FC2ブログ

2020-10

道徳に関して質問をもらったのでもう少し書いてみよう。 - 2020.03.21 Sat

道徳に関して質問をもらったのでもう少し書いてみよう。

この二つのツイートからの派生。
https://twitter.com/hoikushioto/status/1240519071310819329?s=20
https://twitter.com/hoikushioto/status/1240521964613038081?s=20

「いいこと」「悪いこと」を教えているのだから意味があるのでは?との質問。
これにはいくつかの側面から問題がある。


まず、ひとつめこれらは「お気持ち」の問題になっている。
勉強や学問を「お気持ち」にしてしまうことは、ある意味で反知性の行いとなる。
現実問題で見てみよう。
「いいこと」としてたくさんの無意味なこと、または害になることすら現実には起こりうる。例えば、EM菌団子を河川に投入するといったイベントが自治体や学校、子供を巻き込んで行われてきた。専門家によれば雑菌を投げ込んでいるに過ぎないといわれる。また、東日本大震災のとき学校が子供たちに千羽鶴を折らせそれを被災地に送り、必要な物資すら届かない中で被災地はそれの処分に困ったことがあった。ご記憶にある人もいることだろう。
またこんなことがある。町内会で率先してどぶさらいなどをしてくれる「いい人」である男性が、家庭内では配偶者にDVやモラハラをしているといったことがある。
これらがなにを意味するか。「いいこと」というのはあくまで主観であり、それが適切に機能するとは限らないということ。


次にこのことは内面への介入となっている点。
日本国憲法では思想信条の自由が保障されている。いわゆる内面の自由。
学校教育において「これがいいことなのだ」と子供に刷り込んでいくことはこの境界を越える行いといえる。しかし「いいことを教え込んでいるのだから、その境界を越える行いはゆるされる」と看過されがちになる。
「いいこと」を理由に人の自由を奪う行いは歴史を振り返るとさまざまに見ることができる。ナチスドイツの行ったT4作戦(障がい者の組織的抹殺)などはその代表的なケース。
いま香川で起こっている「ゲームは良くないから規制する」という趣旨の条例にしても、東京都で制定された「東京都子どもを受動喫煙から守る条例」などのように、「いいこと」を理由づけに市民生活の自由を制限する法が実際に生まれている。

エセ歴史である「江戸しぐさ」がいいことを言っているのだからと言う理由で道徳の教科書に採用されていたケースもある。これも反知性的な行いであり学問として看過できることではない。これらは結局「いいこと」を理由に人を支配しやすくすることへつながる。


もうひとつの観点は、「いいこと」を刷り込むことで人はいいことをするようになるのか?という点。かりにその子がそれまでの生育歴の中で、肯定されることが少なく、自尊心を傷つけられたり否定されることが多いといった場合、その子は簡単に「いいこと」ができるとは限らないだろう。もし、そうであると「いいこと」を要求する大人から、その子を肯定的にみることは難しくなる。
人は、「いいこと」を教え込まれただけでそれができるようになるわけではない。それ以外の様々な要素があって人格を形成する。そしてそうした基礎的な部分の方がはるかに大切である。

また別の観点は、「いいこと」は一種の麻薬となる点。
麻薬とはどういう意味かというと、「自己承認」のためのバイアスのかかった思考となること。
一面で「いいこと」をし、他の面で「悪いこと」をしている。こういう自己の状況があったとき。人は自分に都合良く自己認識ができる。
現実にはどういう問題があるかというと、こんなことが起こっている。
日本には中小の企業経営者を対象にした全国的に組織されている団体がいくつかある。そのうちのいくつかは「いいこと」を前面に出している。みなで集まって「いいこと」がたくさん書いてある会の理念を唱和したりといったことをやっている。
しかし、一方でその経営者たちが自社に帰ると、社員に「いいこと」を強要しそれが自己犠牲を強いるタダ残業だったり。ノルマを達成できないことに対する「努力が足りない」「誠意がたりない」というモラハラだったりする。
「いいこと」はお気持ちの問題であり、こうした主観的運用が可能になる。そしてそれは他者の支配の理由へと発展する。
ちなみにこうした企業経営者を対象とした全国組織の中には、前身がカルト宗教であったものもある。「いいこと」を使って人を支配する点において、道徳とカルト宗教の類似点があると言えるだろう。

また、この麻薬は「いいこと」を教えているという立場の人間に強力な自己承認(自己陶酔)を与える。学校で言えば教員がそれにとらわれかねない。
さらに、内面の支配者になる自己承認(自己陶酔)が加わると、よりそれをする人自身をスポイルしていくこととなる。これは体罰などの教員の暴走を生みかねない懸念をもたらす。


