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2018-11

保育園選びで気をつけたいこと ー誇大広告ー - 2018.10.31 Wed

入園申込みの時期になりました。
最近では、申込み間際になっていくつか見学して「はい、ここにきめた」というのはできなくなっているので、一年中保育園選びの季節になっているようです。



本当は、どこの保育施設にいっても、一定程度の安定した安心できる保育が受けられなければならないはずです。
なぜなら、保育士は国家資格で、保育施設は国や行政の監督を受けて設置されているものだから。
医者で考えれば簡単にわかります。

特殊な病でなければ、たとえば風邪などだったら、日本全国どこの医療機関にいっても一定程度の医療が受けられます。
私たちは、それを当然のこととして享受しています。

しかし、保育施設は本当に残念なことにそのようになっていません。
単に、施設ごとの特色の違いというレベルではなく、基本的な子供を安全、健康に預けるということだけで見ても吟味しなければならない状況にあります。

僕は、この意味で保育界が本当にまずは取り組まなければならないのは、なにかすごい特色のある立派な保育ができるところではなく、当たり前の保育が当たり前に行われるようにすることだと考えています。
言ってみれば、保育の質の高さ以前に質の低さをどうにかしようよということです。




さて、今日のテーマは、保育園選びの際に気をつけたいことです。

保育園の宣伝文句を見ると「あれ、ここは・・・・・・」と思うようなところがあります。
そして、そういったところの内実を見ると、やはり保育の質がともなっていません。

どんなところかというと、誇大広告になっているところです。


「お子様が○○できるようになります」

たいていはこれのバリエーションです。

・オムツが外れます
・字が読めるようになります
・計算ができるようになります
・運動ができるようになります
・食べ物の好き嫌いがなくなります
・お箸が使えるようになります
・あいさつができるようになります
・モノの貸し借りができるようになります


こういったうたい文句で園児を募集していたり、自園のアピールをしているところはあまり質がともなっていない場合があります。全部がそうではないかもしれませんが、本当に質の高い園はこのような言い方をまずしません。


なぜなら、そんなのわからないことだからです。
だって、どんな子供が入ってくるかもわからないのに、軽々しく「○○ができるようになる」って責任もって言えるはずはないのです。
(健康器具や、美容品の宣伝と同じだね)

本当に保育の質を高めようと長年にわたって努力、研鑽を積んでいる施設は、そもそも「○○できる子が子供として立派」といった見方はとっくのとうに卒業しています。



「子供の姿を○○できるようにすることが私たちの仕事」と考えている園では、子供の支配・管理におちいり易くなります。

それゆえに不適切な保育になってしまうところもあります。

例えばオムツを早くに外すことがいい保育と考えている園では、オムツがなかなかとれない子は、肯定的な日々を過ごせません。

オムツがまだとれないAちゃんに、「ほら、見て見てBちゃんはもうパンツはいているんだってすごいねー」と、その保育士としては良かれと思って「他児と比べて子供の個性・あるがままの姿を否定する」という本来保育士がすべきでない行為が自然とでてくるといったことが起こります。
もっと程度がひどいと、「オムツはいている子は赤ちゃんね」といった、自尊心を傷つける行為が「子供を○○にするための当然の保育」としてなんの悪意もなくなされてしまいます。

さらにはもっと極端に、失敗をなじり廊下に出したり、ずっとトイレに放置しておくなど、精神的な虐待では思われることまでするところもあります。




勉強的な「○○ができるようになる」といったことにしても、子供が素直で大人の意に沿って習得していく子ばかりならばいいですが、例えば発達上の個性がある子で他児と足並みをそろえた活動が不得意だったりする子は、その施設の中では手のかかる存在、迷惑な存在と見られかねません。

良心的な保育者であっても、そういった方針の施設の中では、「このカリキュラムをさせたいけど、そこから逸脱する子に対して努力して悪く思わないようにする」といったレベルの対応にならざるを得ません。

