子供を伸ばす関わり方 - 2012.10.14 Sun
その女の子は、歩くのはもうそれなりにしっかりしている。
言葉はほとんど出ていない様子。
遊び始めると滑り台に興味を示す。
滑り台と言っても、階段と滑るところというものではなく、アスレチック、といっても簡単なものだが、と滑るところがくっついたようなもので一段一段が広く、やや段差が大きい。
母親は「いつもやっているから自分で登れるから」と祖母に言うのだが、祖母は女の子が段差のところへ来ると、その子は自分で登ろうとしているのに後ろから抱え上げて登らせてしまう。
その後、祖母が滑り降りた先へ行ってしまうと、今度は母親もつられてしまったのか、同様に持ち上げて登らせてしまう。
子供を大切にするのはいいのだが、これでは子供の成長を奪いかねない。
以前、現代の子育てはどうしても過干渉になりやすいと書いたが、そうならないためにもひとつ覚えておくと良いことがある。
手伝うのは「できない」「やって」という意思表示をしてから
ということである。
この例で言えば、登るという身体面の行動と、意思表示という人間関係や発語、コミュニケーションから生まれる様々なものを奪っている。
この子はまだ言葉が出ていなかったとしても、登りたいのに自力で登れないと自分で判断すれば、大人の顔を見たり、何らかの声をだしたりして「できないよ」「てつだってよ」という意思表示をしたことだろう。
大人が子供に手を貸すにしても、その意思表示をしてからでもちっとも遅くはないはずである。
これをその前に大人が常習的に先回りして手を出していくようになると、子供の意欲や達成感を奪ってしまう。
さらにはちょっとでも難しいと感じると手を出さなくなったり、出来ないことを大人のせいにして八つ当たりするようになったりすることもある。
それだけでなくその影響は、考える力や行動面の発達など多岐にわたる。
例に出した滑り台のことくらいであれば、なんでもない。
しかし、こういった対応が一日24時間、生まれてからの年数分ともなるととても大きなものになる。
またときには、行動面だけでなく情緒面にまで影響することすらある。
過干渉は、ときに子供にとってストレスとなる。
ひとつひとつには小さくとも、やはり積み重ねとなると大きい。
そのストレスからや、過干渉に対する抵抗として、激しいぐずりや、叩いたりなどの攻撃、大人の言う事を聞かない、わがままなどの様子も出たりする。
成長期の自己主張が激しくなったりということもあるだろう。
年齢が小さければ、そのストレスが噛み付きなどの行動として出たりすることも考えられる。
逆に子供の意思表示を大人が待つことができ、それに対する大人のリアクションという一種の「対話」を生まれた時からしていれば、そこから導き出される子供の成長は、その積み重ねの分だけ大きくなる。
その派生から生まれる成長も、また大きい。
このように、大人の対応ひとつで同じ年齢の子供だとしても、年単位でその成長に差がみられることすらある。
これまでにも、子供を成長させるのにことさら「出来ること」を大人が仕込むことは必要ないと述べてきたが、このような普段の生活の中に子供を伸ばすものがたくさん詰まっていることがお分かりいただけたであろうか。
関連記事 子供は常に自立に向かっている
- 関連記事
-
- 成長の瞬間 Vol.1 (2013/05/13)
- ロッテンマイヤーさんシンドローム (2012/12/08)
- レストランでどうすればよかったか (2012/10/23)
- 子供を伸ばす関わり方 Vol.3 (2012/10/16)
- 子供を伸ばす関わり方 Vol.2 (2012/10/15)
- 子供を伸ばす関わり方 (2012/10/14)
- 現代の子育て ⇒ 過干渉 (2012/09/19)
- 「いいなり」の構造 (2012/06/28)
- 小さな経験の積み重ねが大切 (2012/03/26)
- 子供は常に自立に向かっている (2012/03/05)
- 乳児の遊び・関わり Vol.8 力で子供を動かしてしまうこと (2011/05/27)
● COMMENT ●
コメントありがとうございます(*^▽^*)
No title
六歳の女の子と、二歳の男の子の母です。
おとーちゃんさんのブログに出会うきっかけを
最近の記事を読んでいて、思い出しました。
下の子が生まれる前に、子育てがうまくいかず、
悩んでいました。まさに悪循環におちいっていました。
幸い実家が近かったので、遊びに行っては、両親にみてもらって、
いました。
家に帰ると、様子がまったくかわるのです。
食事も座って自分で食べるようになるし、
靴もそろえるし、急に自分でいろいろなことをやりたがり。
一番ビックリしたのは、洗面所を使ったあとに、
洗面所をひととおり洗ったり、おふろにはいりながら
たわしで、床をそうじしたり。
これらは、父の昔からの習慣です。
父にどうやっておしえたの?と聞いても
何もおしえてないと言われるばかりでした。
それから、父を観察してみて、わかったのが
まったく怒りません。
それに、子供と遊びながら、草むしり、片付けなど
日常の家のことを次々こなしていくんです。
父にコツは?と聞いても、一緒にいると
