日本の子育て文化 排泄の自立 - 2009.11.07 Sat
今日はそれ以上に根深くまた深刻だな~と思う「排泄の自立」について。
これはほんとに難しい、排泄を自立させることもそうだけど、それより文化として人の心に浸透してしまってることだけに伝えるのが難しい。「こうするべきだ!」って多くの人が思っちゃってるからね・・
まあ、個人差があるものだし人それぞれ事情も変わってくることだから、必ずしも僕のこれから言うことが全面的に正しいといいきれるわけでもないけどね。だから、読んでくれた人のやり方と合わなければとりあえずスルーしてくれてもいいと思います。もし、そのやり方で行き詰ったと思ったときにでも読んでくれればいいかも。けっして不安をあおったり、混乱させようと思っているわけではないのです。
う~ん、やっぱり文化になってるものに意見するのは難しいな・・
僕は、第二次ベビーブームの真っ只中で産まれました。年子の姉がいるので、姉の分は家のおむつで、僕のはそこまで手が回らないからと貸しオムツだったそうです。貸しオムツなんて当時あったのですね~実はいまでもありますが。
布オムツ使ってる方はわかると思いますが、それの洗濯だけでものすごく大変です。そのころも紙おむつあったようですが、まだ出始めで値段も高く、物もいまほどよくなかったそうです。それ故にオムツを一刻でも早くとるというのは子育ての最重要課題でした。ですので、いま親になっている世代の親、つまりおばあちゃん世代はほとんどの人がまずたいてい「早くオムツとりなさい」みたいなことをいうのですね。また、当時の意識としてはオムツをいつまでもさせてるのはだめな母親みたいな価値観がありました。それが文化的な遺伝として現代の親の世代にも伝えられてきています。というわけで、いまでも根強くオムツを出来るだけ早くはずすという考えが残っているのです。
だいたい、1歳すぎから1歳後半くらいからトイレットトレーニングみたいなことを意識させだすでしょうか。たしかに機能的には(つまり膀胱の大きさ)それくらいで必要な程度には発達するようです。だからかつてはこれくらいの年齢でオムツはずしをするのがよい、することが出来る と考えてきました。
僕がこどものころですから30年くらいまえの常識ってことです。
それから様々な研究がすすんで排泄の自立には脳の発達が大きな役割を果たしているということがわかってきました。最近でこそ大脳生理学者などがテレビなどでも見かけるようになりましたが、それでも脳科学の進歩はようやくスタート地点に立ったくらいのものだそうです。30年前では脳科学的な排泄へのアプローチなどできなかったのですね。
つまり、排泄を自立するのは1歳過すぎで膀胱が大きくなったからできるのでなく、排泄に関係する脳が必要な程度に発達していなければならないということ。
一時預かりなどで1~2歳くらいのこどもを預かると、「いまトイレットトレーニング中ですので、1時間ごとにトイレに誘ってください」なんてことを親から伝えられることがあります。1時間ならまだしも30分、ひどいと「15分で誘ってください」っていうのがありました。ほんとの話ですよ。そしてその子は布パンツの上に紙おむつをはかされていました。1歳半の男の子でしたが、僕の見たところ排尿の自覚もないし出てしまったとしても教えることもなく、発達段階的に排泄の訓練はまだ無理という状況でした。
でも、お母さん必死だったんだね。ほんとに気の毒です、お母さんもこどもも。こどもにとってはどうやっても出来ないことを要求されるんだよ。どうやったって出来ないことなのに失敗して、大好きなお母さんを悲しませるわけ。そのお母さんがきつい性格の人でなかったのが唯一の救い。もし厳しい人だったらその子の人格はそこでつぶされてたでしょうね。
ちょっと話を戻します、え~と、1時間でトイレに誘うってとこから。1時間ごとにトイレに誘えばたしかに毎回トイレで出て「おもらし」することはなくなるでしょう。でも、それって「排泄が自立」したということになるでしょうか。そう、「自立」ではないんですね。大人が「しろっ」ていうからしてるだけ。自分でわかったわけじゃないのね。でも、多くの人がトイレで毎回できたことで満足しちゃうのだよね。
でも、これが大きな問題。どうしても個人差あるものだから、これでもうまくいっちゃう子はいっちゃいます。で~~も、多くの場合うまくいかないんだな。なぜかというと、この「時間しぼりだし」作戦はいまではもっとも大事と知られている、脳の発達をさまたげてしまうから。
本当に「排泄」が「自立した」と言えるのは、
おしっこがたくさん溜まって >> 「おい、おしっこ満タンだぞ」と脳が教える >> 出そうなことを大人へ伝え >> トイレで出る
という状態になったときですね。一連のこのプロセスができたら、ときどき失敗したとしてもそれは問題にはなりません。あとは時間の問題ですからね。
「おい、おしっこ満タンだぞ」と脳が教える ←このプロセスを獲得するにはその部分の脳が発達していなければできません。では、どうすれば発達するのでしょうか?
