性教育と子育ての問題 vol.2 ジェンダーギャップ121位の国の現実 - 2020.05.08 Fri
近年日本の順位は年々劣化しているが、2020年に発表された2019年の指数では、日本は過去最低の121位を記録した。
日本における指数の推移はこちらに詳しい(2019年「ジェンダー・ギャップ指数」日本が110位から121位へ JOICFP)
https://www.joicfp.or.jp/jpn/2019/12/19/44893/
性教育の話でなぜこのジェンダーギャップを出したかというと、私たちの生きているこの日本社会は男女格差だらけが当たり前になっていることが、まずスタート地点として認識される必要があるから。
こうした指数はデータとして目に見える形で出ているものから導き出されているが、実際には目に見えない形の部分もさまざまに男性と女性のあり方の違いとして私たちのまわりにはある。
「当たり前にあるもの」に違和感を感じることは難しい。
子育てをする上で、そうしたことに無自覚であれば子供たちにも、こうした大きなジェンダーギャップを知らず知らず習得させていきかねない。
だからこそ、「0歳からの性教育」のスタンスが必要となる。
じゃあそれはどんなことだろうか?
「名探偵コナン」という全国放送のアニメにもなっている漫画では、女性が入っている風呂をのぞいたり、女性の身体に触るシーンがジョークとして描かれている。
有名な作品なので、これが子供向けのものであることはご存じの方も多いことだろう。
これに違和感を感じる人は現実にはごく少数かもしれない。
しかし、それこそがまさにジェンダーギャップ121位が真に表していること。
私たちは、こうした表現になにも問題を感じない、もしくはジョークとして消費できることだと無自覚にとらえてしまっている。
こうしたビッグネームの商業タイトルには、当然ながら日本の大手企業が関わっている。出版社、放送局、スポンサー。
この企業、そしてその中で働く関係者の人たちのだれも、これをおかしいと声をあげなかった。もしくは、声をあげる人はいたがそれが実行されるところまでいかなかったということである。
ここには、「女性は男性により性的に消費されるべき存在」という認識が隠れている。
作り手がそうであり、こうしたものに日常の中で関わる子供たちも、知らず知らずのうちにそうした感覚を取り入れていってしまう。
「たかがアニメでしょ。なんだそんなこと」と思う人もいることだろう。
だが、それこそがジェンダーギャップを自身の中に内在化していることの証であると言える。
これが公共のものとして流れ、しかもそれが子供向けであること。
それが社会に認知されていること。
これはつまり、「女性を性的に扱っていい」という認識を日本の社会が持っていることでもある。
私たちの社会が持っている「当たり前」という感覚は、現在の世界の価値観からすると「異常」だ。
◆性教育は子供たちを将来の加害者にすること、被害者にすることを防ぐ
また例えば、日本テレビ系列で放送されている「世界の果てまでイッテQ!」という番組がある。
この中で女性芸人と言われる人たちが、わざと自身の胸やおしりを露出したり、股を広げる描写を強調されたりしている。
これは一見その人達が自主的にやっているように捉えることができる。しかし、実際は、制作する側、消費する側のニーズに応えるものである。いわゆるウケを狙ったところが、そこになっている。
ここにも、「性的に消費される女性」がある。
女性を消費したい側からすれば、これは「女性とは性的に消費していいのだ」という女性を下に見る感覚を養うことにつながる。
また同時に、女性からしても「女性である自分の性は提供することで他者に喜んでもらえるのだ」という感覚を心の内に養うことにつながりかねない。
(積極的にではなくとも、消極的に「自分は女性なのだから性的に見られることは仕方ない」という価値観もそれである。
こうした価値観が、「セクハラされることを我慢しなければ」といった価値観、生き方へとつながり。「女性ゆえの生きにくさ」などとして今現在ある。)
これが「笑い」として提供されていることはとても怖いこと。
なぜなら、笑いに還元されることで、女性を蔑視していること、性を消費(商品化)していることに提供者も受給者も無自覚でいられるから。
つまり「差別の矮小化」を社会全体が共有することになる。
こうして、ジェンダーギャップは人々の心の内に知らず知らず形成されていっている。
私たちが子育てしているいまの日本社会は、こうしたことに現代的価値観からすれば驚くほどに無自覚な社会であることを、いま子育てしている人は多少なりとも認識しておく必要があるのではないだろうか。
我が子はちょうど男女一人づついる。
先ほどのような、女性が自身を性的に提供し、それで他者を面白がらせたり、喜ばせたりする表現を何も知らずに触れていくことで、息子は将来性加害をするリスクを、娘は性被害を受けるようになるリスクや、女性としての生きづらさのリスクを少しずつ積み重ねていっている。
これは子を思う親として本当に恐ろしい。
現在の日本社会はこうした性差別に対して驚くほど無自覚であり、子供を育てている大人の世代も以前の価値観にどっぷりとつかっているので、なにがよくなにが問題かといった視点すら持たせてもらえていない。(大人世代の性教育の不備の問題)
