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2023-09

しつけの弊害 - 2012.10.21 Sun

「しつけ」において、子供が客体になってしまうことを具体的に書いてみよう。

このことはしつけの弊害と言い換えてもいいだろう。






しつけはまず、子供を合わせるべき理想像ありきで始まる。


子育て以外にも「しつける」という言葉がある。

着物などをあるべき形にとどめおくことを「しつけ」「しつける」と言う。
「しつけ糸」などの言葉はいまでもときどき使われているだろう。


子供の「しつけ」もこの「あるべき姿にとどめおくこと」というのは同じである。

子供をその「あるべき姿」に合わせていく、場合によっては改変していくのが「しつけ」である。

していくのは大人で、される方が子供である。
行動の主体が大人で、客体が子供であるのは前々回書いたとおりである。



あるべき姿、理想像というものがまずある。

「しつけ」子育てにおいて、大人はそれに子供を近づけるよう育てることが期待されている。

「人前で挨拶できる」「食事のマナーが身についている」「食べ物の好き嫌いをしない」「人前ではおとなしくする」「乱暴をしない」「汚い言葉を使わない」「ものをやたらと欲しがったりしない」「人に物を貸せる」「人に自分のものを取られてもがまんする」「早くにお箸が使えるようになる」「早くにおむつが外れるようになる」「他児と仲良く遊ぶことができる」などなど

たいへん多くの「○○すべき」「○○できる」「○○しない」という要求される理想像がある。


しかし、要求される理想像がたくさんあるわりには、それを達成させるための方法があいまいだ。

具体的な方策が示されているというより、「甘やかさない」「なめられない」などの大人に対する精神論的な信条があるばかりで、どうしたらそうなるのかというのは明示されていない。

また、そういった精神論的な信条が一人歩きしているので、しつけをしている人は「どうしたらそうなるのだ?」という視点もあまり持たないようである。


だがそれゆえに、大きな問題が発生する。

あまりにその要求される理想像が、「正しいもの」と思われているがゆえに、「目的は手段を正当化する」ということが頻繁に起こってしまっている。


例えば、「ごまかし」や「おどし」「モノで釣る」といったことがそうだ。

これまでにもそういった子供への関わりはよくないと書いた。
そうやってひとつひとつ指摘してみると、多くの人がそれはあまりよいことではないと納得する。

しかし、これらは実は「しつけ」子育てが大人にさせてしまっているのだ。

大人は「子供をこのようにしなければならない」というビジョン・理想像をもっている。
その「あるべき姿」に、なんとか適合させるためにさまざまな手段を試行錯誤する。



あまりにその理想像が絶対であるがために、その手段がよいものでないことに自覚的に気づかないまま行ってしまっている。



例えば、子供を静かにさせるために、「静かにしてたらおかしあげるよ」と釣ってみたり、「もうすぐジュースがくるからね」と釣るとごまかしの複合技を使ってみたり、それでも効かない、もしくは持続しないと「もうレストラン連れてきてあげないよ」「ディズニーランド連れて行ってあげないよ」と脅したり、「うるさい」と叱ってみたり、「おねーちゃんはきちんと座っているよ」と他者と比べることをしてしまったり、まだできていないのに「ああ、ちゃんと座れてえらいなー」と偽りの褒め・誘導のための褒めをしたりする。

↑このすべてこの前レストランで隣の席に座った家族が、ほんの1時間ほどのあいだにしていたことである。
残念ながらそれで最後まで、子供は静かになることはなかった。

これらのどれをとっても、子供そのものが自覚的に静かにする必要性を理解し、実行するためになることは入っていない。

だが、「目的は手段を正当化する」で親はこれらのことを一生懸命行っている。


この家族の親は現代的な基準で考えたら、むしろとてもいい人たちなんだと思う。
周りの人に迷惑をかけないようにと、気遣っているし、「うるさくてすみません」と謝ってくることもできる常識人である。

