乳児期における「友達関係」について Vol.2 必要なのは訓練ではなく良好な母子関係 - 2014.04.04 Fri
大人は「お友達」と同年代の子供を気軽に呼びますが、小さい子にとって他の小さい子供というのは、必ずしも「楽しい遊び相手」と最初から認識しているわけではありません。
抵抗感のない子というのもいますが、小さい子にとって他の子供というのは、なにをするか・なにをされるかわからない相手でもあるのです。
自分よりも大きかったり、動きが激しかったり、そして実際にモノをとったり、中には押しのけてきたり叩いてきたりする子だっているわけです。
子供の集団を見ていると、「一番ちょっかいを出す子」(他児からモノをとったり、叩いたり、遊びを壊したりするなど)は、しばしば「一番叩かれたり、ケガをさせられる子」になります。
なぜなら、周りの子は警戒して、なにかされる雰囲気(または実際にされた)などからの反撃をうけるからです。
見知った相手で、なおかつ安全と十分に理解されている関係ならばまだしも、なにをするかわからない相手がたくさんいる環境に、そもそもの社会性が育つ以前の発達段階の子供を放り込んで、「さーうまく遊んできなさい」「遊ぶスキルを身につけてきなさい」ということは、大人が考えるほどに簡単なことではありません。
他児と遊ぶ・触れ合うという機会が悪いというのではありません。
うまく遊べなくてもそれはそれで経験となるでしょう。
しかし、前号でも述べたように、「他児と遊ぶこと」「集団で行動すること」などを、ある種のスキルとして乳児期にその能力の上昇を求めることはナンセンスなことです。
幼稚園が三歳児から始まるのは、単なる偶然ではありません。
集団での活動や、他児との関わりということが、およそこの段階からスタートするので、そこを学校教育が可能なスタートラインと位置づけているわけです。
日本人は真面目な人が多いせいか、「三歳から幼稚園にいくのだから、その前に他の子と遊べるようにしなければ」というような考え方をしてしまっています。
そのため、1歳半や2歳くらいから、「他児と関わる能力のスキルアップ」とでもいうようなある種の訓練を課す不毛な取り組みに急き立てられてているようです。
では、ここではっきりとさせておきましょう。
子供が子供同士で関わったり、集団での行動を適切にとれるようになる基礎というものがどこにあるのか!?
それは、すでに述べたように「早期に子供同士で関わる経験」ではありません。
他児と関わる能力、つまり「社会性」を形成する基礎になるものは、「母子関係」です。
(我が家のように父親がメインで子育てしている家庭や、なんらかの事情で母親が養育者でない場合というのもあるでしょうから、正確には「主たる養育者」ということですが、多くは母親ですのでここでは母子関係としておきます)
将来的に友達と関わる際の能力というものを、乳児期に「母子関係」として子供は積み重ねているのです。
なので、いくら小さいうちから子供集団に入れたところで、母子関係がうまくいっていないというのでは、幼児期になり社会性が発達してきた段階においても、良好な人間関係というのは築きにくいものとなってしまいます。
逆に言えば、小さいうちから子供と関わらせようとせずとも、よい母子関係のなかで日々の積み重ねを送っていれば、しかるべき年齢(発達段階)にくればそれ以前の「訓練めいたもの」がなくとも、他児と良好な人間関係を持てるのです。
ここで前号の冒頭であげたような相談内容を振り返ってみましょう。
1歳半や2,3歳の子を「友達同士うまく遊べるために」とそのような場へ毎日連れて行くのだけど、叩いてしまったり、モノをとってしまったりばかりするので、そうしないように先回りしてダメ出しがばかりしたり、制止したり、怒ったり、叱ったりになっている。
毎日、泣きわめく子供を無理やり引き離して連れ帰っている。
こういったことが相談としてたくさん寄せられています。
これを僕がこれまでに述べたことと照らし合わせてみたらどうでしょう?
