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2024-03

モチベーションの上げすぎと子供の心のオーバーワーク - 2011.03.28 Mon

前回のところで「子供は親の意向に添おうとするもの」と言いました。
子供は親の期待に応えようと一生懸命生きているので、親の期待で子供の意欲を引き出すこともできます。
また、この気持ちがあるからこそ子供はしっかりと成長していけます。

しかしともすると、この「期待」、「上げすぎたモチベーション」というものがよい結果とならないこともあるのです。


以前「子供を認めていく」というお話をしたときに、「ほめることが必ずしもプラスにならないこともある」といったことを述べました。あのときはきちんと説明していませんが、ほめてモチベーションをあげ続けることが必ずしもプラスにばかりならないというこのことも言いたかったのです。

「ほめる」ことは決して悪いことではないのですが、その使い方によっては、ほめることを高い目標にばかり向かわせるために現在を肯定してもらえなかったり、「ほめられる」=「出来た結果だけもとめる」子供になってしまいかねないというきらいも含んでいるのです。


話がそれてしまうので「ほめること」については一旦置いておいて、「モチベーションの上げすぎ」に戻ります。


具体的に例をあげてこの「モチベーションの上げすぎ」についてみていきましょう。
ありきたりな例として「早期にお箸を使わせること」があります。

早い人は2歳になる前くらいからお箸を子供に教え込んでいったりしますね。
たしかに、親や兄弟がお箸を使っていると2歳前からお箸に興味を持ったりする子もいます。

「もうお箸使わせているんですか?」なんて聞くと、「使ってみたそうだったから」なんて答えをよく聞きますが、それとは別にその親が子供に早くお箸を習得させたいという気持ちが働いているんですよね。

子供は人が使っているのをみれば、興味を持って手をだしていきます。
僕はよく砂場でおもちゃを取ってしまう例をだしますが、子供ってそういうものなんですよね。

目新しいもの、自分がもっていなものを見れば手をだしたくなってしまう。

それをきっかけとして、親はしめしめと子供に箸使いを習得させようとやっきになってしまったりするのだけど、だんだんそれが進むにつれて子供は「アレーなんかちがうな~」となってしまいます。


最初は目新しい、新しいおもちゃのような感覚で手を出したものが、あれよあれよというまに親の思いでお箸の特訓になってしまっている。「あれ~自分のしたかったこととなんかちがうんだけど、これやるとお母さんが喜んでくれるみたいだから、がんばるか・・・」

楽しんでやっているうちに身についてしまう程度のことならばいいのだけど、実際には2歳程度ではお箸をつかいこなせるほどの手の大きさや、指先の機能は発達していないので、とても大変なことなのです。

でも、親の期待に応えようと一生懸命とりくんでも思うように出来なくてイライラしたり、使い方が違うとダメだしされたり、上手にできないことで怒られたり・・・。


能力以上のことを要求され、できないからといってダメだしされる。 しかし本人は親の期待に応えようと一生懸命、でも達成できない。
↑こんなことあったら大人だってつらいですよね。

お箸のことはほんの一例です。今の子供たちはこういったことをたくさん要求されています。
モチベーション上げの濫用といっていいくらい。


小学校受験をしようとしている女の子がいました。

「お受験」のための塾などの習い事に平日・休日のほとんどを費やしています。
家でもお勉強やしつけに厳しい。
その子も親の期待に応えようと一生懸命。
なのでお行儀もよく、とっても「いい子」です。
親の前でだけは・・・・。

園にあずけられているときは、たまったストレスを晴らすかのようにやりたい放題。
他児(自分よりはるかに小さい子にすら)乱暴、大人の話なんかまったく聞く耳持たない、集団での行動はできない、自分の遊びが出来ない、それゆえに他児の遊びを壊すことが遊びになってしまっている、どこで覚えるのかとても乱暴な言葉を使う などなど・・。