それはズバリ、『ほんとの満タンまでためること』でその部分の脳は発達するのです。おしっこをきちんと溜めれば溜める経験を繰り返しただけ、「おい、おしっこ満タンだぞ」という声が聞こえるようになります。極端な言い方をすれば、トイレへ誘わないことが排泄の自立への近道なのです。
さっきの15分の子が、親も子も大変な精神的な苦痛をがまんしながら、15分作戦を続けたとします。
その結果、年齢は進んでも排泄を司る脳は未発達なままなので、3歳をすぎてもしばしばおもらしをする子、そして5歳になっても夜寝るときはオムツが必要な子になる可能性がとても高いです。
↑は極端な例ですが、1時間で誘ってたとしても人によっては同じ可能性があります。
時間で誘うと、こどもは「しぼりだし」を覚えるのです。大人がよろこんでくれるから、自分では溜まってる感覚がなくとも一生懸命出してくれます。普段から集中して遊べない子は、トイレで遊びたいがために大人に「おしっこ」と言うようになる子もいます。また「おしっこいけおしっこいけ」と言われすぎている子は、大人がおもらしを極端に警戒してることを感じ取り、叱られたときなど『脅し』として「おしっこでちゃうー」など言ったり、実際にわざともらすということをするようになってしまうこともあります。
上で述べたことは、実はまだいい方の問題点なのです。おねしょが直らない、くらいならまだいいのです・・・
実は「排泄の自立」にはもっと大きな問題があります。「排泄の自立」とはたんに「おしっこができるようになる」には留まらない重要な役割があるのです。それは「人格の自律」と密接な関係があるということ。
保育士をの勉強をしていると『エリクソンの発達心理学』というのを必ず学びます。残念ながら保育士になっても覚えている人は多くないのですが・・。もし、これから保育士を目指している人がいたらココはほんとにしっかり覚えておきましょう、もっとも重要だし、役に立つところです。
2.児童前期 (自律性 対 恥、疑惑)
この時期になると、幼児は肛門括約筋をはじめとする全身の筋肉が発達してきて、自分で立って歩けるようになり、排泄をコントロールすることが可能となる。発達課題としては、排泄と保持という体験を通じて自律性の感覚を身につけることができるか否かが重要となってくる。うまく排泄ができれば親にほめられ、失敗すると恥ずかしい思いを、幼児は体験する。また、自己主張をだんだんしはじめる頃であり、攻撃の手段として自分の排泄物を武器として扱うことも時々観察される。
([心理学COCOROの法則] より抜粋) http://rzt.sakura.ne.jp/shinri/2006/01/post_1.html
上の説明だけではややわかりにくいのですが、これ以上の解説がみつからなかったのです。詳しく説明するにはフロイトのリビドー論から説明しなければならないので、ただでさえ長い僕のブログががが・・・なのでこれで勘弁><
つまり、排泄の成功、失敗により 「自律性」を獲得したり、「恥」という感情を覚えるということなのです。排泄の失敗を多く経験させたり、あからさまにそれを認識させると、もしくは失敗をなじったりすることで簡単にこどもの心をねじくれさせることができるのです。
かつての「オムツ早くはずせ」文化のなかではこの荒業を使うことがありました。失敗を強烈に「恥」と認識させることで、オムツ(夜尿なども)を早くとろうとしたのです。昔のアニメを見るとおねしょした布団を高々と干して主人公が恥ずかしがるというシーンがけっこうありました。あえて恥をかかせていたのですね。他にも失敗したパンツを自分で洗わせなさいと親に教える人もいました。そうすることで、おもらしをしなくなるという考え方です。いまはこんなことする人あまりいないと思いますが、自分がこういう風にされたらどうでしょうね、相当劣等感を持った人間になるような気がします。
