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2019-09

「しつけ」がいじめを生む - 2019.09.09 Mon

以前からの読者の方は、僕が「しつけ」でない子育てを提唱してきたこと、「しつけ」の問題点を指摘してきたことをご存じだろう。

前回までの記事とも呼応するが、「しつけ」こそ「こうであれ」を社会的に蔓延させる大元の概念になってしまっている。これは子供だけでなく大人も無関係でない。

「しつけ」は、本質的に「正しいもの」「規範」をあらかじめ設定して、子供をそこに当てはめていく子育て方法。そこで実際に行われるのが、数々の「否定」のアプローチ。



細かくは過去記事をご覧いただくとして、いわゆるところのしつけ行為は、結局のところ規範から逸脱することに対してNOを送ることの積み重ねになっている。

程度の問題で、こうした子育てをしたとしても大きな問題にならないケースもある。
しかし、その程度のバランスが崩れてしまえば、子供の自尊心や自己肯定感を適切に成長させることができなくなったり、子供の意欲や自己表現を萎縮させる方にも行ってしまう。
果ては、虐待や虐待死にすらつながっている。

また、発達に個性、ばらつきのある子供の子育ての場合、「しつけ」の子育ては簡単に破綻する。
本質的にしつけは、優しくないのだ。(「しつけ」自体が不寛容さを内包している)


世間に流布する多くの子育て論は、この「しつけ」の中でのバランスの取り方を伝えることに終始している。
しかし、バランスの問題ゆえに決定打になることはない。だから最後は情緒論、感情論でまとめることになる。例えば「子育ては結局愛情が大事」のように。

僕は、そうではなく子育てにおける「しつけ」しかアプローチ方法のない現状に対して、その枠組みごと取り替えてしまう子育てのパラダイム転換を提唱してきている。

それが受容と信頼関係を使った子育てアプローチ。拙著『保育士おとーちゃんの「叱らなくていい子育て」』で述べているところ。

それは「叱らないようにすること」を目指しているのではなく、子育ての形を丸ごと入れ替えてしまうことで、そもそも子供本来の叱らなくていい状態での子育てを送ることを企図したもの。


さて、ここまでが前書き。
本日のテーマは、「しつけ」こそが「いじめ」のもっとも大きな原因になっていることの指摘。

子供たちは、「しつけ」のメソッドによって、たくさんの「こうであれ」を求められ、そこに合わせるべく頑張り、それでも少なからず否定が蓄積されある種の心の負荷を溜め込んでいる。

ここで子供たちはある種の心のクセを獲得させられてしまう。

それは、規範意識から逸脱することに対する不寛容さ。

自分が普段から頑張りを発揮し、大人からの支配的要求に応えている子ほど、自分ではコントロールできない他者への不寛容さを心に持ってしまう。

否定の蓄積と、他者からの行動の強要(支配)は、多くの場合心の奥に「怒り」として沈殿していく。

他者への不寛容さと抑圧された怒りのエネルギーは、規範に適応的でない他者を見たときその人への攻撃的な感情として出てきてしまう。

「規範からはずれていることへの指摘としての攻撃」
ここには一見の正義があるように見える。しかし、それこそがモラルハラスメントだ。

しつけのメソッドで子供に、否定と支配(優しい支配であるところの管理も)を積み重ねていくことは、こうした他者にいじめをせざるを得ない心理を子供に持たせてしまう。

この心のクセは、善意とかそうしたものでもカバーしきれるものでないことも特徴。
優しい人、善意の人であれ、この「不寛容さ」を持たされてしまう。

子供時代は他の子供へのいじめとして、大人になれば、他者へのモラルハラスメントとして現れてくる。
その人が本来優しい人であれ持たされる。このことは大変悲しいこと。



そして、しばしばしつけの子育ての中での優等生だった保育士や教員になる人ほど、こうした傾向を持っている場合がある。

仕事で子供に関わる人が、その価値観のまま何年も継続してしまうと、周りからも本当の意味での信頼関係が築けなくなってしまう。なかんずく、子供からは特に。
すると今度は自己肯定のために、さらに子供の支配へと傾倒しかねない。
このことは誰にとっても不幸なこと。


最近、僕は保育士向けの研修で「あなたたちこそ、子供たちをいじめに向かわせないカギを持っています」と伝えている。

それは、保育士が普段から培っている信頼関係を通して、他者への寛容さを伝えること。

具体的には、問題児を問題児として排除するスタンスに立ってしまうのではなく、「○○さんは、いろいろ気になるところもあるけど、私は○○さんのことスキなんだよ」と普段から周囲の子供に堂々と言葉にして伝えること。

こうすることによって、保育士への信頼感ゆえに、問題のあるその子ですら受け止める寛容さを子供は持つことができる。

一生懸命子育てするあまり、支配や管理、否定のアプローチが過剰になってしまう家庭もある。だからこそ、保育士がそこのバランスを取ることで、いじめというする方もされる方にとっても辛い状況に子供がはまってしまうことを防いで欲しいと保育研修を通して広めている。


さらには、問題行動を起こす子供に対しても否定でないアプローチを理解しておく必要もあるだろう。
ここでは書ききれないので、過去記事等にそれは譲るが、例えば「どうしたの?」と入り、子供自身に考えさせる主体的な成長へと持っていくことがその方法のひとつ。
「悪いんだからやるな」「正しいんだからやりなさい」の押しつけはそれがどんなに正論であろうとも、一種の支配に他ならない。
子供の成長とは、自分自身で理解し獲得することにある。

このあたりを子育ての中で実感できる人が増えれば、もっと他者に寛容な社会になるのではと願ってやまない。

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● COMMENT ●

わかります!

私の息子の幼稚園でも、特に精神年齢の高い女の子は、特に、正しくないことに対する否定を強く感じます。
多分、お母さんがきちんとされいて、子供さんも賢く、また、素直なんですよね。
すごくそれは周りから見ると、褒められたことなのですが、正しくないことに関して、とても不寛容に感じます。
まだ、子供なので、正しくないことをした子に、必要以上に厳しく言ったり、強い不快感を感じているようで、なんだかキツく感じてしまいます。
でも、他の側面では、優しくてとても気遣いが出来る良いコなんです。

正しく育てることは、正しくないことを必要以上に不寛容になり、それが行き過ぎるといじめなどにつながる、と私も思いました。

ちょっとくらい、いい加減でも、笑って許せるくらいの方がちょうどよいのかな、と。

ついつい傍から見ると、しつけが行き届いた子供の方が褒められがちなのですが、
子供のうちは子供らしく、ちょっとやんちゃ坊主くらいが良いのかもしれませんね。


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楽しく無理のない子育てを広めたいと2009年ブログ開設。多くの方の応援があって著作の出版や講演活動をするようになりました。 現在は、子育て講演や保育士セミナーの他、『たまひよ』や『AERA with Baby 』等の子育て雑誌の監修やコラム執筆。『ジョブデポ保育士』の監修や育児相談などをいたしております。

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