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2023-03

子育てと怒り vol.4  ~誰かに受け止めてもらう~ - 2018.02.06 Tue

(一連の記事のカテゴリーを「日本の子育て文化」から、「子育てに苦しむ人へ」に変更しました)

これまでの日本の子育ての最大のネックは、「否定的関わり」の積み重ねによって子供の正しい姿を作り出そうとしてきたことです。


「否定的関わり」とは、
ダメだし、注意、叱る、怒る、脅す、自尊心を傷つける、支配する、コントロールする、疎外、他者と比べる、体罰など





これらが世代間で再生産されます。

それをされた子は、やがて親になったときに我が子にもそうせずにはいられなくなります。
(例えば、体罰を受けた子供が大人になって子供に体罰を振るう確率は60%を超えます)


また同時に、その個人の内的にも再生産されます。
自身を、自分はダメなのではないか、自分が悪いのだ、努力や我慢が足りないのではないか・・・・・・、そういった自分で自分に否定を積み重ねる、精神的な否定の再生産をする性格を持たされてしまいます。

それらは、必然的に自己肯定感の低さ、対人関係の苦手さを獲得させてしまいます。


この自己肯定感の低さ、もっといくと自己否定感ですが、それがあると、それゆえに自己防衛が強くなることがあります。それの程度が上がっていくと、少しでも自分が否定されたと感じたときに、一生懸命自己弁護したり、他者に攻撃的な行動に出る場合があります。
また、自身が否定されることが怖いので、先回りして自身が否定されないように、他者に支配的だったり、我の強い関わりを出すといったことも起こります。

そういった大人の姿の根っこを見ると、幼少期、またはそれ以降の、強い否定や自尊心を傷つける他者からの関わりが大きな影響を与えています。

だからこそ、こういった負の連鎖を断ち切る関わりが、現代の子育ての中では必要になっています。


映画館でのケースなど、僕はそれをしてしまう人の気持ちが理解できずに言っているわけではありません。ですから、誰も責めているわけではありません。
むしろ、普段の自分が否定されたと感じた人からの、感情的な批判や反発があるだろうなということも飲み込んだ上で述べています。

(ああいったケースでのより適切と言える関わりの一例を示すとすれば、なにも子供の自尊心を傷つけたり過剰に威圧するいい方をする必要もなく、ただありのままの事実「ここで騒ぐと周りの人の迷惑ですよ」、自身の心情「私はそうされたら困りますよ」というのを、ひとりの人間に対するように伝えればよかったのです。しかし、実はそれまでの関わりでもそのような強い支配の関わりを重ねていると、そういった自尊心にまで響くような強い否定を使わなければ子供がいうことを聞かなくなってしまうといった背景がある場合もあります)


子育ての問題は、それをする人の非常に内面的な部分が関わってきます。
なので、いくら誰かに言われたとしてもその人自身が変えよう、変わろうと思わなければ変わるものではありません。

なにがしかのことを得てそれでプラスの方に変える人もいれば、感情的に反発しつつも取り入れていく人もいるでしょうし、まったく受け入れられずに怒りや攻撃、自分が責められたという恨みを残していく人もいることでしょう。
そういった反応の人でも今すぐではなくとも、いずれここでの情報が役に立つときがあるかもしれません。

まあそんな感じで、誰かしらのお役に立てればと思って書いていきます。



前号ではこのあり方を乗り越えるポイントとして、ひとつだけ「自分を責めない」ということをあげました。

これから、他のポイントについても書いていきますが、中には自身の内面と向き合わなければならない点もでてきます。

例えば、次に出てくる「誰かに受け止めてもらう」といったことでも、「そういう人がいないから困っているんでしょ!」などの感情的な反発になってしまうといったこともあるでしょう。
そうなってしまうのが悪いことではないのだけど、あまりにそういった感情の渦に支配されてしまうとここを読む意味がなくなってしまうので、そういう箇所はスルーしてしまうか、感情的に一歩引いたところからまるで他人事でもあるかのように読んでみるといいかもしれません。


繰り返しになりますが、これから述べることにおいて(もちろんそれ以前でも)僕は誰も責めていません。
それでも、読んで怒りや強い反発から負の感情が強くなってしまう人は、これを読まずに専門性がある方へのカウンセリングなりを受けることをおすすめします。
(僕も子育ての相談をお受けしていますが、もちろん僕でなくともかまいません。むしろ、カウンセリングは相互の信頼が大切なのでご自身が合うと思われる方を見つけるのは大事です)

