2018-07

なぜ自主性・主体性の保育が実現できないの?  vol.2 - 2017.11.07 Tue

僕の記事と写真の掲載されている『VERY 12月号』ですが、4日と聞いておりましたが地域によっては本日発売のようです。
僕も本屋さんで購入してきました。
まさか僕がファッション誌に載ることになるなどとは思ってもみなかったので、人生とはおもしろいものだなあとつくづく感じます。


さて、この時期は講演等で忙しく、少し日が空いてしまいましたが前のつづきからです。

「自主性・主体性」を踏まえた保育がなかなか達成されない理由について。






「自主性・主体性」のアプローチと、「管理・支配」のアプローチのふたつが並行して子供に行われた場合。子供の姿に影響を(必ずしも良い影響に限らない)より多く与えるのはどちらでしょうか?

この答えは明確です。
短期的・表面的には、圧倒的に「管理・支配」のアプローチの方です。

「自主性・主体性」のアプローチはコツコツとしか積み上げられないのに対して、「管理・支配」のアプローチは子供に強い影響を与えてしまいます。


例えば、こんなケースが考えられます。

お父さんが管理・支配的な関わりをして、お母さんが自主性・主体性を重んじた関わりなり、受容・信頼関係に寄った関わりをした場合。(仮定の話なので、お父さんとお母さんが逆でもいいです)


子供は、表面的にはお父さんの前で「いい子」になります。
ですが、それは本当に子供に獲得された姿ではなく、管理・支配により無理矢理引き出された姿であったり、支配的なアプローチの結果、その父親の顔色をうかがって見た目だけ望む姿になっているだけなので、子供が成長してそのようになったわけではありません。
しかし、おそらく父親からすると自分が子供を思い通りにしようとしたアプローチの結果その通りになっているので、父親の満足度は高く、同時に「自分のしていることは正しい」という風に受け取れます。

一方で、子供がその父親からの管理的・支配的な関わりをされる心理的負荷は増大していきます。しかし、それをその子が父親に出すことはあまりありません。なぜならそれを出すとさらに自分が父親に否定されることを学習してしまっているからです。

そこで、必然的にそれを母親に出すことになります。



出し方はいろいろです。

甘えやわがまま、着替えたくないなどのぐずりとして出すこともあれば、ダダやモノを買ってという要求などで出すこともあります。

また、管理・支配されている気持ちの反動で、普段父親が「するな」と言っているようなことを出すようになります。
これは衝動としてでるので、完全に止められるものでもなく父親の前でもでてしまうでしょう。そうなると父親はさらに「管理・支配」のアプローチで止めにかかることになります。
それもだんだん強くしていかなければならなくなるのは確実です。

それは過干渉となり、結果的に否定の関わりの蓄積となってしまいます。


母親は注意などしたとしても、もともと「管理・支配」のアプローチで関わっていないことを子供も知っていますので、普段父親からの強い押さえつけやしつこい過干渉になれてしまっている子供は、母親の言うことを聞かないという状態になります。


その光景は、まずたいてい父親からすると「お母さんは甘いからだ」という風に見えることになります。

この問題の本質は、子供がそういった不適応な姿がたくさんでるようになった元々の根っこに父親が積み重ねて来た「管理・支配」のアプローチ、そしてそれの生み出した過干渉と否定の積み重ねがあるところにあります。

「管理・支配」のアプローチはこのような「マッチポンプ」の構造を持ってしまいます。

「子供がいうことを聞かないから管理・支配をする。それによりさらに聞かなくなるので、さらに強い管理・支配をする」

と、まるでアルコール中毒の人が、それによる頭痛や手の震えなどの症状を抑えるためにさらにアルコールを飲むというのにも似た悪循環になってしまいます。



いまは父・母と仮定して説明しましたが、これが保育園や幼稚園、学校などで行われています。そこでは「自主性・主体性」を中心にした子供への関わりが実を結べません。


もし、保育園のクラス担任がふたりいて、それがこの父・母と同じスタンスだとしたら「管理・支配」のアプローチの負の影響が強くて、なかなか「自主性・主体性」のアプローチが結果を出すことができません。

もし、1歳、2歳クラスなどで、4人の担任がいてその内の3人が「管理・支配」的、1人が「自主性・主体性」の保育をしたとしたら、そのひとりに子供たちが受けている負荷のしわ寄せが行くことになります。

その人は実際は他の担任の尻ぬぐいをしているのに、その当の人たちからは「あなたは甘いから子供がいうことを聞かないのだ」「そんなんだから子供になめられるのだ」と責められることになります。

もちろん、その負荷のしわよせは家庭で親にも向けられることになるでしょう。


その割合が2人対2人でもなかなか「自主性・主体性」の保育が効果を発揮しずらいです。
どうしても、「管理・支配」的な関わりの方が強く子供に大きな影響を与えてしまいます。


「管理・支配」的な人が1人で、「自主性・主体性」を理解し尊重できる人が3人ならばだいぶいいですが、それでも難しいケースが少なくないのが現実です。

現実的には「管理・支配」を好む人は、周囲の大人にも不寛容であったり攻撃的であったりすることもあり、「自主性・主体性」を理解している人が萎縮させられてしまうことも少なくありません。


