相談 「叱る子育て」を変えていくには Vol.3 『全面肯定』 - 2012.11.10 Sat
虐待されている子や、大人に不信感を持ってしまっている子供に独特の姿があります。
独特というよりも、顕著に出ているという方が正確です。
例えば、そういった子供の担任になり関係を持っていこうとすると、わざと大人を試すような行動をとります。
試すというのは、わざとネガティブな行動をその大人に対してとって、その大人がそれでも自分を受け入れてくれるか、受け止めてくれるかを試すのです。
ある暴力的な虐待を受けていた、3歳の女の子は悪態をついたり、つばを吐きかけてきたりしました。
そういった攻撃的なものでなくとも、わざわざつまらないことでごねたり、たいして痛くもないようなすり傷や転んだりということで、大仰に泣いたりして大人の受け入れを求めてきます。
また、他児を叩いたり、他児のものを取ったりすること、他児の邪魔をしたりすることで、大人を試したりもします。
それらの子供は、このような「試す・確認する」行為で十分納得がいき、この大人は受け入れてくれるのだ、信頼できるのだ、裏切らないのだということを認識してから、ようやく心を開く準備をしてくれます。
関係性を作るのはここからがようやくスタートラインです。
これらをひとつひとつ、叱り飛ばすような対応をしていると、子供は心を開いてはくれません。
このような試す行動を受け止めるのは大変だと思うかもしれませんが、試す行動をとるのは実はいいことです。
まだ、「この人に受け止めてもらいたい」という気持ちがそこにはあるからです。
少なくとも「この人は受け止めてくれるかもしれない」という期待や、多少の信頼がそこにはあります。
年齢があがってしまったり、大人を根本的に信頼できない子になってしまっていると、そもそも試す行動すら出さなくなってしまいます。
そうなってしまうと、スタートラインに立つことすら難しくなるということです。
さて、いまのは極端な例ですが、このようなことは親子の関わりの中でもたくさん出てきます。
乳幼児の数々のネガティブ行動は、このような側面のあるものも多いです。
受容や共感といった親子関係の基礎の部分に、子供が不安、不満を持っていると、こういった試す行動としてのネガティブ行動がいろいろでます。
さっきあげた転んで大仰に泣くということなど、よくあることですね。
(ただ、こういうものには試す行動としてではなく別の要素からくることもありますから、すべてがそうではありません)
保育園でも、それまで機嫌よく遊んでいた子が、親が迎えにきた途端に、ぐずったりわざと困らせるようなことをしだすというのもよくあります。
これはまさに試す行動としてでているでしょう。
その証拠といいますか、こういった子供の行動は迎えが遅いほど、頻度も程度も上がっていきます。
16時に迎えに来る子供よりも、18時、19時と遅い子供ほど出てくるようです。
それはやはり預けられている反動といいますか、自分が頑張っていることを主張したい気持ちだったり、親はきちんと受け止めてくれるのか試すという要素があるからでしょう。
(ただ、これもほかの理由があることもありますので、一概には言えませんが)
また、下に赤ちゃん・弟妹がいる子なども、親に対してネガティブな行動をとって試したり、関心を求めるということもよくありますね。
そういうわけで、このような試す行動としてのネガティブ行動は子供にとってよくあることです。
多くの人がこのネガティブ行動に対して、
「早く」「うるさい」「○○するな」「△△しなさい」というような命令・指示的な対応、
叱ったり、怒ったりの拒否的な対応、
うんざりしたり、無視したり、「そんなことする子は知りません」「ママは行きますから勝手にしなさい」というような疎外感を持たせる対応をしがちです。
でも、それらのネガティブ行動が子供の悪意から出ているのでなく、満たされなさや、親子関係に対する不安などから来ているものだとしたらどうでしょう。
子供のそれら無言のメッセージは、大人に伝わっていないということになります。
それゆえ結果的に、もっとたくさん試さなければならないという状況に、子供は追い込まれてしまいます。
なので、子供のネガティブ行動、つまり大人から見て「叱らなければならない行動」というのが増えてしまいます。
悪循環です。
子供によっては、別のところで親に認めてもらったり、満たしてもらったりしてバランスを取れる子もいます。
または、拒否的に対応されるのでなく、なにか別の出し方を見つけてそれをたくさんするようになる子もいます。(たいていは大人が快く思わないことです。例えばわざとしているかのようなおもらしをしたり)
しかし中には、モノや食べ物でその気持ちを満たそうとする子。
他児に意地悪をすることで、その気持ちを満たそうとする子。
親に求めることを全くあきらめ、無口・無表情になって心を閉ざしていく子。
その気持ちを、ぐっと心に抑圧して行って、限界になってからそれらを噴出させる子。
思春期になって、親からのくびきが外れるのを待って、自分の好き放題する子。
などもいます。
だいたいは、そこまでこじらせずとも、それらネガティブ行動を出すことで大人の注目を惹きつけることで、なんとかバランスをとっていくようです。
でも、子供の育ちにとって本当にいいのは、子供が自分でなんとかしてバランスをとっていくようなことではなく、きちんと必要なものが満たされれば、それらネガティブ行動はそもそもでなくなることでしょう。
乳幼児の子育てをしていて、叱ることばかりになってしまっている人は、この点を見直して欲しいと思います。
そこで「全面肯定」なのですが、前フリが長くなってしまいましたので、次回に。
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● COMMENT ●
とても勉強になります
とても勉強になります。
当てはまる事ばかり。おとーちゃんさんに見られているのか?!?と思うほどです。
長女の行動はサインですね。それに対してイライラしていたら悪循環。
今は朝を早めに用意し、余裕を持って長女と向き合っています。以前よりも穏やかに過ごせるようになりました。やはり、私の余裕のなさが、更に悪循環だった気がします。
本当に気持ちが楽になりました。ありがとうございました。またよろしくお願いします。
私はよくオムツとか洋服着せるときとかに教育番組の歌を歌いながらおこなっているのですが…もしかして子供だましですか?
