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2019-07

慣らし保育と母性神話 - 2019.05.06 Mon

最近では、あからさまな母性神話を主張する人はそう多くない。

しかし、母性神話の断片は、すでにほとんどの人が持ってしまっているし、子育てにまつわるところでは、この影響はいまだに大きく存在している。

(母性神話とは、母親の愛情や献身によって子供が健全に育つのだといった精神主義的な考え方。現実的には、子育てを母親に自己犠牲をしいるものとしてしまう。三歳児神話や母乳神話といったものもここから派生している)





保育施設では新入園当初、慣らし保育を行っているところが多い。
そのやり方も、個々の施設によりさまざまだが、あまりに保護者に負担をかけすぎではと思われる内容になっているところも少なくない。

保育施設とは、子供をあずける必要があってあずけるところのなのだから、保護者も園で一緒に過ごしたり、短時間のみの保育にして早めの迎えを要求するといった状態を過度に続けることは、理屈に合わないことだ。

しかし、そうした過剰とも言える、保護者に負担の大きい形での慣らし保育はいまだに多くのところでなされている。

一説にはSIDSの発生率は入園当初に高まるというデータもあり、そうした観点から慣らしの期間に余裕を持つことは、ある面では望ましいのかもしれない。

しかし、現状過剰な慣らし保育になっているところの背景には、そうした論理的なものよりも、母性神話から派生した感覚が強いようだ。

・親(特に母親)が、子供に手厚く関わるべき
・なによりも子供のことを優先すべき
・子供のために自分が犠牲になるのは当然のこと
・子供のことを「かわいい」と思うべき。「大切に」思うべき。といった内面への要求


母性神話は、かつて近代社会を迎える中で、当初は女性の地位向上のために高まったものらしい。しかし、現在では女性を差別するものになっている。


例えば、こんなケースがある。
その施設は、0歳児の新入園に1ヶ月もの慣らし保育を求める。
あるとき、父子家庭の子供が入園してきた。しかし、その父親には慣らし保育を最初から要求しなかった。母子家庭の母親には要求しているのにも関わらず。

その保育施設としては、女性差別をしているつもりはないだろう。しかし、現実にしているのはそういうことだ。

少なくない保育施設が、こうしたすでに古くなっている精神論を保育のバックボーンにしてしまっていることに気づいていない。



さて、前記事『乳児保育の不備と物理的管理の悪循環』では、保育の配慮不足が子供の不適応な姿を引き起こし、それに物理的な管理をすることが保育の非専門性であることを挙げた。

この問題と、無自覚に母性神話に寄った保育観、過剰な慣らし保育は相関してくる。


・保育の配慮不足、不備による子供が安心安全を得られず、安定しない状態
  ↓
・その子の問題ととらえる園側の認識
  ↓
・母親が対応すべきという母性神話をバックボーンにした責任の押しつけ
  ↓
・過剰な慣らし保育


このように、保育の不備が見えていないところに加えて、母親に子供のあり方を求めるという安易な母性神話的感覚から、親への負担を当然のものとしてしまう構造。


すでに女性であっても男性と同じ社会的責任を持って働く時代になっている。
保育園の感覚が古いままでいては、保育の専門性が社会的に認められることもないし、保育士の地位向上もない。

その保護者から要望のあるケースは別だが、保護者に大きな負担をかける慣らし保育をいまだにやっているところは、早急に話し合って見直した方がいいだろう。

保育園側が、安心安全に最大限の配慮をすれば、慣らし保育の長さは確実に減らすことができる。
だらだらと親に責任を押しつける慣らし保育を長きにわたって要求しているところは、自身の保育への配慮、認識が不足しているのだ。

現在、保護者をとりまく就労の状況は、大変厳しいものとなっている。
保護者と、その人が働く職場に大きな負担となる長期の慣らし保育を改善することは、保育施設として重要なことだ。

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