子供に学ばせようと一生懸命でもある。

だが残念なことにその努力の多くが、子供を成長させるという点からは、空回りに終わってしまうだろう。


僕はここにまさに、子供が常に客体になり、理想像を意図するあまり子供そのものの育ちがはかられなくなってしまう、「しつけ」による子育ての弊害があると感じる。



この家族はそうではないが、ときにはその理想像に当てはめるために、子供を「叩くこと」すら正当化される。

正しい姿に合わせる「しつけ」という考え方が、叩くことすら要求してしまっているのだ。

初めに理想ありきで、そこに無理やりにでも子供をもっていくのが「しつけ」の本質である。

万事うまくいけばいいが、人を育てるというのは、そんなする側の思い通りにばかりいくものではないということは誰しもわかることだろう。


もし、思い通りにいかなくて、子供がその理想像と離れていけば離れていくほど、強くその理想に当てはめようとさまざまな手段を弄するので、子供はどんどん抑圧されることが多くなってしまう。

さらに子供のネガティブな姿の多くが、こういった親からの抑圧から生まれてしまう。

このように「しつけ」で子育てを考えることには、その本質に根本的な矛盾をはらんでいる。
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● COMMENT ●

怒られると叩く子について

こんにちは。
以前、過保護と過干渉のところで一度相談させていただいた者です。ブログ、参考にさせていただいてます。

今回、叩いてくる子について2点相談させてください。長くなりますがすいません。

息子は今2才3ヶ月です。家族形態は息子から見て、息子、父母、祖父母の5人家族です。平日はみんな仕事なので、ほぼ母子2人きりです。

1点目ですが、息子がいけないことをした時(予め大事だよと伝えてから渡したものを投げたり、人を叩いたり、人に物を投げつけた時)、それはいけないよ、ダメだよ、とそこまで強い口調ではないけど家族が叱った時、息子は口をグッとつぐんで泣くのを堪えながら私のところに来て私を叩いたり持ってたミニカーを投げたり(人にあたらないようにはしてます)してきます。叱られても泣かない子です。

私は、叱られた直後にさらに叩いてきた事を叱っても逆効果かなと思うので叩いてきたことは叱らず「○○しちゃったのはよくなかったね」と優しく言うだけです。その後、息子の態度は抱きついてきたり、さらに叩いてきたりとその時によります。

謝らせたり、反省する姿を見たくて叱るわけじゃないので、どんな態度に出てもそれはそれで終わりにしてるんですが、この対応では中途半端でしょうか?
普段、ダメだよ!と真剣に禁止の言い方で叱るのは1日に1回あるかないかで、大体、テーブルから降りようねとか、投げると壊れちゃうよ、とかそんな注意の仕方です。
その時は、ニコニコしながら聞き入れてくれたり、またわざとやったりですが、泣くのを堪えて叩いてくることはないので、息子なりにさすがにまずかったと思っての態度なのかなとも思うのですが。

2点目ですが、毎週末、近所の姪と甥(4才手前と1才後半)が祖父母に預けられます。息子は4才になる姪には一目置いてるのか恐がってるのか叩きません。でも1才後半の甥のことは最近叩くようになりました。息子が遊んでるとき近寄ってきたり、私が普段息子にやめようねと言っていることを甥がした時や、たまに何もなくても叩いてしまいます。オモチャの取り合い等は多少見守りますが、叩いた時は私が息子を叱ります。数ヵ月前までは、抱きしめたりオモチャを貸したりはしますが叩くことはありませんでした。
息子が急に意地悪になってしまったようで、私もショックで、姪たちが来たときは、普段よりも息子を見張ってしまうというか、甥に対する態度の面では息子に厳しくなってしまいます。

二人とも自分の子ならそうならないのですが、片方は違うので怪我させたら大変だという思いもあって、自分の子に厳しくなってしまいます。
息子はどうして叩くようになってしまったのでしょうか?ヤキモチなのか自我なのか…
平日笑顔で過ごせる分、週末が正直嫌で嫌でたまりません。それとも集団の経験がない息子には、こういう経験が必要なのでしょうか。育て方まずかったかなと落ち込みます。

ちなみに、姪は甥を頻繁に叩きます。それも多少は影響してるのでしょうか。

叩こうとした時や、叩いた時の対応の仕方、それ以前の息子への関わり方などアドバイスいただきたいです。

時間のあるときで結構ですので、よろしくお願いします。

記事、ありがとうございます。
心にすっと入ってきて、子育てまた頑張ろう!!って思えます。

質問なのですが、上記載の、レストランで、どう言うのが正しいのでしょうか…
隣の人達が間違えてるというのは理解できるのですが、結局そのような声かけになってしまいます…


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