かわいいじゃんさ~と言われるくらいで…
そして、父の行動が、どうしてこのように
子供に影響したのかをインターネットで
検索していくうちに、おとーちゃんさんのブログに
たどりつきました。
こうゆうことだったのかと。
私も気をつけないと、すぐに逆方向に子育てが
むいてしまいます。
子供の様子が、答えですよね♪
また記事楽しみにしています。
返信は、不要です。
よんでくださって、ありがとうございました。
他のかたへのコメントもすごく勉強させていただいています。
社会全体のことには、無知ですが、子育てに対して
少しづつ、自信がもてるようになってきています。
感謝です。
また、遊びに来ますm(__)m☆
勉強させていただいています
「ペットのしつけ」との比較、「甘やかし」と「過干渉」などなど、おとーちゃんさんの考察は鋭くて、でも言葉には子どもとお母さんに対する優しさと本音が溢れていて、自分の年齢も子どもの年齢もずっと上であるにもかかわらず、保育士としてはほんの駆け出しの私にとっては、いつも勉強になることばかりです。そして、ほぼ全面的に同意することばかりです。
他にも現職の保育士さんもたくさん読んでいらっしゃるようですね。書き込みから、さまざまな園があることを知ることができて、考えさせられることが多いです。
幸い、私の勤め先は、「子どもをひとりの人間として尊重する」ということを徹底して実践しており、保護者の方への配慮にもとても神経をつかっていて、トラブルを未然に防ぐということが、かなり理想に近い形でできているのではないかと思います。
でも、今まで私も手探りで学びながら、あちらこちらの研修会やネット上で、いろいろな方と意見を交換していると、「ほめる」と「甘やかし」の問題や、「躾」「矯正」「体罰」などの話題で、いつも‘ベテラン教育者’という方々と考え方が対立してしまい、歳だけはそちら組でも、中身が‘若い?’私の意見は、コテンパンにやっつけられてしまうことが多かったです。
最近の新聞の特集記事で読んだのですが、そういった‘ベテラン’の方たちの信じて実践してきたことも、所詮は、第二次大戦後の急激な復興や生活の欧米化の中で、戦前までの日本伝統の子育てを、急いで何もかも吟味する間もなく闇雲に否定してきてしまったことによるほころびとなって、今や戦後のベビーブーム世代の孫たちの上に現れてきているようなところもあるみたいですね。
おとーちゃんさんは、いつもとてもいろいろなことを解説してくださいますが、どなたかが触れていらしたように、現在は、現職を離れて勉強などをしていらっしゃるのですか?新参者でここの事情に明るくないので、お差しつかえない範囲でお教えいただけたら嬉しいです。実は私も、仕事の傍らに子どもと保育について、さらに深い勉強を続けているところです。
母親修行中です
うちでは記事の母子&お婆ちゃんに近く、悪いとわかっていてもつい手を出してしまい後からシマッタと反省してます。
一歳になりたてなのでこれから気を付けなければ。
過去記事のむーちゃんのように「テツダッテー」ができるようにするのを目標に毎日学ばせてもらってます。
(返信不用です)
わかるような気がします
うちのほぼ1歳の男の子(二番目)でも、階段を上る時、私が「二階に行きますけど~」と様子を見ていると、抱っこで上がりたい時はハイハイで近寄ってきて右手をあげますね。彼は合図というより私に登ろうとしての格好だと思うのですけど。
元気な日中は我先にと進んで階段をハイハイで登っていきます。
上の子(ほぼ4歳)もいるから競争にもなっているのかもしれませんけどね。
こういう気持ちが通じてる感って育児を楽しくしてくれますねぇ。
お婆ちゃんは過保護、過干渉になりがちですよね。
うちは、お婆ちゃんはまだ50代でお婆ちゃんとしては若い方なので、こちらから言えば、過保護、過干渉はある程度防げますが、元気なひいお婆ちゃん(80代)はそうはいきません。しかも、主人のお婆ちゃんだと、こちらとしても言いにくいし。
うちは、幸い(?)実家も義実家も遠方なので、たまにしか会わないので、たまになら良いか。と思っていますが、近かったら大変だろうなあ。と思います。実家が近いと親子が密室にならないというメリットはありますが、子育て方針のすり合わせが大変。
どっちも良かったり悪かったりですね。
記事を見て、思うところがあったのでコメントしてしまいました。返信不要です。
双子ママさん
旦那さんも双子だったら理解も得られていいですね。
出来る範囲で負担を分担していければいいと思います。
双子だとお父さんの育児参加が飛躍的に増えます。これもいい点かもしれませんね。
やまねこさん
これに関して、ひとつ前の記事に寄せられた、Hiroさんときららさんのコメントが実に裏表を表していて興味深いです。
「甘やかさない」にしても、「厳しくする」にしても必要なこともあるけど、それだけでは子供は育たないということは、客観的にみることができれば答えはとっくにでているのだけど、保育園という狭い世界からしか子育てを見ていないと、なかなかわからないようです。
実際、そんな自信たっぷりのベテラン保育士が、よく自分の子育てをとんでもなく失敗しています。
