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2019-04

町田市の都立高校での暴行事件について思うこと - 2019.01.23 Wed

イギリスの作家、ジェフリー・アーチャーの小説に『ケインとアベル』という本がある。大変質の高い映像化もされている。

この冒頭のところで、子供時代のアベル(のちのロスノフスキ男爵)がオスマン帝国時代のトルコにおいて、飢えからパンを盗み当時の法律により手首を切り落とされそうになり、すんでのところで救われる逸話がある。

この状況は前近代のあり方で、人の基本的人権や生存権がまだ希薄だった時代。
この時代では、「子供は守られる」という概念がなく、大人と同じように法で断罪されてしまう。





先日、『近代化していない日本と近代化していない教育』
で書いたが、日本ではこの「子供の人権」「子供は守られるものという社会通念」の理解が異様なほどに遅れている。


先般の町田市都立高校の暴行・動画の事件で、メディアは軒並み、それを仕掛けた生徒を弾劾する論調であふれている。

子供がいかに不適切なことをしようとも、不道徳なことをしようとも、近代的な子供観を獲得した社会では、このような見方にはならないものだ。


・なぜその子はそのような行動に及んでしまったのだろうか?
・この子の家庭における問題点はないのだろうか?
・これ以前の学校のあり方や周囲の状況に問題はなかったのだろうか?
・この子がこれから社会に適応していくためにはどのような対策が必要なのだろうか?
・こういった子供を再び生まないためにはなにが必要か?

このような思考が浮かんでくるだろう。


しかし、悲しいかな日本では、大人がモラル・体制の側に立って、逸脱するものを断罪しようとするメンタル・思考になってしまう。

それで、そのときその人達の溜飲は下がるだろう。

しかし、それでは子供たちはケアされないまま放置される。
手をさしのべる必要のある子ほど、放置されることになる。


すると、そういった子供・大人は社会の表側からは排除され、表面的にきれいな側と、多くの人が目をそむけるダークな側が出来上がっていく。

これを続けるとゆくゆくは社会全体が劣化する。
すると、ダークなところをさらに排除するという、より分断を大きくすることが起きる。

私たち大人が生きている間でも、そこからくる問題は山ほど直面することになるだろう。しかし、それをもたらしたのが、他者を断罪し続けてきた自分たちであることに気づくことはない。
そして、もっと大きな負の状況を背負い込まされるのは私たちの子供や孫の世代だ。

そのようにしないために、僕はこの問題で生徒を断罪する姿勢は間違っていることを指摘する。
子供は、どこまでも守られ、救う必要があるのだ。


成人し大人になれば、責任能力を問われることになる。
それは否定できない。
しかし、子供時代に守られず、救われないまま大人になった人が、より大きな問題を起こすのは、ある種の必然だ。

大人になったときその責任を問うのは当然だ。
だが、それを当然と言い切っていいのは、子供であるときに守られ、救われる手がさしのべられる社会を前提としているのだ。



オスマン帝国のような封建的社会において大衆の前で処刑をするのは、そうやって処刑を庶民に娯楽として提供し溜飲を下げさせることで、さまざまな不満のガス抜きをさせる意味があった。

いま日本のメディアがしているのは、ほぼそれと変わらない。

平成も終わりになろうと言うときに、いまだに前近代のメンタルを日本の社会が持っておりそれをもてあそんでいることに、いい知れない不安と怒りを感じる。

↓子供を救う必要がある理由が見える本

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● COMMENT ●

世界からは「日本は明確に法律で体罰を禁止するべきだ」と求められている一方で、(http://topics.smt.docomo.ne.jp/article/nhknews/world/nhknews-10011780601_20190117)
当の国内では「体罰を容認する」どころかメディアで「積極的に体罰を肯定する」声を流すという時代の逆回しをしていますね。
「子どもへの体罰は許されない」という大前提の元に、体罰に頼らない指導方法、体制、理論を社会的・組織的に検討・実施していかなければ、個人の裁量に頼っている現状では体罰は無くならないように思います。

体罰容認は悪い方を弾劾するまでで思考が止まってしまいます。
弾劾することで自分の正義感が満たされ
悪い奴らは自分達とは違う人種だと
周りのしつけがなっていないからダメだと
思い込みたいのでしょう。
どうしたら防げるのかと考えることは悪い行いを許すこととは違うと思うのですが
同一視する人が多いですね。
しかし周りの人間が問題を抱えている親と子供に
どう接したらよいのか手助けをしたらよいのか
分からないのも現状だと思います。


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