もちろん僕は、そういった関わりになってしまう人を責めているわけではありません。
そうならざるをえない状況があることも、そういった関わりをせずにはいられない理由を持たされていることも、それがなぜ形成されてきてしまったのかも理解しています。
本来ならば、子育ての専門家である保育士や、教育の専門家である教員たちは、このことを踏まえた上で子供にアプローチできるための専門性を獲得していかなければならないのですが、それをむしろ一般の人よりも効率よく上手にやることを専門性と誤解されている大きな現実があると感じています。
それがために、コメントでいただいたような、個性のある子に加配でついた人が、ダメ出しや疎外などを使ってしまうといったことが多くあるというところがあります。
このような保育や教育をしている人の、本当のプロフェッショナルとそうでない人の間には、この点の理解という大きな壁が立ちはだかっています。
多くの人は、子供の「できないところ」を見つけたら、それを塗りつぶして正しい行動を上書きすることが仕事なのだと無意識に考えてしまっています。
しかし、その状態は、
「待つ」専門性、「信じる」専門性、「失敗させられる(経験を保障する)」専門性が欠けている状態です。
これらはとても難しいことです。
だから、待てない、信じられない、失敗させられない。それゆえに過干渉になる。
そうして、この「過干渉」という病から抜け出すことができません。
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過干渉は、心理的にももっともラクなのです。
良くないところを見つけたら、人はモヤモヤを感じます。
そのモヤモヤを、「ダメ出し」や注意や叱ったり、怒ったりで、外に出せると心理的にラクになります。
さらには、この自身がラクをすることを、「教育的要素なのだ」「その子のためなのだ」という理屈で覆ってしまうので、その問題点を認識しなくなっていきます。
このとき優しく言おうが、厳しく言おうが、過干渉であることは変わりません。
「威圧的な過干渉はよろしくない」ということは理解していても、それを優しさバージョンにして「優しい過干渉」になることで落着点にしている人も多いです。
一般の子育てしている人だと、この「優しい過干渉」がさらにバージョンアップされて「いいなり」になってしまう人も多いです。
優しく過干渉したとしても、本質的にこれは強い過干渉と同じライン上にあることです。
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本当のプロフェッショナルは、ダメ出しをせずに、その子に足りなていないものを見いだして、そこを補い、必要なものを持たせ、その結果がじわじわと実際の行動面に波及してくるのを、信じて待たなければなりません。
子供により、ものごとにより、その結果がでるのは何日先かもしれないし、何年も先かもしれません。
でもそれを信じて待つには、子供への適切な理解や経験の裏打ちが必要です。
しかし、このような専門性の獲得は、その人がキャリアのスタート地点から、子供の上手な動かし方や、子供の短期的な行動面だけを思い通りにする方向で経験を積み出していってしまうと、それを変えること、子供を信じて待つことがかえって難しくなります。
(なのでベテランの方が不適切な関わりが多くなるケースも・・・・・・)
実際にそういった関わりが多いのは、複数のコメントで報告された通りです。
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保育士も、幼稚園教諭も、学校教員も、「自主性」「主体性」、「子供の個性」、「子供の尊重」、「子供の人権」などなど、上記のことを担保するものをたくさん学んでいるはずです。
しかも、何十年も前から。
しかし、実際には浸透しません。
なぜなら、これを実践に反映するのには、自身の外部にアタッチする知識としてでは足りないからです。
自分の心理面を理解し、そこを乗り越える必要があります。
人は他者のことは見えても、自分のことはなかなか見えません。
なので、これの実践は大変難しくなってしまうのです。
例えば、これだけ時代が進んでも、毎年のように教員の給食指導における不適切な対応がニュースになるのを目にします。
「食べ物を残してはならない」
「好き嫌いをしてはならない」
こういったことを、強く教え込まれてきた人は、子供がそれに反する状態に大きなイライラを感じます。
この感情をコントロールして、適切な関わりを子供にすることは、大変精神的なエネルギーがいることで、ストレスを感じます。
プロであるならば、ここに飲み込まれてはならないのですが、それをコントロールできない、それをする必要性を理解していない人がたくさんおります。
結果、行き過ぎた不適切な対応となってしまいます。
事件にまではならずとも、この方向性で、子供の心を傷つけたり、自尊心を損なったり、達成感や、自己肯定感を育めない食事指導はいまだに山のように見られます。
僕は研修をするにあたって、
◆理念的な学び
◆実践的な学び
◆理念と実践を結びつける学び
◆保育者・教育者の心理面の学び
この4つに留意して、それを噛み砕いてお伝えするようにしています。
多くの学びの場において上の二つばかりが中心となるので、いくら学んでも変わらないという状態になっている現実を見てきたからです。
(今週から始まる僕の連続講座には、あとおひとりだけ入れるそうです。よろしければどうぞ↓)
https://peatix.com/event/371908/view?k=91242f7594d8097e901aaf5fa0ba27dc7a23d365さて、コメントの中では親としての関わりの難しさについても多く触れられていました。
そこにはまた、仕事でこれを行う人とは別の部分もでてきます。
今度時間のあるときに、そこにも触れてみたいと思います。
今月は、講演・研修が多数でちょっと多忙です。
書けるときに書きますね。