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2019-09

「命をいただく」という一般に流布する言葉 vol.2 - 2019.02.16 Sat

前回の続き。





◆モラルを押しつけによって内在化させることはできない

では、「食べ物を残さない」とか「お箸を正しく持つ」といった規範をどうしたら子供に持たせられるのかについて考えてみましょう。


その前に少し想像してもらいたいのですが、あなたがどこかに監禁されて怖い顔をした人から脅されて、なにかの承諾書や借用証書などにサインさせられたとしたら、それは自発的にしたものと言えるでしょうか?

まあ、当然ながらそうはならないですよね。
少しオーバーな例えではありますが、大人に小言を言われながら苦手なものを食べたり、「食べないと○○してあげないよ」と脅されて食べることも、上の例と大同小異です。このとき注意点は、「食べられたらデザートあげるわよ」などと優しく言ったとしてもそれは本質的に変わらないということです。

子供の本当の成長というのは、主体的、自発的成長であることを意味します。
大人にさせられることがなんでも即悪いというわけでもありませんが、必ずしもその子の身になっているとは限りません。

前回の記事で挙げた自身も偏食なのに厳しい保育士が、まさにそのケースだといえるでしょう。
モラルを外在化してはいるけど、自分の身に(内在化)はなっていない。
そして、その自身に対するたくさんの否定の中で作られた外在化しているモラルに自分自身が振り回されている。
これは生きにくい状態と言えます。




◆過干渉や支配にならずに規範を持たせるには

ちなみに、うちの子には「残してはならない」といったことを求めたことはありませんが、特別な理由のない限り残さない子になっています。

・親自身の行動
・信頼関係による規範の自然な伝達

そうなっていることの背景にはおそらくこのふたつがあるでしょう。
ひとつは、親自身がその子供に望むことを実践していること。

「食べ物を大事にしなさい」という人自身が、食べ物を粗末にする行動をとり、それを子供が見ていたとしたら、その大人が要求する規範は空白化しますし、なによりそのような大人に対する信頼感を子供は厚くできません。


もうひとつは、子供は信頼する大人を肯定し、寄り添うように成長していく子供の育ちのメカニズムがあります。

「食べさせようとする」「残させまいとする」といった、大人望む行動を子供に作り出そうとする過干渉な行為をしなくとも、普通の生活の中で

・子供がこぼしたときに「気をつけて下さいね」と言う
・ご飯粒や食べ物のかけらが残っているまま、食事を終わりにしようとしているときなどに、「まだそこにくっついていますよ」と気づかせる

こういった、日常の関わりの中からだけでも、子供は食べ物を大切にすることや、食事のマナーに気をつけることなどを自然と理解していきます。

もし、大人が心に思うことがあって「私は食べ物を大事にすることが大切だと思っているんだよ」と口にすることがあってもいいでしょう。
でも、それと残さず食べることを強要するのとは別の問題です。

この違いわかりますか。

大人が大事に思うことを、表明したり伝えることは自体は過干渉ではありません。(ひんぱんに言うのであれば過干渉だが)
でも、それを子供にムリに要求していくのは、過干渉~支配へとグラデーションで移り変わっていきます。


また、他のところで支配や過干渉の関わりをたくさん積み重ねている場合、この大人の持っている規範が自然と伝わることは減ってしまいます。
できれば子育ての早い段階から、過干渉や支配の関わりにならないクセを大人がつけていた方がムリのない子育てになりやすいです。


このことはたまたまうちの子だからできているというわけではなく、保育園で保育している子でも、そのように信頼関係で関わっていくことで自然と規範を備えていくことを確認しています。



◆イライラポイントとしての食事

そうはいっても、そのようにあっけらかんと子供が規範に不適合な姿を許容していくことができないという人もいることでしょう。

僕自身も過去にそうでした。
子供が食事をこぼしたり、食器を倒したり、そういった姿に接すると自分でも制御できないような怒りや感情の動きがありました。
ただ、僕は保育という仕事の中でそれを繰り返し経験したので、そのときの自分をコントロールするすべを身につけることができました。

