「遊べない」「遊ぶ力が弱い」という子で、最も多いのが強い刺激に慣れてしまっているので、刺激のない状態、刺激の弱い玩具・遊びでは遊べないというケースである。
次に多いのが、「幼い」ゆえに遊びに取り組めないケース。
「幼い」という言葉を使ってしまったが、正しくは「年齢に比して幼い」ということであり、もっと正確に言えば「経験不足ゆえに、様々な積み重ねができておらず遊びに適切に取り組めない」というケースである。
この場合の子は、まずたいてい「生活面」でも積み重ねができておらず、同様に「幼い」姿を見せているだろう。
これは主に家庭で「過保護」な関わりをされてきてしまった場合に多い。
このケースは、少し成長段階を戻ったところからでもきちんと経験を積ませていくことで、内面の発達年齢を上げていけばいいので、多少時間と手間はかかるにしても対処はそう難しくない。
ただ、これに先の刺激に慣れすぎている状態が複合している場合は、さらに対応に時間がかかるだろう。
だが、「幼い」や(いいなりやわがままになってしまうタイプ以外の)「過保護」の場合は、大人への信頼感は厚いものを持っていることが多いので、適切に関わっていけば遊ぶ力をつけることや生活面の力をつけることは難しくない。
では、具体的な対応について見ていこう。
まず考えるのは「環境」である。
遊具の内容、種類、数などは、その子供たちクラスに応じて適切であるかどうか。
遊具の内容は、子供たちの発達に即したものを状況に合わせて入れ替えていく。
遊び込めない子がいる場合、その年齢よりもやや前の段階の遊具もそろえておくと遊びに引き込みやすい。
せっかくいい遊具があっても、そこに電気や音など刺激で惹きつけるものが混じっていたら、子供が能動的に遊びこもうとするのを邪魔してしまう。
まだ遊ぶ力が十分についてない子がいる場合、ある程度遊具の種類は多い方が望ましい。これについては詳しくあとで述べる。
また、遊具の数(種類ではなく数量のこと)は、多すぎても、少なすぎても遊びにくいので、その子やクラスの状況に応じて適宜調節していく。
上は遊具としての環境であるが、ほかにも人的環境・空間としての環境も考慮してく必要があるだろう。
保育者としての人的環境はあとで詳しく見るとして、情緒が不安定な子供がいたり、かみつきや引っかきをする子がいてそれに周りが怯えているというような状態では、なかなか子供たちも落ち着いて遊び込めないので、そういった子へのアプローチも必要になってくるだろう。
空間としては、例えば家庭ならば、その子は見ていなかったとしても、そこでテレビがにぎやかについていたりしては遊びに注力するのはどうしても弱くなってしまう。
また、積極的な意味での遊びの空間づくりということも、保育の中でよい遊びを展開させようとしたら重要になってくる。
遊びの空間づくりということは、それだけでたくさんの書くべきことがあるので、ここでは軽く触れる程度にしておく。
まず、なにもない部屋があったとしたら、子供たちはほうっておけば走り回って遊び始める。
強い刺激に慣れている子は、さらに奇声をあげたり、叫んだり、壁や他児にぶつかることを遊びにして刺激を加える。
そこに遊具があったとしても、ただのだだっ広い空間ではなかなか遊び込めるようにはならない。
もともと遊ぶ力の弱い子がいれば、遊具よりも走ったりすることを遊びにするので、そういった子に遊ぶ力をつけることにはなかなかつなげられない。
そういった遊びは外遊びやホール遊びとしてすればよいのであるから、室内遊びの空間には適切な遊びの環境が必要ということになる。
遊びの空間づくりの基礎は、室内の場所ごとに遊びの意味づけをしていくことから始まる。
例えば、ままごと遊びの場所、積み木やブロックなどの構成遊びの場所、椅子に座って机の上で展開する遊びができる机上遊びの場所などである。
これらの設定・空間づくりをするだけでも、遊ぶ力のある子は大人の介入なしに様々に遊びを展開していくことができる。
そして、遊びの配慮の目的のひとつは、子供が能動的に自分から遊びを展開・発展させていくことであるのだから、このような遊びの設定・空間づくりの大切さがわかるだろう。
であるから、遊べない子・遊べる子にかかわらず、環境づくりが「遊び」の対応の第一歩となる。
次に、遊べない子に対しての直接的な保育者のアプローチについて見ていきたい。
次回に続く。