ある保育園で、通園している人以外の地域のお父さんお母さん子供達むけの「地域事業」というのをしておりまして、そこにくる子供達がちょうどだいたいその年齢ということでした。
その場でちょっとした子育てのお話や相談を受けるということになり、そのお話の原稿を頼まれました。
以下、それをほぼそのまま掲載します。
これは二回目の原稿なのですが、なんと一回目の原稿は保存をし忘れてしまったみたいで、探したのだけど見つかりませんでした。(泣)
一回目の内容は、ブログの過去記事で何度か述べているような、子育ての第一の目標というのは「かわいい子供」にすることですよというのと同じようなことです。
「子供が赤ちゃんから小さいうちは、ひとみしりだとかしつけだとか、他人の評価だとかつまんないことは考えないでいいですから、あなたから見てかわいい子供にすることですよ。ほかのことはそれからでどうとでもなるから、まずはそこを目指すといいですよ」
というのを、初めて聞く人にもわかりやすくまとめたつもりだったのですが、なくしてしまって残念です。
まあ、ブログの過去記事を読んでいれば、大体のことはどこかに書いてあるはずなので、内容的には以前から読んでいる方には初見のことはないと思いますので、二回目だけでも問題はないかと思います。
といっても、この二回目の内容も全て過去記事にあることなのですが。
ではちょっと長いですが、以下がその内容です。
前回は、子育ての第一の目標は「かわいい子供にしよう」というお話をしました。
今回は、その次の段階として少し具体的な子供との関わり方についてお話していきます。
子供が赤ちゃん赤ちゃんしているときは、まだ「かわいいかわいい」で済んでしまいますが、立って歩くようになり、さらには走り回るようになってくると、それがそうばかりも言っていられなくなってしまいます。
この時期からの対応しだいで「子育てが楽しい」という人と、「子育てがしんどい」という人の分かれ目がでてきます。
人によってはこのころから、子供に対して否定や制止の言葉、注意などが多くなります。
ここに、子育てを楽しくするかしんどくするかのポイントがあります。
多くの人がこの時期からの子供の自由奔放な姿に対して、子供のその行動を止めようとしたりする注意や規制の対応、叱ったりや怒るなどが多くなっていきます。
なかでも特に「ダメ」という言葉が大変多くなります。
この言葉は、実はかなり強い響きがあるのですが、否定や注意・制止としてたくさん便利使いされてしまっています。
さらには「○○させないため」にと、大人はおどしやごまかし、もので釣るということを使ってしまったりもします。
もちろん安全を守ったり、大切なことを伝えるために、制止や注意などを使う必要があることもあるでしょう。
しかし、気をつけないと子育てを難しくしてしまう落とし穴がここにあります。
それは、多くの人が「
すべきでないことを子供に指摘していくことによって、子供は正しい行動をするようになる」と漠然と考えてしまっている点です。
要するに、注意や制止をそのつどたくさんしていれば、子供はそのうちそういわれるようなことをしなくなると思い込んでしまっていることです。
実は、子供はすべきでない行動を止めるだけ、させないだけで、大人から見たときの好ましい行動を身につけるわけではないのです。
大人がそのままこういった規制や制止・注意ばかりを日常の中で増やしていくと、当の大人自身も子供との関わりに疲れてくるし、関わる際の余裕もどんどん失われていきます。
そうなってしまうと、子供を「かわいい」などと思って見守る余裕もまたなくなってしまいます。
また、子供の方も、注意や規制といった自分を押さえつける対応ばかりをされていると、返って大人の言葉に耳を貸さなくなったり、押さえつけられることは居心地がよくないので大人の意図に従わない行動が多くなります。
これが繰り返されていくと、子育ては本当に大変になってしまいます。
大人だって、例えば職場で上司から毎日なにかにつけて何度もダメ出しされていたら、その人の言葉なんか聞きたくもなくなってしまいますよね。
この子育ては言ってみれば、子供のマイナスの部分に注目・着目して関わっていく子育てと言えます。
日本人は真面目な人が多いので、子供と関わる経験も知識もないまま子育てをするようになると、この注意などをたくさんするという「マイナスの関わりの子育て」になってしまいやすいです。
また、子育てを「しつけをしっかりしなければ」というスタンスで考えている人もそうなりやすいです。
実際、多くの大人がこういったマイナスの部分を指摘されるのが中心という、かつてからの子育てをされているという理由もあるでしょう。
では、どう関わっていったらよいでしょうか。
マイナスの反対はもちろんプラスですね。
そのプラスの関わりをするようにしていくのがコツです。
プラスの関わりとは、子供の良いところや、現にできている部分を見て、そこを認めていく関わりです。