実際に家庭で子育てしている人にとって、そのような経験値を積むことはできないでしょうから、以下の方法を試してみることを提案します。


a,食事以前のところで過干渉のクセを軽減しておく(広く意識を持つ)
b,心の焦点をあえてずらしておく
c,それが本当に困ることなのか考えてみる
d,6秒待つ



a,食事以前のところで過干渉のクセを軽減しておく

普段から子供に過干渉が常態となっていると、子供の一挙手一投足により自分の感情が左右されやすくなってしまいます。
だから、食事の時とてもイライラしてしまう人は、それ以前、それ以外の場所でも過干渉、子供から過剰に目が離せない状態になっている人が多いです。
食事は、どうしても子供へより注目がいってしまうときなので、食事面で過干渉を避けようと思っても難しいです。だから、それ以外のところから過干渉になりすぎない意識を持つといいでしょう。


そのためには例えばこんな方法があります。

子供以外のところにも意識を向けてみます。
子供が遊んでいるとき、窓の外を眺めて、「ああ、空がきれいだなぁ」と思ってみるなど。

僕がおすすめなのは、子供と過ごすときはゆっくりしゃべるのを意識しておくことです。
注意したりするときにではなく、過ごすとき普段からゆっくりしゃべるようにします。

過干渉が強い人は、大人を相手にするよりも子供に話すときの方が早口なんていう人もいます。普段がこうだと、子供は過干渉の負荷から逃れるために、大人をスルーするクセがつくのでいろいろ難しくなってしまいます。

子供といるときは、まずは演技でもいいからゆっくりの自分を演出してみる。慣れてくるとあまり意識せずともできるようになる場合もあります。

大人の個性よってはムリなこともあるので、そういうときは↓



b,心の焦点をあえてずらしておく

上の「空がきれいだなぁ」のミニマム版です。
例えば、それが食事の時ならば、子供の一挙手一投足を見続けるのではなく、少し気持ちの焦点をずらしたところに意識をおいておくのです。

「そういえば、この前のドラマはおもしろかったな~」
「あ~、どら焼き食べたいな~」

など。

こうしておくと、例えば子供がお茶をこぼしてしまったときなど、「あ~どら焼き食べたいな~」のリズムで、「あ~こぼしちゃったのね~」と流しやすくなります。


本当に子育てがしんどくなってしまう人の中には、「私がこの子をしっかりと責任持って育てなければならない」といった自分へのプレッシャーが強すぎて、過干渉になりガミガミ怒ったり、手をあげてしまったりになり、自己嫌悪から子供に向き合うこと、関わることが辛くなってしまう人もいます。

心の焦点から子供を外しておくことが、子供にとっても大人にとってもいい場合があります。



c,それが本当に困ることなのか考えてみる

「も~~、あなたはいつもお茶をこぼしてっ!私いつも気をつけなさいっていっているでしょ!」
といった感情の高ぶりに直面してしまうとき、20歳になってもこの子がそれと同じことをしているかどうかを少し想像してみて下さい。

ほとんどのケースにおいて、それが想像できないはずです。

・あなたははたちになってもまだおむつしているの!
・あなたははたちになってもまだお箸つかえないの!
・あなたははたちになってもまだお味噌汁こぼしているの!

といった状況は想像できないでしょ。
目の前の子供のできないことや、ミステイクは長い人生の中では誤差にすらならないほどの小さなことでしかありません。
今日、今、というスパンで考えた場合は大事になるのですが、目先のできるできない、ミス、といったことは実は子供の長い成長からはそんなに問題ではないのです。



d,6秒待つ

怒りのコントロールでいわれることです。
手をグーにして、深呼吸しながら6秒待つ、すると一時の怒りの多くがしずまると言われています。


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● COMMENT ●

質問に答えていただきありがとうございます

マグロの解体ショーは食べるので粗末にしている感じはないですね。
それよりコンビニなどの大量廃棄の方が気になります。
子供が苦しい思いをしてまで食べるのは良くないと思いますが
バイキングでわざと残したり不適切動画のように
食べ物を粗末にするのは非常に腹立たしいです。
食べ物の命を何だと思っているのかと。
食事に困っていたこともありましたので余計に腹立たしいです。
ただ好き嫌い自体は否定しません。
好き嫌いで食べ物を粗末にしてもよいという考えが嫌なのです。
残してしまうくらいなら他の食べ物で栄養を補ったり
食べられる量だけよそったり
余裕があれば嫌いなものを食べやすく工夫するのはありです。