いじめやモラルハラスメントは、それをする人からは「正しいことをしている」との認識で行われる。ゆえに「いいこと」「悪いこと」というお気持ちのファクターでこれを防止することはできない。


多様性の視点からも指摘ができる。
なにを「いいこと」と考えるかは、人によって幅のあることだろう。しかし、道徳の授業で点数をつけるといった行いにより、この幅を否定することになる。それは個性や多様性の否定につながり、全体主義的な人格形成をすることにつながっていく。


最後に。
道徳を「お気持ち」にすることはさまざまに問題があることを上でいろいろ述べた。
では、現代でその道徳の代わりになりうるものはなんだろうか?
それはお気持ちではなくリアルな自身の生活・身体と直接に関わる視点の提示であろう。
それが「人権」の学びである。
日本の教育で行われる道徳が、「人権」を教えた後に「いいこと」とはなんだろう?といったテーマでの議論を生むのならばそれはおかしなことではないだろう。
しかし、現在のところ人権を教えることをあえて避けた上で、お気持ちのすり込みを行っている傾向がある。これはその行為自体がすでに人権の侵害ともいえる。

人権の学びが、社会におけるおかしなことをおかしいと言える状況をつくり、労働や生活においての向上をもたらす。
また身体的な面での人権の理解は、性教育、他者や異性との関わりの適切な学び、痴漢のやセクハラの撲滅や自殺の防止といった学びへとつながるだろう。

関連記事

● COMMENT ●


トラックバック

http://hoikushipapa.jp/tb.php/1364-62445160
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

いい慣らし保育と悪い慣らし保育 «  | BLOG TOP |  » 【保育】信頼関係は大人がスタート地点

ごあいさつ

ただいまコメント欄での子育て相談は休止中です。 お悩みのコメント下さっても回答を差し上げることができません。 申し訳ありませんが、過去記事、すでにある返信コメントなどを参考になさってください。 多くの相談への返信がすでにあります。関連するカテゴリーから探す、検索を使って探すなど利用してみてください。 多忙になってしまい、コメントへの返信ができなくなってしまいましたが、お寄せいただいたコメントにはすべて目を通し更新の励みになっております。ありがとうございます。

最新刊

よければレヴューも書いてね!

前作!

最新記事

最新コメント

プロフィール

保育士おとーちゃん

Author:保育士おとーちゃん
当ブログはあくまで個人ブログであり、記事の内容および相談・コメントの返信等は効果を保障するものではありません。
ご利用に当たっては自己責任でお願いします。

楽しく無理のない子育てを広めたいと2009年ブログ開設。多くの方の応援があって著作の出版や講演活動をするようになりました。 現在は、子育て講演や保育士セミナーの他、『たまひよ』や『AERA with Baby 』等の子育て雑誌の監修やコラム執筆。『ジョブデポ保育士』の監修や育児相談などをいたしております。

講演等のご依頼

講演・ワークショップ等のご依頼はFacebookのメッセージ または『保育士おとーちゃんホームページ』 http://hoikushioto-chan.jimdo.com/ よりどうぞ。

カテゴリ

はじめにお読みください (2)
【まとめ】記事 (2)
子育てノウハウ? (81)
子育て日記 (13)
保育園・幼稚園・学校について (120)
日本の子育て文化 (207)
おもちゃ (27)
叱らなくていい子育て (10)
排泄の自立 (11)
『魔の2歳児』 (5)
子育てまめ知識特集 (4)
あそび (41)
おすすめグッズ (10)
おすすめ絵本 (23)
食事について (15)
過保護と過干渉 (47)
満たされた子供 (7)
早期教育 (20)
我が家の子育て日記 (96)
心の育て方 (107)
相談 (86)
子供の人権と保育の質 (90)
その他 (68)
未分類 (23)
講座・ワークショップ (142)
父親の子育て参加について (3)
雑誌・メディア (48)
子育てに苦しむ人へ (27)
保育研修 (3)
note有料記事 (4)
保育について (16)
性教育について (6)
子育てオンラインサロン (1)

保育ひろば

保育ひろば

楽天

FC2カウンター

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

おしらせ♪

当ブログはリンクフリーです。トラックバック・リンクはご自由にどうぞ。 しかし、本文・コメント・その他を含めて著作権は私にありますので、引用・転載する場合は連絡をお願いします。また引用元の記載も併せてお願いします。 なお写真の転載はお断りいたします。

ランキングに参加しています

検索フォーム

月別アーカイブ

リンク

このブログをリンクに追加する

QRコード

QRコード

アクセス解析