは多発していますので、仮定の話ではありません。

もしくは、犬猫などの動物をターゲットとした虐待に発展することもありえます。
これまでにも、野良猫や野生の鳥類、学校で飼っているウサギやニワトリが惨殺されたニュースを多くの方が知っていることでしょう。



また、狡猾なタイプのものでなく、衝動的ないじめの場合は厳罰化したところで、そのような後先を考えずにいじめは行われるので、必ずしも抑止力にはならないでしょう。

ほかにも、集団心理で行われるいじめには、明確な首謀者がいなかったり、いじめる側といじめられる側が入れ替わるといったケースもあります。
厳罰化がいじめ対応の切り札になった場合、そのようなケースにはどう対応するのでしょう。
もし、一部の子を罰することで「一罰百戒」(見せしめ)のような対応をした場合、それをされた子供はその恨みや疎外感を抱えて成長していくことになりはしないでしょうか。



それだけでなく、いまだにいじめ問題があることを不祥事ととらえ、隠蔽する体質を学校側が持ち続けるのであれば、罰則の強化という制度を導入したところで問題解決につながるわけではありません。
むしろ、強い罰を振るえるという強権を学校に与えることにより、それを不適切なかたちで行使する学校側のある種の暴走すら懸念されます。

この辺りの学校側の意識改革も急務です。
以前紹介しましたが、静岡県などいじめ問題を「なかったこと」にするのではなく、これだけ把握して対処しているとおおっぴらに打ち出すことで問題対処するように意識改革に成功したところも現にあります。



実際のところ、いじめ問題に厳罰化が必要だと言っている政治家たちの主張には、いじめの解決のためだけではない思惑があります。
その点が僕には非常に恐ろしく感じられるのです。
おそらく気づいている人は気づいているのでしょうけれども、いまの世の中の流れではそれに歯止めがかからなそうでとても心配です。
これについては、またの機会にまとめるとして、もう少しいじめ問題解決のための手段について僕の思うところを述べていこうと思います。



とりあえず今後述べようと思っていることには、あと2点あります。

・地域参加の取り組み

・乳幼児期への育児支援アプローチ

です。

また、そこからの発展として、社会全体で子育てを考える取り組みについて、カナダでの実際に行われている政策を紹介したいと考えています。

ただ、しばらく講演等が多くあり、来週からまた多忙になってしまいますので、更新に時間がかかってしまうかもしれません。あしからず。
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● COMMENT ●

現場から

以前、中学校で養護教諭をしておりました。今は1歳5カ月の子を子育て中です。

その通りだと思いました。
そのとき勤めていた中学校の校長は、「集団生活をしている以上、いじめは起こって当たり前。起こったときにどうするか」という方針だったので、職員も落ち着いて対応することができました。
私自身が経験した、いじめを受けて保健室登校になるケースでは、いじめ加害者がある日被害者になるというケースが多かったです(今まで我慢していた周りが、耐えられなくなって一斉に無視、というような。本人は「私はいじめられている」、周りは「自業自得」)。いじめは、加害者、被害者、傍観者、そしてそれを見守り助ける大人、みなが変わらなければ解決されないと思います。
また、いじめに限らず様々な生徒指導事例で、保護者が変わることで生徒が救われる事例を見てきました。あー!おとーちゃんのような方に日本の教育についてどうにかしてもらいたい! とブログで勉強させてもらいながらいつも思っております。

はじめまして。

はじめまして。1週間前にこのブログを見付けて、記事を読ませて頂いています。
0歳9か月の息子(第一子)がいる母親です。
この記事とは全然関係無い人生相談のようなものですので、もし不快にさせてきまったり、面倒くさければスルーして下さい。
2つ相談したいことがあります。

私は現在育休中なのですが、実家も祖母宅も徒歩圏内に有り、主人の帰宅も早め。また地元の友達も数人残っており、散歩がてら気軽に出掛ける場所が有るため、私自身あまり閉塞感を感じず楽しく育児をしていたので支援センターにはほとんど通ったことが有りませんでした。
息子も実家の家族や祖母に可愛がって貰ってニコニコした子に育っていると思います。

しかし、先日、検診で出会ったお母さんに「支援センターには出来るだけ通った方がいいよ。兄弟がいない間に大人に甘やかされて育つと社会性の無い子になってしまうよ。」と言われ、支援センターに行ってみました。
すると、普段はニコニコと母や祖母の所に行き、家の中を探検する息子がしばらくベッタリと私から離れず、他の子を観察していました。
少ししてオモチャで遊びだしましたが、途中で他の子に取られたりすると、泣きはしませんがびっくりしたように私の所に来ます。叩かれたりすると(相手の子は悪気無し)泣くことも有りました。
この反応って、この月齢にしたら普通ですか?
私が過保護過ぎて社会性の無い反応でしょうか?正直、あまり息子が楽しそうってわけではなかったので、まだそんなに通いたいとは思わなかったのですが、息子の成長に必要なら通いたいと思います。

