早期教育されていた子のある事例 Vol.4 - 2012.05.14 Mon
父母、その子の3人家族。
もともとのもって生まれた性格からして、とても穏やか、素直で落ち着いた子であった。
普通にいけば、おそらくもっとも育てやすい、伸ばしやすい部類の子供であったと思われるのだが、ある時期から、小学校受験を目標とした早期教育に親が熱心になる。
両親共フルタイムで働いており、一日の保育時間も長い(およそ11時間程度)、土曜保育も毎週のこと。
親は子供に関心が低いとか冷たいということはないのだが、ベタベタとしたりすることはなく普段から淡白な関わり方。
もともと、穏やかでよく遊べる子であったが、お勉強が過熱化してくるにつれて、保育士に甘えを出すこと受容してもらおうとすることが増えてきていた。
友達との関わりにも余裕がなくなってきて、以前はトラブルになったりすることがなかった穏やかな性格だったが、そのおおらかさもなくなってきていた様子があった。
それでも素直な性格なので、親に反発や勉強をしたくないという気持ちをさほど見せることもなく、素直に従っていた。
さらに勉強が過熱化し、受験向けの塾に通わされるようになる頃から、明らかに元気のない様子が多くなっていた。
その塾の体験教室に行く日の前日から、「お腹が痛い」と訴えていた。
それでも、普段保育園を平日休むことは滅多になかった(体調が悪くてさえ)が、その日は休んで塾へ連れて行かれた。
親に逆らったりする子でないだけに、「お腹が痛い」というのが彼女なりの精一杯の抵抗・あるいはサインだったのだろうと思われる。
親も勉強に熱心なあまり余裕が失われていたように思われる。
その子にとって休みは日曜日だけで、ほかの日も保育時間が長いのにも関わらず、家に帰って勉強で、精神的にもいっぱいだった様子。
塾へ通う途中の駅のホームで、縄跳びをさせられたりしていた。(受験で体力だとか運動能力を見ることがあるから)
そんな状態が続いていたが、結局受験はどこにも受からなかった。
しかしこの事例は、それで終わらなかったのです。
母親はどこにも受からなかったことに納得がいかなかった様子でその後も家庭でピリピリしていたようで、その子もだいぶ萎縮した姿をたびたび出していた。
そんななかであるとき、保育園に「なんでこの保育園は○○式(←勉強熱心なことで有名)の保育をしていないんだ」とちょっとした剣幕で怒鳴り込んでくる。
それまでクレーマーな人でもなかったので、その様子に驚かされた。
おそらく、受験が失敗したことの気持ちの整理がつかず、園にもそれが向けられたのでしょう。
それでも、家での「お勉強」が続く中で卒園式を迎え、そのときにこの女の子はとうとう壊れた様子を見せていきます。
次回へ続きます。
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● COMMENT ●
委縮した姿って?
No title
ちなみに私の周りで胎教から早期教育を施している人が数人いますが、お子さんは今年小学生ですが普通に育ってる感じです。
反抗している感じでもありません。しかも賢い!6歳で中学生レベルの勉強を親が教えてやっていますが、一度教えるとすぐに理解してどんどん問題を解いていけるそうです。こういう子は天才肌なのかもしれませんね。
No title
この女の子、どうなってしまうのでしょうか。
どうか、幸せになって欲しいです!!
ところで、むーちゃんは保育園に通っているのでしょうか。
持ち前のモチベーションの高さで新しい生活にも毎日楽しく過ごしているのでしょうか?
わた君も小学校には慣れてきました?
なんだか、よその子は本当に早く大きくなってしまう気がします(^^;;
No title
3歳2ヶ月の一人息子の母です。
以前、子供同士のトラブルに関しての親の仲介・・・に関して、質問させて頂いたものです。
その節はありがとうございました。
おとーちゃんさんのブログはとても参考になり、日々読み返しては振り返り・・・しています。
早期教育、私は考えたことがありませんが、子供のサインを見逃さず寄り添う親でいたいなぁ。と思いました。 なかなか、その点では苦労しています・・・。
今回も相談させて頂きたく、コメントさせてもらいました。
指しゃぶり、などの癖は、その点には触れず、暖かく見守っていくのがよいのでしょうか??