事例:
3歳なったばかりの男の子 一人っ子 1歳10ヶ月くらいからトイレトレーニング 現在はトレーニングパンツで日中過ごす
自己主張がしっかりしていて、とてもよく遊べる子。ガンコなところがあるが、大人の言葉も素直に聞け受け応えもしっかりできる。母親は少しでも早く排泄を自立させたく2歳前からトイレトレーニング、現在では時間をみて(約1時間)排泄に誘うよう保育士に申し入れている。
最近あった事例を紹介。この子夢中になってよく遊べるんです。想像力があってイメージしつつしっかり遊べる素晴らしい子。でもね、ガンコっていうか芯がしっかりしているの、だから遊びを中断して「おしっこいこう」っていわれるのがすごくつらいのね。でも、家でも園でもそれをされるものだからとってもストレスを感じて溜め込んでしまっている。ときどき、それに耐えがたくなってイライラを爆発させたり、午睡明けにキーキー、グズグズということが多くありました。排泄の状況としては、3歳になった現在でもダダモレです。遊んでいる間にもらして1日になんども着替え、脳が育たずに来てしまったのだろうけど、もしかすると半分は大人に対する抗議としてもらしてるのかな~と思ったりもしました。この排泄のゴタゴタがなければものすごく伸びただろうな、と思える子だったのでとても残念でした。大人がこうしちゃったんだよね・・・でも親やその担任の保育士はそこまで理解できないのね・・・それがさらに悲しい。(残念ながら僕がその担任でなく応援で入ったにすぎないので、根本的なアプローチをしてあげる立場になかったのです。でも、そののイライラ爆発したときに「いいんだよ~君の事はちゃんと僕がわかってるからね」とたくさん受け止めてあげました。強く責められたりはしていないから人格が破壊されるとこまではいかないと思うけどそれでも保育士として残念でしかたありませんでした。)
すごく長くなってしまいました、とりあえず今日はここまで。次回は僕がこうすればいいと思っているオムツのはずし方を書きたいと思います。最後までお付き合いくださいましてほんとにありがとうございました。
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● COMMENT ●
No title
まっきいさん
ありがと~
机の上に乗っちゃうとかよくありますよね。気持ちを伝えて困ることをわかってもらうのも大事。
でも、もうひとつ大事なことがあるんです。それはね、こどもって出来るようになった能力って使ってみたくてしょうがなくなるんです。大人が新しいバッグ買ったらもってお出かけしたくなるのといっしょ。
例えば、物を投げるとか、物をたたくとかほんとに赤ちゃんのときはものをニギニギしたりとかね。たいしたことないようだけど、こどもにとっては実は獲得した能力はすっごく新鮮で楽しいもの。
投げるとか叩くとかやたらなところでされたら困っちゃうけど、していいところを用意してやらせるのも必要なんですね。木槌で叩くおもちゃを用意するとか、ボールとかお手玉とか投げていいものを出してあげるとかね。机の上に乗るのが楽しいときは、公園でそういう遊びをさせてあげたり、家の階段をよじのぼる遊びにしたり。登りたい気持ちを満足させてあげることで、大事なところでより大人の言葉が通じるようになりますよ。
No title
今年の夏前に、義母からそろそろトイレトレーニングはじめて早くオムツとってあげてねって言われてました・・・。
次回、楽しみにしてますね♪
それから、いつもいつも、コメント書かせていただいた後に、あぁぁぁ!また言い忘れたぁって思っていたことがあるのですが、リンクはらせていただいてもいいですか???
