保育無償化について - 2019.02.04 Mon
税金というのは、再分配が大切なわけです。どう使うかですね。
この話で多くの人が真っ先に感じるであろうことは、「え、そこにお金使うの?」ではないかと思います。
いまの時期ちょうど保育園の入所の決定がでている頃ですが、保育園に入れずこのままで仕事を続けられないという声がたくさん上がっています。
保育園に入れた人にとっては、無償化の恩恵はそれはないわけではありませんが、本当に困っているのは入れない人です。
保育無償化という話は、保護者の方をも向いていないのです。
そもそも、すでに保育施設は所得に応じての保育料のスライド制などもあり、法外な値段を取っているわけではありません。
保育無償化が悪いわけではありませんが、お金をかける順序が違うでしょという話になります。。
必要とする人が、一定以上の質の保育を受けることができて、そこで働く人が安定でき、その上で保育無償化の話がでてくるべきなのは明らかです。
まずは、保育施設を増やすこと。
なり手がいなくて施設を増やせない問題に対しては、保育従事者の賃金を上げること。
これに関しては社会問題として一般の人にも広く知られています。
保育士の給与を上げれば、保育施設も増やせるというのはわかりきった理屈です。
この保育無償化という税金の使い方は、子供、保護者、そこで働く人、この三者どの方向も向いていません。
では、どこを見ているのか?
実のところ、これがいまの保育行政の問題の本丸だと思うのです。
直接、保育無償化の話とつながっていませんが、可視化しやすいのでこちらの記事を見て下さい。
USJ年間パス、帰省費を補助…保育士不足に大阪市が奇策
これ。大阪市の施策です。
このテーマパークのチケットを保育者に配るという話。なんかいろいろ変でしょう?
つっこみどころはたくさんあるのだけど、ある一点に着目してこの問題を見て下さい。
それは、お金(税金)がどこに流れているかです。
お金の流れだけ見たとき、保育を充実させようという意味合いで支出されている税金ですが、そのテーマパークというある特定の私企業に流れているのがわかります。
この構造。
これが保育無償化のからくりにも同じようにあります。
かつて保育施設が規制緩和されて民間企業の参入ができなかった頃。
社会福祉法人などの団体が、設置運営をしていました。
地域に密着しており、多くが一箇所もしくは少数のいくつかの施設経営を行い、多数の施設を抱えているところは必ずしも多くありませんでした。
営利化以降、そういった業界のモデル自体が大きく変わります。
ひとつの会社がたくさんの施設を経営するようになりました。
社福が数園を経営する上では、保育無償化というのはさしたる影響はありませんが、これが複数園を経営する大企業ともなると、大きなお金の流れとなります。
厚労省の諮問委員会に加わっている事業当事者や、ロビー活動をしている人たちが、自分たちに都合の良い税金の流れの仕組みを作り、そこで利益を大きくする状態がすでに起こっています。中にはどこぞの私人の夫人と仲良しになっている企業もあります。
派遣法の改正においてパソナの竹中平蔵がしたことと、ほとんど同じようなことが今度は保育に舞台を変えて起こっているといえるでしょう。
いまの日本社会のようなモノの売れない時代において、税金から助成金や補助金が出る仕組みを持っている福祉の世界は企業にとってたいへんうまみのあるところです。
保育の質や、子供の育成という社会的な視点をもった企業では、一施設の受託人数をあまり大きくしないようにしたり、施設数の急速な増大も慎重に考えているところもあります。また、そういったところは研修などにも力を入れています。
保育施設を経営する民間企業の全部がよくないわけではありませんが、大手の中にはそのような補助金ビジネスになっているところがあります。
今回の保育無償化の施策は、こういった企業を潤すために存在していると言えます。
このような仕組みを国が進んで作っている以上、保育業界の質はむしろどんどん下がっていくことでしょう。
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● COMMENT ●
。。。
現時点で保育料に関しては、本当にお金が困ってる人(生活保護世帯や、ひとり親世帯、低収入世帯など)からは、そんなにお金取ってなかったのに、全員無償化って、じゃあ金持ちからも取らないってことですよね。一見低収入の貧困家庭に向けた制度のフリして、実は得してるの誰かな?って感じですよね。
おっしゃる通り、まず、公立保育園の絶対数が足りなくて、安心して預けられるところがないって所に大問題を抱えてるのに、入れてる人にしか恩恵ないとか、お金の使いどころ本当おかしいです。日本の政治は、それぞれの思惑が入り込みすぎて、税金の使い方無茶苦茶すぎます。もし、仮に思惑なんかないとしたらお金の使い方下手くそ過ぎてびっくりですよ。
私も同感です
でも上の子の保育園は、すでに人手不足なのにすぐそばに姉妹園を作ったり、事務担当がいないのでいろんな連絡が漏れたりと大変そうに見えます。
給食は園内調理ですが、かなり質素に感じます。もちろん保育士の方達には大変感謝していますのでクレームを言ったことはありません。
出産の時には実家近くの私が通っていた保育園に一時保育をお願いするつもりですが、今の私の記憶を辿ってもとても良い保育園でした。園長先生も同じ方なので、楽しみにしています。
そこじゃないと私も思いました。
保育士の待遇はひどく、先生が疲弊しているのが分かります。入れ替わりが激しく、経験のない保育士ばかり。研修なんてとてもない。もっと待遇をよくして保育士を増やし、子どもを見る人数を増やしてほしいです。近所の幼稚園では22人に先生2人。うちの保育園は24人にひとり。朝番、遅番、土曜保育といつ休むのだろうと気の毒です。余裕をもたせた環境で穏やかに子どもを見守る環境をつくってほしいです。
同感です
我が家にも乳幼児がいますので、短絡的に考えれば保育料という名目での出費は無くなり経済的な負担は減るのでしょうが、それでも反対です。
結局は税金を使ってやるわけですから。
無償化せず、その分のお金を保育士さんの待遇改善、保育施設の為に使ってほしいです。
保育士の仕事が魅力的なものにならなければ(様々な面で)、保育の質は向上していかないと思います。
未来を担う子ども達を育てる、こんな素晴らしいことに携わってくださっている方が、少しでも無理なく働ける環境が整うことを切に願います。
もやもやしていたところでした。
無償化すればさらに待機児童は増えるでしょうね。ただなら家で見たくない親はたくさんいるでしょう。
何を考えているのかなと思っていましたが、まあ誰か得する人がいるんですねー・・
同感です
出所が税金である補助金を使って保育所の事業規模を拡大し
投資を増やして経済成長させる方針を国が進めている以上、
この流れは変えられないのでしょう。
こんなやり方でしか成長戦略が達成できないのであれば
いっそ国が沈没したほうが良いとも思います。
こんな環境の中で
保育園に子どもを預ける気はなくなってしまいました。
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須賀先生のお考えをお聞きしたかったので。。
でも、無償化の意図に納得し、さらに絶望しました。。
今後、どうなってしまうのでしょう…
我が子は、幼稚園類似施設に通っています。とてもとても質の高い保育を受けることができています。でも、認可幼稚園ではないため、無償化の対象に入ることが出来ないようです。
先生方が真剣に保育を考え築き上げてきた園なのに…
こんな政策に…
悔し過ぎて言葉になりません…
自分の考えをしっかり持って、せめて我が子には質の良い保育を受けさせたいと考えています。