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2018-09

一番難しいこと (保育士編) - 2018.05.20 Sun

前回の続き。

保育士への研修をしていると、この「子供を信じること」を保育士へ伝えることの難しさに直面します。




一番いいのは、その人と一緒に保育をして、子供を信じた関わりをしてそれにより子供の姿がムリなくいい方に伸びていくのを目の当たりにさせてあげることでしょう。
子供を信じた関わりの実際とは、子供を管理も支配もせずにいい方へ成長していくことです。

ごく一例を挙げると、キーとかキャーとか奇声を上げている子に、「うるさい」「静かにしなさい」と否定の方向のアプローチをするのでなく、信頼関係のルートを通して「自分で気持ちを落ち着けてここでは小さい声にして下さい」などと、一人の人間に対するように伝えて待ち、子供が自主的にその方向に行動し、子供大人が互いにその結果に心地よさを感じられるような関わりです。

他には、泣いている子にすぐ手を出して泣き止ませるのではなく、それが自分で感情をコントロールして乗り越えるべきものであり、その子が自分でできる段階のものであれば、それに手を出すことなくあたたかく見守るだけにして自分で自立的、自律的にその状況を解決させていくといった関わりもそうです。


これらは、それまで支配や管理的な関わりを積み重ねていた人が、その対応だけ真似しても同じようにはならないので、それ以前、もしくはそれ以外の場面での、肯定や信頼関係作りが欠かせません。


このようなことを、いくつもいくつも実践して見せていけば、その一緒に働いている保育者は、しかりつけたり、おだてたり、疎外したり、物理的に子供の行動を規制してしまうことが保育ではないのだということにだんだんと気づいていけます。




もちろん、その保育士の持っているものにも左右されます。

最初から、支配や管理的な関わりでないものを模索している人にであれば、たやすく伝わります。
それならば、後はそれを少しずつ実践させていき、その中で難しい部分には、別のアプローチの方向を示してあげたり、そこは焦らないで待つところと伝えていけば、程なく自分のものとして身につけてくれます。


その人自身が、管理や支配を当たり前とされてきた人であれば、それに応じて難しくなります。
その人が他者の感情に鈍感な人である場合も難しくなります。

でも、その人が自分もそういった本質的な保育の力を身につけたいと思えば、少しも不可能なことではありません。



もっとも難しいのは、子供に対して管理すること、支配することといった子供を信じない関わり方を変えることが、自分を否定されることのように感じてしまう人に対してです。

極端なところでは、子供には体罰が必要だと思っているような人に、それが不適切な関わりであることをたとえ示唆する程度でも伝えれば、その人は激しく自己が否定されていると感じます。

そこまで行かずとも、子供への管理や支配が板について、すでに上達してしまっている人は、その人の職業的なプライドになってしまっていて、それを変えることはなかなか受け入れられません。

この領域は、実は、保育論としてのレベルのお話ではなく、その人の内面の問題になってしまっています。これらの人は、自分でその状況を変えたいと思っているのでなければ、少しも保育が変わりません。

もし、それに気づいて変えたいと思えるのであれば、それを軌道修正していくのは不可能ではありません。ただ、僕の実感としてはそういう人はごく少数です。若い人にであれば、まだ精神的な柔軟さが多いケースがあり、アプローチは多少しやすいでしょう。

もし、「保育士の適正」ということを考えるのであれば、この上記のあたりが大きなポイントのひとつになることでしょう。



だから僕は思うのですが、保育士になって数年の若い人たちには、この道に先に入っている人間が「子供を信じる関わり」をたくさんみせてあげる必要があります。

保育士になって最初の数年で、管理や支配を強化する子供を信じない保育をたくさん習得させられてしまうと、その人はずっとそれが続きかねません。


ただこれには、言語化をともなわせる必要があります。
「背中を見て覚えろ」方式では、もともとそれができる素養の高い人や、感度の高い人にしか伝わりません。そういった人に対してでも、なかなか伝わりきらないのが現実です。

ましてや、管理的、支配的な関わりが先入観になっている人に対してでは、目の前でそれを幾度もやってみせたとしても伝わらないことの方が多いです。

「あの人は上手だから」
「あの子供はたまたまできる子だから」

といった、責任転嫁によって自己防衛してしまい、自身の保育上の関わりに原因があることへの認識を無意識に回避して行ってしまいます。



もし、若くして保育施設に飛び込んだ人が、周りを見回して「子供を信じる関わり」のできる保育者がいないと感じるならば、自分で学ぶ努力を欠かさないようにするか、より適切な保育ができる施設を探すことが必要ではないかと思います。

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● COMMENT ●

コミュニケーション

おとうちゃんさん、こんにちは
先生がどのように考えて、私が否定的な対応と感じる保育をしているのかが、見えないんですよね。
もしかしたら、真面目にそのような対応がよいと思っているのかもしれないし…。
見える保育の手段としての、クラスたよりや個人の連絡帳も必要事項のみなので、先生の考えを知る機会があまりありません。
子どもの姿で、推し量るのが実情です。

子どもが先日、困った時は近くにいる先生に相談していいんだよ、といった話しをした時に、なんと毎日怖くて泣いていた年少の時の担任の先生がいたら相談する、と言いました。
何で?、と聞いたら、しっかりしてるから、と答えました(笑)

親のカウンセリングをして欲しいとは言いません。
だけど、ともに子を育てる関係になるのは幼稚園では難しいことなのかな、とちょっとだけ思ったりしています。

まあ、でも欲張りすぎなのかな。
良いも悪いもたくさんの影響を受けて今の娘の姿があるわけだから、親は本人の育ちを自信を持って応援するしかないですね。

保育の現場もすぐ、出来るを求められるのかな。
それだと、待つ保育をする先生はなかなか大変ですよね。
自分の成果にならない場合も出てくるだろうし。
そんな保育をする人が園長先生あたりでいてくれないと、色々難しいのかもしれませんね…。

子供を幼稚園に通わせていた頃、先生の言う事を聞いてまとまりがあることや、行事での踊りや音楽などの質が高いことを求める保護者が意外に多いと感じました。
これでは先生もプレッシャーを感じてしまい、日常の保育で心の根っこを育てるよりも、支配や管理をする保育になってしまうのも仕方ないのかな、と思います。
待つ保育で子供がどう育つかを保護者が理解する、『早く、早く』を求める保護者の楯になる園長がいる、そういった環境がないと難しいのかもしれませんね


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楽しく無理のない子育てを広めたいと2009年ブログ開設。多くの方の応援があって著作の出版や講演活動をするようになりました。 現在は、子育て講演や保育士セミナーの他、『たまひよ』や『AERA with Baby 』等の子育て雑誌の監修やコラム執筆。『ジョブデポ保育士』の監修や育児相談などをいたしております。

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