けいさんへ
僕もようやくリンクの載せ方マスターしたので大歓迎です(笑)
けいさんのブログみて触発され絵本の載せ方も勉強中です、それよりはやく「続きを見る」の使い方をマスターしないと。(笑)
No title
我が家の子供の話ですがもうすぐ5歳になるのに夜のオムツが取れません。朝起きると3,4回はしているであろうというくらいたっぷりと
おしっこがたまっています。 何度もパンツをはかせて寝かせてみたのですが、おもらしをしていても気にならないのか朝までそのまま熟睡しています。母には夜中に何度か起こしてトイレに行かせたほうがいいのでは?と言われていますが、ネットで調べてもまた保育士パパのご意見でもあるように排泄に関する脳が未発達なので無理にトイレに行かせるのはよくない、ということで今だにオムツを続けています。
昼間のオムツは2歳4ヶ月くらいで取れています。トレーニングを始めて1ヶ月ちょっとでお漏らしも2,3回しただけで簡単に取れてしまいストレスもなく叱ることもなくとてもスムーズに取れてしまいました。
それだけに夜になかなか取れないのが気になります。
子供は自分でも恥ずかしいことだとは自覚はしています。
今もオムツをしていることを叱ったりはしていませんが、お友達は皆取れているよ、とか恥ずかしい事だよ、なんて言ってしまったりするのですがそういうことが逆に子供にストレスを与えているのでしょうか?
脳が発達するまでゆっくりやっていくつもりではありますが、他に何か出来る事があればお時間のある時で構いませんのでアドバイス頂けるとありがたいです。
ラブリンさん
> 脳が発達するまでゆっくりやっていくつもりではありますが、他に何か出来る事があればお時間のある時で構いませんのでアドバイス頂けるとありがたいです。
はじめまして、いろいろお悩みだったのでしょうね。
ご心配だったでしょうが、夜起こしていかせなかったのは良い判断だと思います。
具体的にはメルアドを載せてくださったようなので、そちらでお答えしますね。
事例の男の子はどうなったんでしょう?
本当に参考になります。
さて、事例の男の子について「もっとのびたのに残念」との思いをおもちのようですが、それは、一度積まれた可能性はもう花開かないということですか?
育児にやり直しはきかないのでしょうか?
ツインズママさん
親も含めて全般的な大人への信頼感の低いことや、情緒の不安定、遊べなさ、落ち着きのなさ、他児との関わりのまずさ、トラブル、様々なネガティブ行動など記事で触れた以外にもたくさんの姿がありましたが、その保育士の受容やときに厳しい対応、親への働きかけなどを経て小学校に進学する頃には相当の進歩が見られ、一応の安心感をもって進学させることができましたよ。
特に大人に対しての信頼関係の点では、当初とは別人かとみまごうばかりのよい変化がありました。
大人がしかるべく対応をすることができれば、子供は変わります。
本当に難しいのは子供を変えること以上に、大人の方が変わることだと思います。
No title
友達の子どもが1歳6か月くらいからおむつはずれた~と聞いてたので、
うちもそろそろトイレトレーニング・・?と思っていたのです。
そんなことする前にこの記事を読めてよかったです!!
おとーさん、本当にありがとうございました~(;▽;)
ツインズママさんありがとう
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次回の更新楽しみにしています♪
↓「ダメ!」って簡単に出てしまうんですよね。最近机の上に乗ってしまうので、気持ちを伝えるように意識してます。
いつもとっても勉強になってます。初めての育児でいろいろ教えてもらいたいこともあるので、私のブログにリンク張らせてもらってもいいでしょうか?