ロッテンマイヤーさんシンドローム - 2012.12.08 Sat
アニメの『アルプスの少女ハイジ』にでてくるクララの個人家庭教師にロッテンマイヤーさんという人がいます。
見たことのない人はご存知ないとは思いますが、とても素晴らしいアニメですので機会があったらぜひ見てくださいね。
で、非常に厳格。
ハイジもクララもこの人のおかげでずいぶんと苦しい生活を強いられるのです。
子供が見るとロッテンマイヤーさんは非常に意地悪に見えて、ハイジのお話の好きな子でも、あのあたりの場面、何話分かのエピソードは嫌いという人もすくなくないのですね。
しかし、ロッテンマイヤーさんが言っていること自体は、どれひとつとってもあながち間違ってはいないのです。
それは紛れもない正論なのですね。
ただ、真面目すぎて正論をおしつけてしまっているだけなのか、意地悪心もあって正論を盾に意地悪なことを言っているのかは微妙なところはあります。
さて、問題はこのようなことが実際に親子の関係の中でもあるからです。
僕はこういうのを「ロッテンマイヤーさんシンドローム」と名づけてみました。
ときどき保護者から
「あいさつすることだけはきちんとさせています」とか
「嘘をつくことは泥棒の始まりなので、それには厳しく対応しています」とか
「自分も親に厳しくしつけられたので、子供にもそうしています」
という話を耳にすることがあります。
別にどれもまちがったことではないでしょうから、それはそれでいいとは思いますが、だからといって厳格すぎないといいなぁと感じることがあります。
そういった親の関わりから、ずいぶん難しい性格に育ってしまった子というのもいくつか知っているからです。
4歳の男の子。
母親は大変厳しく、子供を大事にしていないわけではないが、おおらかに可愛がるという関わりは出さない人。
小さい時から、ものの良い悪いに厳しく、少しでも間違ったことをすれば突き放したような感じで叱る。
子供が冗談でいったようなことでも、事実でないことならば、それは「ウソをつくことだ」と大変厳しく怒る。
4歳クラスにもなると、友達同士のなかでも主張のぶつかり合いでトラブルやケンカなんかも多くなるわけですが、その男の子は自分が当事者でないことでも、なにかがあれば飛んでいって「お前が悪いっ」といきなり殴りつけるのです。
それも、当事者の子供達ですらキョトンとするほど、ひとりでヒートアップしているのです。
もし、自分が当事者にでもなったときは、さらに大変です。
自分の怒りの感情がコントロールしきれないどころか、自分の中だけにとどめておくこともむずかしいようで、モノにやつあたりしたり、壁や床を自傷行為になってしまうのではないかと思うほど力いっぱい殴りつけたりをします。
相手の子を椅子で殴りつけようとして、あわてて止めたということもありました。
その子が小学校高学年になってからの様子も耳にしましたが、幼児期よりも多少はセーブできるようになったとは言え、やはりときどき同様の姿はでているということでした。
世の中に、しつけのことを書いた本や、ネットにも同様の趣旨のものなどたくさんあります。
どれももっともな理屈で、正論なのですね。
そういうものを良かれと思って子育てに取り入れる人もいます。
また自分が育てられたそういったことを、そのまま我が子にする人もいるでしょう。
それ自体は、否定するようなところはなかったとしても、問題はそれらを実践する際のさじ加減とでもいいましょうか。
実際の、関わり方なのですね。
正しいことだからといってそれを厳格に押し付けることが、必ずしも子供をまっすぐ育てることにはならないのですね。
ロッテンマイヤーさんは正しいことを常にいっていたとしても、クララもハイジも健全な状態でいなかったわけです。
むしろ、多少ハメを外したクララのおばあさまの方が、子供をまっすぐにしていることができていたのです。
子供向けのアニメとはいえ、人間というものがよく描かれていたと今見ても感心します。
ちなみに聞くところによると、作ったのはいまでも有名なあの人たちですが、アニメ制作にあたって1年間スイスに行って取材したそうです。
いまではそこまでしてアニメを作ることは難しいでしょうねー。
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● COMMENT ●
スイスに住んでみて
ご無沙汰しております
そのとき、保育士試験を受験するとお話させていただいて、
「一発合格のつもりで受験勉強するといいですよ」とアドバイスいただきました。
その節は、ありがとうございました。
その保育士試験ですが、今年、1年目で合格することができました!
