「子育ては大変」と思われがちですが、実はここに子育てをラクにするポイントが隠れています。
子育ての大変さと感じていることの少なからぬ部分は、この「子供の姿」と「自分の要望」のギャップから起こるイライラなのです。
そこで、多くの人が子育て情報として、子供の姿を自分の要望に近づけるテクニックを求めます。世間で流布しているテクニックの中には、適切なものからまったく不適切なものすら様々あります。仮にそれが適切なものだったとしても、我が子に合って適用できるとは限りませんし、適切だったとしてもやりすぎたり、やり方を間違えばかえってマイナスなこともあるでしょう。
しかし、一般的な子育てのスタンスからすると、「子供をどうにかすること」に比重が置かれがちです。
実は、ここにばかり終始してしまうことはかえって子育てを難しくしないとも限らないのです。
もう一度、冒頭に戻ってみましょう。
>「子供の姿」と「自分の要望」のギャップから起こるイライラ
ここに二つのものが置かれていますね。子供の姿、自分の要望。
子供の姿ばかりに着目してしまうと、子供の支配やコントロールに行き着きやすいです。
「自分の要望」の方は見過ごされやすいですが、ここに子育ての大変さを軽減できる可能性が秘められています。
それは、「自分の要望」のハードルを下げてしまうことで、子供の姿とのギャップを小さくできるという点です。そうすれば結果的にイライラは減りますね。
例えば、食事で「好き嫌いなくなんでも食べられなければならない」と考えている人が子供に向き合い、その子が苦手な食べ物があった場合、必然的にギャップからくるイライラが大きくなります。
するとそれゆえに子供をなんとかして食べられるようにしようと思い、その働きかけにやっきになってしまいます。それで子供が思う通りになってくれればいいですが、子供の成長とは時間のかかるものなので、大人がそのようにアプローチしたからといって即そうなるとも限りません。まあたいていは思い通りにならないものです。
人によってはそこで子供に怒鳴ってしまったり、叩いてしまったりすることもでてきます。こうして順に考えてみるとわかるのですが、それは「子育て」として行われているのではなく、実は自身のイライラの解消としてでてしまうわけです。
子育ての大変さを軽減する大きなポイントは、このギャップを小さくすることです。
そのためには、子供を変えようとするよりも、大人自身の意識に目を向けるといいですね。
「食べ物を残してはならない」
「食べ物の好き嫌いをしてはならない」
こうしたことは「道理」です。たしかに正しいことでしょう。
しかし、一方でそれはバイアス(偏った意識)になっています。
こうした「ちゃんと、きちんと、しっかり」に集約される、「~~でなければならない」という価値観は、子育てでは弱めておくと、子育てそのものがすんなりいきやすくなります。
例えば、
・食事の際、子供が一品ずつ食べたがる
・混ぜご飯、丼のようなものより、白いご飯だけを好む
・果物を先に食べたがる
こうしたこと普通です。
一品ずつ食べたがるけど、最終的に他のものも食べるならば食事の目的としてはクリアされているのだから、そこは気にしなくてもいいのです。そうした傾向は時間とともに勝手に変わっていきます。よしんば何年か先になっても変わらなければ、そのとき指摘すればはるかに小さな大人の労力、子供の努力でかえられることに過ぎません。(一般論としてです。個別の特性のある場合はそれぞれです)
いま焦ってとりくまなくてもいいわけですね。
・白いご飯を好む子、何かかかっているのが苦手な子、1~2歳にはふつうにたくさんいます。5歳でもいます。
うちの娘は10歳ですが、丼にしたりするのがいまだに苦手です。なので牛丼のようなものも別の器に盛っています。ただそれだけで済むことですね。
なにも、それをやっきになって小さい内から「慣れさせる」必要はないのです。
子育ての中で「先取り」は実はほとんど意味のないことです。子供に「先取り」させることで一番満たされるのは、大人の側の安心感です。
大人の方のハードルが高くなっていると、そうした今頑張らなくてもいいものまで頑張らなければならないように感じてしまいます。すると、子育ての大変さはいろんなところでどんどん大きくなってしまうわけですね。
・果物を先に食べたがるのだって、その後に他のものも食べるのならばさほどそこにこだわらなくてもいいわけですね。それをしたところで、大人になったときフランス料理屋さんにいったらデザートから先に持ってこいとごねる人になるわけではありませんよね。
だから、トータル的に大きな目的(ここでは食事を食べること)が達成されるのであれば、部分にこだわらなくてもいいのです。
ここで注意点。
子供はひとりひとり違いますね。当たり前のことですが、しばしば見失われる事実です。
僕がここで述べているのは、子育ての一般論です。子育てしている皆さんが我が子に置き換えて考えるとき、それは個別論です。
一般論が、いつでも必ず個別論にあてはまるわけではありませんね。
なので、さまざまなケースが起こり得ます。
「果物を先にあげたら、他のものを全然食べなくなってしまった」
我が子でそういう事態になったのならば、「ああ、うちの子は果物を先に食べたら食事が入らなくなってしまうのね」とそのまま理解すればいいわけです。
なので、「うちの子の場合はこの一般論あてはまらないのね」と考えて、そのやり方を変えてもいいわけです。
やってみてうまくいかない。変えてみる。やってみて失敗。また変えてみる。
子育てはこれでいいんです。
絶対に正解の子育てを最初から一度の間違いもなくやり続けなければならないようなものではありません。そもそもそんな方法はどこにもありません。子供はみんなひとりひとりが違うのですから。
できるなら、子育てのハードルは下げてしまいましょう。
子供に身につけさせねばならないと考えるたいていのことは、大人に信頼感を持っていて、子供自身が安定し安心感を持った生活を続けることで、経験や成長を通して自然と習得されていきます。
大人が子供への干渉を強めて、「できるようにさせなければならい」わけではないのです。
このあたりのことを詳しくまとめた有料記事。
【ちょっと待った!「ちゃんと、きちんと、しっかり」子育て】