『大手保育園で横行する労働基準法違反 辞める前に行政を動かそう』『保育業界最大手の労働基準法違反について』業界最大手の組織が不正をすれば、その後を追うその他の企業も同様の過重労働を課してしまうことでしょう。
働き手である保育士の善意や良心を利用して、過重な労働を押しつけるのは日本の保育界のの悪しき習慣となってしまっています。
しかし、これをやれば必ず保育の質は低下します。断言します。
過重労働をさせてもよい保育ができるほど、保育というのは簡単な仕事ではないのです。
もちろん、保育所を営む運営母体だってそのことは理解しているはずです。
別にそれは保育に限りませんよね。
いい仕事、いいサービスを提供したいとしっかり考えているところは、その働き手も大事にするはずです。
働き手を大事にしないという体質の保育所は、子供も大事にする気などないということです。
労働条件に問題があれば、どんなに優れた保育者であっても、質の高い保育はできません。
その人の努力で短期的にはそれが達成されたとしても、維持していくのは非常に困難を極めます。
子供の人数に比して保育士の人手が足りない、残業時間がかさむといった状況であれば、子供を保育するにも余裕が失われます。
なんとか時程をこなすために、「子供を伸ばす」といった視点を持った保育をする余裕などそこにはありません。
「大人の望むとおりに動かすこと」が、そこでの最優先課題にならざるをえません。
すると、大きな声で注意や指示ばかりになったり、叱ったり怒ったりを多用したり。
そのような状況だと、保育士は「疎外」が大好きになります。
「疎外」がもっとも効率がいいからです。子供を大人の思い通りにするには・・・・・・。
しかし、子供を「育てる」「伸ばす」といった視点からはそれは最悪の保育になります。
かくして、ブラックな保育施設では、子供に高圧的で疎外が大好きな意地悪保育士がはびこってしまいます。
そこでは、子供によい保育をしたいと思う保育士はいじめられます。
いじめられずとも、そのような保育が慢性的に行われているところでは、心が痛くて仕事がつらくなってしまいます。
モチベーションもしぼんでしまいます。
それでも頑張ろうとしてくれる熱意を持った良心的な保育士もおりますが、職場の労働条件も悪いのではそこで仕事をする意味自体が失われていってしまいます。
いま、都市部では非常な保育士不足です。(地方では必ずしもそうではないところもある)
保育の質や、保育士の待遇が悪いところは、どんどん中途で人が辞めていってしまいます。
すると、人員補充されないのでより労働条件が厳しくなるという悪循環です。
一方で、保育の質が高く職員を大事にしているところは、必ずしもそんなに賃金が高くなかったとしても働き手の定着率がとても高いです。
職員の定着率はその園の質がてきめんに反映されています。
いま、保育園の増設は国、行政の喫緊の課題となっていますが、数だけ増やしても、きちんとした質がともなわなければなりません。
おそらく現状では、保育の質をあげるのは保育園側の自助努力ではなく(それがなされているところはそもそも質がさがらない)、ユーザーつまり保護者の方の意識ではないかなと感じています。
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