親が目的としていたところの「他児と遊べるようになる経験を積む」ということは、発達段階上さして積み重ねられないのに対して、制止や小言・注意・叱る・無理やり大人の思うように行動させたりという母子関係をマイナスにすることばかりが増えてしまっています。
他児と関わる能力の基礎は「母子関係」なのですから、むしろ当初の目的からしてここでしていることはマイナスとなりかねません。
わざわざ親子とも辛い思いをして、それまでのようなことをする必要性というのは全くないのです。
そこで子供が快適に遊んでいたり、その場でお母さんが息抜きになったり、ほかの人と情報を交換し合ったりなどのメリットがあるならば、子供は周囲を警戒していたり、モノを取られたりということがあったとしても、多少のことはマイナスでもありませんが、そのようなこともなくただ辛いばかりならばなにもわざわざすることはないのです。
その分、親子で楽しく遊べるところで遊んだり、生活上の経験を重ねることで、将来的に他児と関わる力につながっていくのです。
親に受容されていない子供。親に肯定されておらず自己肯定感の低い子。
過保護で親への依存が強かったり、過干渉でひっきりなしに何か言われていたり、小言が多かったり。
そのように母子関係が安定していない子というのは、3歳になっても4歳になっても5歳になっても他児との友達関係というのはなかなかうまくありません。
子育てで大切なのは、「先取り」よりも圧倒的に「適齢」です。
どうか早期から他児との関わりというものを重視しすぎて、子育ての迷走にはまりこんでしまわないようにと思います。
Vol.3として、保育園の乳児クラスなどにおける「友達関係と慣れとの違い」ということについて続きを書こうかと考えています。
自分よりも大きかったり、動きが激しかったり、そして実際にモノをとったり、中には押しのけてきたり叩いてきたりする子だっているわけです。
子供の集団を見ていると、「一番ちょっかいを出す子」(他児からモノをとったり、叩いたり、遊びを壊したりするなど)は、しばしば「一番叩かれたり、ケガをさせられる子」になります。
なぜなら、周りの子は警戒して、なにかされる雰囲気(または実際にされた)などからの反撃をうけるからです。
見知った相手で、なおかつ安全と十分に理解されている関係ならばまだしも、なにをするかわからない相手がたくさんいる環境に、そもそもの社会性が育つ以前の発達段階の子供を放り込んで、「さーうまく遊んできなさい」「遊ぶスキルを身につけてきなさい」ということは、大人が考えるほどに簡単なことではありません。
他児と遊ぶ・触れ合うという機会が悪いというのではありません。
うまく遊べなくてもそれはそれで経験となるでしょう。
しかし、前号でも述べたように、「他児と遊ぶこと」「集団で行動すること」などを、ある種のスキルとして乳児期にその能力の上昇を求めることはナンセンスなことです。
幼稚園が三歳児から始まるのは、単なる偶然ではありません。
集団での活動や、他児との関わりということが、およそこの段階からスタートするので、そこを学校教育が可能なスタートラインと位置づけているわけです。
日本人は真面目な人が多いせいか、「三歳から幼稚園にいくのだから、その前に他の子と遊べるようにしなければ」というような考え方をしてしまっています。
そのため、1歳半や2歳くらいから、「他児と関わる能力のスキルアップ」とでもいうようなある種の訓練を課す不毛な取り組みに急き立てられてているようです。
では、ここではっきりとさせておきましょう。
子供が子供同士で関わったり、集団での行動を適切にとれるようになる基礎というものがどこにあるのか!?
それは、すでに述べたように「早期に子供同士で関わる経験」ではありません。
他児と関わる能力、つまり「社会性」を形成する基礎になるものは、「母子関係」です。
(我が家のように父親がメインで子育てしている家庭や、なんらかの事情で母親が養育者でない場合というのもあるでしょうから、正確には「主たる養育者」ということですが、多くは母親ですのでここでは母子関係としておきます)
将来的に友達と関わる際の能力というものを、乳児期に「母子関係」として子供は積み重ねているのです。
なので、いくら小さいうちから子供集団に入れたところで、母子関係がうまくいっていないというのでは、幼児期になり社会性が発達してきた段階においても、良好な人間関係というのは築きにくいものとなってしまいます。
逆に言えば、小さいうちから子供と関わらせようとせずとも、よい母子関係のなかで日々の積み重ねを送っていれば、しかるべき年齢(発達段階)にくればそれ以前の「訓練めいたもの」がなくとも、他児と良好な人間関係を持てるのです。
ここで前号の冒頭であげたような相談内容を振り返ってみましょう。
1歳半や2,3歳の子を「友達同士うまく遊べるために」とそのような場へ毎日連れて行くのだけど、叩いてしまったり、モノをとってしまったりばかりするので、そうしないように先回りしてダメ出しがばかりしたり、制止したり、怒ったり、叱ったりになっている。
毎日、泣きわめく子供を無理やり引き離して連れ帰っている。
こういったことが相談としてたくさん寄せられています。
これを僕がこれまでに述べたことと照らし合わせてみたらどうでしょう?
親が目的としていたところの「他児と遊べるようになる経験を積む」ということは、発達段階上さして積み重ねられないのに対して、制止や小言・注意・叱る・無理やり大人の思うように行動させたりという母子関係をマイナスにすることばかりが増えてしまっています。
他児と関わる能力の基礎は「母子関係」なのですから、むしろ当初の目的からしてここでしていることはマイナスとなりかねません。
わざわざ親子とも辛い思いをして、それまでのようなことをする必要性というのは全くないのです。
そこで子供が快適に遊んでいたり、その場でお母さんが息抜きになったり、ほかの人と情報を交換し合ったりなどのメリットがあるならば、子供は周囲を警戒していたり、モノを取られたりということがあったとしても、多少のことはマイナスでもありませんが、そのようなこともなくただ辛いばかりならばなにもわざわざすることはないのです。
その分、親子で楽しく遊べるところで遊んだり、生活上の経験を重ねることで、将来的に他児と関わる力につながっていくのです。
親に受容されていない子供。親に肯定されておらず自己肯定感の低い子。
過保護で親への依存が強かったり、過干渉でひっきりなしに何か言われていたり、小言が多かったり。
そのように母子関係が安定していない子というのは、3歳になっても4歳になっても5歳になっても他児との友達関係というのはなかなかうまくありません。
子育てで大切なのは、「先取り」よりも圧倒的に「適齢」です。
どうか早期から他児との関わりというものを重視しすぎて、子育ての迷走にはまりこんでしまわないようにと思います。
Vol.3として、保育園の乳児クラスなどにおける「友達関係と慣れとの違い」ということについて続きを書こうかと考えています。
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