おとーちゃんのお子さんが食べられるようになったのは
とても良かったと思います。
乱文失礼しました。

20代の男性保育士がデンマークで保育士体験をした『デンマークで保育士』という本を読んだのですが、「彼らは食事を完食しようとする気がない!」と驚いている描写があり、印象的でした。
子供はもちろん保育士達もそうで、嫌いだから、食べきれないからとちょいちょい残すんですって。
著者が日本的価値観から離れられておらず、そのへん特に掘り下げられてはなかったのでデンマーク人達の真意は定かではないですが、まー普通に考えても給食だから残飯は必ず出るし、快適なレベルを超えて無理して食べるのはナンセンス、残して堆肥にしましょうよという理路は理解できます。

人権教育の行き届いているっぽい(イメージw)北欧の人々がそうなら、我々が硬く握り締めて、子供に強要すらしている価値観って一体…と、かなりグラグラしました。

モラハラ、難しいですね。子育てはそもそも主観でしかできないので(育児書通りに反応する子供など存在しない)、モラルを伝えようとすることと、モラルを押し付けようとすることの線引きがとっても難しいと思います。
しらずしらずのうちにきっとやってしまっている…

食事中に「肘!、お茶碗持ち上げて!」と言う代わりに「肘ついとるで、お箸からご飯がこぼれとるで」と言うようにしましたが、この言い方でも毎度毎度だとストレスになるだろうなとうすうす感じています。

「命をいただく」ということは、うちは常に子供たちに伝えていますね~。
そもそも我々が存在しているのは、規則正しく地球が回り、毎日太陽が昇って植物を育て動物がそれを食べ、我々の血肉になってくれているということで、誰でもその大きな摂理に取り込まれているということをわかってほしいです。
たった一人で存在しているのではなく、人と人、自然と人、みんなつながって存在していることを感じてほしいです。

で、子供たちが食べ物を残した時は、うちでは、無理に食べても下痢になって出るだけで栄養にはならんからごめんなさいしとき、と言っています。
ただ、ご飯は要らんけどお菓子なら欲しい、なとどのたまうのでどうしたもんでしょうかねぇ。

7歳、4歳の息子たちがいます。

2人とも食が細い子なので、食事を残すことについてはもうほとんど気にならなくなりました。

たった数口で「もうお腹いっぱい」と言われても、「じゃあごちそうさましようか」と普通に言えることがほとんどです。

ただ、長男がいまだに左手をお皿に添えなくて、そこが気になっています。
3歳の頃から毎日言っているのに。。
大人になっても左手を添えずに食べている様子が想像できます。

「左手は?」と言うと、添えます。
「ごはんの時、どうするんだっけ?」と言っても、気づいて添えます。
でも、自分では気づかないことがほとんどです。

「5回注意されたら食事終了」にしたら添えるようになるかな、と思ったりもしますが、そんな風に無理矢理やらせるのも違う気がして、やっていません。

でも、どうやったら添えるようになるのか。。
食事の前に毎回、「お約束」としてお互い確認してみようかな、と思っているところです。

ぷこたんさんへ

我が息子7歳も茶碗に左手を添えません。添えたとしても、人差し指を引っかけるという変な持ち上げ方をします。

が、左手を自然に添えられないのは身体がそうなっているからだそうです。簡単な動作に思えますが、右と左が違う動作をし、尚且つそれが同時にできるというのは段階があっていきつく動作だそうです。我が子は発達凸凹ですので、関連した色々な本など読んでいるのですが、花風社さんから出ている「人間脳を育てる」という本に詳しいです。もちろんぷこたんさんのお子さんが発達凸凹であると言っているわけではありません。人間としての動きの発達がよく分かるのでおもしろい本です。言葉でいくら言っても改善しないのは、言葉以前の領域だから。出来ないこと、出来ない動きがあってもそこに注目するのではなく身体全体を見て育てていく、という考えが私は好きです。的外れでしたらすみません、無視して下さい。

