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2023-03

しつけの保育  - 2013.01.04 Fri

カテゴリを保育に変えましたが、内容的には昨年末に更新したこちらの記事の続きになります。
「外からできるようにすること」と「内からできるようにすること」の違い

前回書いたようなことの保育現場でのあり方について考えていきます。



しばしば、保育士や保育園の方針の中で、「うちの園はしつけを重視しています」とか「しつけとして必要だから」というようなことが言われている。


そこで言われている「しつけ」とはどういうことなのか、具体的にはなにをしているのかということを見ていくと・・・。

実際やっていることは僕の知る限り、前回の内容にあるような「外からできるようにすること」であることがほとんどだ。


前回にも述べられているように、だからといってそれがすべてよくないわけでも、うまくいかないわけでもない。

うまくいく分には、それは「子供の力を適切に引き出した」と言えるだろう。



しかし、実際にこういった保育を見ていると、どうにも気になるところがある。

ときにその子供を「出来るようにする行為」が、その子の現状ではとても出来ないことを要求していたり、精神的なストレスがかかるような状況でしていたり、

子供の力を伸ばすためというよりも、大人が手をかけずに済む状況を要求しているようにとれたり、少ない人員で保育するために子供に負担をかけてまで、その「できる」を要求しているのではないかと思えることすらしばしばある。


過去記事に寄せられている現役の保育士からの多くのコメントを見ても、このような保育をしているところが少なくないのがわかる。


このような状況があるのにはいくつかの理由があるだろう。

ひとつには上で出ているように、実際に少ない人員で保育をしなければならない施設が存在しているからだ。

例えば、営利目的でお金儲けとしてやっている施設では、利益を増やすために人件費を圧縮している。

設置基準を守らねばならない認可保育園では、どれだけ人件費をさげようとしても、その認可基準の人員だけは確保しなければならない。(それでも十分とは言えないのだが)

設置基準を守る必要のない施設では、可能な限り保育士を減らすということが当然のごとく行われている。


そのなかでは、保育のやり方もその状況に合わせたものとならざるをえない。

なので、子供に負担をかけたり、僕からしたら虐げているとすら感じるようなことすら平然と行われているところもある。

しかもその保育士たちは、人員が少ないためにやむをえず子供に負担をかけてしまっているのだ、という認識はほとんど持っていない。

その保育士自身そういう保育しか知らなかったり、先輩からそういう保育を仕込まれているので、保育とはそういうものだと思っているし、それができることにプライドすら持っている。

そのような保育に疑問を持つ人は、そういった施設では良心がとがめて長く働くことはない。

僕の知り合いにも、保育施設に正規やパートとして就職・再就職したが、あまりに強圧的に子供に関わったりする保育に嫌気がさしてやめたりした人が何人もいる。

追記しておくと、そういった施設では労働条件が劣悪なことも多いので、穏やかに子供と関わる余裕がすでに保育士に失われていることも指摘できるだろう。




では、認可園や人員の十分にいる施設ではこういうことはないか?というと、それがそうでもない。

なぜなら、現在の年配の人たちが持っているように、このような「できることを」子供に要求していくことが既製の子育ての価値観であるということが、そのまま保育の中にも存在しているし、

また、かつての保育のなかでは、そういったやりかたで十分に健全に機能していたからでもある。

子供・親・家庭の様子というのは地域差がずいぶんとあるものだから、いまでも地域によっては、それで十分に機能してしまうところもあるかもしれない。



保育園の設置目的というのは、「保育に欠ける乳幼児のための家庭の代替」(つまり、仕事などで子供をみれない人に変わって家庭的に育児する場ということ)なのだが、かつての保育園は家庭というよりも、むしろ学校に近い部分が多かったと言える。

例えば、保育園というと「お遊戯」というようなイメージをもっている年配の人は多い。

そのように、かつてはそういったことを子供に教えたり、生活の中で様々な「できる」をさせることが、そのなかには多くあった。そしてそれで済んでいた。

なぜなら、核家族でなく祖父母が日常的に養育に携わっていたり、地域のつながりが多かったり、親の養育力もつよかったりなど、子供の基礎的な部分は保育園でことさらケアせずとも、多くが家庭内でなされていたということが理由に挙げられるのではないかと僕は思う。

だから、かつての保育士の評価基準は、そういった「できる」をいかに子供にうまく浸透させられるか、家庭における「甘え」から脱却させて「自立」へと向かわせられるか、そういうところに焦点があてられていた。

なので、この価値観を持ち続けている、もしくは周囲の先輩保育士からそれを学んだ保育士は、子供個々人へのケアという視点よりも、いかに「できる子」にするか、大人の要求に従う子になるか、という考えを強く持っている。