その手がつけられない様子だけみればその子は大変な問題児になってしまうのですが、でもこの子は何も悪くないんですよね。

だって自分のキャパシティ以上のことを要求されすぎて、本来の自分でいられないようにされてしまっただけだから。

心と身体がオーバーワークしたがゆえに、さまざまな問題行動が出てきてしまったわけです。
本人は親の期待に応えようと、一生懸命がんばった健気な子なんだよね。


こういうことって親の側からすると、親自身は子供のために良かれと思ってしていることなので、子供のサインや悲鳴に気づかなかったり、気づいても自分のしていることと結びつけて考えることが難しかったりします。

そこがまたこの問題の難しいところだね。


子供が食事のとき座らず歩き回ったり、食べ物を投げつけたりする原因が実は子供のためにと教えている「箸使い」にあったりしても、そこに親自身は気づかず座らないことや投げることを叱ったり、歩き回ることにどう対処していいか途方にくれたりしているかもしれないのです。


さらにはこういう「叱ったり」「ダメだししたり」ということが、子供から親への信頼感をそこなったり、関係を希薄にしたりして、「手のかかる子」「言うことを聞かない子」にする原因になってしまったり。


親は子供のためによかれと  子供は親の期待に応えようと
しかし、そのことが返って子育ての悪循環を生んでしまうなんて悲しいことだね。

でも、現実にはとてもたくさんこういう姿がみられます。

そういうことが少しでも減ってくれたらいいなと、このブログもこれまでいろいろ書いてきたのだけどなかなかすべてを伝えるのは難しい。

とりあえず、モチベーションの濫用には気をつけましょうというお話でした。


今回の論旨とは直接関係ないですが、お箸の話がでてきたので次回我が家でのお箸の取り組みについて書こうかなと思います。特別な教え方があるわけではありませんが、わた君は3日でほぼ完璧にお箸を使えるようになりました。理由は「排泄の自立」と同様、無理のない発達段階まで待つということ。


むーちゃんメモ:「へにょ へにょ」と言うのは「おはよう」ではなく、「よいしょ、よいしょ」であることが判明。
おとーちゃんが洗面台で顔を洗っていると、毎朝「へにょ へにょ」といいながら踏み台を抱えて持ってきて洗面台をのぞきにきます。朝からとても可愛いよ。


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● COMMENT ●

こんにちは

いつも 為になるお話ありがとうございます。

今回のお話も うんうんと頷きながら 見入ってしまいました。

以前にも 舅との子育ての考え方の違いで 色々と相談に乗っていただきました。
舅は 何も教育しなくなりました。
私と舅との間に立たされて 我慢していただろうと思います。良い子で いてくれました。
その我慢が限界となったのか 遅い反抗期なのか…

三歳半になりますが、突然 聞き分けが悪くなり 一年間楽しんで通っていた スイミングも 行きたくないと 泣き叫んでいます。
スイミングといっても、水遊び的なものです。

潜るのが 嫌だと 突然言い出して。
率先して行っていたのに。
多分 水が鼻に入って 嫌になったのがキッカケだろうとは思うのですが。
何かと理由をつけて 行きたがらないんです。

無理にプールにいれてもコーチに抱かれながら40分泣きっぱなし。
最後まで頑張れたねと言っても“頑張れてない”と癇癪を起こしていました。

次に連れて行った時は駐車場から泣き叫んでいました。
見学はするというので 外で見学させるのですが 楽しそうな遊びになると入りたがるので 水着に着替えて入らせたら 何事もなかったように 楽しんでいました

でも 次ぁ

続きです

途中で 切れてしまいすみません
次行く時も 見学してから入ると言います。いつも通り楽しんでいたので、怖くて克服しようと頑張っているようには思えず ただの甘えワガママではないかと思ってしまい どう対応してやればいいのか 悩みます。
二歳の女の子は 自らお風呂で潜る練習をして プールでも 潜れるようになりました。同じ年の子も 潜れるようになり 楽しそうにしています。ウチの子のために 潜るのを控えていただいてるのが 申し訳なくて。
合わせてもらうんじゃなくてウチの子が 頑張って克服するべきですよね。