息子は新生児の頃からず~っと指しゃぶりをしていて、
徐々に月齢を重ねるにつれ減っていき2歳後半では、夜中浅い眠りになったときに寝付くまでするのみでもうほとんどしなくなっていました。
が、幼稚園入園間近となり、急に昼間もずっとするようになりました。
いよいよ幼稚園だ、という家族や周りのバタバタした様子に本人もかなり緊張している様子でした。
昼間も遊んでいる途中でも気づくと指しゃぶりをします。そして、ちょっとすると遊び・・。
4月に入園したばかりのときもとても緊張していて、今はママと離れるのが寂しいと毎日言っています。
今は暖かく見守っていきたい反面、長期間にわたる指吸いで出っ歯にもなっており、噛みあわせが悪くなったり顎に影響が出ると困るなぁ、との親の思いもあります。
本人には今までの経過で強く言ってしまうこともありました。
そしてそのたびに私自身もそう言ってしまったことを反省したり、の繰り返しの日々でした。
入園してからは 新しい環境にストレスもあるんだろうな、と一時は何も言わず見守りました。
でも不安などから指しゃぶりをしている、というより癖になっていて、無意識に口に入れているなぁ、と言う時は、違うことに気が向くようにしてみたり。
今そうさせてしまうのはママと離れる不安が大きいからなんだろうな、と感じていますが、何か親の対応が原因だったりするのかな、自分がいたらないのではないか、と悩んでしまいます。
私自身も迷いがあり、自分の対応が一環していないのも気になっているのですが。。。
最近はそれ(指しゃぶり)してるとお話できないから寂しいな、とか、本人の様子をみながらなんとなく止めようか的なニュアンスで伝えてしまうことも多いです。
そのこと(指しゃぶり)にあまり固執せず、長い目でみていけばよいのでしょうか。
よいアドバイスなどありましたら、宜しくお願いします。
要点の分かりづらい文章ですみません。。。。
かわいそう…
bonbonさん
それらがたいていは一つではなくて、まとまって出てくるのでひっくるめて「萎縮した姿」といっているのだけど、
たとえば、元気のない様子。
これだけだったら、単に「元気がない様子だった」と書けば済むのだけど、それにプラス自己肯定感の低さや積極性のなさ、すぐ泣いたりぐずったりする姿などが、元からではなくその子の普段よりもより強くでているようなときです。
ほかにも、普段よりも食欲がないとか、描く絵が極端に小さくなったり、描けなくなったり、集団遊びが楽しめなくなったりなどなど、子供を継続的に観察していると、その子の普通の状態よりも弱々しい姿をひっくるめて「萎縮した」と表現しています。
また僕は、こういった状態が長引いてその子の性格や、長期的な状態にまで影響してしまっているときは「萎縮した育ち」という言い方をしたりもしています。
あおむしさん
保育士にとって自分の子供をあずけないで自分で見ていくのって、一つの理想だとおもいます。
とっても毎日たのしいですよ。
ほんとなんも手がかからないので、僕もむーちゃんも日々ほのぼの過ごしています。
僕もこんなにもストレスと無縁でいられる生活って、就職してからいままでなかったです。
わたるも小学校すっかり慣れて、楽しんでいっています。
これまでいつでも一緒にいたのに、一人で学校にいって帰ってくるなんてなんか不思議です。
わたくんについてもこれまでしっかり育ててきたので、学校に関してもなんにも心配することないかなという感じ、交通の多い地域なので車にだけは気をつけてもらいたいと思ってます。
nekoさん
nekoさんの息子さんの場合は、新生児からずっとというのであるので、とりたててなにかの原因があるというわけではなく、それが癖として残ったというものだと考えられます。
それは深刻度としてはごくごく低いものです。
そうであれば、精神的な成長を助長していくことで、軽減していける類のものといえます。
「精神的な成長を助長する」とは、具体的にどういうことかといえば。
自信をつけてあげることです。
子供が自分で取り組む楽しい経験をたくさんしたり、さまざまなことで褒めたり、認めたりしていってあげましょう。
子供がいきいきといい笑顔をだして遊べるようなことをすることが大事です。
とりたててすごいことをさせる必要もありません、砂遊びや泥遊び、水遊びみたいな子供ならだれでも夢中になってするようなことを楽しむことでもいいでしょう。
そういった活動が、満足感や達成感を生み、指しゃぶりによる安定がなくても過ごせる心の力となっていけます。
また、たくさん褒めたり認められたりすることで、自分に自信を持てるようになることもそれを助けます。
それから、じっくりと遊ぶことは得意でしょうか?
