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2023-03

オビ=ワンに見る主体尊重の関わり - 2018.12.03 Mon

オビ=ワンとは、映画スターウォーズの重要な役どころのひとつです。
(エピソード4~6では、アレック・ギネス、エピソード1~3ではユアン・マクレガー演じる)

スターウォーズというのはおもしろい物語です。
たくさんの雑多な物語のモチーフを本歌取りして、くどいくらいにぶち込んでいるのにそれをうまい具合にまとめ上げて、しかもすごいことにアメリカのアイデンティティに関連づけてまとめています。





元老院と共和制からの皇帝独裁に移行する銀河帝国の姿は、古代ローマ時代の政治のあり方そのもの。
SFの枠組みはアイザック・アシモフの『ファウンデーションの彼方へ』からそっくりそのまま借りてきており。
戦争の構図は、第一次大戦の形。描かれる帝国軍は第二次大戦のナチスがモチーフ。
ジェダイは黒澤映画に影響された、日本の武士のイメージ。
老年のジェダイと、若年の弟子パダワンの組み合わせは、ソクラテスの頃のギリシャの師弟関係を彷彿とさせる。
キリスト教的には善とは揺るがないあり方であるのに対して、スターウォーズの中では善と悪は混在しそれらは可変するという、諸行無常のインド・東洋哲学の思想を取り入れる。
辺境において、法の支配が及ばない地域で賞金稼ぎがいたり、人々が武器を持ち自治しているアメリカの西部開拓時代。
反乱者というと日本人にとっては、あまり好ましいイメージではないけど、アメリカ人にとっては反乱者とは建国の父達をそのままイメージさせるもの。エピソード4~6の最初の一連の映画も、次のエピソード1~3でも、独立戦争の勝利というアメリカのルーツで大団円を迎える。
それでいて、エンタテインメントとして完成度が高いのだから大したものです。


さて、なぜ子育ての話でスターウォーズが出てきたかというと、エピソード1~3(子供のアナキンを見いだし、その成長と暗黒面に落ちるまでが描かれる)の中で師弟となるオビ=ワンとアナキンの関わりにおいて、ユアン・マクレガー扮するオビ=ワン・ケノービは、徹底してアナキンの主体性を尊重していくからです。


これが一般的な日本の子育ての感覚からするともどかしいほどです。
なんといっても、アナキンは「宇宙のバランスを取り戻す」とジェダイの古書物に書かれ将来を嘱望される存在です。そのアナキンが、目の前で暗黒面に引き込まれそうな兆候を見せているにもかかわらず、1シーンを除いて感情的になることなくオビ=ワンはアナキンを導こうとしています。(まあ、この点は欧米人から見ても多少もどかしくみえるかもしれませんが)


オビ=ワンはアナキンの行動や考えを直接的に否定するのではなく、主体的に考え理解し翻意をうながそうとします。

「恋愛禁止のルールを破りましたね、はい、では罰として丸刈りです」
これは、以前日本のアイドルグループで実際にあり大きな話題となりましたね。

ジェダイも恋愛禁止なのですが、罰するのではなくあくまで主体的に考え直すようアプローチされます。宇宙の将来がかかっていても。

罰したり、命令して行動をねじ伏せたり、師匠の権威で押さえ込んだり、モラルで圧したりをオビ=ワンはしないのですね。
これが現代的な、個・主体性・他者の尊重に基づいたアプローチの表れといえるでしょう。

支配することは簡単だけど、それでは本当の意味でその人が納得して理解し成長するわけではないので、遠回りに見えるけどそのように関わる方がベターなのだというのが、20世紀から21世紀になる過程での文化的進歩です。


では、これを日本の親子関係のシーンに置き換えて具体的に見てみます。

バイクに乗りたい子供と、それをさせたくない親のケースです。
子供は自分のバイト代を一部は生活費として親に渡し、残った分からコツコツ貯めた分でバイクを買いたいと言っています。親は子供の安全が心配でそれをさせたくありません。そのことで意見が対立してしまいました。


親の支配的言い分あれこれ

・「親として許さない」(上下関係を使った支配、いわゆるパワハラ)
・「親がここまで頭を下げて言っているのに聴けないのか」(上下関係&モラハラ)
・「誰のおかげでここまで大きくなったと思っているのだ」(上下関係&モラハラ)

・「親の言うことが聞けないあなたは親不孝者だ」(愛情を使った支配)

・「どうしてもそうするというのなら私を殴ってからいけ」(選択肢を狭め相手を悪者にするモラハラ)

・「あなたは聞き分けがない」(支配のための個人批判)
・「あなたは昔からガンコだった」(支配のための個人批判)




オビ=ワンに見習って、支配的なアプローチをしない方法は、例えば以下のような関わり。

・「バイクは大変事故の遭遇率が高く、また事故に遭ったとき重傷になりやすいので、そこをよく考えて欲しい」

・「私はあなたのことが大切なので事故に遭って欲しくない」

・「私自身、あなたのことを気にかけるところから子離れすべきことはわかっているのだが、それでもバイクに乗るというのは心配な気持ちが抑えられない。だから考えて欲しい」

など。


オビ=ワンは、アナキンが暗黒面に転落する直前の重大な場面ですら、こういった主体尊重の関わりをしています。

上であげた例みたく、「どうしても行くというのならばライトサーベルを抜いて私を倒してから行け」という、これまでの映画や物語のありきたりな対応もできたはずなのに、どれだけあなたのことを思っているかを感情を抑制しながら、しかしそれでも出つつも切々と伝えようとします。
しかし、失敗が予測されているにもかかわらず、オビ=ワンはアナキンの自由を束縛しません。


それが後年なにをもたらすかを、エピソードの順番から見るものはすでに知っているわけですが・・・。

この他者を支配せず、尊重しなければならない、それが難しいのもわかっているがそうありたいという現代的な考え方が、オビ=ワンの苦悩としてよく描かれています。


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● COMMENT ●

結果を受け止める親の勇気

映画を詳しく知らないのですが、主体性・尊重の姿勢のテキストとして登場人物の関係性を切り取ることができるのですね。こうした考え方は、職場の上司部下・先輩後輩等の間でも注目されている気がします。親としてはやめさせたいと思っているを選択肢を子どもが選んだとき、その結果、起こりうる可能性(バイク事故など)を親は受け止める勇気がいるので、苦しいのでしょうね。中長期的に子どもが主体性・自己肯定的なセンスを備えた人間になることを重視するのか、親としての目先の安心を重視するのか、が迫られてしまうので・・・。

うう…

なるほどです。もどかしさを私も感じてたかも…。
しかして、結局暗黒面に落ちてしまうアナキンなので…
色々むつかしー。

また時間が許せばそんな視点からも観てみたいです。


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