実技は思っていたより、ギリギリの点数でしたが、ホッとしています。
こちらのブログで、おとーちゃんさんの子どもに対する気持ちを感じるたびに、とても励まされました。ありがとうございました。
そして、お忙しいところ、恐縮なのですが、今回も、相談をよろしいでしょうか?
これから、働くにあたって、どのような園を選んだらよいのか、ということなのです。
子育てをしながらの仕事なので、フルタイムかパートタイムか、という点もありますが、今回お聞きしたいことは、大規模園と小規模園、どちらにどういったメリット、デメリットがあるか?についてです。
(小規模園は、家庭的保育と呼ばれるような、5人前後を預かる園を考えています)
一番大切なのは、自分がどのような保育をしたいか、また、その園の方針、だと思っています。
ただ、正直なところ、「おとーちゃん保育園(があるとするならですが^^)」以外、少なくとも、うちの近所の、どこの園も似たり寄ったりなのでは?と思ってしまいますし、実際のところは、働いてみなければわからない気がします。
職場としての保育園選びで、なにかアドバイスをいただければ、嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
追伸・前回相談した、ひとり遊びをしない娘ですが、だんだん、ひとりでも集中するようになりました。環境を整えつつ、待った甲斐がありました。娘の成長を感じて、感動!です。これからも、娘のペースを大事にしていきたいと思います。
No title
自身はハイジらに勉強は教えておらず、教師を呼んで傍らで様子をみています。
Shizuさん
また、当時はプロテスタントの厳格さもかなり色濃かった時代ですしね。
実際あのような子育てというのは少なくなかっただろうと思います。
megmamさん
ご家庭やお子さんもおありのなかがんばりましたね。
確かに保育士は職場選びが非常に難しい。
おっしゃる通り実際働いてみないとわからない部分もあるでしょう。
でももし、いくつかの中から選べるのだったら保育の様子なんかちょっと覗いてみると、なんとなく雰囲気はつかめるかと思います。
僕なんかは散歩の様子とかだけでも、ある程度どんな保育をしているのか想像がつきます。
極端なところでは、保育士に余裕がなくてピリピリしていたり、笑顔ひとつないなんてところは、保育士自身が働きにくい環境にあるのだろうと感じるし、
あまり子供も見ずに保育士同士で私語ばかりしているようなところは、保育に専門性が低いのだとわかるし、
安全への配慮とかやや欠けたり、名前を呼び捨てにしていたりしても、それなりに暖かく子供を見守っているところは、考え方は古いにしてもそれなりに保育に向き合っているのかな
などなど。
大きい小さいはまあ好みかな。
大きくてもいい保育をしているところもあれば、その逆もあるしね。
このあたりは一概に言えないねー。
ただ、お子さんが小さくて例えば風邪を引いて休まなければ、なんてときに大きいところの方が多少は休みが取りやすかったりというのはあるかもしれない。
でも、これもその職場の体質にもよるので一概にはいえないかなー。
僕は、少数の子を暖かくのんびり我が子のように可愛がって関われるところがあるなら、そういうところ好きだな。
まあ、仕事では20~30人クラスの大きいところばかりだったけどね。
いきなり正規で入るよりも、パートなどで入ってみるのがいいように思うよ。
あんまり変な保育していても、パートなら辞めやすいしね。
就職はしてみたけど、あんまりひどい保育で仕事へのモチベーションなくしてしまった、なんていう話よくあるからね。
ただ、最近はパートといっても、給料体系がパートタイマーなだけで、仕事も責任も正規と変わらないなんてところもあるから、そういうところは気をつけたほうがいいと思う。
