疎外感 - 2012.03.09 Fri
そのとき病院での出来事。
待合室で5~6歳くらいのお姉ちゃんと、3歳なったくらいの弟とお母さん。
具合が悪いのはお姉ちゃん男の子は病気ではない様子。
すいているときだったのでそれほど待っていたわけではないと思うのだけど、男の子が飽きてしまって目の前にあった、パンフレットを取り出そうとしている。
病気に関しての大人向けもので、その子にとってはやや高い位置にあったのでうまくとれずちょっとだけそろっているものがバラバラになってしまう。
そこでお母さんが、娘さんが具合が悪いから心配でイライラしていたのかもしれないね、ややぶっきらぼうで冷たい言い方で「そんなとこいじるな」といったことを男の子に伝える。
でも、男の子はその言葉を聞いているけれどもやめずに続ける。
「いっつもそんなことばっかりして」とお母さんは小言を言い続けるけれども、それ以上やめさせるわけでもなく、また男の子もやめない。
さらにその後、お母さんは「もう、おまえなんかしらない」(かなり冷たいニュアンスで)
ちょうどそこで診察に呼ばれてしまったので、その男の子を無視してお姉ちゃんとさっさと診察室にはいっていってしまう。
男の子は、置いていかれると思って(実際おいていかれつつある)、涙声をだしながら途中まで出したパンフレットをしまおうとするがうまくいかず、グチャグチャにつっこんであとを追いかける。
という姿をみかけました。
まあ、特に珍しくもない、他にも似たようなことをよく見かける親子の光景なのですが。
こういった関わりは子供に(結局のところ親にも)プラスになっているでしょうか?
(まあ、日常の全ての場面で子供への最良の関わりなんて心がけなくてもいいわけだけど、前述のように娘さんが体調悪くてイライラしていたのかもしれないし、病院っていうのはある種特殊な環境なのでそれがその親子の関わりのすべてではないと思うけど、あくまで参考例なのであしからず)
むしろ、プラスにならないというよりもマイナスになってしまっているのではないかと思うのです。
途中までの対応は、以前にもかいた「ダメダメ黙認」になってしまっていますね。
するなといいつつ結局やらせてしまっているのならば、いっそのことパンフレットを取らせて一緒にみて「じゃあきれいにしまってきてね」とやらせたほうがよっぽど学ぶことは多いし、それがすべきでないと判断されることならば、叱るなり怒るなり、小言でなくもっと力を込めて大人の強権でもいいから止めさせたほうがよっぽどいいと思うのです。
↑これは前にも書いたことなのですが、今回のポイントはそのあとの対応です。
「おまえなんかしるもんか」という対応は、相手に「疎外感」を感じさせるやりかたです。
実際のところ大人は子供に対して、疎外感を持たせることで言うことを聞かせようとするという手法をしばしばつかっています。
「疎外感」というのはちょっとわかりにくい言葉ですが、平たく言うと「なかまはずれにさせられるような気持ち」とでもいうものでしょうか。
これは子供でなくとも、大人であっても誰かから「疎外感」を与えられるというのは大変辛いことです。
なので、子供としてはなおさらです。
しかももっとも一緒にいたい親からされるのですから、この対応は子供にとって効果があるといえるかもしれません。
疎外感を与えて子供を大人の思い通りにするというのは、行動面ではたしかに大人の意図したようにできるかもしれません。
しかしながら、子供の成長をより大きな視点、長い目でみると、このことは返ってプラスにはならないでしょう。
「疎外」するのは「受容」の反対です。
「従わないなら、お前は受け入れてやらないぞ」と言っているわけです。
受容することが子供を大人に寄り添った行動を形成するのですから、結果的にはむしろ大人の意に沿わない行動を多くさせることになってしまいます。
「疎外感」を与えることで、子供の心はいい方向へ伸びていくことはまずほとんどないでしょう。
僕は「叱らなくていい子育て」というのをモットーにしていますが、小言をいいつのったり、疎外感を与えて誘導することで得られる「叱らない」をするくらいならば、よっぽど最初の段階で叱るなり、怒るなりして対応したほうがずっと子供にはよい結果となっていると思うのです。
