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2018-11

「愛情」のもう一つの弊害 ~緊密すぎる関係~ - 2018.02.23 Fri

「愛情」で子育てを語っていると起こってくる弊害があります。

それは、親子間の緊密すぎる関係です。


「愛情」という言葉は、「絆」や「献身」などの緊密さを想起させます。
どうとらえるかはもちろんその人しだいではあるのですが、「愛情」という言葉は抽象的な存在で、「これこれこういうかたちのものです」と誰もが共通に理解できるような性質のものではありませんので、極端な人の場合どこかでバランスがとれなくなることを防ぐ手段がありません。




それゆえに起こってしまうもので顕著なのが、「親による子供の支配・束縛」タイプの愛情です。
これは、厳密には「親から子へ向けられる愛情」ではありません。

その親自身の内面に、なにか自我の欠乏感や傷つけられた自尊心、大きな怒りのプールなどがある場合、子供を支配・束縛することで自身の心の欠乏を満たそうとする行為です。極端なものになると、それは子供への愛情というよりも「自己愛」としての性質が顕著になってきます。

しかし、当人はそれを自覚することはまずありません。
ゆえに、その行為が「子供への愛情である」という認識を持ち続けます。
その結果、そのゆがんだ子供への関わりが継続され続けることとなります。


では、その緊密すぎる関係にはどのようなものがあるでしょうか。

『消えない傷 性的虐待に遭って 第3章/3 罪の意識ない加害親』(毎日新聞)


ちょうど今日の新聞記事ですが、ここの冒頭に描かれるケースがまさにそれにあたります。

この父親は娘が嫌がることをすることで、自身の優位性という満足感を得る状態です。
しかし、それを「子供がかわいいから」「愛しているから」という文脈で、それを他者にも自分にもあざむいてしまっています。

ですが事実として子供はその父親の関わりゆえに、摂食障害を負わされてしまっています。このことは、父親の持つ心のゆがみを子供が代わりに受けているという状態です。これを「愛情」と思えるのは、ひとりその父親のみでしょう。
しかし、このときの父親の持つ心のゆがみが深ければ深いほど、その問題の起点が自分にあることを理解しようとはしなくなります。



こういった性的ハラスメントによる支配欲求を満たす行為は、なにも男親から女の子だけにおこるわけではありません。
男親から男子に向けられることも、女親から女子にも男子にも向けられることも少なからずあります。


例えばこんなことがあります。

親が周囲の人間に、子供の性的プライバシーに関わることを吹聴する行為などは、ほとんど悪意なく行われているようです。

子供に初潮や精通が来たこと、陰毛が生えたことなどを、母親が親戚や近所の人に言いふらすといった行為をされた話は多くの人が経験として持っているようです。

なんだか日本の子育てにおいて、こういった類いのことはあまりに多すぎて、それが性的ハラスメントであることに気づかないほど感覚が麻痺してしまっている気もしますが、これもれっきとしたセクハラです。

ここにあるのが、緊密すぎる親子関係です。
子供のプライバシーを親が自由にしていいものだと、その緊密すぎる親子関係イメージが肯定してしまっています。

やみくもに言われる「子育てには愛情が大切よね」という言葉が、こういった緊密すぎる親子関係を形成しているのです。


他にも、思春期以降くらいの子供への支配束縛としての関わりには、

・子供の日記を読む
・子供の生活時間、趣味、服装などに過剰な干渉をする
・子供の自立、独立をはばむ
・自立、独立した後も過剰な干渉をする
・金銭やモノを与えることで支配束縛する 
・友達、恋人関係への干渉  など


親が自分の自尊心を満たすために子供を利用する人や、共依存の関係に持っていったりする人には、子供が自立、独立に向けた行動を取ると、「お前には愛情がないのか」「親不孝もの」「恩知らず」といった、愛情論にのっとった批難を使うことがしばしばみられます。


これらは結婚をめぐってのさまざまな問題にも発展しています。
例えば、新婚旅行に新郎の親が無断でついてきた。親が息子夫婦の家に勝手に他者を招待する。息子の配偶者に過剰な要求をするなど、これらも緊密すぎる親子関係が、適切な対人関係の範囲を超えさせたケースと言えるでしょう。



このような支配、束縛的な愛情の親子関係は、必ずしも昔から多くあるものではなく、むしろ都市化、核家族化が進み、親に地域や自己の周りの人との関係が乏しくなったこと。夫婦が持つ子供の人数も少なくなった結果、他者との関係性の喪失を恐れている親の人としてのあり方の問題が、背景に関わっているのではないかと僕には思われます。

しかし、問題はそう単純なものではなく、それがすでにいまの祖父母世代よりも上の年代から連鎖的に起こっているので、現在では容易に解決しない側面があります。


これは愛情という言葉によって、親と子供を、また女性のあり方を釘付けにしたことにより子供への母親の依存性を高めすぎた、この数十年の子育てのあり方の大きな弊害であると言えるでしょう。

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深いな~

いつも、おと~ちゃんのブログを楽しみにしています。改めて、深いですね。私たちが、違和感を感じているけれど、でも、わからず、そのままにしたり、流してしまうことを、いつも紐解いてくれ。
今日の記事も、そう思いました。
おと~ちゃんの活躍を応援しています!

いつも更新楽しみにしています。
私も小6のときに初潮が来たときに母から生理用品を渡されただけでそれ程関心無いのかなと思っていたら、祖父(母の実父)に電話を掛けて初潮が来たことを報告していて、驚くと共に凄く嫌な気分になったのを思い出しました。

性的暴力だったんだ

小学生のとき、就寝時に実の兄から下半身を触られたことがあります。
当時、悩み抜いた末、母に告白しました。両親は私を責めることはなく、兄が絶対に私の布団に入れないようにすぐに対策をしてくれました。
約20年前のことですが、ずっと心の傷になっています。私は両親の対応がまともだったので、まだましなのですが。
こんな経験は自分だけだと思っていましたが、引用記事を読んで、少し救われました。優しかった兄がなぜそんなことするのか分かりませんでした。私の体は、屈折した兄にとって、性的好奇心を満たすはけぐちか何かだったのかもしれません。


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