性教育についての関心を深め、大人自身も自身の価値観のアップデートを図り、子育てにおいては自衛していかなければならないだろう。
こうした社会の末端で起こる性差の問題を、些細なこと看過するのは大変あやうい。
なぜなら、このようなちょっとしたジョークのような感覚から、昨年発覚した医学部入試における女性差別のような社会問題は地続きだからだ。
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● COMMENT ●
タイムリーな話題
幼児向けアニメ
1つ1つは些細な事かもしれないけど、クレヨンしんちゃんがキレイなお姉さんが好きって設定も、幼児だからほほえましい(?)のかもしれないけど、私はセクハラみたいで嫌です。息子が女の人にこんな風にしていいんだって学習したら嫌だし。ドラえもんの静ちゃんもスカートめくれてパンツ見えたり、お風呂のぞかれたり、子どもの頃は気にもしていなかったけど、親になって見たらすごい不快感があります。
逆にディズニー系のアニメやおさるのジョージは、セクハラや暴力表現がなくて安心します。本当に、日本の子ども向けアニメなんとかしないと駄目ですよね。
娘(小1)とジェンダー
コナンやドラえもんは、現実社会で成人がやったら犯罪ですよね。作品の面白さはそのシーンではないと思うので、不適切な描写は変更した方がいいと思います。
漫画もアニメも女性を性的に消費する表現を長年してきていて、私も麻痺していた部分がありました。近年、警鐘を鳴らす方が増えてきて、おかしいことだと気づくことができました。
サザエさんもちびまる子ちゃんもはなかっぱも、女性だけが家事をしています。先ほどの犯罪とは違いますが、これも性的な役割を固定化していると思います。
娘が「男にはかわいいじゃなくて、かっこいいって言うんだよ」と言ったとき、娘のクラスの男の子は「かわいい」って言われて嬉しくないんだなと思いました。男の子の観ているテレビを知りませんが、この年齢が憧れる人物像は「かっこいい」なのかなと思いました。他にも服や文房具の見た目が、男っぽいか女っぽいかを気にするようになり、この色は男だというのがあるのかもしれません。私は幼い頃はありましたが、逆に今は色に性差はないです。「男とか女とか関係ない。すてきだと思ったから選んだんだ。」と思っています。
年長の頃は、男の子たちによく髪の毛をぐしゃぐしゃにされたり、服を引っ張られたりして、「もう〇〇くんと遊ばない」と憤っていたのですが、他のママに言ったら「ちょっかいかけられるのが花」みたいに言われて、なんとなく先生にも相談できませんでした。男の子は悪気なく楽しんでいて、女の子より活動的な子が多かったので、言葉遣いも含めて多少乱暴でも許されてしまうのかなと思いました。先生に止めさせてと言った方がいいのか分かりませんでした。
なんだか長くなってごめんなさい。卒園して今は特に問題ありません。つらつらと思い出したことを書いてしまいました。
いつもおとーちゃんのTwitter見て学んでいます。お体にご自愛ください。
わかります
子供たちが英語もわかるように育てています。日本的な古い価値観や儒教思想にはまらせたくなかったからです。
今幼稚園生です。日本語のアニメは薄めた毒のものが多く、うちでら周りが見せているアニメは見せていません。NHKでさえ薄めた毒のアニメを時々流していますね。良質な海外の作品を主に楽しめていることがどんなによかったかを今改めて感じました。
日本は多数意見が正当になりがちなんです
少数派なら地道に年を重ねて少しずつ広く意見を浸透させて
少数派になってやっとわかりました。
男女格差は入社でわかりました。事務はおねえさん、男のなかに放り込まれた私はいけてなくても”女性”、そしてそう思われてなくても 自身がそう思われているという固定観念を持ってしまって 仕事がうまくいかないとそのせいにしてしまったり
格差差別に自分が甘えてしまったり
性的にも 女性が男性のこどもをいじってるのもあると思うんです。そこはまだ言われない。まだ少数派だし。そこまでセクハラと思わないのかもしれない。生きにくいということは 生きやすい人にはわからないし受け入れて自らを生きにくくしたくないんです
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おとーちゃんさま、ご無沙汰しております
アニメだから、という話、私は「クレヨンしんちゃん」ですかね・・・
こんなに手を上げたら虐待と言われているなか、ゲンコツシーンがあったり、「おバカ」というセリフがあったり・・・
親たちが、ああいうのを「普通の平和な家庭像」として認識することがとても危険
叩く怒る否定するがあまりにもあたり前に描かれすぎていて、正直滅入る・・・
あのアニメを名作!という大人も(身近に)実際にいることに違和感すぎて、やるせない気持ちです
今息子(年少)に、日々、人の服の中に手を入れてはいけませんと言い聞かせる日々です
私の服の中にはすぐ入ってきます
それで注意すると、おともだちにはやらないよーと言っているのを信じるだけです