父親の育児参加 Vol.5 ―熟年離婚が意味するもの― - 2012.10.07 Sun
いまだに前の時代の価値観、「子育てや家事は女性がするもの」という意識でいいる人も多い。
父親の父親の時代、つまりいまの祖父たちの時代はその価値観だったので、その子供である今の父親にも多分にそういう意識が刷り込まれている。
しかし、その祖父たちの時代ですら実はこの価値観ではうまくいっていなかったのである。
そのことは最近爆発的に起こったある現象が示している。
それは、熟年離婚である。
団塊の世代が一斉に退職を迎えた始めた頃、この熟年離婚がいろんなところで話題にされたことは記憶に新しいだろう。
その原因はいろいろあるだろうが、男性が「男親は外で稼いでくれば良いのだ」と家庭や育児をかえりみずにきたことが、その主なものであることはさまざまなところで指摘されている通りである。
このことは何を意味しているか?
つまり、今の父親世代の男性も、自分が子供時代だった頃の父親の価値観によってここまできていたとしても、実はもうその子供時代にその父親の価値観というものは、男性が一方的に思っているだけで母親からは許容されていなかったということである。
いわば、「父親は稼いでくれば、家事や子育てなどはしなくてもよい」というのは、とっくの昔に空洞化したハリボテの価値観になっていたのである。
熟年離婚があれほどの勢いで出たということは、それまでの男性の価値観に女性が集団でNOを表明したとも言えるのではないだろうか。
熟年になるまで離婚を思いとどまっていたのは、別に夫のためではなく子供が十分に成長するまで待っていたりだったり、その半分は当然の取り分である夫の退職金が出るまで我慢していたなどという理由も多いようだ。
前の世代だからこそそこまで待ったが、いまは女性も子供を育て自活するくらいには十分に働ける時代である。
もう、子育て中だからなどの理由で、離婚を思いとどまりはしない。
Vol.1での引用にあったように、男性が働くこと・稼ぐことだけをアイデンティティにしていては、やっていけない時代になってしまっている。
父親の時代にすら実際はNOと言われていたのである。
それに気づかずに繰り返していたら、もはや家庭は健全に維持できないだろう。
「仕事が忙しい」「疲れている」「時間がない」そういうことを理由にその時は逃げることができるが、それをすることはその一言一言が夫婦間の価値観のギャップを広げている。
実際に、家事や育児を全くできない男性もいるだろうし、そのような時間を持つこともできない人もいるだろう。
しかし、実際できないならばできないことは母親も十分理解している。
問題は、意識・姿勢なのだ。
母親が子育てで本当に悩んでいるとき、「そんなことは俺はわからん」「子育てはお前の責任なんだからしっかりやれ」「お前が甘やかしすぎるからだ」
そのように取り付く島もないような対応をされれば、理由はどうあれ母親からしてそれで許容されるはずもない。
自分で問題なく対処できるならば、そもそも相談などしていないのだ。
男性に課せられている第一の課題は、子育てや家事というものに理解を示すことだろう。
直接手伝うことができなかったとしても、ねぎらったり感謝の言葉を伝えたり、子供の様子を相談されたら真剣に耳を傾けたり、グチだと思ったとしてもそれにつきあったり。
「イクメン」の流行が示しているように、本当はいま要求されているのは、第二の課題、実際の家事・子育てへの参加である。
なので、上の第一の課題というのはもはや最低ラインといってもいいだろう。
それができないで早々に離婚に至っている例は多数ある。
興味深いことに、このケースの多くの男性が、切り出されるまで妻が離婚を考えているなどとは露ほども感じてはいなかったことである。
つまり、家事や子育てを妻に押し付けてきたことは、悪気や確信犯的に行っていたのではなく、「当たり前」と思ってしていたということになる。
それがその男性にとっての価値観であるからこそ「当たり前」なのだろう。
だからこそこの問題は根深いと言える。
- 関連記事
-
- なぜ子育てに「叩かない」と言うのか (2012/10/18)
- 叩く子育て (2012/10/17)
- 「あなたの子育ては甘やかしすぎ」 (2012/10/13)
- ペットのしつけにおとる人間のしつけ (2012/10/12)
- 最近気になるコマーシャル (2012/10/08)
- 父親の育児参加 Vol.5 ―熟年離婚が意味するもの― (2012/10/07)
- いろんなものが変わった明治期 (2012/10/05)
- 父親の育児参加 Vol.4 ―近代における子育ての変化― (2012/10/04)
- 父親の育児参加 Vol.3 ―江戸時代の子育て― (2012/10/02)
- 父親の育児参加 Vol.2 (2012/09/27)
- 父親の育児参加 Vol.1 (2012/09/26)
● COMMENT ●
No title
てんさん
ほんとだ、どうしてこんなケアレスミスしてたんだろう。
どうもね~。
保育士おとーちゃん様へのお願い
webサイト:http://www.menshoikushi.com/
この度、プロの男性保育士による知恵袋という企画ページを作成しようと思い、ご連絡させていただきました。
熱くあなたの経験を語っていただけませんか?
男性保育士を目指す後輩達へ送るメッセージ、意見を大募集。
プロの男性保育士からのアドバイスや体験談など…きっと未来の後輩たちの力になることでしょう。
■募集について
http://www.menshoikushi.com/chiebukuro/contribution.html
お忙しいことと思われますが、保育士おとーちゃん様の貴重なご意見をお聞かせ願えれば幸いです。
ご検討のほどよろしくお願い致します。
No title
何かで読んだ記憶があります。
「ありがとう」は家族にとっても大事です。
No title
私も、子育てで一番大切なのは、
夫婦円満だと思います。
夫婦間のコミュニケーションが
きちんととれ、互いが支え合っているという
実感をもてている家庭では、子どもも
それなりに、曲がらずに育つように思います。
トラックバック
http://hoikushipapa.jp/tb.php/337-45aeccee
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
コメントは久しぶりですがいつも読ませていただいています。
「熟練」じゃなくて「熟年離婚」だと思います。
それだけお伝えしようと。非公開コメントは拒否だったので、こちらでごめんなさい。
これからも記事を楽しみにしています。