こういったケースがまるで判で押したように、同じ構造でいろんな施設で散見されます。

「管理・支配」の保育を好む人というのは、その人が保育理念や保育理論として確立してそのようなことをするようになったわけではなく、おそらくはその人自身が「管理・支配」の関わりを受けて育ってきて、そこから受けた影響が他者へも同じことを求めるという心理的な構造があるように見えます。
ですので、この辺を掘り下げていくと、パターン化できるほど似通った特徴が見えてきます。ここでは話がそれるので戻します。


さて、そのように「自主性・主体性」の保育を展開しようと思ったら、そのクラス・施設全体でのコンセンサス・共通認識が必要になってきます。

全員で一斉に取り組むことで、「自主性・主体性」の保育が明確な結果を出してくるようになります。
なので、園内研修などを通して全員で一斉に学ぶと安定した保育を展開しやすいです。


全体で取り組むことで、多少「管理・支配」的な関わりをする人がいても、その負の影響を小さくすることもできます。




もし、0歳児クラスで「管理・支配」的な保育をしていたら、その子たちが新年度に1歳児クラスになってもその影響が強く残っていて、「自主性・主体性」の保育に切り替えることは容易ではありません。
もちろん、不可能なわけではないですが、大変な手間と保育者の力量が必要になってきます。


しかし、現実的にはそういった力量や保育がわかっている職員は多くなく、その大変さをとりあえず押さえていくことに保育が終始してしまい、問題は翌年へと持ち越されてしまいます。

その次の年にはさらに子供たちの、年齢の上昇、身体の成長や体力の上昇などの影響もあり、その「大変さ」はより高まっています。
それを管理的・支配的に押さえつけることになれば、さらにその次は・・・・・・。

という悪循環の構造になります。



いま、こういった状況にある保育施設が少なくないです。
そのように問題が後へ後へと先送りになるので、

「幼児クラスは大変」が口癖になっている園や、
口には出さないけど、「幼児クラス担任したくない」「年長は持ちたくない」などと思うようになってしまう保育士も多いです。

こうなってしまうと職員が、園全体が疲弊していきます。
若い職員も保育が楽しくなくなり学ぶ意欲がなくなったり、年配のベテランすらモチベーションが保てなくなって退職してしまうといったことが起きます。

このようにならないために、園全体で「自主性・主体性」の保育を学んで、子供も職員も保護者も無理のない安定した保育を展開していく必要があるわけです。

このあたりのことは、また少し別の視点で今後の『保育士バンク!』のコラムで書いていこうと思います。

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● COMMENT ●

尊重が大事

夫が子供に支配的、園でも先生が子供に支配的で結局私の声が届かなくて保育士お父ちゃんがあおっていらしたこと、体験しました。
このような方々は支配、威圧をしないと生きられないかわいそうな人だなぁと思います。
自分より弱いと思っている者にしかできなくて自分がやられた相手には支配、威圧なんてできないから。自分自身がいたぶられたことなど真っ向からみることなどできないあわれな人。いたぶる側の人間が弱者なのだと私は思うようになりました。
尊重ができる人が私のまわりには少いのでまずは自分で自分を沢山尊重しようと思います。
保育士お父ちゃんさんのブログを読んで勇気づけられ励まされております!
ありがとうございます!



どうにかしない

very12月号、ようやく読めました。
限られた文章の中でも子育ての奥義がぎゅっと詰まっていて、その理論的な文章と笑顔のお写真のギャップが素敵でした!

我が家の主人は、5歳の長男と3歳の長女には毎日ダメ出しばかりで、1歳の次男にべったりです。自分の方が少しでも、どうにかしない関わりをしたいと思っていますが、ついついイラっとぶちまけてしまい反省の日々です…。

どんな姿も受け止めて信じてあげられる母親になれるように頑張ります!いや、頑張っちゃだめですね。もっと緩めます!
東原さんのように、おおらかで素敵なお母さんになりたいです。

Re: どうにかしない

うん、そう「頑張らない」ってところがポイントだね。

その方向で考えてみると、

>どんな姿も受け止めて信じてあげられる母親

もうすでに、この部分が頑張ることを前提にしてしまっているので、そう思ってしまうと結局「頑張る」「自己犠牲」になってしまいます。

ここはむしろ、「子供に尽くすことが子供の尊重」という考えから、「子供も大人も人として対等」という本来の意味での尊重を考えて、

→「私がつらいこと、イヤなこと、困ることは困ると言える関係」を少し考えてみるといいかと思います。

どうにかしようとしてました

あぁ〜、また無意識に頑張ってしてあげようとしていました…

して欲しくないことを伝えても伝わらない時など、強い口調になってしまうことが多く、時には叩いてしまい、蹴ったり噛み付いたりしてくる息子と取っ組み合いの喧嘩になってしまうのですが、夜中になると、隣で「ママだって全然僕の話聞いてくれないじゃんー!」と寝言でキーキー怒っている息子を見るたび、今日してしまったマイナスの関わりでまたストレスを与えてしまった…と落ち込みます。

ブレブレなうえに、どっちにしろ子供を対等な存在に見れていないですよね。どうにかしようとしているのには変わりないですもん。


積極的な関わりもできていないし、リラックスした肯定の雰囲気もなかなかうまく出せていないし、子育ての基礎が私には難しいです…涙

が、それも自分だと受け止めて、とりあえず、頑張ってどうにかしようとだけは思わないように、、、がんばります!


おとーちゃんさん、お忙しい中コメントをいただきありがとうございました!


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