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2018-10

「断乳」について考える - 2018.09.01 Sat

コメントで、保育園から断乳を迫られているというものがありました。これについて書きます。

いまだに保護者に「断乳」を要求する園があるというのを聴くと、「時代遅れだなあ」という感覚を覚えます。
なぜなら、今度の新しい指針にも大きく盛り込まれた「子育ての支援」についての理解が欠けているからです。保護者と園との関係が、上下でとらえる感覚を無意識にしろ持っているのだろうことがわかります。





「これが正しい。だからあなたは従いなさい」と、こういうスタンスを保育士が持ってしまっています。
保育園が上で、保護者が下と無自覚に見なしているのです。

(話がそれるのでここでは多くを書きませんが、この意識の反動が現在の企業立の園に多く見られるようなサービス業化を招いた一因になっています。
「園が上、保護者が下」この感覚を持っている保育施設のあり方が時代にそぐわないために、「保護者が上、園が下」というあり方を生んだのです。
既存の保育施設がそこに自覚的にならないと、公的保育はこれからも死に続けます)



現代的に目指すべきなのは、保護者、子供、園を対等の存在と位置づけていくことです。

そこでのスタンスは、「援助」というものになるべきです。
子供に対しても援助であるし、親に対しても援助です。

そうでなければ、福祉としての保育は成り立ちません。


この、保護者と園は対等であり、保育士はプロフェッショナルとして援助をしていくというスタンスを持てていれば、「これが正しい、従いなさい」という関わりにはなりません。

ではどうなるかといえば、自己決定を尊重する姿勢が生まれます。



◆教条主義におちいらない
「これが正しいのだから、あなたもそうすべき」
こういった考え方、ものの見方のことを「教条主義」といいます。いわゆるイデオロギーというものです。


保育士は、というよりも、子育ての世界はしばしばこれにおちいります。
保育士のみならず、医師や看護師、保健師といった、本来合理的、論理的、科学的な目を要求されている専門家にすら、こういった教条的な考えにとらわれそれを押しつけてくる人がいます。一般の人は言うまでもなく。


・母乳でなければならない
・紙おむつはだめ、布おむつでなければならない
・○歳までに○○できなければならない
・○○はダメ
・○○しなければならない



教条的になってしまうと、とたんに合理性や論理性、科学性が失われます。
そのいわんとすることに、それなりの理があったとしても、「これは絶対正しいのだから、あなたもそうしなさい」というスタンスを持ってしまったとき、それは人々から信頼に値するものではなくなります。
それは「カルト」です。


例えばですが、僕自身、幼少期の子供に暴力的表現を無自覚に与える日本の子育て文化は間違っていると考えています。
しかし、だからといって「ヒーローものは良くない。見るな」と大人にも子供にも押しつけたりはしません。
押しつけをすれば、それはもはや人に理解を促せるものではなくなります。
あくまで、それを聴いた人が自分なりに受け止めその上で判断し、自己決定するべきことです。
それがプロフェッショナルとしての姿勢というものでしょう。これは保育に限らずどのプロの世界でも同様のことと思います。



◆「断乳」に根拠などない
さて、前置きが長くなってしまいましたが、コメントに寄せられたのは1歳7ヶ月の子に対して保育園が断乳を勧めてきたとのこと。

栄養価うんぬんは気にしなくていいと思いますよ。
あろうがなかろうが、母子間のコミュニケーションとしての大きな役割があるのですから、互いに無理がなく、お母さんもそれを望んでいるのならばやればいいのです。



「断乳」を言う人にもレベルがあります。

1,教条的に「○歳になった?ダメ絶対」という人

2,「弱さ」につながることへの忌避感、嫌悪感を持っている人が、「甘やかし」「甘え」に類するさまざまなものを否定する

3,依存が強まることの懸念から断乳を口にする人

4,無自覚な思い込み





1,中には、「断乳しなければ子供が将来性犯罪者になる」などと主張するおかしな人までいます。しかし、ある種の専門家がそのような言葉を口にすると、それは親を不安にし呪縛することになります。



2、例えば、母乳を求めること、泣くこと、幼さ、おむつ、(箸に対しての)スプーン、いいわけすること などなど。

これらは合理性のないただのその人の主観による感情論にすぎません。しかし、この空気は日本の子供と子育てを取り巻く状況の中に濃厚にあります。
「強さの称揚」「弱さの否定」の文化です。これは一歩間違うと、ハラスメントの土壌を簡単を生みます。いま、社会をハラスメントの話題が賑わせていますが、この土壌の強いところという共通項があります。



3,依存については後述



4,「周りの人が○歳なら断乳すべきと、日頃言っていたからそれが当然と思っていた」
子育ての世界には、これは往々にしてあります。保育士も同様で、そのため特に新人の時の周りの保育のレベルが、その人の一生の技量そのものとなってしまうことがしばしばあります。





◆授乳と依存の関係

もし、保育園が「断乳」やそれに類することを言ってきた場合、かろうじて合理的、良心的なものが上にあげた3,のケースです。


・授乳をすることにより、依存が「過剰に」高まってしまっている。その現状が、子供にも親にも不利益を生んでいる。それゆえに、プロフェッショナルの見地として授乳しなくても安定を得られるように考えていく


