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2023-05

おとーちゃんはメロン味 vol.2 - 2018.01.22 Mon

昨日のつづき。

◆子供がなめてきた行為の裏にあるもの





おそらくこの子には、0~2歳の乳児期に、大人に甘えたり、受け止めたりしてもらった経験が完全に十分でなかった可能性があります。

それが情緒的な不安定さとなって、日常のさまざまな場面の行動に表れている姿が見て取れます。
(情緒のアップダウンの激しさ、精神的な幼さ、自己主張の強さとその対極的な自信のなさの混在、大人や子供への対人関係の姿、すねる、いじける、拒否・否定に敏感、スキンシップを強く求める姿など)

この子の心が根底で求めているのは、0~1歳頃に起こるような、母親と自分が不可分のような状態の経験です。
この時期は、些細なことであっても、嫌なこと、うれしいことのひとつひとつに共感してもらったり、守ってもらう、助けてもらう経験をしています。

(例えば、ガラガラを手から落としてしまっただけでも、泣いて助けを呼び、そこに大人があたたかな表情で「どうしたの~?あらあら落としちゃったのね、はい、とってあげますよ~」と笑顔で応えてくれるような経験)


この子は、なにかの事情があってそこがひっかかったまま、この年齢まで成長してきた可能性があります。

それゆえに、年少(3~4歳)になっても、そういった信頼する大人と一体になりたいと思うような赤ちゃん的願望を持っています。
その表れが、「なめる」という行為です。
(他の同様のケースではそれと同じ理由で、噛みついてくる子、非常に立ち入ったことを聞いてくる子、一見性的ともとれる行動を取る子などもいます)



子供がなめてきたとき、普通の大人はどういった対応をとるでしょうか?

まあ、もちろんその人によりますが、多くの人は拒否的な反応をします。

・不快感からの拒否
・衛生上の配慮からの拒否
・突飛な行動に驚いたゆえの拒否


不快感からの拒否は、とても冷たい反応になります。
子供の親にも、保育士にもそのような対応を取ってしまう人はおります。
これをされると、子供は自分の願望・欲求が受け止めてもらえなかったことだけでなく、強く否定・拒否されたことを感じ取ります。

その子の根っこにあった、信頼する大人と不可分の状態になりたいという強い欲求は満たされないどころか、より断絶を感じさせることになってしまいます。

それではこの子は、自己肯定感や自尊感情を上手く育めないまま年齢を重ねることになりかねません。



その子が僕をなめてきたのは、その願望の表れでもあり、同時に僕を試している行為でもあります。

「この人は自分のことを受け止めてくれそうだけど、それは本心からなのだろうか?どこまで受け止めてくれるのだろう?」


もし、ここで柔らかくであろうとも拒否的な対応を示してしまうと、この子に大人全般へのあきらめを覚えさせてしまいまう可能性があります。
逆に、それを受け止めてもらえれば、人間全般への信頼感を形成することにつながります。

だから、そのなめるという行為を、最大限こころよく受け止めてあげることが保育士として取り得る対応なのです。



お「あっははは。なめたの~?ねえ、なに味だった~?」
子「う~ん、メロン味~!」
お「うわ~そうなんだ~。それはおいしくっていいね~」
子「うんっ!」(大きな笑顔)


もし、この場面を誰かが見ていたとしても、

「大胆な対応をする人だな」
「男性保育士だからやっぱり豪快ね」
「ずいぶん明るい人だな」
「手は雑菌だらけなのによくあんなことさせるわね。無神経ね」

などと思うかもしれません。
一見、ここに保育上の配慮があることは見えないのです。


実際の僕は、大胆でも、豪快でも、明るくもありません。だいたいはその逆です。
衛生観念にいたっては、神経質といっていいくらいかもしれません。

しかし、その子が手をなめるのをおおらかに受け止めるのは、その子の成長にとって最大限必要なものがそこにあるからです。


これは専門的な配慮・意図のある保育です。

そのように、子供のあり方を踏まえて対応を模索して保育をしていくと、子供の主体的な成長を見ることができます。

それを見るとき、保育という仕事は本当に素晴らしいものだと感じます。



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● COMMENT ●

何気なく読んだ記事でしたが、はっとしました。

一過性のブームかもしれませんが、最近急に私や主人、祖父母をなめてくる時期が長女にありました。

次女が産まれて一年動くようになったので、ますます目が離せず常に気が張ってるからなのか長女のこの行動にイライラしてしまいました。

気付いたらしなくなったのですが、最近は小さな嘘をつくようになりました。

これもうまく受け止めてあげればいいんですかね?

この頃きちんと受け止めてあげれば…
と、考えてしまいました。

3歳の息子がたまーに足をなめるというかちゅっと唇を押し付けるようなことをします。
びっくりして『やめて』と感情的に言ってしまうか無視してみたり。こんな意味合いがあったんですね。勉強になりました。今度したら何味か聞いてみます。

受けとめることができるようになりたい

約2年ぶりにコメントを書きます。
いつもおとーちゃんさんのブログを参考に子育てしてきました。
保育園で頑張っている3歳の娘に、自宅では甘えさせたり、ぎゅーっとしたり、「大好きよ」「かわいいね」と言葉に出して伝えたりしてきました。
おかげさまで、それほど子育てに悩むことはありませんでした。

ところが、3ヶ月前に弟がうまれて以降、(育休中で保育園は退園してる)娘の行動に対して私がイライラすることが多く、一日中怒ってばかり、しかも怒鳴ることも多くなりました。

今回の記事を読んで、思い出したことがあります。スーパーで買い物していたところ、娘が私の後ろを張り付かんばかりに歩いていました。「歩きにくいからやめてよ」と怒ってしまったのですが、それでも私にぶつかるように歩くのです。
その時は何度も怒ってしまいましたが、今考えれば、甘えたかったんだろうな…と思いました。

自分は保育士ではないし、ましてやおとーちゃんさんのような育児の専門家ではないけれど、せめて今度は「歩きにくいから、おててつなごう」ぐらい言えるようになりたいです。


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楽しく無理のない子育てを広めたいと2009年ブログ開設。多くの方の応援があって著作の出版や講演活動をするようになりました。 現在は、子育て講演や保育士セミナーの他、『たまひよ』や『AERA with Baby 』等の子育て雑誌の監修やコラム執筆。『ジョブデポ保育士』の監修や育児相談などをいたしております。

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