日本の子育て文化 「個性」 - 2009.12.20 Sun
なんて言葉をよく耳にしたり目にしたりしますね。特にこども向けの習いごと教室や保育園、幼稚園、学校などの目標などで多用されています。
実にいろんなとこで使われているこの『個性』という言葉ですが。本当にわかって使っているのだろうか?といつも疑問に思います。
ちょっと今日は論文みたいになっちゃった。あ~いつもそんなかんじだけど(笑)
難しいのが苦手な人、時間のない人は下のほうの赤字のとこからよんでね~
僕自身いろんなこども関係の職場などで働き、こういう目標をかかげているところも多数ありましたが、例えば「個性を尊重する」ということが具体的にはどういうことで常日頃からそういうことに留意して仕事をして欲しいといわれたことなどほぼ皆無です。(例外は以前ちょこっと話したフリースクールだけかな)
まあはっきりいって「個性~~」といっているところのほとんどが、誤解して使っているかただ聞こえがいいから使っているだけだろうと思います。
もともと『個性』という考え方自体、日本には希薄で明治以降になって外国からの文化が流入するにあたって入ってきた考え方です。Individuality と Personality の訳語ですね。
日本は農耕民族としての文化ががっちりと構築されていて、そこでの主体になるのは「個」ではなく「共同体」でした。戦後になって日本が海外でビジネスを広げていくなかで、日本人が「ウチの会社」もしくは単に会社を指して「ウチ」とよく使うのが外国人にはとても奇異に映ったそうです。「なぜ、会社がマイホームなんだ?ホワイ?」
日本人は「一個の自分」と考える前に「共同体の一員であるところの自分」という考え方が文化として刷り込まれているのです。
じゃあ、21世紀の現代ではどうでしょう。はっきりいってあんまり変わってないみたいです。
よく習い事教室や学習塾の宣伝文句で「個性を伸ばす」とうたっていますが、なにか習い事ができたり、勉強が人よりできたりということは実は「個性」とはな~~~んも関係ないことです。
それは単に「特技」であり、「人との差異」でしかありません。
ちょっと考えればわかることなのですが、ピアノができたり、絵がうまかったり、英語ができたりすることは、「個性」つまり「その人個人の性格・性質」ということとはまったく別個のことですよね。ピアノなどの特技を取り去ったとしても、その人個人の性格がかわるわけではないでしょ。
簡単なことなんだけど、文化的に「個性」という異質なものを消化し切れていない日本人にはわかりにくいことなのですね。
「個別的」っていうことと誤解・混同しちゃっているんだよね。「個別的」っていうのはつまり「人との差異」のことだから正しくはそれなんだけど、なんとなく「個性的」っていうほうが聞こえがいいんだよね。
じゃあなぜ「個性」が聞こえがいいか?これも理由のあることなんだよね。
それはなぜなら、親である世代がとて~~~~も「個人」をないがしろに育てられ、教育されてきたからなんだと思います。
右向け右、前へならへ!出る杭は打たれる!
まさに共同体が前面に出る農耕民族的な画一さで育てられてきた世代です。まあ、それ以前もそうだったんだから、画一的に育てられてきたことと現実のなかでの自分の捉え方にギャップを感じている世代、っていうのが正確かな。
だから今の親はこどもに「個性的であれ!」っていうのを強く望んでいるのだね。
名前がまずそうですね、オーソドックスな名前の子のほうが少なくなっています。
ずいぶん前から骨董品ブームですよね。なぜいま骨董品が魅力的かというと、ひとつには大量生産社会への反動だと思います。こどもに個性を求めるのもこれと似てるなって思えるんです。「世の中には自分も含めて画一的なものばっかりだから、自分のこどもは一点物にしたい!」みたいなね。
それはそれでいいんです。
僕が今回言いたかったのは、「個性」をそう誤解しているがゆえに、置いていかれ忘れられてしまった本来の「個性」のことなんです。
日本の学校や保育園や幼稚園など、「個性を尊重する」を目標に入れているところも含めて、まずほとんどが出る杭を打ち個性をおいてけぼりにして主体性を無視して、「協調性」を叩き込んでいるのです。
これがこれだけ「個性、個性」いっている日本の現実です。
(アメリカのドラマなんかで公立の学校がでるとホームルームのシーンで後ろの棚に座ってたり、壁に寄りかかってたり窓際に立ってたりする場面がありますが、あれはつっぱっているからでも学級崩壊しているからでもなく、普通なんです。個人が尊重されているのでどういう風に聞くかというのは個人の自由というわけです。日本ではちょっと考えられませんね~)
そしてよく僕が否定的に言っている「日本の子育て=しつけ&教育」、の『しつけ』のなかで大きなウェイトをしめているのがこの「協調性」でもあります。
人と協調できることは大切なことですが、それはまず「個」というものが確立した上でのこと。