大人はしばしば普通にこの「疎外感」を安易に利用してしまっていますが、「疎外」という感覚は心の深いところに傷をつくりますから、十分に注意したほうがいいと思います。
余談ですがそういえば、昔は安易に保育士もこういった対応をしていましたね・・。
「言うこと聞かない子は赤ちゃん組に連れて行くぞ」みたいな。
僕はこういうの「意地悪保育」って呼びます。
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● COMMENT ●
No title
私の事かと思いました。
今回の記事、自分のことかと思いました・・・。
2歳の娘がおります。
普段は、コショコショ やってます。
「だいすき だいじ」口癖です。
布団の上で、前転などして遊びます。一緒にお絵かき・積み木もします。
でも、ぐずってぐずって仕方ない時・・。
言ってました・・「そんなワガママばっかり言う子は、お外いきなさい(ここへ置いていく)」
そんな時は、「うえーんしてないよっ」(泣いてないからお外ださないで)
と言うんです。
娘に謝りたい気持ちでいっぱいです。
自分で無意識にしてることって、第三者から指摘されないと気付かないものですね・・・。
ぐずると言っても、大方は 抱っこしてーーー!なのですが。
本当に抱っこが好きで、ご飯も抱っこ・移動も(隣の部屋へ)抱っこ・冷蔵庫へ行くのも・・「抱っこして-」
食事の支度などで、どうしても相手をしてやれないと、絶叫&号泣。
そうなると上記の対応をしてしまう訳で。。
おんぶで妥協しながらも、背中で「だっこしてほしいモン・・おかーしゃん、だいすきモン・・(めそめそ)」
具体的に見える現象以外に、何か満たされない部分があるんでしょうね・・。
これからも応援しています!!!!
No title
私も悪循環の中で、どうにもならないとやっているかなぁと思いました。
上の子が小1なんですが、友達の中でもチクチクと「疎外感」を利用して相手の反応を楽しむようなやりとりがみられます。
いわゆる「いじめ」は親とのやりとりの中で土壌が作られているんだなーと思いました。
一つ、保育園の事でご相談があるのですが
娘の通う保育園も建て替えをして今年度から新園舎になりました。
ところが、園庭がとても狭くなり幼児さんがダイナミックに遊べる環境にないんです。
屋上にも園庭があるのですが、人手が無いせいか(見守りができない?)ほとんど使っていません。
鉄棒の類が一つもありません。あるのは乳児向けの滑り台と砂場だけ。スペースも無いので大縄跳びも小さくやっています。
ボールや竹馬、三輪車、空き缶で作った竹馬などの遊び道具も処分してしまってありません。ボールが無いんですよー。
幼児さん達が乳児さんと同じような遊びをしているんです。(それ以外できない)
保育園は、近隣の公園によく行くから運動量は補えているという考えのようなんですが
集団で公園に移動して限られた時間を遊ぶのと、朝や夕方にも園庭でダイナミックに遊ぶのでは全く運動量が違うと思います。
ここにきてようやく鉄棒が入る予定らしいのですが、それ以上の設備を入れないようです。
以前は登り棒やうんてい、アスレチックのような設備もあったのに・・・
もうさすがに園長と話をしようと思っています。
保育園の考えを聞いた上で、こちらの意見を伝えますが、おとーちゃんのアドバイスがいただけたらありがたいです。
すみませんが、お時間のあるときにぜひ。
No title
子どもの成長は一進一退、そうですよね、少し前までそのことはよく気づいていたはずなのに・・
あまり、その病気の事ばかり気にし過ぎてしまうのもよくないですよね。
私以外の人から見たら、娘は元気いっぱいだそうで^^;
もっと広い目でみないといけませんよね。
よくよく観察してみると、私が「がんこ」「こだわりが強い」と一括りにしていたことですが、面白い発見がありまして。
いつもと同じ事や物の順番や所有物とか。
自分の中で秩序が乱れちゃうからパニックになっちゃうのだけど、
必ずしも自分の思い通りにしなくても、納得行く形で終わらせたら、
こちらが「え?そんなことでいいの?」と思うほどあっさりと気が変わって
機嫌も直るんですよね^^;
