子育てと怒り vol.3 ~怒りのプールとのつきあい方~ - 2018.02.01 Thu
その最たるものと言っていいのが、「体罰」です。
暴力を振るわれることほど、自分の無力さや心細さを感じさせ自尊心を損なう行為はありません。
(*心細さ:とくに親からの体罰は、本来自分を守ってくれる存在と信じている人からの攻撃であり、自分が家庭や人生の中で孤立した存在であるという「心細さ」を感じさせることになる。その結果、生きていく上での自己肯定感や自尊感情、意欲を大きく損なう)
それをされたことによる負荷は非常に大きく、消化していくのは容易ではありません。
子供は親を常に「肯定しよう」と思っているので、暴力を振るわれたからといって簡単に反発はしません。その負荷を親に向けることはなかなかできないのです。
すると結果的に、2つの方向にいきます。
ひとつは、自分より弱い他者へ暴力や意地悪などの、攻撃的な感情を開放することでバランスをとろうとするもの。(通り魔的事件の背景にこれがあることは多いです)
もうひとつは、自分が悪いのだと自己否定、自責をすることでその状況を耐えていくものです。これは「萎縮」の状態へとつながります。
どちらにしても、怒りのプールは溜まっていきます。
子供時代、自分が体罰を受けてそのときはそれをされるのが大変嫌だと思っていても、大きくなってから体罰を肯定するようになる人は少なくありません。
不思議なことに、体罰を受けると体罰を肯定する心理が作り出されるのです。
これは、その人自身の抱える怒りのプールが、はけ口を必要としているためにそのようになるのでしょう。
ゆえにその人たちは、理屈ではなく感情レベルで体罰に固執します。
ですから、体罰は大きな怒りの再生産につながり、容易になくなりません。
はっきり言って、こういった人たちは教員や保育士になるべきではないです。
もし、どうしてもなりたい、もしくはすでになっているというのであれば、専門的なカウンセリングを受けるなどして自身の感情のケアをしていく必要があるでしょう。
でなければ、本人も周りの人も不幸になってしまいます。
しかし大変残念なことに、この怒りのプールのはけ口を模索した結果、そういった子供に関わる仕事に就こうとする人がいるのも事実だと僕は感じます。
ゆえにこういった施設においては、その大人の立場を利用して、意地悪やハラスメント、体罰などを防ぐシステムが絶対に必要です。
さて、ではこの怒りのプールを乗り越える方法について考えていきましょう。
まず、僕自身はこの大きな怒りのプールを持っていた人間ですが、本当に幸運にもそれを経験と学びから乗り越えることができました。だからこそ、それの辛さや乗り越えることの難しさを知っています。
しかし、これらは個々に違うことです。
これからその乗り越え方について述べていきますが、あくまで大まかなところです。
個々の人によって、それがうまくいくケースもあれば、かえって難しいということもあるかもしれません。それをすることによって苦しめてしまう場合もあるかもしれません。なので、これから述べることが「絶対に正しい」と思って読まないで下さい。「なるほど、そういう風なとらえ方があるのか、まあ思い出したときにできそうだったら少し意識してみるか」くらいでいいと思います。合わないと思ったら、スルーしましょう。
とくに、この問題が根深い人ほどそれは容易ではありません。
正直そういった方は自分だけで悩んでひとりで解決しようとすることを避け、信頼できる人と一緒に考えたり、この方面に専門性をもったカウンセラーなどにかかることをおすすめします。
◆自分を責めない
この怒りのプールを抱えた人は、自己肯定感の低さや対人関係の苦手さを獲得させられてしまうことが多いです。
それゆえに、さまざまなものを自分への否定として振り向けていってしまうので、それがさらに怒りのプールのはけ口を我が子に向けてしまい、悪循環を起こします。
・「私には愛情がない」
・「自分はいつも怒ってばかりでダメな親だ」
・「子供がこんなに荒れているのは、私がかわいがれないからだ」
・「他のお子さんはあんなにニコニコ過ごしているのに、私はそれをさせることができない」
このように、現状のうまくいっていなさを自分のせいにする方向で考えるので、これでは子育てに向き合うこと自体がとてもつらくなり、余裕やあたたかさがマイナスの方にいき、かえって解決するものも解決しなくなってしまいます。
もし、自分のこれまでを振り返ってみて、自分の親からの関わりや、学校や職場でのいじめやハラスメントなどがあって、怒りのプールを抱えてしまっているなと思われる方は、自分が子供に怒りをぶつけたり、意地悪をしたくなってしまったりといったいまのつらい現状は「自分のせいではなく他者によって持たされたものだ」と思ってしまいましょう。
もちろん、そう言われたからといって、完全にそう思える人はいないでしょう。
でも、少しでもいいからそれを頭の片隅にでも置いておきましょう。
いまの状況は、あなたが悪いわけではないのです。
それはたしかです。
本当に、悪意に染まっている人だったら、そもそも自分のことを振り返って「私はダメな親だ」などとは考えもしないものです。
ですから、悩んでいるというその事実が、あなたがダメな親ではない。現状があなたの責任ではないということを証明しています。
つづく。
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驚きました
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まさか、おとーちゃんが怒りのプールを抱えてきた人だったとは… 驚きました。
だから私の言葉に出来ないモヤモヤをいつもクリアに表現されるんですね。
私はおとーちゃんと同い年で、小2の息子がいます。今は専業主婦で、子育てを楽しむ余裕が出てきました。ただ、最近自分が息子と同じ年の頃のことを思い出すことが止まらなくなり、苦しいです。
どうして私は可愛がってもらえなかったのだろう。どうしてあんなに嫌なことばかりの家庭だったのだろう。経済的に豊かで世間体は良い家でした。
両親から投げつけられた言葉がどんどん思い出され止まらないのです。
今は優しい夫と子どもに愛されて幸せです。もっとしっかりした母親でありたいので、なんとか過去を乗り越えたい。
これからのコラム楽しみにしています!