しかし、そうなってすら自分のやり方に一片の疑問も持つことがない人は、そのやり方のまま保育も子育ても続けています。
子育ては少なからずイデオロギーになってしまうので、良くない部分を変えていくのはとても難しいです。
僕はいろいろあって保育園を退職したあと、現在は主夫をしながら自分の子育てを絶賛満喫中です。
保育士にとって、自分の子供を自分の手で育てられるのはひとつの理想だと思います。
ほんとに毎日たのしいですよ。
あと何人も子供がいてもいいのだけど、事情があってもう子供はもうけられません。
むーちゃんの子育てがある程度いったら、乳児を少人数だけでも預かって、たくさん可愛がって過ごそうかとこっそり思っています。
ころさん
しつけ主義の子育てだと、どうしても一方向なりがちで、子育てが難行苦行になってしまうんだよね。
はるままさん
その歳になってひ孫にあえるなんて、そのおばあちゃんが若かった当時には考えることもないような特別なことだったのだもの。
ひ孫を思う存分可愛がれるなんてこの上なく幸せなことでしょう。
過保護だとしたって、好きなだけ可愛がらせてあげればいいんですよ。
それで子供が取り返しのつかないわがままになったりするようなことはないですから。
ありがとうございます
私は午後から夜にかけての非常勤なので、しばしば夜更かしです。
昨日は、今担当の1歳児クラスのミーティングがあり、「いやいや期」とどう向き合うか、12人の園児ひとりひとりについて、現状と対策など話合いました。新人も、中堅も、非常勤も、みんなでその子の幸せな育ちを考えて、それを支える自分たちのスキルアップについていろいろと意見を出し、園長や主任からのアドバイスももらいました。私の職場は、なかなか風通しもよく、本当に子どものためになる叱り方について、かなりの時間を割いて勉強している方だろうと思います。
>子育ては少なからずイデオロギーになってしまう
なるほど。たしかに、巷には、現場を、子どもを、どれだけわかっているのか、というような評論家と呼ばれる人たちもたくさんいますものね。
また、長く現場に携わると、慣れとか、公式とか編み出してしまうのは人間の性かもしれませんね。
でも、本当に、この先行きのわからない世の中で、不安と仕事の多い親の元に生まれて来る子どもたちにとって、乳幼児期に親以外の誰と出会って、どう養育されるかということは、ものすごく重大な意味を持つことだと改めて思いました。
これからも、おとーちゃんさんの、まだまだ少ない、現場経験のある男性からの視点をたくさん勉強させていただいて、自分の保育の視野が狭くならないように気をつけていきたいと思います。
ときどき勝手な意見を書き込むこともあるかもしれませんが、適当にスルーしていただいて結構です。
いずれは‘保育パパ’ですか?実現したら素晴らしいでしょうけれども、
保育ママが訴えられたという不幸なニュースを昨日朝見ました。保険など、なんとか行政のバックアップ体制を早急に立てていただきたいものですね。
お邪魔いたしました。
気づきをありがとうございます
仕事復帰から1年半。分刻みの生活を繰り返しているうち、知らず知らず仕事のペースを子育てに持ち込んでいたのかもしれません。
今回の、手伝ってがあるまで待つこと、ハッとしました。
私のペースから息子のペースに。保育園でのお迎え時のトイレ、靴はきから意識したら、すぐに息子は母の変化に気づいたようです。満足そうな柔らかい笑顔!ひとりで出来るところを見せられた喜び、手伝ってといい、やってもらう満足の顔。
最近息子を見ているようで、ちゃんと見ていなかったのかもしれません。
おとーちゃんのブログで軌道修正しながら、日々歩んでいます。
いつもありがとうございます。
コメント欄おかりしますm(__)mぽんさんへ
ありがとうございました。
そんなふうに、言っていただけるなんて
うれしいです☆
父は、私たちが、帰った後、爆睡みたいです(笑)
私自身は、同じく母親修行中です。
できるように、なりたいなぁ。
私もがんばっていきます!
トラックバック
http://hoikushipapa.jp/tb.php/344-58ec9411
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
さっそく、丁寧なお返事ありがとうございます(*^▽^*)
ダンナさんを上手に育児に巻き込もうと思います♪
単胎児より、双子の方が手伝ってもらいやすいですもんね。
最近、家事も少し手伝ってくれます。
ダンナさんも双子なのですが、「よく親は育ててくれたよ。」としみじみ感じているようです。
「変えようと思っても変わらない」
「よいものだけを次の世代に伝えていく」
その通りですね。
恥ずかしながら、保育士おとーちゃんさんの大人な意見に感心しきりです。
はじめての育児、過保護、過干渉にならがちですよね。
幸い、うちは双子で、適度に力が抜けてよいかもしれませんね(^^)
時々、機嫌のよく双子同士でニコニコ、仲良くしています。
「大変ね。すぐ大きくなるわよ。がんばって。」とあたたかい言葉もたくさん頂きます。
こんなにかわいい双子の育児ができるのも、幸せ者ですよね。
双子育児、楽しみたいと思います(^_^)v