個性や主体性を低めてまで「協調性」を叩き込むのは、「画一的」な人間をつくっているといわざるをえません。
このへんから重要↓
僕は子育てをしている人にも、そして子育てを仕事としている人にも是非知っておいてもらいたいと思うのだけど、
『個性を尊重する』っていうことは、その子がいじわるだろうと、泣き虫だろうと、ひっこみじあんだったり、わがままだったり、人のいうことを聞かない子だったり、どんな欠点も含めて、もちろんいいところも含めて、
まず「あなたはそれでいいんだよ」といってあげられることだと思います。
もちろん、いじわるだったり暴力的だったりしては困るんだけど、だからといって最初から「それを直してやろう」、「ちゃんとしつけなくちゃ」なんて考えると、叱ったり、注意するばかりでほんとの親子であってもだんだん信頼関係をなくしていってしまいます。教師や保育士であればなおさらです。
「罪を憎んで人を憎まず」ではないけれど、「あなたはあなた、それでいいんだよ」と考え伝えてあげること。
本当に『個性を尊重する』というのはここから出発しなければできないと考えます。
まあ、そうはいっても教師や保育士がするのは、けっこう難しいよこれ。
でも、本当の親子ならそんなに難しくはないと思う。このことに気づきさえすればね・・・
保育士にもこれちゃんとできるひと多くなって欲しいんだよな~。
はっきりいって今の保育園、いわゆる「手のかかる子」でいっぱいなんだもの。
これが出来る人に保育園時代に一人でもであえたら、その子はけっこう救われると思うんだけどね・・・
でも、保育士の学校じゃこんなこと教えるとこどっこもないんだよね~~。
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● COMMENT ●
No title
個性かぁ・・・
実際、私はもう24才ですが私の「個性」ってなんだろう??って考えてもうまく答えられません。笑
ましてや発達段階によって「私は~」と答えられない、自分で自分を分かっていない子どもに「あなたの個性は~です。」なんて、第三者が言えるのかなぁと思います。
「個性を伸ばす」聞こえはいいけど無責任ですよね。
ぜーんぜん話は変わりますが♪笑
私も国家試験受けて保育士資格とったんです~☆
なんだか親近感を勝手に感じてしまいます☆
おとーちゃん学☆とっても勉強になります☆
これからも応援しております~☆
さっちんさん
でもまあ、こどもの良い個性が伸びるのって、やっぱり親や身近な大人がその子を認めてあげることが基本なんじゃないかな~。
えいこさん
だからこそこどもに個性を期待しちゃったりね。
そっか~えいこさんも国家試験組だったのか~、珍しいからほんと親近感わいちゃうね~。
あれって、もともとはベビーブームで保育園ラッシュだった時代に、無資格で働いてた人に後付けで資格与えるためにあったらしいね~。
いまでは各都道府県でも負担になってるから実はやりたくないんだとか(笑)
ほんとになくなったらお互い貴重な存在になっちゃうね~。
ちなみに僕が取った頃はまだ保母資格って言ってた時代で、男性だと資格証書はただ「資格証明書」って書いてあるだけだったんだよ~。それだけみたらなんの資格かわけわからないよね(笑)
だから正確な職名は「男性保母」、通称「保父」だったんだよ~。
No title
お絵かきの時いつも左手で書いていることに気づきました。
はさみは常に右手を使っているので、
「右でも書いてみたら?」と声をかけると鉛筆を右手に持ち替えるのですが、
しばらくするとまたすぐ左手に戻っています。
声かけだけで直ってくれたらいいなぁと思っていましたが、
どうやら既に左のほうが書きやすくなってしまっているようです。
最近は左利きの子も多いと聞きますが、
もっとちゃんと矯正すべきか、このままでも良いのか、、
助言くださると助かります。
よろしくお願いします。
ななひなさん
左利き右利きに関しては、どちらか一方に矯正してよかったという話も聞きますし、気にせずにそのままにしておいて何も問題なかったという話も聞きます。
どうすれば最も良いのか正直なところ僕にもわかりません。
またそういった方面の専門家でもないので、申し訳ありませんがお力になれそうにもありません。
ありのーままのー姿見せるのよー
生きていると、生きている価値があるかわからなくなることがあります。
生きているかどうかよりも、価値があって生まれてきた、生まれただけで価値がある
と子供に伝えていきたいですね
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個性の尊重。確かによく聞く言葉ですね~(^^;;
あんまり深く考えたことなかったですけど。
「ほほう、個性を伸ばしてくれるのか~、いいねぇ~」なんて具合にまんまと言葉に乗ってしまいそうです。
何をするにしてもしっかりと本質的なところを見抜いた上で決めないといけませんね~。
そういう先生に出会いたいものです。