給料がどうとかよりも、そういったところはそもそも「よい保育をする」という視点をもってない可能性が高いからね。
もしも、あまりにも満足して働けるところがなかったりしたら、自治体の保育ママの募集などもあるからね。
そういうのを利用して自分の納得のいく保育をするという手もありますよ。
Re: No title
> 自身はハイジらに勉強は教えておらず、教師を呼んで傍らで様子をみています。
執事ではありませんね。
もし執事だったら、食卓を共にするということなどは絶対にないはずです。
正確にはナン(Nann)ナニー(Nanny)と呼ばれるもので、初歩的な教育と育児、しつけなどを行います。
ある程度の年齢になって、歴史やラテン語など専門的な学問をする年頃になると、他に家庭教師をつけます。
アニメのなかででてきた教師というのは、それに相当するものではないでしょうか。
こういったナンは中世から続く伝統で、もともとは修道女がそれに当たったのでNannつまり修道女という呼び方から来ています。
サウンドオブミュージックのマリアも、修道女見習いでしたがまさに修道院から派遣されていましたね。
彼女もちょうどロッテンマイヤーさんと似たポジションのものです。
そう考えるとわかりやすいでしょうか。
過干渉 過保護
いつもおとーちゃんさんのブログを拝見させていただいています。
20代後半 一歳七ヶ月の男児の母です。
最近育児に自信がもてなくて今日相談のメールをさせていただきました。
夫と子供と私の三人暮らしで、両両親ともに遠方のため、いつも三人です。
平日は、夫の帰りも遅いので、ほぼ母子家庭のような感じで、土日も仕事や睡眠にあてるため夫と子供の関係はあまり持てません。
いつも二人っきりでいるのはよくないと思い、なるべく外に出かけて、児童会館などで遊ばせています。
相談の内容はここからなのですが、児童会館などに行っている時も、まだ一歳七ヶ月なので危険認知能力はあまりないので、できるだけ離れて見守るようにしています。
集中して遊んでいるような時には、声かけはしないようにも心がけています。
時々集中して遊んでいても、わたしがいるかどうか確認するので、見てるよと、にっこり笑いかけたりしています。
児童会館では大型の遊戯 があるのでそこまでべったりではないのですが、 家に帰ってくると、私から離れないでべったりとくっついたままです。
おもちゃなどではほとんど遊ばず、ひたすら絵本を読んでと膝の上に座り、平気で2時間くらい読むのを聞いています。
家では、インターネットや携帯電話など子供の前で使わないようにしていますが、電話がかかってきてとって話ていると、自分が構ってもらえない&絵本読んでもらえないからか電話を切るまで泣いてグズグズし続けます。
実家の母に、自分の関わり方が悪いのかなぁ?と相談してみたのですが、
兄弟がいればそんなのなくなるの一点張りで…。
毎日二人きりの時間が長くて、なるべく過干渉や過保護にならないようにと気をつけてはいるものの気付かないうちにそうなってるのではないか? それ故、子供が私から離れて遊ぶことができないのかなぁと心配になりご相談させていただきました。
育児も初めてで、これが歳相応の状態なのか?周りと比べることぐらいしかできずにいます。
周りのママからは、本当にいつもべったりだね~と言われるのでますます不安になり…。
お忙しいところ申し訳ありませんがよろしくお願い致します。
ありがとうございました!
やはり、保育士の職場選びは難しいのですね。
読ませて頂いて、我が子を預けたくなるような園で働けたらいいな、
と改めて思いました。
子どもを保育園に入れることになるので、近所の保育園の見学は少しずつしています。その時に、自分がここで働くとしたら?という視点も合わせてみていきたいと思います。
パートor正規
急な休みの取れやすさ
そもそも職員を大切にしてるか
など、とても参考になりました。
ありがとうございます!