スイミング始めた時も よその子より早く慣れ 泣くのも割と我慢していました。
キャパシティ超えてしまったんですかね 我慢していたことが 爆発してしまったんだろうかと思っています。
ゆっくり休ませた方がいいのか 悩みます。

押し付けは子どもがかわいそうですね

今回の記事も考えさせられまさした。

今、息子はグイグイ成長して、あれもこれもさせてみたら予想を上回り出来てしまうんですね。だから、つい「もっと、もっと」という気になってしまいます。

でも、過剰に要求して、出来ないからと言って、落胆したり、無理にやらそうとするのは、子どもがしんどいですよね。気を付けなければ。

会社員をしていた時の上司が仕事の結果を一応は褒めるのですが、必ず「でも、君ならもっとできる。」と言ってました。そのときは、まさに現状を否定された気持ちになっていました。褒めるのは体裁で、結局はダメ出しだったんですよね。

褒めるのって実は難しいことですよね?私は、ひねくれ者なので、口先だけとか、お世辞、社交辞令っぽい褒められ方をされると、そんな上っ面だけなら褒めてもらわんでええわい!と思います。バカにされた気にさえなる時もあります。だから、息子に対しても「ただ褒めときゃいい」というスタンスは取りたくないなぁ。そして、できないとき、したくないときは、サラっと流して無理強いはしないようにしていきたいです。

パパやママと言うようになった息子に義父は「じいじって言いなさい。」と結構しつこいのですが、私の母は「今はまだ言えんでいいんよ。言えるようになったら言ってね。」と言っています。どちらも、息子を目の中に入れても痛くないくらい可愛がってくれるのですが、息子は義父が抱っこしようとする時にかなりの割合で拒否してます。一歳でも、押し付けられるのが嫌なのかなぁ?私のDNAかもしれません^^;

次回のお箸の話し、待ってました~。楽しみにしています。

アンパンママさん

コメント読ませていただきました。

僕は読んでみて「ああ、よかったなあ」と思います。
なぜなら、ずーっと子供が「よい子」で来てしまう事はとてもあやういことといえるからです。

成長期(いわゆる反抗期)ってよく2歳ごろと言われるけど、個人差あるので3、4歳でという子もいます。
大人の意見の違いを敏感に感じ取ってこれまでだせなかったのかもしれません。

反抗期がなくてもなんの支障もなく育っていく子もいますが、出したいものが出せずに溜まっているのはとても心配なことです。
いま、そうやっていろんな気持ちを出しているのならば、むしろ安心です。

噴出す気持ちを出来るだけ感情的にならずに、受け止めていってあげるといいですよ。
必ずしも「いいなりになれ」という意味ではないですよ。

「そうなんだ、○○がイヤだったんだね」
「そっか、ずっと抱っこされたままだったからがんばれてないと思ったんだね」
「うん、わかった。じゃああなたはどうしたいの?」

受け止め、自分がどうしたいと思っているのか考えをまとめられるよう声がけしてあげるのもいいかもしれません。子供がしたいと言ったことが出来ないことであるなら、大人が自分の立場からそれは出来ないって伝えれば言いだけなので、誘導尋問して大人の望む答えを引き出さなくたっていいんですよ。

「そっか、○○したいと思うんだね。でもそれは私は困るからできないよ」

子供が何をしているかというと、自分の意見を出すことの練習であり、感情を制御することができるための練習期間だったり、大人に受け止めてもらえるという自信を持つための確認行動だったりするのです。


スイミングをどうするかという問題は、なんのためにスイミングに行かせているのか?というその理由に立ち返ってどうすべきか考えればいいのではないかな。もちろん息子さんがどうしたいのかという気持ちも勘案して。