遊べない子はしばしば自分を持て余してしまって、指しゃぶりや自慰行為で気を紛らわそとしてしまうことがあります。
もし、あまり遊びに取り組めていないようであれば、遊びやテレビの使い方など見直したり、遊べる環境を整えるなどして、遊べる子にしていくことも有効だと思われます。
指しゃぶりも深刻なものになりますと、これはもう医療の範疇になります。
口腔医療では、歯並びなどに強い影響を与えてしまうのはおおよそ4歳を過ぎても頻繁な指しゃぶりがあるときと言われています。
なので、それ以前はむしろそれほど影響はないのだからあまり気にしすぎないようにしましょう、と専門家も言っています。
たしかに、歯並びなどに影響をあたえることがあるので、なくなるならばそのほうが望ましいのですが、なぜ「気にしすぎないように」というかといえば、
親や周りの大人が気にしすぎるあまり、そのことで強いストレスなどを子供に与えてしまって、指しゃぶりよりももっと悪い事態を引き起こしかねないことがあるからです。
指しゃぶりが治ったとしても、それいじょうの問題を引き起こしてしまってはなんにもならないですよね。
また、そのストレスを与えることがよけい指しゃぶりによる安定を求めさせてしまうことすらあります。
一般には、「指しゃぶりをしたら、その都度注意してやめさせる」とか「くわえていたら指を引っこ抜く」などということが流布していますが、こういったことは心理的な圧迫を子供に与えかねません。
それですんなり治ったというケースももちろんあるでしょうけれども、たまたま悪い影響がでなかったというだけで、リスクがないと言い切れるものではないのです。
ですので、まずは最初に述べたような、自信をつけたり、満足感・達成感を与えるアプローチを子供にしていってあげましょう。
これらならばリスクはないどころか、指しゃぶりがあってもなくても、子供の育ちにいい影響をあたえるものです。
また、夜寝るときの指しゃぶりが強いようならば、まずは生活リズムや生活内容を整えるなどをして、入眠しやすい生活・環境をつくりましょう。
「睡眠」については過去記事にありますが、ほかにもたとえば、それまで寝るまで何時間もテレビを見たりしていたのならば、親子で何かゲームをして過ごすとか、絵を描いたり一緒に紙芝居を作ってみたりするなんかもいいかもしれません。
そういった行為を通して、「お母さんに向き合ってもらっているという安心感」、「なにかをやり遂げたという達成感」などを得られます。
興奮してしまうタイプだったらあまりよくないかもしれませんが、体を使った遊びやくすぐりなんかも、入眠時においても楽しい気持ちや満足感を持続させて、だんだんと指しゃぶりから離れていけるかもしれません。
そして、きちんと安心感が持てるよう、添い寝をしてあげたり、寝るときに手をつないであげたりすることもいいかもしれません。
当面そういった、リスクのない方法で対応していってそれでもちっとも様子が変わらなかったり、もっと深刻なものがあると思われるならば、しかるべき医療の専門家に相談していくのがいいでしょう。
これは割と範囲が広くて、小児専門医・小児歯科医・小児神経科などできちんと指しゃぶりに取り組んでいる先生がいます。
それから、これは念のため。
場合によっては、子供にではなくてその外部に原因があることもあります。
それはたとえば、母親が大変神経質だったり、うつやノイローゼなどを患っている場合です。
そういった母親の精神的な状態が子供を不安定にさせることが、結果的に子供の指しゃぶりという行動に駆り立てるということがままありますので、もしそういった点に該当されるならばそちらのほうから改善・対応していく必要があるでしょう。
No title
とても分かりやすく冷静に受け止めることができました。
指しゃぶり=親の対応に問題があるのではないか、とかやや短絡的にみていました。指しゃぶりについての文献も色々と読みましたが、いまいち具体的ではなく、おとーちゃんさんの意見を伺いたいと思いました。
息子は経過が長いだけに、癖になっているとは思っていたのですが、もうやめられるかな、と気にならなくなっていた矢先に入園をきっかけに赤ちゃんに戻ったかのごとく復活してしまい、心配になってしまいました。
揺り戻し、の記事も参考にさせてもらいました。
じっくり遊ぶことはできます。じっくり遊んで集中しているときは、指しゃぶりはしていません。
一人遊びはちょっと苦手ですが。
テレビは長い時間見ることはありませんし寝入りもスムーズです。
おとーちゃんさんの言うように、成長を助長させる関りをしていき、様子をみていきたいと思います。
とても緊張しやすい性格でシャイなので、色々な経験から自信をつけて欲しいな、と思います。
お砂場も水遊びも大好きなので、満足感、達成感が得られる遊びをさせていきたいと思います。
勝手ながらまた、その後を報告させてください。
ありがとうございました。
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早期教育には関心はありませんが、少し怒り方がきつかったり、その時の気分で受容したり、怒ったりしてしまうところがあります。
後で振り返るとまだ3歳なのに、、そんな事で怒らなくても、、、という事ばかりです。
子どもの状態が記事の内容と部分的にですが重なるところがあり、気になります。