その時期だけ成長がゆっくりだった、その後気にならないほどになった というのであればまぁそれほど気にすることもないのかもしれませんが、理解や人に伝える力 つまりは『人と関わる力』というのは子供の成長の中でも大きなものです。その後にいたっても影響があることも少なくありません。
たとえば年長のクラスでのエピソードなのですが、給食のときに「おかわり」をしますが、そのクラスの多くの子供が自発的に「おかわりください」とあまり言えません。
その代わりに、例えばスプーンなどを口にくわえて待っているのです。
3歳くらいまでの子であれば、そういうことも不思議ではありませんが、5歳の子がそれではちょっと幼いといえます。
『人と関わる力』というのは訓練すればつくといった類の能力ではありません。
小さいときからの経験の積み重ねがあってこそ、それはその子のものとなることです。
これまでにも子供との関わり方についてはいろいろなところで触れていますが、今回は関わりの経験を大切にすることを踏まえてみていきたいと思います。
・大人は自覚せずに子供の経験を奪っていることがある
例えば乳児は一日のうちに何度もオムツ替えをしますが、子供に様子を聞きもせずいきなり脱がせて替えるといったことをする人も珍しくありません。
しかし、ここには本当ならばたくさんの相互の関わりが詰まっているはずなのです。
「おしっこでた?」
と語りかけてもまだ無反応の時期もそれはあるでしょう。
そのうち、「なんか言われているな?」という表情をしたり、「オチッコ」とか「デタ?」などとおうむ返しをしたりもします。
2歳くらいになると、出ているのにいつでも「デテナイ!」と言い張ったりしたりもありますね。
出ているのに「デテナイ」といったり、出ていないのに「デタ」といったりと言っていることが実際と違うこともありますが、それは問題ではありません。
人と相互にやりとりをする、関わるという経験ができているからです。
他にもいろんな物事をするときに子供の意思表示をまたずに大人は手を出してしまうということがあります。
たとえば靴を履くとき。
子供がなかなかうまくできないと、つい大人は黙って手を出してしまいます。
もちろん親切でしているのでしょうけれども、実はより大きな視点で見たときにそれは子供の成長の機会を奪ってしまうことにもなりかねません。
それに慣れきってしまうと子供はもう「やってもらう」ことが当たり前になってしまい、自発的にやろうとすることが減っていったり、無くなっていってしまいます。
実際に1~2歳のクラスの子供では戸外遊びに行く際、大人がはかせてくれるまでボーッっと待っているという子が少なくありません。
では、どうすればいいか。
子供に対するものであっても、大人が大人に対して関わることと基本的にはかわりません。
もし自分がなんらかの作業を一生懸命していて、それが端から見てあまり進んでいないように見えたとしても、熟練者がきて「おまえ下手だな」とばかりに横から手を出されて終えられてしまったとしたらあまり気分のいいものではありませんよね。
それでは自分はいつまでもうまくなりませんし、いつも手を出されていたとしたら「じゃああなたがやればいいでしょ」と投げやりになったり、やる気もなくなってしまいます。
子供への関わりも、援助する側の意思をつたえる、子供の意思表示を待つというのは大切なことです。
字で書くとオーバーなようですが、実際やることはそんな難しいことではありません。
「手伝いましょうか?」と声をかけてなんらかの意思表示を待つことであったり。
時間のないときであれば、「悪いけど、急いでいるから手伝いますよ」と声をかけてから手伝ったり。
ある程度言葉を発することの出来る発達段階の子供であれば、「出来ないときは『てつだって』って言っていいんだよ」とそのときそのときに適切な言葉を教えてあげるということも、子供を伸ばすのにとても重要なことだと僕は考えています。
なんでも手伝ってあげることが、必ずしもその子のためにはならないということですね。
ここでも過保護・過干渉がその問題の背景にあることがわかります。
指示待ちであったり、やろうとする意思がなかったり、人と関わる力が弱かったりといったこれらの問題は、大人との関わり方から引き起こされたといっても過言ではありません。
つまり大人が・親が、そういった人と関わる能力が未発達な子供を作っているということです。
そのことを子供と関わる大人が理解していれば、その事態を避けることもできるし、むしろそういった点に留意することで、さらに通常以上に子供を伸ばしてあげることもできます。
まず、気をつけるべきは「一方的な関わり」です。
これまでにもたびたび述べておりますが、日本の子育ては、指示や支配的な関わりにおちいりやすいです。
こういった指示・支配的な関わりだとどうしても「上から下へ」「大人から子供へ」といった一方向の関わり方になってしまいがちです。
子供は保護下にはあるけど、支配下にあるわけではないと僕は考えて子供に関わります。
次回、もう少し具体的な子供との関わりについて見ていきたいと思います。