発達障がいについて考える Vol.6 ― 発達障がいはどこからどこまで? ― - 2012.07.18 Wed
「そういえばずいぶん昔にも同じことあったよね」と僕が返したら、その友人は「そういうことは、自分はしょっちゅうだから覚えてないよー」と。
他にも物忘れが多かったり、集合時間に間に合うことがめったになかったりと、いわゆる「天然ボケ」なキャラクターをしています。
別にその人は天然ボケとか、おっちょこちょいとかそんな憎めない性格なのでその人の個性だと思って、普通に付き合っていますが、これが例えば仕事上などで大きな支障をきたすようであったりすると、場合によってはなんらかの「発達障がい」と呼ばれるものになるかもしれません。
「天然ボケ」が「発達障がい」になるかもっていうのは、理解しやすくするためも例え話なのでオーバーなのですが、「発達障がい」の線引きというのは↑にでてきた「支障をきたす」という点にあるのです。
逆に考えると、なんらかの問題点があったとしても、「支障をきたさない」ように行動や対応・配慮ができればそれは「障がい」にはならず、「その人の個性」の範囲におさまるのです。
俳優のトム・クルーズは自身が発達障がいの一種である「読字障害」であるということをカミングアウトしています。
物事を考えたり理解することに問題はないのだけど、書いてある字を読むことがほかの人に比べて著しく困難というものです。
そのため彼は、映画の台本を読んでもらったものを録音して耳から聞くことで覚えているそうです。
彼は押しも押されもせぬハリウッドのトップスターの一人であると言えるでしょうが、これが日本でだったらそのようになれたでしょうか?
僕はなれなかったのではないかと思います。
それどころか、「台本も読めないのか」と排斥されてしまっていたのではないかと。
つまり何が言いたいかといいますと、「個性」と「発達障がい」の境目にあるのは、本人の努力とか能力だけではなくて、「周囲の理解」によるところが大きいということです。
お酒のシャンパンは瓶熟させる過程で、ビンをほんの少しの角度だけ回転させていく必要がありました。
昔、フランスでシャンパンがまだ手作りで作られていた頃は、その仕事を自閉症の人たちがしていたそうです。
そのような神経を使う単純作業でも、彼らはさぼったり手抜きをしたりすることなく、毎日正確にビンを傾けていきます。
ほかの人には真似ができないようなことが、彼らには可能だったのです。
「個性」をいかすのもころすのも周りの理解しだいであるということを、知っておくといろいろな新しい面がみえてくることでしょう。
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● COMMENT ●
No title
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「あれ?この子何かおかしいな。普通と違うな。
と直感的に思う子は、間違いなく何らかの発達障害を持っている。」
と、言われていた事に、全てをそれで捉えても良いものなのか?
と、違和感を覚えましたが、おとーちゃんさんの説明で、
何となく理解できました。
ありがとうございます。
感想です
対象が障害があるない、子供でも大人でも変わらない気がします。
シャンパンづくりのお話初めて知りました。
コスト削減や効率化が主流の今ですが、人を活かすという価値観はそれより高等な気がします。
このシリーズでも、色々勉強になりました。
ありがとうございます。
ゆうゆうさん
「間違いなくもっている」と言い切ってしまうのはちょっと言い過ぎのような気もしますが、おそらくその人の本意は発達上でなにか気になるところがあったら、そのままにしないで早めにアプローチをとることが大切というようなところなのでしょう。
なかには一目でわからないものもたくさんありますので、その点はちょっと注意かな。
友里さん
自然とそういう方面に職を見つけることもあれば、外国などでは積極的に発達障がいの人を雇用しているというところもあるそうです。
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「個性の理解」なるほどと思いました。
アールヴリュット?作品展で感動した気持ちを思い出しました。