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2024-04

食卓とコミュニケーション - 2017.12.28 Thu

あるお店でのことです。

家族連れ、祖父母、父母、3歳くらいの男の子の5人で食事に来ているお客さんがおりました。



僕の目の前の席だったので、見るともなしに視界にはいっていたのだけど、お店の人に注文を終えたとたん、祖母と父、母の3人はおもむろにスマホを出して黙々とそれを見たり、操作していました。
祖父は腕組みをして黙って座っており、子供は持参していたロボットの玩具でひとりで上手に遊んでいました。
その間、10分はあったでしょう。
それから、その子はひとりで静かに上手に遊べていたにもかかわらず、母親の方からスマホで動画を見せ始めました。
その子はその後、食事で中断した以外はずっと動画を見ていました。

こういった家族の様子というのは、現代ではもはや少しも珍しいものではなくなっているのかもしれません。

しかし、僕は子育ての観点からあやうさを感じずにはいられません。




最近、企業の採用などにおいても「コミュニケーション能力」を重視するといったところが多くなっているそうです。

すでにできあがった大人は、そういった場でスマホを見ていたからといってなにが変わるというものでもないかもしれませんが、直接的な関わりでなくともそれを人的環境として学んでいる子供にとっては話は変わってきます。


家族が集っているにもかかわらず、そこに積極的で楽しさをともなったコミュニケーションの場がつくられていないというのは、子供の人格形成に影響があるでしょう。

これがたまたまそのときだけというのであれば、さほどのことでもないかもしれませんが、「わざわざおじいちゃんの家に娘夫婦が訪ねてきた」といったある種のイベントとも言える状況ですらそうであるのならば、普段の家庭においてはさらに慢性的にそういったことがあると普通は考えられます。

それが子供の生育歴分積み重ねられたとしたら、そこから何らかの影響がでないと考える方が難しくなります。

ただ、人には個性があるのでそういう状況であっても人と関わるのが大好きな子が育つ可能性ももちろんあります。
しかし、そうならない方に可能性を高めているのはおそらく事実です。




いま思春期や20代といった若い人たちが、「自分はコミュ障だ」と自虐的に語ります。
「コミュ障」とは「コミュニケーション障がい」を略したものです。
別にそういった診断を医者から受けているというのではなく、自己評価としてのそれです。



いま、子供が小さいうちはここにある潜在的な問題の結果は見えてきません。
でも、すこし想像力を働かせてみましょう。

この状況、「家族が集う場であってもそれぞれが個別的な活動をしている」というのを、子供が思春期になるまで幼少期から続けたとしましょう。


思春期になり、自我や独立心が強くなっているといった状況で、この場にその子は居続けてくれるでしょうか?

「いるわけがない」というのが、多くのケースにとっての正解でしょう。

食事が終わったら、家族と言葉を交わすこともなく自分の部屋にそそくさと帰る。
そもそも、家族と同じ時間に食事をしない。
そもそも同じ場で食事を取らない。
そもそも、家になかなか帰ってこない。
そもそも、自分の部屋から出てこない。

また、その子は、友達関係や社会的人間関係におっくうさや臆病さを抱えずに育つことができるでしょうか。

そういった状況になるリスクが、この子供の幼少期から親が進んで高めているといっても過言ではないと僕は感じるのです。



しかし、僕は別に親を責めているわけではありません。

いまの親の世代が子供だった頃、すでに「個食」ということが問題視されはじめていました。

家族での団らんをすることもなく、スマホに集中してしまうという現在の状況は、すでにいまの親世代が子供のときに負わされた子育ての結果なのかもしれません。


とはいっても、それを繰り返すも、それを反面教師にするのも大人であるところの親しだいです。



実はここには、もうひとつ関連しているのだけど、違う次元の問題が隠れています。
つづく。


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● COMMENT ●

ものすごく共感します。
昨日も息子と支援センターに行ったのですが、子供の横でずーっとスマホをいじっているお母さんがいました。そのほかにも、赤ちゃんを抱っこしながらや、ベビーカーを押しながらの歩きスマホもたまに見かけます。
ベビーカーの中でスマホをいじっている小さな子もよく見かけます。
大きなお世話かもしれませんが、心配です。
うちの息子はよく言葉が早いと驚かれますが、赤ちゃんの時からたくさんおしゃべりをしてきました。同じ言葉でも方言や昔の言い方にしてみたり、日本語の多様性を教えているつもりです。
が、その話をするとみんなに不思議な顔をされて、「それよりこれからは英語の時代だよ。」といわれます。
そういう時代なんですかね。なんだか自分が時代遅れなのかなあと、自信を無くしそうです。

まさに!

