嘘は大人がつかせる - 2015.05.16 Sat
「嘘をつくな」と大人は子供に言います。
これは理屈であり、正論です。
でも、”人は正論を重ねればその通りになる” と大人は考えたくなってしまうのですが、実際は、人は正論を押しつけることでそのようになるとは限らないのです。
ここが人を育てることの難しいところです。
また、まじめな人がつまづいてしまうところです。
まあ、今回取り上げた「嘘」のことに限らず、このことは子育てする上でいろいろなところででてきます。
正論で押し切ることで、人がそのように育つなら楽なのですが、人間はロボットではありませんから、そこがいいところでもあるんですね。
そんなわけで、この「嘘」についての話を通して、そのあたりの感じをつかんでもらえるといいかなと思います。
実のところ、嘘は誰しもが日常ついています。
むしろ嘘がつけなくては生きていけないとすら言えます
お仕事をしている人が、お客さんにとても理不尽なクレームをつけられたとき、「ふざけるなっ」と言いたいところ、それを我慢して笑顔で返さなければなりません。
また、だれかに対して、「その服似合っていませんね」と心で思ったとしてもそれを口に出してはいけないわけです。
以前、
『息子と僕のアスペルガー物語』
を紹介しましたが、その中でアスペルガー症候群の傾向を持っている筆者は、思ったことをその通りに口にしてしまうことで人間関係を悪化させ、そのことで大変悩み、努力してそれをしないことを身につけたと述べておられました。
子供はもともと、自分の思ったことを無邪気にそのまま表現してしまうものですが、そういったように、人が嘘をつけることは成長の過程で必要になってくることでもあるのです。
そうやって考えてみると、嘘には三種類あることに気がつきます。
ひとつは、いまあげたような処世術としての、通常は嘘とは認識していないような、嘘。
もうひとつは、人をだましたり、おとしめたりする、悪意のある嘘。
これは明らかに、つくべきでない嘘ですね。
これに対しては、ついてはならないと言い切ってもいいでしょう。
そして三番目が、自分を守るための嘘です。
これは大人も子供も誰しもがつきます。
そして、悪意がなくとも人は自分をまもるためについついしてしまうものです。
おそらく子育ての中で一番たくさんでてくるのが、これでしょう。
ではここで最初に戻りましょう。
大人が子供に「嘘をつくな」と厳格にせまっていると、子供はたくさん嘘をつかなければならなくなってしまいます。
そのように正論を繰り広げるタイプの大人は、子供の失敗や間違いにあまり寛容ではありません。
そうであれば、子供はなにか失敗や間違いをしたときに受け入れてもらえないと思ってしまいます。また実際に受け入れてもらえないという経験を過去にしていればそれはなおさらですね。
すると、自分が否定されないためには、事実を隠さなければならなくなってしまいます。
結果的に嘘やいつわりを言うことになります。
同じ場面であったとしても、その大人は自分の失敗や間違いを自分への否定をせずに受け止めてくれると子供がわかっていれば、嘘をつく必要はありません。
ですから、子供に「正しいこと」をさせなければと強く考えてしまっている人や、叱ることや怒ることがすぐにでてしまう人に対して、子供は嘘をつかねばならなくなってしまうのです。
この点を大人が踏まえていないと、子供に対して「嘘をつくな」と思っているその大人自身が、子供に嘘をつかなければならない状況に追い込んでしまうのです。
とりあえず、ここでひと区切り。
今度はもうちょっと別の側面もあります。
それは、自分のことを受け入れてくれる、失敗や間違いを許容してくれる大人に対してすら、子供は嘘をつくというお話しです。
上の話は、その相手から自分が否定されないための、自己防衛としての嘘でした。
しかし、それでなくても人は嘘をつかずにはいられません。ここが人間の面白いところです。
それは、”自尊心”を守るための嘘です。
人間は自我が発達してくると、自尊心ができてきます。
それは当然、心の成長ですので、誰しもが持っていくものですね。
ある程度の年齢になると、およそ2歳の中頃や3歳前後くらいからでしょうか、だんだんとこの気持ちが強くなってきます。
すると、自分が失敗したことや、間違ったことを認められなくなっていきます。
これがあるために、その大人が失敗や間違いを受け入れてくれると感じていてすら、自分を守るための嘘をついてしまいます。
このときに、頭ごなしにそこを責めていくと、今度は最初から自己否定をされないように嘘をつかなければなくなります。つまり自己否定から防衛するという上のケースですね。
自尊心を守るために嘘をついているということは、その子はその失敗や間違いを重々承知しているということです。
なので、それをすぐに認めないからといって、大人がかさにかかってそこを責める必要はないわけです。
ケースにもよりますが、ほどほどにいなしておくだけでも、子供はその失敗から学んで次の時に生かすことができるものです。
大人がいちいちに”矯正”しなくても、そうやって子供は自分で学び、成長していけるのだと思います。また、そういった知識ではなく経験として学べることが、もっとも効果的な成長であると感じます。
大人でも自分の間違いをすんなりと認められない人はたくさんいますよね。
地位や年齢が上がって、それに比例してプライドも大きくなっていくと、それがなおさら難しいわけです。
会社の上司などにそういう人がなると、下の人間はなかなか大変です。
そういう立場にありながらも、自分の非を素直に認めることができる人は、”器が大きい”呼ばれる人ですよね。
現実には、自尊心は大きくなればなるほど、それを守ろうとしてしまうのが人間ですから、そういう人はなかなかいないものです。
人はだれしも間違いや失敗をします。子供も大人も。
問題なのは、間違い・失敗そのものではなく、そこをどう乗り越え、どう成長していくかなのですね。
そんなわけで、「正しいこと」を主張するだけでは、子供はまっすぐ育てないというお話しでした。
これは理屈であり、正論です。