そういった傾向が強い人は、自分ひとりで自分の内面に向き合うのはとてもつらいことです。そこに無理をしないようにしましょう。




◆誰かに受け止めてもらう

子育ての話でなくとも、なんの話でもかまいません。
人と会話すること、特に自分の話を聞いてもらうことは、怒りのプールをやわらげることにつながります。

誰かに自分の話を(否定されず)聞いてもらうと、人は晴れやかな気分になります。
おそらくそこには、自己肯定に類するものがあるのでしょう。

また、子育てはストレスフルなものですが、それは対人関係由来のストレスです。この対人関係由来のストレスを解消するのにもっとも効率がいいのは、人との関わりによって解消される行為です。

ですので、他者との気楽な会話や自分の話を受け止めてもらうことは、子育ての安定につながります。


ときに、これの逆があります。
多いのは配偶者の無理解です。

男性であれば奥さんから、女性であれば旦那さんから、理解してもらう受け止めてもらうどころか、逆に責められるといった経験は非常につらく、この怒りのプールを加速するようなものです。


大事なのは、「ああ、そうなんだ~」の精神です。

子育てのグチや仕事のグチ、なにかの大変さなど、人が言ってくるときその人が求めているのは、たいていの場合、より効率の良いやり方などの助言ではありません。
まずは、自分の心情への理解、同意を求めているのです。

ですから、まずは「ああ、そうなんだ~」と受け止める姿勢で聞くことが大切です。


ただ、往々にしてそれは簡単に思えて難しいものです。
ついつい、なにか自分の意見を差し挟みたくなってしまいます。


もし、パートナーである人が理解のある人でしたら、5分だけ「ウンとソウダネ」タイムをやってみましょう。
「おねがい、5分だけでいいからウンとソウダネしか言わないで私の話を聞いて。私の番が終わったら今度はあなたの話を聞くから」と。


なにかグチをこぼすだけで、「なにいってんだ自分の方がよほど大変な思いをしている!」と言ってくるような人である場合、これは難しいのでそういう人には求めない方がいいでしょう。



子育て広場のようなところが近くにあって、そこで気兼ねなくお話ができる「場」を持っている人はそういうところにいくのもいいでしょう。


しかし、自己肯定感の低さや対人関係の苦手さ持っている人の場合、そういうところに行くのはストレスにしかならないということもあると思います。
そんなときは無理に行く必要はありません。

人は、つらいと思うことをムリしてする必要はないのです。
むしろ、この問題にある人ほど、ムリなことを頑張ろうとしてしまう傾向があります。
「嫌なことを頑張らなくていいんだ」と自分に言ってあげましょう

いまできずとも、この先ムリなくできる日が来るかもしれません。
焦ることはないのです。

つづく。


僕の子育てカウンセリング(対面式、電話orスカイプ)のお申し込みはこちら。
■子育てカウンセリング(保育士おとーちゃんホームページ)


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● COMMENT ●

今回のテーマ……

非常に興味深いです。
かくいう私も、実親から怒りのプールを持たされた人間であり、かつ、現在進行形で自身の子供に時々怒りを爆発させてしまったりしているからです…。

ただ、今回のおとーちゃんさんの記事を読む前に、自分自身でも心理学的な見地などから分析をしてので、「子供に腹が立つ」=「自分が、子供の頃に溜め込んできた怒りが爆発している」ということがなんとなく理解できるようになってきました。

たとえば。
娘が、家の中でものすごい金切り声を出して大泣きしている。それはもう、ギャーギャーと耳障りなほどの泣き声です。そういう時に私はブチッと頭にきて「うるさい!」と怒鳴ってしまうのですが。
その「ブチッ」が起こる時、必ずと言っていいほど実父の顔が浮かびます。父は、騒がしいのが大嫌いな人で、子供が泣いていると(それが風邪をひいたとかやむをえない場合でも)「うるさい!」と凄まじい声で怒鳴りつけていました。
だから現在、娘が大声で泣き叫ぶと、無意識に「いやだ、またお父さんに怒鳴られる!」「どうして泣き止んでくれないの?私はお父さんにこっぴどく怒鳴られたのに!」と思ってしまっているんです。
このメカニズムを知った時、心から娘に申し訳なく思いました。彼女は何も悪くなかったんですよね。

実親が嫌いで嫌いで…今もまだ、怒りのプールから逃げきれない私は、時々ブチッと腹を立ててしまうこともありますが。
こうして自覚できているだけでも、きっと大丈夫…。と、必死で自身を励ましながら過ごしています。