このスタンスであるならば、それなりの合理性はあると言えます。

しかし、もしこのスタンスを持っている人であれば、「授乳をやめろ」といういい方はまずしません。
依存が子供に与えている影響、親自身がそれに気づかないまましんどい自分で状況を作っていること、また、授乳以外で子供との関係性をどのように作ればいいかその方向性と具体策。
これらを伝えるはずです。
なので上記のスタンスを専門的に持てている人は、まず「断乳」を要求することはなく、「卒乳への援助」となることでしょう。



しかし、ここまでの専門性なく、「この子幼いし、すぐ泣くし、集団行動できないし、甘えてばかりで遊べない。親が甘やかしているからだ。ちゃんと断乳できているのかしら。やっぱり授乳させているわ。断乳させなければ」
と、この程度の認識で(もちろんその中にも温度差はありますが)、「断乳」というマジックワードに飛びついてしまう保育士は多かったです。

過去形で書いてあるのは、いまの時代にこの認識ではあまりに勉強不足だからです。


本当に保育の質の低い施設では、保育士たちの保育の不手際による子供の不適応な姿を見て「親が○○だから、こどもがちゃんとしていない」という考えにおちいるところがあります。
感情論で「断乳」を口にする園は、この傾向がある場合もあります。



◆「依存」は「依存の問題」として解決を目指す

依存の問題と授乳の問題は別個に考えるべきなのに、先入観や教条主義が邪魔したり、専門的に思考する訓練を受けていないために、ごっちゃにして短絡的な結論に飛びつく保育士は多いです。

依存はたしかに、子供の育ちのさまざまな問題の元になります。

しかし、依存それ自体は悪いものではなく、誰もが当然に持っているものです。大人ですら持っています。ましてや、保育施設というなんだかわけのわからないところに放り込まれた不安な心理を持っている子供にとっては、軽々しく奪っていいものではありません。

「断乳」という結果だけだしたところで、その子供の心のケアや成長を考えていなければ、子供にも親にもなんのプラスもありません。ただ、「こうすべき」という自身の主観を満たしたことの自己満足がそこにはあるだけです。




◆すべての保育を目指す人に伝えたいこと
保育士の人に伝えたいのは、教条主義にとらわれて自己満足の保育をしてしまうことは、本当は自分のためにならないということです。


保護者たちは、保育士の(または幼稚園教諭の、学校教諭の)この自己満足のための要求に、意識、無意識に気づいています。
だから、そういった人、そういった施設は信頼されません。
いくら自己満足だけを積み重ねても、クライアントに信頼されない仕事に本当の達成感、やりがいは生まれないはずです。


少しだけ口幅ったいことを言わせてもらえば、「プライドは自分に持つのではなく、仕事に持つ」のです。

若いうちから、自分の思い通りにすることでの達成感を求めていけば、人は本当の信頼も尊敬も寄せてはくれません。
それはせっかく保育士を目指したのに、大変もったいないことです。
しかし、そういう人をたくさんみてきました。

これからの時代は、本当の保育の専門性を高めプロフェッショナルとして信頼してもらえるところを目指すことが必要になっています。



補足
なぜ、園を上保護者を下と見てしまう心理が生まれるか?
実はこれには理由があります。
たった一点にだけ気がつくだけで、これを克服できるポイントがあります。
知りたい方はどうぞ僕の研修に来て下さい。


9月15日(土) HOIKU BATAKE公開セミナー&交流会 保育士おとーちゃんに学ぼう「保育のチカラ」

あわせてこちらもどうぞ↓
絵本、遊びについての実践的な講習です。

9月8日(土) HOIKU BATAKE 公開研修会 @飯田橋
① にへい先生の絵本講座
② チッタおもちゃ講座

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● COMMENT ●

断乳のみならずトイレの自立についても

私の勤める園でも断乳について、勧めるところまではしません。しかし、子供と絵本の後に2歳児に「ママのおっぱい飲んでる子手を挙げて?」と聞く先輩がいます。子供におっぱい飲んでるのは恥ずかしいと思ってもらう意図を持って聞いているようです。
それにトイレについても2歳の夏に外さないと!と息巻いている先輩がのんびりやっている私や親をせっつきます。おしっこの感覚が長くオムツは濡れないけど、幼稚園トイレでおしっこを一度もしない子供は、とにかくパンツにして漏らせばいいと言います。私はその子供の心のつっかえがとれるまでゆっくりやったら良いのかなぁなんて思っていましたが。年少にあがるまでにはとらないと他の先生達に笑われる!と焦っているようです。なんだかよく分かりません。
もう毎日とにかくパンツにして過ごさせて、漏らさせて、トイレでおしっこせざるを得ない状態にしましょう!と言われるので、仕方なく従っていますが…
理に叶っているのかなんなのか分かりませんm(__)m
なんのためにトイレの自立を促すのかわからなくなります。

保育施設ももっと子供の為にあるべきなんですけどね。


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楽しく無理のない子育てを広めたいと2009年ブログ開設。多くの方の応援があって著作の出版や講演活動をするようになりました。 現在は、子育て講演や保育士セミナーの他、『たまひよ』や『AERA with Baby 』等の子育て雑誌の監修やコラム執筆。『ジョブデポ保育士』の監修や育児相談などをいたしております。

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