先ほどのマイナスの関わりを重ねていくと、それはどんどん悪循環になっていってしまいます。
注意や制止をする → 子供は従わない → 大人は疲れ果てる → 子供は満足しない → さらに注意や制止が必要な行動にこういった悪循環にはまると、大人はいい部分を見る余裕も失われて、さらに子供の注意する点を探すような関わりにおちいってしまいます。
だから、プラスの関わりにするための良い部分をみるようなこともできなくなってしまいます。
まだみなさんはお子さんが小さいですから、そういった本格的な悪循環にはなっていないと思います。
今からプラスの関わりで子育てを形作っていくと、子育てを楽しいものとしていくことができます。
では、具体的なプラスの関わりについて、簡単に説明します。
さっきは「良いところを見る」と言いましたが、それだけではなかなかプラスの関わりは作っていけません。
子供が良い姿を出してくれるのをまっているだけではうまくいかないからです。
大人の方からプラスの部分を作り出せるような関わりをすると、それをよい循環へもっていくことができます。
そのためにとっておきの魔法の言葉があります。
それは「いいよ~」です。
この「いいよー」を忘れずにうまく使っていくと、それまでマイナスの関わりをしていたところでも、プラスの関わりに転じていけます。
例えばの話ですが、それまで「ここではあそぶな」という規制の関わりをしていたところに、「ここだと通れないから、あっちであそんでいいよー」に変えてみます。
この「いいよー」は指示や命令とはちょっとニュアンスが違いますね。
この「いいよー」は提案の形になります。
これにすることで、子供は自分のとる行動について「考え」自分で「選択する」というプロセスを持つことができます。
ひとつひとつは小さくても、行動のたびに「考える」と自分で「選択する」ことを積み重ねていった子供は、そうでない子供にくらべてずっと大人の言葉を意識して聞くようになります。
そして、行動も落ち着いたものになります。
遊びから食事にさそうにしても、「ご飯になるから遊びを終わりにしなさい」というよりも、「ご飯になるから座ってまってていいよー」とか「手を洗ってきていいよー」などとも言い換えられますね。
とくに、この「いいよー」が力を発揮するのは、それまで「ダメ」などの制止の言葉で子供を動かそうとしていたところを「いいよー」に変えられるところです。
例えば病院の待合室で、子供が動き回ってしまう時「そっちへ行ってはダメ」「座ってなさい」などの言い方をする前に、「ここで遊んで待っていていいよー」と行動の選択肢を提示することができます。
そして、それができたとき「静かに待っていてえらかったね」などとプラスの関わりをそこですることができるのです。
このプラスの関わりは積み重ねとなって、子供の行動を自発的に大人の好ましいものへと導いてあげることができるようになっていきます。
もし、それができなかったとしても、そこから「病院では走りません」や「病院では静かに待ちます」などと必要な注意や指示を毅然と伝えていけばいいのです。
ここで大切なこと。
「いいよー」などの関わりで子供が好ましい行動をとったならば、大人はそれに対してきちんと「認める」リアクションをとることです。
さっきの例で言えば、好ましくないところで遊ぶことをやめ、好ましいところで遊ぶことができたのならば、「ちゃんとわかってえらいね」など、その姿を大人は
認めてあげるのです。
するとそこに、大人の好ましい行動をとれたというフィードバックが生まれます。
このことは大人の言葉を聞こうというモチベーションになります。
それによって次も大人の気持ちを考えて行動しようと子供は思えるようになります。
これを小さいうちから積み重ねていくと、子供の姿は大きく変わります。
身の危険があるようなときは別ですが、もし注意や規制・指示などの行動を大人がとるにしても、この「いいよー」をして子供が自分で動くのを待ってみて、待ってみても自分でそれができないときにしてからでも遅くはありません。
もちろん「いいよー」だけでなくともプラスの関わりはいろいろできます。
子供に歌を歌ってあげたり、絵本を読んだり、微笑んだり、一緒に笑ったり、楽しく遊んだり、一緒にご飯を食べておいしいねと言い合ったり、そんな親子の心地よい時間の多くが、ひとつひとつは小さいけれど子供にとってのプラスの関わりです。
プラスの関わりをたくさんしていくと、そうでないときにくらべてずっと育てやすい子供になっていきます。
今日は、これからの子育てを楽しいものにするために、マイナスの関わりよりもプラスの関わりを増やしていこうというお話でした。
○今回の要点
・マイナスの関わりよりもプラスの関わりを
・子供のプラスは大人の対応しだいで作りだせるということ
・「ダメ」と簡単に言ってしまうところを、子供に考えさせる言い方で
・「認める」というフィードバックを忘れずに