本当に「それはただの甘えだ・わがままだ、がんばってきなさい」と言うだけの理由があるのならば、そうさせればいいし。そうでないなら、様子をみてまたいきたくなってからいってもいいし。

どちらにしても他の子と較べたり、「他の人に悪いから○○しなさい」みたいなことは、子供を自己肯定感の持てない子にしてしまうので避けたほうがいいですよ。

僕の経験から言えば、いま出来ていることをただ認めていくだけのたったそれだけの方が、叱咤激励してなにかを習得させるよりもずっと子供を伸ばしていけると思います。

kyomiuさん

>上司が仕事の結果を一応は褒めるのですが、必ず「でも、君ならもっとできる。」と言ってました

↑なんか『部下のやるきを引き出す方法』とか『上手な人材育成法』みたいな本にいかにも書いてありそうないい方ですね~。まあ、ダメだしばっかりの人よりはずっといいけどね。


子供って大人の気持ちとか、雰囲気とかに敏感だからね。
いろいろ子供なりに感じるんだろね。

お箸の話はまあ、けっして上手な持たせ方ってわけではないですよ。あんまり期待しないでね。

No title

こんにちは!
いつもいつもお世話なっております!!!
今回の日記において、

☆「ほめられる」=「出来た結果だけもとめる」子供になってしまいかねないというきらいも含んでいるのです。

これ、とっても興味があったことなのです!
これ、私が正にそのままなんです。

こうしたら誉められるからする、
こうしたら喜ばれるからする といったように
自発的にするのではなく、結果を想像してから行動してるんですよね。
自分でもとっても悲しいことだと思うので
娘にはこんな気持ちを持たせたくないのですが
どこでこうなったか分からなくて。
小さいころから良くできたので(幼き頃は神童と呼ばれタイプ)
いつも誉められていた記憶です。
誉めることは良いことだと私も思います、
でも、重要なのは度合いや線引きだと思うのです。
これが分からなくて・・・
すでに 3歳にして
結果を期待して行動してるように感じることがあります。
これからもっと長い人生、今軌道修正させてあげたいです。

またその機会を設けていただけると嬉しいです♪

いつもありがとうございます!

ゆきさん

そう、ほめることは決して悪いことではないんだけど、大人の使い方いかんによっては子供を成果主義の考え方にしてしまわないとも限らない。
この辺がほめる子育ての難しいところだね。

子供にたくさんを望んでしまうタイプの大人だとこの線引きがうまくできなくなっちゃうからね~。

No title

お久しぶりです~。
モチベーションのあげすぎ・・・。
最近私も気にしていたところでした。
泳ぐことを一緒に楽しんだり、体の抵抗力とかをつけるために行っていたベビースイミングが、年齢の関係で上のクラスに上がらなくちゃいけなくなって、進級テストとかを受けるようになり、娘が級のワッペンを欲しがったりするのでこうしたらあれがもらえるよ~とか教えたりするのですが、上手にできると褒めたりもするのですが、これって褒めすぎかなぁ~とか・・・。
いつの間にか期待してしまってないかな、娘が私を喜ばせようとしてないかなとか考えると褒め方というのも本当に難しいなぁ~と思います。

sacchinさん

sacchinさんおひさしぶりです。

その辺は子供が負担にならず楽しめているかどうかがやっぱり分かれ道になるんでしょうね~。
なかなか線引きするのが難しいことではあるけどね。
でも、親がモチベーションをあげることって基本的には「肯定」で子供にかかわる行為だから、ちょっとやそっとでどうにかなるというものでもないから、その年齢でできることであればあんまり気にすることもないかもしれないよ。


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楽しく無理のない子育てを広めたいと2009年ブログ開設。多くの方の応援があって著作の出版や講演活動をするようになりました。 現在は、子育て講演や保育士セミナーの他、『たまひよ』や『AERA with Baby 』等の子育て雑誌の監修やコラム執筆。『ジョブデポ保育士』の監修や育児相談などをいたしております。

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