まさに!
我が家の主人の事です!
家族と同じ空間にいるけれど、同じ空気を吸ってるだけと言うか。
本人は家族の時間を大切に!という考えで、休みの日は家族と過ごしたい様ですが、本当にただ一緒に居るだけ。(と、感じています)

隙間時間が少しでもあれば、家でも出先でも、長男と2人で公園に行っても…所構わずすぐにスマホゲームをしていて、その時間や気持ちを共有はしていないんですよね。
ゲームをやるなとも、ゲームが好きな事も否定はしませんが、その付き合い方にはずっと不満がありました。

子どもは4歳と0歳の男の子ですが、長男はすでにゲームに興味を示していて、時々画面を覗き込んだりしていて、長男がまだ赤ちゃんだった頃からおとーちゃんのブログを参考におもちゃや遊び、関わりを持ってきたのに…と、悩みのタネでした。

私の説明不足で、夫にはなかなかその不満の意味が正確に伝わらずにいたのですが、適切な言葉にしてくださって感謝です!!
主人にもこの記事、読んでもらいます。
ありがとうございました!!

まさに……

私自身のことを言われているようでした。
私は現在一児の母ですが、自分が子供の頃の家庭は、「食事中にまったく会話の無い家庭」でした。

父親は極度に無口でほとんど喋らない。
母親も無口な方&放任主義で、子供たちに「今日は学校で何があった?」など一度も尋ねたことがない。
食事中の会話といえば、テレビを見ながらそれについての感想をぽつぽつ述べ合うだけ。

こんな家庭で育ったために、中高生になる頃には、私はまさに「食事が終わったらそそくさと自室に戻る」子供になりました。

その後、そんな家庭に嫌気がさして半ば無理矢理に一人暮らしをし、多くの友人と触れ合ったことで「会話」の楽しさを知りましたが。
幸か不幸か、私のように反抗的ではなかった従順な弟妹は、今も会話が苦手です。
もういい年齢の大人なのに、一度も異性との交際経験がなく、友人もほぼいません。
どうしてあんな家庭に生まれてしまったんだろう。そう真剣に思い悩んだこともあります。
本当に、つらく、窮屈な日々でした。

なので、今の自分の家庭では可能な限り「家族の会話」をするように心がけています。
幸い、夫や義母がめちゃくちゃおしゃべり(笑)な人なので、それがいい影響をもたらしていることもあるかもしれません。

私のように悲しい子供を作り出さないためにも、これからもたくさん子供と会話をしていこうと思います。

ご飯屋さんでスマフォ…わかります。そのお母さんの気持ちがよくわかるんです。
私ももしも泣いたりしたときは頼ろうって決めてます。毎食もこどもと私の二人きり。
テレビみたいけど我慢、スマフォみたいけど我慢していたころは毎日苦しくてたまりませんでした。最近はスマフォテレビもOKと自分のハードル下げたら気持ちが楽になって会話が弾むようになって結果あんまり見せなくても平気だったり。
テレビを見たがるこどもにお母さんはあんま見てほしくないって思ってんだよねー…1話だけみたらほかの事して遊ばない?とか本音で話せるようになってきました。絶対スマフォダメって書いてあるわけではない記事だと思うんですがスマフォテレビ見せたくないって自分自身に縛りかけてしまっていたのでもし読んで責められているように思う方は一個前のページの大事なのは健康と笑顔の記事を読み返して見てください。


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楽しく無理のない子育てを広めたいと2009年ブログ開設。多くの方の応援があって著作の出版や講演活動をするようになりました。 現在は、子育て講演や保育士セミナーの他、『たまひよ』や『AERA with Baby 』等の子育て雑誌の監修やコラム執筆。『ジョブデポ保育士』の監修や育児相談などをいたしております。

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