おとーちゃんさんも、幼少期にお辛い思いをされたのでしょうか?
不躾ながら、参考までにお話を伺ってみたいな、なんて思いました。

とても納得しました

自己肯定感の低さにずっと悩んできた者です。虐待を受けたわけでもなく、大学まで行かせてもらい、今でも良好な関係ではありますが一連の記事を読んでハッとしました。
今話題の、あたしおかあさんだから という歌への反応なども、受け止め方の底にはこういった問題が解決されないまま残っているからだと感じます。

はじめてコメントします。

はじめまして。いつも最新の記事を楽しみに、また、子育てに行き詰まると何度も過去記事を読み返しています。このブログに出会えてほんとによかったと思っています。
とはいえ私も自己肯定感が低いほうで、自分を責めては溜め込み、子どもにあたるようなことをして自己嫌悪…の繰り返しで悩んでいたところで今回のテーマとうめさんのコメントを読み、自分もコメントを書かずにはいられませんでした。
私もうめさんと同じです。親に虐待されたこともなく、今の関係も良好。でも、日常的に肯定される機会が少ない子供時代だったのだと思います。今まで「自分は割と幸せな家庭だったのに子どもにイライラする自分」は嫌な性格だと自分を責めていましたが、うめさんのおかげで私も自分のせいじゃないと思っていいんだという気持ちになれました!ありがとうございます。

カウンセリングも、当たりはずれがありますよね。
以前行った事があるのですが6千円も払ったのにはずれだったなぁと思います。
(私にとっては)
こうすればいいのよと結論を言ってくる人で、受け止めてもらった感がなく……。

女の子のお母さんと話していてよく聞くのが「女の子って人間関係が難しそう」という事です。
うちも娘2人なので、いわゆる女の子特有のいじめというものが心配だったりします。
おとーちゃんさんは男なのであまりわからないかもしれないですが、「女ってめんどくせぇな」という部分です。

・裏表がある。陰口、うわさ話が好き。
・男の前で態度を変える。恋人ができると変わる。
・群れたがる。「私達って、親友だよね。」と形ばかりのつながりを求める。
・「敵・味方」に分けたがる。
・「自分は自分・他人は他人」ができない。違う意見を言われると「否定された」と感じてしまう。

などなど、「マウンティング女子」という言葉を聞いた事があるかもしれません。
(ちなみに男でもこういった人はいます笑)

こういう部分が、小学校3年生くらいから見られ始める気がします。
ほとんどの女性が「あ~いるいる!」と思った事があるはずです。
大人にもいます。

なぜこうなってしまうんだろう?
精神科医の水島広子先生の「女子の人間関係」によると、こうした特徴は
いじめや虐待を受けてきた傷ついた人の特徴と似ているという事なのです。
そしてこうした部分は「人として尊重された経験」によって和らぐと。
「選ばれたい」「大切にされたい」という気持ちからくるものだそうです。
つまり今までの人生でそうした経験がなかったという事?

女子特有のもののように思ってしまうのですが、おとーちゃんのブログを
見ていて、これって今まで親から「否定的な関わり」をされてきたからなんじゃ?と思います。
実際こうした嫌な女の部分をふんだんに持つ私も、親から否定的な関わりを受けてきました。

こういう女子の何と多い事よ!
おとーちゃんさんの提唱する「信頼関係を軸とした関わり」をすることによって、女子のこうした部分はなくなってくれるのを願っています。

西原理恵子さんの「女の子が生きていくときに覚えておいてほしいこと」という本が
ベストセラーになっていますが、これからの女は3歩下がってついていくというような生き方ではいけないのです。自立して生きるのに、こうした部分が足かせになっているのですよね。

そして、よく日本人は議論ができないと言われますが、「違った意見を言われると否定されたと感じてしまう」という
日本人の気質にあると言われますが、これも、支配的な関わりによってしっかりと受け止められた経験がない為ではないかと。

おとーちゃんさんの「信頼関係を軸にした子育て」というのはいろんなところに関わってくるのではないかと思いました。


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楽しく無理のない子育てを広めたいと2009年ブログ開設。多くの方の応援があって著作の出版や講演活動をするようになりました。 現在は、子育て講演や保育士セミナーの他、『たまひよ』や『AERA with Baby 』等の子育て雑誌の監修やコラム執筆。『ジョブデポ保育士』の監修や育児相談などをいたしております。

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