また、仕事復帰についても悩んでいます。復帰するとしたら、正社員ですが時短勤務にして、月~金で朝8時に送り夕方4時にお迎えに行くと思います。
出産前までは深く考えず、ヨユー!とか思っていたのですが、産んで育てていくうちに、子供にとってこんなに母親って特別なのか!と驚くことが多く、こんなに必要とされているならお友達と遊ぶのが楽しいと感じお喋りが出来る3歳位まで家にいても良いのかなぁと思うようになりました。
しかし、それも別のお母さんに「3歳でも保育園は嫌がるし、小さい間に入れてしまった方が楽だよ。3歳で入れるとそれまでに仲良くなった子達に馴染めないよ。それに、母親は家にいて自分のためにいるものと認識しちゃうと次働く時に急に放っておかれたと思って余計子供は辛いよ」と言われ迷っています。
母親のくせに人の意見にブレブレですみません。
無理では有りませんがお時間が有る時にお答え頂けたら幸いです。

No title

>現在、子育て相談は休止いたしております。お手数ですが、過去記事・過去コメントを参考になさって下さい

http://hoikushipapa.blog112.fc2.com/blog-entry-555.html

http://hoikushipapa.blog112.fc2.com/blog-entry-491.html

miiさんへ

個人期な経験談なので、役に立つかどうかわかりませんが…。

3歳まで一緒にいてあげたいと思って、一緒にいてあげられる環境にあるのなら、そういう選択をしてもいいのではないかと個人的には思います。

私も息子が3歳0ヶ月の時に復帰しました。
確かに、派手に不適応が出て大変な面もありましたが、体は丈夫になっていたから、風邪は少なくて楽な面はありましたよ。
ちなみに医者には何歳でも子供への精神的負担は一緒だと言われました。
3歳くらいだと、イヤだと主張したり、馴染めない時に不適応な症状が出せるくらいに自我が育っているから、適応が悪いように見えるだけだと。乳児なら訳もわからず抱え込む事でも、心の中で解決しきれないと外に主張できるくらいには成長しているだけだとおっしゃってました。

また、3歳や4歳とかは、そんなにがっちり仲良しグループとかできてる訳ではなく、特に3歳(二歳児クラス)とかだと、まだまだ各々勝手に並行遊びをしてるから、お友達に馴染めないとかもないと思われます。

うちの子も育児広場も混んでる公園もダメな子でほとんどおうちや空いてる公園とかで遊んでて、兄弟もいないし不安でしたが、小学生になった今、友達とうまくやってて社会性には別に不具合ありませんよ。
でも保育園は、5歳になるまでは少ししんどそうだったから、4歳くらいまで家でゆっくりと見てあげたかったなって思います。無理だったので復帰しましたけど。

つらつらと書いてすみません。
納得のゆく選択ができますように。


おとーちゃん、いつも記事をありがとうございます。また、ぽりさん、そのほかアドバイスをしておられる皆さんに感謝しています。コメント欄をおかりして、ごめんなさい。
私は3歳1か月の双子女の子達のママです。
ちょうど、一月前くらいに仕事復帰して、子供たちを保育所に預けたばかりです。このブログと本には、この8月くらいからお世話になって、本当に助かっています。
今、子供たちは新しい環境に慣れるよう頑張っているので、ぽりさんの言うように不適応を示していたりします。 ブログにあったように、頑張りを受け止めたり、この子達可哀想などと思わないようにしたり、仕事あとは思い切り可愛がったり、と、気をつけているつもりですが、まだ保育所早かったかな?又はもっと早く入れるべきだったかな?とつい心配してしまいます。
そんな中、ぽりさんのmiiさんへの優しいアドバイスを見て、私宛でもないのに勝手ですが、救われた気分になりました。
私も子供たちとなるべく長くずっと一緒にいたかったから、3歳まで復帰しませんでした。でも、それは私のエゴで、子供たちにとっては乳児期復帰の方が良かっのでは?と、迷いもでました。おとーちゃんの記事にも、決めたなら迷わないことが大切みたいな内容があったにも関わらず、普段押さえている不安が、適応に苦しむ我が子を見ると出てきます。
ぽりさん、同じように3歳に保育所に入れられた経験を書いてくださり、ありがとうございます。
今は不適応で、夜驚症がでたりしていますが(かかりつけ医に相談して対応中です)、子供を信じて頑張ります。
miiさん、まだまだ子育てに悩む私が書くのも差し出がましいですが、納得のいく選択ができるようお祈りします。仕事を休んで子供たちと一緒にいた3年間は私にとっては大変でも得難く幸せでした。 でも1年で復帰するのもメリハリついて良いとよく聞きます。愛しい我が子のこと、ブレブレに迷うのは当たり前だと思います。

ブログを見る時間を取れていませんでした。せっかくコメント下さったのにすみません。
ぽり様、stママ様、温かいメッセージをありがとうございます。
こんな私を否定せず、励まして下さり、なんだか心がほわーっと暖まる思いです。
馬鹿みたいですが、自分ばっかりが子供のことで悩んでいるような気持ちになっていました。
本当に当たり前ですが、皆さん子供に誰より幸せになって欲しいと思い悩み育てていると気付き、少し冷静になった気がします。
もう少し時間が有りますのでしっかり考えて、答えを出した時には笑顔で生活したいと思います。


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楽しく無理のない子育てを広めたいと2009年ブログ開設。多くの方の応援があって著作の出版や講演活動をするようになりました。 現在は、子育て講演や保育士セミナーの他、『たまひよ』や『AERA with Baby 』等の子育て雑誌の監修やコラム執筆。『ジョブデポ保育士』の監修や育児相談などをいたしております。

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