たくさんいます
双子ママさん
このことは、この記事にあるような「試す行動」とは違うものだと思います。
月齢的にまだ、自分の受容して欲しい気持ちなどを、婉曲的な試す行動としてだす時期ではありません。
>特に、眠かったり、空腹で機嫌の悪い時がひどかったです。
ここに書かれているようにそうのようなことや、正確にはわかりまえせんが、距離感が近いことなどからくる自然発生的なかかわり合いの姿ではないかと思われます。
あまり神経質にならず、離すことが適当だと思われるときは、気にせず離してしまっていいと思いますよ。
名無しさん
> 私はよくオムツとか洋服着せるときとかに教育番組の歌を歌いながらおこなっているのですが…もしかして子供だましですか?
そうとも言えるし、そうとも言えないというところでしょうか。
そういったことも適度に使うのであれば、楽しく一緒に着替えをするということになるでしょうし、それをしなければ着替えができないという状況になってしまっているとしたら、それは子供だましをしていると言えるかもしれませんね。
No title
息子は公園などにいくとよそのお母さんに必死でかまってもらおうとすることがあります。私と遊ぼうと言っても聞く耳を持ちません。
先日は兄弟のお母さんが気にいったらしく熱心に話かけたり、そばで遊びました。そちらのお母さんも2人のお子さんをみている状況なので満足出来なかったのか、その兄弟に砂をかけたりおもちゃを返そうとしなかったり意地になってしまいました。
ママはちゃんと○○くんを見てるから大丈夫と伝えるとスーっと落ち着き普段の姿に戻ったのように感じます。
満たされない気持ちをよその大人に向かせたのでしょうか。
疎外感を持たせる対応を普段してしまうことがあるので気をつけてなくしていかなければと反省いたしました。
名無しさん
その可能性もあるでしょう。
あとはツンデレ的な遠まわしの自分を見て欲しいという気持ちだったり、「あの親子みたく自分もお母さんに関わって欲しい」というような憧れ的なメッセージという似たような事例をみたことがあります。
>ママはちゃんと○○くんを見てるから大丈夫と伝えるとスーっと落ち着き普段の姿に戻ったのように感じます。
それで落ち着いたというのであれば、自分に注目して欲しいというサインだったのかな。
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以前、相談させていただいた9ヶ月(修正7ヶ月)男、男の双子ママです。
ありがとうございましたm(_ _)m
今回のネガティブな姿、最近のうちの双子に重なってしまいました。
すこし体格や動きがよかった次男が長男を叩いたり、蹴ったり、上に乗ったりしていました。
特に、眠かったり、空腹で機嫌の悪い時がひどかったです。
それが、ここ2日ぐらい長男が次男に嫌がることをするようになりました。
長男の方が座位が安定し、能力的に逆転したようです。
「困ってるよ」「痛いから嫌だって」と待ってみたりしてきました。
辞めたり、よけたりできることも。
能力の逆転がおき、相手の体に乗り上げるので、危なく見ていられなくなってきました。
リフトだと思いつつ、強制的に2人を離すような対応になります。
一人っ子の方のように、丁寧にお世話できないからのようにも思えてしまいます。
試す行動に、どこまでどのように対応したらいいのでしょうか?
おとーちゃんさんもお忙しいでしょうが、更新を楽しみにしています。
ムリされないでくださいね。