試験組なので、現場に立てても、負い目というか、自信がなかったりするのですが、早く一人前の保育士になりたいので、いい園にめぐり合って、精進したいです。
ありがとうございました!
相談させてください
ひとつの園は毎朝半袖で園庭を走ったり体育ローテーションや乾布摩擦など、とにかく体が丈夫になりそうなことと、子ども達が楽しそうで元気に大きい声を出すところがいいと思いました。
ただそちらは右脳教育とのことでフラッシュカードや文字数字など、勉強がたくさんあります。
私は早期教育の必要を感じないので家でのびのびしていればいいと思い決めましたが、体験に行った時に限られた時間で制作を目の前でとりあげられたり、準備に少し遅れても待たずに始めたり、本当にこれでいいのだろうかと疑問に思うことがありました。
娘は楽しくがんばると思います。
夫も周りの人も、自信持って通わせたらいいと言います。
別に1クラス20人しかいない幼稚園があって園庭でたくさん遊べるようです。
戦いごっこが禁止なのも好きでしたが、少人数なので小学校に入ってから戸惑ってしまうかもしれないと候補から外してしまいました。
娘には今さら別の幼稚園にしたら混乱させてしまう心配もあります。
長文で下手な文章で申し訳ありません。
とーちゃんさんのご意見を聞かせて頂けるなら大変ありがたいです。
Snowさん
こういう様子というのは多くの子によくあることです。
そのくらいの年齢特有の姿といってもいいでしょう。
まだ、「安全基地」の時期ですからね。
成長と共にだんだん自立へと進んでいける部分ですから、過保護過干渉・依存にならないようにしていればあせらなくてもいい部分だと思います。
いまはたくさん肯定と共感をしていけば、自立に向かう力がついていきますよ。
とはいえ、「自立」目に見えるようにでてくるのはまだまだ先です。
いまはその基礎工事の時期ですね。
youkoさん
幼稚園というのは学校なので、家庭にはない規律があったり、決められた枠の中で行動したり、そういった対応をされるということもひとつの経験なのですね。
家庭で受容や安定が得られている子ならば、そういうことにも適応できる力があるはずです。
子供本人が嫌がっているとか、性格的に合わないとかでなく、そこに適応していけるようならば、大人は自信をもって通わせるのがいいのではないでしょうか。
ありがとうございました
今はそういう時期だと聞いただけで、不安がなくなり、また子供に笑顔で自信を持って接していくことができそうです。
本当にありがとうございます。
No title
りりと申します。過去記事に失礼いたします。
私はティーンエイジャーの子ども2人の母で、ハイジの国に住んでいます。
子どもが大、大好きでおとーちゃんさんの記事に毎回、そうなんだよね、と深く共感しながら拝読しています。まだ制覇できていないのですが、ゆっくり読んでいきたいです。
ロッテンマイヤーさんシンドロームというネーミングに思わず吹いてしまったのではじめてコメントを書いてみました!
義妹が自分の子どもに、ありがとうは?ありがとう言った?
とうるさかったのを思い出します。
ある時など、わたしが甥っ子にプレゼントを渡す前に、ありがとはっ?まだ渡してないんだけど、と心の中で思ったものです。
現在甥っ子は小学4年生ですが、ありがとうをまったく言わない子どもに育ちました。
おとーちゃんさんは私の漠然とした想いを文章にしてくださっていて嬉しいです。
我が家のティーンエイジャーたちはこのような子育てで元気いっぱい、毎日が楽しくて仕方ないようです!
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おっしゃる通り、正論の押しつけがロッテンマイヤーさんの問題なんですが、彼女の正論にはドイツ文化の押しつけという側面も多分にあると今は感じています。
真面目すぎて正論を、というだけでなく、視点が固定されていて多様性に目を向けることができない人、とでも言いますか。
誰にもそういう要素はあるのでしょうが、自分もそうなっていないか反省するきっかけにしたいと思います。