でも、”人は正論を重ねればその通りになる” と大人は考えたくなってしまうのですが、実際は、人は正論を押しつけることでそのようになるとは限らないのです。
ここが人を育てることの難しいところです。
また、まじめな人がつまづいてしまうところです。
まあ、今回取り上げた「嘘」のことに限らず、このことは子育てする上でいろいろなところででてきます。
正論で押し切ることで、人がそのように育つなら楽なのですが、人間はロボットではありませんから、そこがいいところでもあるんですね。
そんなわけで、この「嘘」についての話を通して、そのあたりの感じをつかんでもらえるといいかなと思います。
実のところ、嘘は誰しもが日常ついています。
むしろ嘘がつけなくては生きていけないとすら言えます
お仕事をしている人が、お客さんにとても理不尽なクレームをつけられたとき、「ふざけるなっ」と言いたいところ、それを我慢して笑顔で返さなければなりません。
また、だれかに対して、「その服似合っていませんね」と心で思ったとしてもそれを口に出してはいけないわけです。
以前、
『息子と僕のアスペルガー物語』
を紹介しましたが、その中でアスペルガー症候群の傾向を持っている筆者は、思ったことをその通りに口にしてしまうことで人間関係を悪化させ、そのことで大変悩み、努力してそれをしないことを身につけたと述べておられました。
子供はもともと、自分の思ったことを無邪気にそのまま表現してしまうものですが、そういったように、人が嘘をつけることは成長の過程で必要になってくることでもあるのです。
そうやって考えてみると、嘘には三種類あることに気がつきます。
ひとつは、いまあげたような処世術としての、通常は嘘とは認識していないような、嘘。
もうひとつは、人をだましたり、おとしめたりする、悪意のある嘘。
これは明らかに、つくべきでない嘘ですね。
これに対しては、ついてはならないと言い切ってもいいでしょう。
そして三番目が、自分を守るための嘘です。
これは大人も子供も誰しもがつきます。
そして、悪意がなくとも人は自分をまもるためについついしてしまうものです。
おそらく子育ての中で一番たくさんでてくるのが、これでしょう。
ではここで最初に戻りましょう。
大人が子供に「嘘をつくな」と厳格にせまっていると、子供はたくさん嘘をつかなければならなくなってしまいます。
そのように正論を繰り広げるタイプの大人は、子供の失敗や間違いにあまり寛容ではありません。
そうであれば、子供はなにか失敗や間違いをしたときに受け入れてもらえないと思ってしまいます。また実際に受け入れてもらえないという経験を過去にしていればそれはなおさらですね。
すると、自分が否定されないためには、事実を隠さなければならなくなってしまいます。
結果的に嘘やいつわりを言うことになります。
同じ場面であったとしても、その大人は自分の失敗や間違いを自分への否定をせずに受け止めてくれると子供がわかっていれば、嘘をつく必要はありません。
ですから、子供に「正しいこと」をさせなければと強く考えてしまっている人や、叱ることや怒ることがすぐにでてしまう人に対して、子供は嘘をつかねばならなくなってしまうのです。
この点を大人が踏まえていないと、子供に対して「嘘をつくな」と思っているその大人自身が、子供に嘘をつかなければならない状況に追い込んでしまうのです。
とりあえず、ここでひと区切り。
今度はもうちょっと別の側面もあります。
それは、自分のことを受け入れてくれる、失敗や間違いを許容してくれる大人に対してすら、子供は嘘をつくというお話しです。
上の話は、その相手から自分が否定されないための、自己防衛としての嘘でした。
しかし、それでなくても人は嘘をつかずにはいられません。ここが人間の面白いところです。
それは、”自尊心”を守るための嘘です。
人間は自我が発達してくると、自尊心ができてきます。
それは当然、心の成長ですので、誰しもが持っていくものですね。
ある程度の年齢になると、およそ2歳の中頃や3歳前後くらいからでしょうか、だんだんとこの気持ちが強くなってきます。
すると、自分が失敗したことや、間違ったことを認められなくなっていきます。
これがあるために、その大人が失敗や間違いを受け入れてくれると感じていてすら、自分を守るための嘘をついてしまいます。
このときに、頭ごなしにそこを責めていくと、今度は最初から自己否定をされないように嘘をつかなければなくなります。つまり自己否定から防衛するという上のケースですね。
自尊心を守るために嘘をついているということは、その子はその失敗や間違いを重々承知しているということです。
なので、それをすぐに認めないからといって、大人がかさにかかってそこを責める必要はないわけです。
ケースにもよりますが、ほどほどにいなしておくだけでも、子供はその失敗から学んで次の時に生かすことができるものです。
大人がいちいちに”矯正”しなくても、そうやって子供は自分で学び、成長していけるのだと思います。また、そういった知識ではなく経験として学べることが、もっとも効果的な成長であると感じます。
大人でも自分の間違いをすんなりと認められない人はたくさんいますよね。
地位や年齢が上がって、それに比例してプライドも大きくなっていくと、それがなおさら難しいわけです。
会社の上司などにそういう人がなると、下の人間はなかなか大変です。
そういう立場にありながらも、自分の非を素直に認めることができる人は、”器が大きい”呼ばれる人ですよね。
現実には、自尊心は大きくなればなるほど、それを守ろうとしてしまうのが人間ですから、そういう人はなかなかいないものです。
人はだれしも間違いや失敗をします。子供も大人も。
問題なのは、間違い・失敗そのものではなく、そこをどう乗り越え、どう成長していくかなのですね。
そんなわけで、「正しいこと」を主張するだけでは、子供はまっすぐ育てないというお話しでした。
| 2015-05-16 | 心の育て方 | Comment : 3 | トラックバック : 0 |
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