私自身は好き嫌いもなく育ちましたが、たまに苦手なものがあると母親にものすごく否定された記憶があります。父親がかばってくれたので安心したこともセットです。なので、我が子にはそうしたくないと思っていますがそれでもたまに言ってしまうので、これは子供側ではなく自分の問題だと自覚してその時には気を逸らしたいと思います。

おとーちゃんさんいつももやもや感じていることを分かりやすく言語化して下さってありがとうございます。今の姿が子供の全てではない、いつもこの言葉を胸に子供と向き合っていきたいです。

いつもありがとうございます。

いつも記事の更新楽しみにしています。長男が生まれた時から、お友だちに教えてもらって拝見させていただいているこのサイト。過去の記事もちゃんと読んだはずなのに……、本も何度も読んだはずなのに……その時には、『そうだよな!!』って思うのに、日々の生活の中で、過干渉してしまったり、イライラしてしまったり……。三男の育児してるのに、長男の時から成長していない気が……。今回の記事は、三男の遊び食べに、ちょっと疲れていたので、タイムリーで、本当に心が救われました!! お昼寝からもう少しで起きると思うので、お昼ご飯から笑顔で食事したいと思います(o^-^o)

あまなつ母さん

アドバイスありがとうございます!

長男は発達障害があります。
凹凸ありまくりです。

体幹の筋肉も弱く、短い時間しか椅子にシャキッと座れません。
食事の時の左手と体幹の筋肉、もしかしたら関係あるのかな、とつい最近頭をよぎったことがあります。
そういうことが書かれている本があるんですね!ご紹介いただき、本当にうれしいです。
ありがとうございます。

食事の時の左手、気にしなければそれが一番楽なんです。
気にしないでいることも簡単にできます。
でも、それだと大人になってもそのままなんじゃないか。将来、友達と食事をする時に恥をかくんじゃないか。ちゃんと手を添える習慣をつけることが親の勤めなんじゃないか。
そう考えてしまい、なかなか放っておけません。

「左手添えようね」の声かけだけで4年。全然改善されないのに、ほかの方法がわからない。

こういう状況でした。
ご紹介いただいた本から、何かヒントを得られればと思います。

考えが明確で分かりやすいです。

過去のものから、気になったタイトルのものは一通り読ませて頂きました。
教職をしており、今は育児休暇中で、一歳児とのんびり過ごしております。

わりとゆったりと緩やかに子どもを見守っているつもりです。こちらを読んでからは特に、過干渉、支配的にならないようにと。

今回の内容で参考になったのは、こうなってほしいなと親が思うことは、自身が示しつつ、さらっと伝えるということです。食事に限らず、生活すべてに言えることですね。
それでもイライラするときの対処法も、具体的で分かりやすかったです。
ただ、即効性がないことなので、焦る気持ちは生まれますね。我が子は、どうにでもなるか、彼の人生だしと一歳児のいまは思えますが、やはりクラスの子となると、隣のクラス、多学年の先生の目がとても気になります。全校集会でうちのクラスの子は落ち着かないなとか。
きっと心の余裕がないからでしょう。

子育てで大事なことは、心の余裕をもつことですね。毎日心がけているのは、こちらで学んだ3倍ゆっくりということです。
一歳児との生活では、まぁまぁできているかなぁと思います。それでも、彼の気分を害して、思いきりひっくり返ってじたばた泣かれることもありますが…

新しい更新を楽しみにお待ちしております。


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