まず、どんなお悩みがあるかというところからざっと見ていきましょう。
例えば、1歳2歳のお子さんをお持ちの方が、「お友達と触れ合って遊べるようにしなければ」と児童館や子育て支援センターなどに行くのだけど、困った行動(そこで他児を叩いたり、突き飛ばしたり、ひっかいたいり、モノをとったり、モノの貸し借りができなかったり、遊べなくて走り回ったり、親の後ろに隠れてまったく遊ぼうとしなかったりなどなど)をするので、それを心配になったり、心苦しくなったり、そこへ行くのが苦痛になったりしています といった類のものです。
「小さいうちから他児と関わって遊べるようになるべきである」
「小さいうちから集団行動を身につけるべきである」
あまりに多くの人が「子育ての当たり前」としてこのことを先入観としてもっています。
とても多くの人がこの先入観で苦労してしまっているので、誤解も覚悟で僕は一旦ここでこれらはさして必要のないことだと断言したいと思います。
1歳でも2歳でも他児や他の大人と関わって遊んだりすることを好んだり、得意な子というのはいます。
それができたり好む子ならば、それはそれで結構。
でも、「できなければならない」と考えるのは間違っています。
「うちの子は他の子と遊べなくて、叩いてばかりだわ・・・」
「親のうしろに隠れてしまってどうしても遊ぼうとしない、これでは心配だわ」
このように悩む必要はありません。
(叩く理由が対人関係以外のところにあるというケースは別ですが)
そこから躍起になって、
「他の子を叩かないようにしっかり目を光らせていなければ」
「叩かないように、厳しく叱らなければ」
「うまく友達と遊べるように、毎日小言ばかりになっている」
「周りの親御さんの冷たい視線が気になる」
「児童館に行くのが辛いけど、集団を経験させるために頑張っていかなければ」
こういうことで、子育てを難行苦行にする必要はありません。
なぜなら、日本のこれまでのそして今でも、子育てで重視されているこの種の根強い考え方、
「早期に友達関係を学ばせる」
「早期に集団に慣らす」
という前提自体が間違っているからです。
なぜなら、そもそも子供の発達段階として適正でないからです。
たしかに、1~2歳の子でも他児に興味を示したり、一緒にいることで楽しそうにしたり、遊んでいるように見える行動というのをとることもあります。
しかし、それはまだ発達的に出来る必要のあることではないのです。
例えば、モノの貸し借りというのを気にする人がとても多いです。
これを例にとって考えてみましょう。
0~1歳前半くらいでは、まだ「自分のモノ」という所有の感覚の薄い段階です。この段階の子は他児がその使っているものをとったとしても、全然気にしない子というのもいます。
でも、2歳前後から「自分のモノ」という感覚が非常に強くなります。
なので、誰かにそれを取られたら大変嫌だし、抵抗もします。また警戒もします。
でも、まだこの時期から3歳前後にかけて「成長期」(イヤイヤ期)として知られるように、自我が芽生えてきているのに、それを抑えたり・コントロールする力というのは未発達です。
このことは誰もがご存じですよね。
自我があるというのは、「自分のモノ」と思っているものをお母さんがほかの子に貸しなさいと言ったといっても、「イヤダ」と思うということです。
しかし、まだその自我・自分の意思を抑えたり・コントロールする力は不十分なので、「イヤダ」を乗り越えて貸すということは、そうそう簡単なことではないのです。
このように発達段階から言って、この時期の子に「モノの貸し借り」をうまくやるというのは、かなりの無理難題なのです。
でも、大人の方は「子供同士モノは貸し借りできるべきである」という理屈によって、それらを望んでしまいます。
そのために、悩んだり、叱ったり、なだめたり、言い聞かせたりなどああだこうだしています。
それによってその場では貸すことができる子というのもいますが、それは「大好きなお母さんが望んでいるから」ということに応えているのが大半であって、社会性が急速に発達してきてそれができるようになっているというわけではなく、人間関係とはまた別な部分での結果にすぎません。
結局のところ、これらの友達同士の関わり(社会性の発達)というのは、年齢ベースによる発達に負うところが大きいのです。
保育園で子供の育ちを示すもので、その根幹となるものに「保育所保育指針」というものがあります。
ここに、保育園で行うことの全ての凝縮したものが詰まっているといっても過言ではありません。
文科省 訂正 厚労省がPDFで上げているので、どなたでも簡単に「指針」そのものとそれの「解説書」が読めます。
そのなかで月齢・年齢別に子供への援助のポイントをしめしているところがあります。
そこで他児との関わりが最初に示されるのは
(5)おおむね3歳 [友達との関わり] [ごっこ遊びと社会性の発達]
(「保育所保育指針解説書」P.38)
です。
このおおむね3歳の段階でも、それが「できるようになるべき年齢」ではなく、ここから徐々に身につけていくべき最初の段階ということです。
なので!
多くの人が、早期に友達関係を身につけさせるという、日本の子育ての先入観。
そこからくるさまざまな悩み、心配、苦労というのは無駄な努力になりかねないのです。
ご自分の子が、1~2~3歳の段階で他の子と遊ぶのを好む、または抵抗がないというのならばそれはそれで結構です。
でも、それはそれができたら「そういう個性の子なのだ」くらいに思っておきましょう。
そこからモノの貸し借りができないなど、さらにきつく要求を重ねる段階ではないということを頭の片隅に。
もし、他児を叩いたりするということがあっても、まだそれも不思議のない段階です。
自分の子を否定する見方にならないようにしましょう。
(↑この部分はとくに相談が多いので、今後別の記事でとりあげようと思います)
もし、人見知りしたり、親の後ろに隠れてしまうという姿があっても、それもまた普通のことです。
その姿をありのままに受け止めて、否定する必要はまったくありません。
連続して書けないかもしれませんが、一応つづきます。