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2018-10

認可外保育施設、6カ月男児死亡事故を受けて - 2018.10.07 Sun

認可外保育で6カ月男児が死亡 昼寝中に異状、窒息死か(ハフポスト)

報道によると、授乳後30分一人で放置し寝かせていた。心肺停止状態にも関わらず救急車を呼ばず、かかりつけ医に受診。その医師によれば、窒息の症状だったとのこと。
これは事故ではなく、人為的ミスと言える。


0歳児はSIDS予防のため、5分ごとの呼気チェックが求められている。

「普段は15分ごとに見ているが、客対応などで30分になってしまった」(園長コメント)

もう、この認識の時点でリスクが時間の問題となっている。





保育施設における死亡事故は、半数以上およそ7割ほどが無認可施設で起こっている。

無認可だからどこも悪いというという訳ではないが、比較すれば保育の質の低さや保育環境の悪さが相対的に出てくるのは事実。


僕が問題と思うのは、行政指導の不備だ。

例えば、飲食店であれば、必ず年1回の衛生講習が課せられている。その他に防火責任者への消防署の指導などもある。

無認可施設に対しても、監査や指導がないわけではないが、重大事故や死亡事故の多い現実がそれらが十分でないことを示している。



この施設の近隣住民への取材の中では、「うるさい、座りなさいなどの怒鳴り声がよく聞かれていた」とのこと。

これが示しているのは、「保育がわかっていない」ということ。
保育がわかっていない人が保育をしているのだから、事故が起きるのも時間の問題でしかない。

こういった事件があると、「人手が足りなかったのだろう」と擁護気味の意見があがる。
しかし、実際は人手の問題ではないのだ。
人手が足りないことがあっても、保育の質が担保されていれば、「ここは手を抜いてはいけないところ」という認識が持てる。

保育の質が悪いと、保育職員が長続きしない。ゆえに人手不足になり、より保育が劣化し、さらに人が辞めていくという悪循環が起こる。
そうなっている施設は山のようにある。
そういった現実にあたってすら、「保育の質」ということを当の保育者や施設が理解していないので、その悪循環は解決しない。

保育の質(適切なスキル)が担保されていれば、子供を怒鳴りつけるようなことが常態とはならない。仕事に充実感もあり、人材の維持、確保は比較的容易になる。

かようなわけで、この問題を「人手不足だから」で落着させるべきではない。




「ハインリッヒの法則」というものがある。
「1:29:300の法則」とも言う。

1つの重大事故の背後には、29の軽微な事故があり、さらにその背後には300の事故までいかないトラブルがあるというもの。
ちまたで言われる「ヒヤリ、ハットの法則」もこれを基にしたもの。


無認可施設に対しても、監査のような締め付け的な行政指導ではなく、その費用を負担し研修の場を積極的に設けるなどの実質的な対策をすべきだ。

今回の事件は、たしかに一施設の問題ではある。
しかし、背後にあるのは、公的保育を不備の常態においたまま保育行政をしている、区や都、ひいては国にある。

突きつめて言えば、保育に金をかけろということに尽きる。

人口密集地では、保育施設の定数が十分ではなく、現状、無認可施設も社会的に必要となっている。

それは行政が保育にそれだけの予算を使わないからだ。
そしてそのしわ寄せは、子供を預ける家庭とその子供にダイレクトに来ている。

子供を育てるには金がかかる。
きれい事を抜きにいえば、それは紛う方なき事実。
しかし、それをこれまでの社会は、コストをかけないレベルでしか考えてこなかった。

たしかに、最近保育関連の予算は増えてはいる。
しかし、それは人材確保と施設を増やすことのみに消えており、質を高める方に十分に回っているとは言いがたい。
このように死亡事故が起こっている事実が、それを如実に示している。

保育の質を高めるために予算を使わなければならないのだ。



だが、いまだに多くの人、特に年配の人の意識には、「子供は母親が家庭で見るもの」という感覚が強く、そこに社会コストをかけるべきということが理解されない。

さらにその背後にあるのは、女性蔑視(ミソジニー)の意識だ。
昨年11月熊本市議会で緒方夕佳市議が子連れで議場に入り、譴責されたというケースがあった。

赤ちゃん連れの熊本市議に真意を聞いた 「子育て世代の悲痛な声、見える形にしたかった」(ハフポスト)

ここにあるのも、子供を含む女性に対するミソジニーだ。


「子供や女性は家庭に入っていろ。出てくるならば仕方なく補助してやるが、それは本来望ましいことではないのだから最低限の補助しか出さない」

日本に根強い、「劣等処遇の原則」(社会的扶助を受けるものは低い処遇でなければならない)という感覚と相まって、保育に対する社会的なコストは低いままとなっている。


そもそも子育ては母親だけのものではない、父親もいて、社会も関わっている。
「子育て=母親のもの」という考え方自体が、古いというだけでなく、社会的にさまざまなものを損ねることにつながっている。


今回の事故はあってはならないことだ。
同じ保育士として慚愧に堪えない。

この事故は、人為ミスだと思うし、保育の質もおそまつなものだ。
しかし、そこを責めるだけでは永遠に解決しない。

その根っこにあるのは、保育行政であり、さらに背後にあるのは、子育てや女性に対する社会の見方。そしてそれは今次事件の当事者だけの問題ではなく、社会に生きるひとりひとりが関わっている問題であることを提示したい。


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