要するに、大人がどう誘導するかで1,2時間泣き続けるかどうかが決まるって分かりました^^;
疎外感ですが、反省しきりです><
あまり私は怒りまくるということはないんですが、以前、イライラしてしまった時に言ってはいけないと分かってはいたのに、今までに何度か
「もう、好きにしなさい!!」って言ってしまったことがあります。
旦那さんとも話し合ってこういう言葉は安易に使わないようにしよう、って昨日言っていたところです。
それにしても、毎日思うのですが、子どもの言動って面白すぎですね・・^^;
綾子さん
おっしゃるとおり、いまでも嫌になるくらいたくさんあります。
まぁ、「昔は」と言っているのは、いまだにそんなことをしている保育関係者に対するちょっとした嫌味みたいなもんです。
認可でも公立でも、質の低い保育をしているところがたくさんあります。
しかも、質が低いということすら認識していない、もっとひどいと「保育の質」という考えすら思いつきもしないという保育が当たり前にあるのが現状です。
「保育」が福祉から切り離されて、商業化しつつある現在ですらそのようなていたらくということに強い憤りを覚えずにはいられません。
まるまゆさん
親子の絆はそれくらいでは壊れませんからね。
まあ、なにもわかっていなくてやってしまうよりも、どっかにやりすぎてはいけないんだなくらいを頭の片隅に置いておくのとではずいぶん違うものですから、知らないでいるよりも知っている方がいいと思うのです。
「だっこして~」と自分で言えることは実はとてもいいことなんですよ。
当たり前のように思われるかもしれないけど、それができずにひねてしまう子をたくさん知っていますからね。
また、2歳くらいではそういう反応もめずらしくはないようです。
ちっとも離れられない子もいれば、どんどん離れて好奇心を満たしていこうとする子、同じ年齢でも大きな個人差があります。
うちの子も上は3歳くらいまで、なかなか離れようとはしなかったけど、下の子は2歳なる前くらいから一人で庭に行ってずっと遊んでいたりと、別々の個性でした。
ただ、親が神経質だったり心配ばかりしていたり、普段過保護になりがちだったりすると、やや離れられないという気持ち(依存心)が強まる傾向というのはあります。
そうでなくとも第一子は少なからずそういった感があるようですよ。
てんさん
また、そこで働く職員としてもやっているようでいて気づいていないことなどたくさんありますから、一緒に保育を考えていくくらいのつもりで、どんどん質問とか要望とかだしていっていいと思います。
やはり、「慣れない」というのは大人の都合であって、それで子供にしわ寄せをしていいなどということは全くないのですから。
それを園側はいいわけにはできないですよね。
なので、当然そういった質問や要望はきちんと受け止めできることは応えていくのが当然というものです。
それをしないのであれば、それは批判していいことだし怠慢です。
もし公立ならば役所に伝えるなり、きちんとした対応を求めていくべきでしょう。
(私立ならば経営母体などに)
まあ、まずは質問・要望として普通に投げかけていくといいのではないでしょうか。
返事ありがとうございます。
ありがとうございます。
嫌味を言いたくなるのわかりますよ。
私も親として「保育の質」をあまり考えていない保育園に
何かいいそうになります。
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え?昔の事なんでしょうか?
うちは都内(23区)の私立認可保育園ですが、
毎日普通にそんな対応を子供にしていますよ。
一度、私が「もう知らない」と言ってしまったら、
強く言ったつもりはなかったのに
過剰に反応したので、逆に私がびっくりした事がありました。
その後保育園で、ものすごい「疎外感」を与える対応を
しているところを見て、これかぁと妙に納得しました。
そんな園なので娘が帰ってくると不機嫌になっていることも
多々あります。
入園してしばらく夜寝る前に泣き出して
「食事中に席を立って怒られた」と言ったこともありました。
他の子が怒られていたようですが、怖かったそうです。
認可だからと言って、保育の質が高くないところが難しいですね。