こういった保育者の姿勢は、たとえ逸脱しない子供たちにとっても不利益を与えます。
そのように子供の「できるできない」ではかられている保育空間は、そこで過ごすどの子にとっても快適で心安らぐところではありません。
(ノルマの厳しい営業部みたいなものですね。クリアしていない人にはもちろん、クリアしている人にとっても居心地がよくありません)


そして、ここが大切なところなのですが。
保育について適切に学びを積み重ねている園であれば、「個々の発達段階」という視点がなにより重要であることを知っています。
その子その子の発達に応じた活動をすることが、その子の能力をもっとも伸ばすという知見です。


例えば、最近ハイハイができるようになった子であれば、ハイハイをたくさん楽しみながらできるように環境を整えたりアプローチを配慮します。
なぜなら、その子はいまハイハイができるようになりそれが楽しめるという発達段階を得ているからです。
しかし、保育への理解が浅い人は、「○○できるようにする」にとらわれ、その発達段階の理解を無視して次の段階のことを習得させようとします。ここで言えば立って歩かせる努力をさせることが保育だと思ってしまいます。

発達段階に合った課題を十分にすること、これが子供を成長させるための基礎的な理解です。
知的・教育的な発達面に関してもこの原則はかわりません。

この点が、いわゆるお勉強的な到達点を売り文句にしているところには不備であると指摘できます。


適切な保育を学んできた保育施設はそのことを理解しているので、お勉強的な「○○ができるようになる」という保護者へのリップサービスを使ってアピールすることをしません。
なかには、きっぱりとそれは不誠実だと考えているところもあります。
総じてそういった誠実で堅実な保育施設は、一般にもてはやされているような園と比べると地味に見えることでしょう。


子供に適切な保育を展開しているところは、「○○ができるようになります」というサービス業的な宣伝文句をそもそもしないのです。

だって、できる子だろうとできない子だろうと、どんな子であれ同じように受け止め慈しみ育もうと思っているから。
「できる子は立派、できない子はまだまだ」といった考え方そのものがでてこないのです。


だから、「○○できるようになります」というところは、それが全部が全部不適切な保育をしているとはいいませんが、中には不適切な保育に陥っているところもありますし、保育への理解はそんなに高くない可能性があります。

これに関して、株式会社の企業立、昔からある社会福祉法人の認可園といった区別はあまりできません。

何十年もやっている社福の認可園でもそのようなレベルのところもあるし、最近できた企業立のところでも理念を深めて子供の本質的な成長を目指そうと努力をしているところもあります。


これはどんな業種でも言えることですが、「素人をだます」のは簡単です。
ただ、保育界の場合は不勉強、無自覚があって、施設自体や保育者が自分たちもそれがいいことだと思い、悪意なくそれが行われてしまっているという現実があるようです。

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● COMMENT ●

公園でいろんな保育園がお散歩に来ているのを見てきましたが、やっぱりひどいところもありました。まだ、2~3歳の子にひどく威圧的だったり、先生同士でずっとおしゃべりしていて子供が泣くとめんどくさそうだったり。見ていて何度となく胸が痛くなりました。
インターナショナルのプリスクールも、先生と生徒のコミュニケーションがまったく取れていない感じでした。でも、ホームページにはすごく良いことが書いてあるんですよね。インターに預けているお母さんとも何人か知り合いましたが、やっぱり子供に何かできるようになることを望んでいるようで。悪気はないし、子供がいろいろ出来るようにするのが親の務めという認識なようです。わたしもそんなお母さんたちと話していると何が正しいのか分からなくなります。ほんとに素人ですから。でもおとーちゃんのブログを読んで、子供の幸せを考えてしっかり判断していきたいです!


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楽しく無理のない子育てを広めたいと2009年ブログ開設。多くの方の応援があって著作の出版や講演活動をするようになりました。 現在は、子育て講演や保育士セミナーの他、『たまひよ』や『AERA with Baby 』等の子育て雑誌の監修やコラム執筆。『ジョブデポ保育士』の監修や育児相談などをいたしております。

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