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2024-04

【保育】保育研修での質問 - 2020.07.01 Wed

前々回の研修『受容と信頼関係の保育 基礎編 信頼関係ってなんだろう?』のとき、テキストチャットでいただいた質問です。そのときは他の質問で時間いっぱいになってしまいましたので、こちらでお答えしたいと思います。

以下質問↓




4月入所の1歳児が午睡時に試し行動なのか、別の子を寝かしつけていると私の目をニヤニヤ見ながら布団から出ていきます。その子は寝るのを嫌がるので1番最後に寝かせています。布団から出て他の寝ている子のところに行くと踏んでしまったりするので困ります。 どう対応したら良いですか? また、寝かせても、嫌だ寝ない、と何度も起き上がり抱っこも嫌がり私だと寝かしつけが出来ません。結局いつも他の先生に代わっていただき寝かせていますが私が寝かす為にはどうしたら良いでしょうか。
もう1つ 1.2歳児どちらもなのですがほとんどの子が散歩から帰った時、夕方のお迎え前にトイレに行く声かけをすると嫌だと言って行ってくれません。時間や他児の関係でずっと待っていることは難しいです。結局抱っこや条件で連れて行くことが多いです。どうしたら良いでしょうか。


↑ココマデ


この質問、前半の質問と後半の質問に別れていますね。
前半の質問は個別の子のケースですが、とりたてて個別の個性等については書かれていないので、ここではそうしたケースではないという前提で考えていきます。

信頼関係の観点から見ると、前半の質問と後半の質問は地続きであると考えられます。
まず、後半の問題から見てみます。

>ほとんどの子が散歩から帰った時、夕方のお迎え前にトイレに行く声かけをすると嫌だと言って行ってくれません

こうした姿はひとつには、一日の疲れや、遅番になってしまうことの不安などからくるゴネという側面もあるかもしれません。これだけであれば、それは自然なものでもあり、日課が過剰になっているといった問題がない限りは、子供の成長や慣れによって軽減していくと考えていいでしょう。もし、遅番時の不安感や合同保育になるゆえの落ち着きのなさなどがあるのならば、それへの配慮を考える必要はあるかもしれません。

もう少し大きな視点で考えると、信頼関係の問題である可能性があります。
実は、こうした子供の姿は信頼関係や子供への関わりの理解、配慮が不十分なことによって典型的に出てくる姿でもあります。

チェックして欲しいのは、このときだけでなく保育全体が、過干渉になっていないかどうか?です。

干渉の多い保育、つまり指示や行動のコントロールが保育の中で慢性的に多くなっていると、このような従うことを拒否する姿がでやすくなります。

特に保育者に余裕のない時間帯ほどでます。
また、過干渉な保育者にではなく、自分を受け止めてくれそうな保育者に出す傾向もあります。

・声がけが過剰(声がけそのものが多い)
・言葉が過剰(繰り返し言葉での注意喚起など言葉が多い、声が大きい)
・指示が過剰
・介入が過剰(遊び時の注意など)
・過保護な関わりの多さ

もし、こうしたことがあれば、そうした反動からそのゴネのようなことは出るべくしてでます。子供が問題なのではなく、保育の問題点を解決する視点で取り組むことで適正化が図れます。
「従わせよう」という保育をすればするほど、現実は「従わない子」を作り出してしまうのです。

こうした過剰さそのものが「子供が従わないから」を理由として、さらに過剰になる悪循環になることもあります。
そもそもの「過干渉」を保育者は問題意識を持って捉えなければならないわけです。自分たちのしている「過干渉」が見えず、「子供が従わない」だけが見える保育者はこの悪循環から抜けられません。現実の保育で、こうした傾向はすくなくないようです。


過干渉を減らすことを職員間で共通認識し取り組みます。
このあたりの実践方法の細かい点は、当日の研修でお伝えした通りです。

この質問がでるまえに研修でお話ししていたのが、支配と信頼関係の問題です。
もし、これが単に過干渉だけが原因ではなく、子供への支配の関わりが保育の中で強くあった場合問題はさらに深刻になってしまいます。

もちろん、過干渉も一種の支配です。
「ああしなさい、こうしなさい、それはするな」こうしたことをもし四六時中言われていたら、大人でも不満のひとつやふたつ出てきますよね。

それに加えて、従わないことに対して冷たくされたり、疎外やイヤミを返されているような状況だと、その負荷はより大きくなります。また、保育者との間の信頼関係も厚くならないので、より従わない姿、試す姿、受け止めてくれそうな保育者に依存する姿が大きくなります。


しばしば保育現場の声で耳にするのが、「子供になめられている」「もっと毅然と対応しなさい」と先輩に指導されるといったケースです。
これらあまりに多く聞くケースなのですが、これはそもそも保育のスタートラインにすら立っていません。

常にピリピリして毅然としていないと子供が従わないという状況があるのだったら、それ自体がおかしいわけです。子供は大人を信頼せずにはいられない存在なのですから、特に配慮が必要なケースでなければ、信頼する保育者がのんびりしていても子供はその行動に従います。

そうした支配の保育がこれまであった場合は、それを切り替えて基礎的な安心感を子供に伝える所から保育を組み立て直すといいでしょう。
施設や職員の多くが、支配の関わりこそが保育なのだと考えているのだったら、施設全体で「信頼関係とはなにか」から保育を学び直す必要があるでしょう。


さて、そこから前半のケースを見てみましょう。

過干渉にしても支配にしても、また安心感が持てない保育環境にしても、そうした傾向のある保育の中では、子供が午睡につかず、保育者との関わりを求めてくるのは必然の結果です。
いち保育者の関わり方が良くないと言った問題ではありません。
こうした状況で、他の保育者だと寝るのは、往々にしてその子がその人との信頼関係の構築を「あきらめている」だけの場合もあります。


特段、過保護過干渉、支配の保育がない場合でしたら、肯定と安心の積み重ねからアプローチするといいでしょう。
保育の場面で出る問題は、その多くがその場面での対応で解決しません。
それを頑張っても対症療法的にしかなりません。

午睡以外の段階からの取り組みを意識します。
具体的には、研修時にお伝えしたように肯定の関わりの積み重ねを個別の配慮としてやってみましょう。
力を入れるのはここです。

「午睡時になんとか寝かせるために対応を頑張る」だとかえって子供は気持ちよく午睡につけません。
「寝かせよう、寝かせよう」という気持ちは、一旦鍵をかけてしまっておきましょう。
安心、安全、そして肯定をたくさんプレゼントしてもらった子が安心して身体を休めることができます。(午睡についてより細かく書いたものがこのブログの過去記事にいくつかあります)

もし、その保育施設の体質そのものが「子供になめられるな」「あなたが甘いから」というところでしたら、そこで本来の保育を身につけるのは難しいかと思います。

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