なかには「いかに子供になめられないか」ということを平然という保育士もいた。

もはや、そういった「できる子にする」という意図すら残っておらず、ただ強圧的に関わることを当たり前に無自覚的に行ってしまっているだけという保育士も少なくない。
たいへん残念なことに・・・。
そして本当に問題なのは、まさにその部分だろう。


現在の子供の置かれている状況というのは、かつてとはずいぶん変わってきている。

ごく当たり前の甘えを受け止めるところからや、大人に対する基本的な信頼を築いたりするところからケアすることを、その子その子に合わせて行っていかなければならない。

そういった状況では、このような「外からできるようにすること」ばかりでは機能しないことも多い。


ここで僕は、そこでの「しつけ」という言葉が、そのように子供に負担をかけたり、子供を虐げること、大人中心に保育することに対する「免罪符」として使われてしまっていることを指摘したい。


子育て = しつけ = 大人の言う事を聞く子 
という図式が頭の中にインプットされていて、それで子供に関わってしまうということも、一般の人ならばやむをえないかとも思う。

しかし、それを仕事にしている人が自分のしていることに無自覚でいるというのは、あって良いことではないだろう。

この保育における「無自覚さ」というのが日本の保育界のもつ大きな問題だと言える。



最後になってしまったが、おことわりを入れておく。

「しつけ」を謳っている保育施設が、すべてここで書かれたようなものであるということはないだろう。
しっかりとした理念を持ってそう言っているのかもしれないし、単に親に対する訴求力のある宣伝文句として使っているだけで、中身はふつうに子供を暖かく見守っている保育かもしれない。

また、たとえ個々の子供を大事にしない保育が主流になってしまっている施設でも、なかには一生懸命子供のことを考えている保育士もいるだろう。
逆に、きちんとした保育をしていると思われる保育園でも、なかには子供をないがしろにするような保育をする人間もいる。

このブログを読んでいる人の中には、保育施設に子供を預けている方もたくさんいるだろうから、いたずらにこのようなことを書いて不安にさせるつもりはない。

しかし、現実に横暴ともとれるような保育が横行している。
僕はできることならば、そのような保育が少なくなってくれればよいと思う。
そのためには誰かが指摘しなければならないだろう。
どうかそのあたりをご賢察下さい。
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● COMMENT ●

わかります

働いているところは認可保育園ですが、そういう保育士はたくさんいます。外から見ただけではもちろんですが子どもを預けただけではわからない、実際働いてみないとわからないですね。
子どもの人数に対して職員の人数がマイナスだったり
1クラスの子どもの人数が多過ぎるといくら職員の人数が基準をクリアしていても、まとまらず職員の余裕がなくなってしまいます。
それと子どもと職員の人数だけでなく保育士の保育観が「厳しくしつけないといけない」「子どもになめられたらいけない」という保育士もたくさんいます。プライドをもってやっているのでこちらにも考えを押し付けてきます。それが困ったものです(泣)

結果「外からできるようにすること」のために子どもにストレスを与え大人の都合で子どもを動かしています。
保育のプロとしてどうかと思います。
そういう保育を見ていると子どもが可哀想です。一緒に仕事をしていてこっちもストレスを感じます。
声がけもひどいものです。3歳児がおしっこをもらしたら「えっ!!何でもらすの!ありえんわ」嫌いな食事を無理やり口に入れ嘔吐して泣いている子に「何て言うの?」「袋くださいは?でょう」と言ったりします。 他にもまだまだあります。
こんな環境の中、私は子どもの癒やしやガス抜きの役目なのかなぁと辞めたい辞めたいと思いながら辞めずに続けています。
私の職場にはおとーちゃんが書かれたような保育士ばかりなので私みたいな保育観の保育士は甘いと思われています。肩身の狭い思いをしています。
私と同じような保育観の保育士はどんどん辞めていき厳しい怖い威圧的な保育士ばかりです。だからと言って上からの指導も指摘もありません。野放し状態なので威圧的保育士も働き易いですね。
働いてみないと中身はわからないし、どこの園にもこういう保育士はいるんじゃないかと思います。
悲しい現実です。
おとーちゃんみたいな保育士ばかりだと働きやすいですね。おとーちゃんのブログを見るたび安心します。
これからも、おとーちゃんのブログを励みに日々頑張ります。今後ともよろしくお願いします。

きららさん

本当にいまだにこういうことが当たり前のように行われている現実がありますね。
大変残念なことです。

「保育」という言葉が、必ずしも良質なものばかりを指していないことは保育士として本当に悲しく情けない事実です。

きららさんの言うように、子供たちのガス抜きになっているのでしょうね。
僕もそういった経験があるのでよくわかります。



おひさしぶりです

おとーちゃんさん、おひさしぶりです。
以前に相談させていただいたことのある、保育士のしらぼーです。

今働いている無認可園は、3月で退職することになりました。
あれから園児はどんどん増え続け、定員いっぱいいっぱいですが、先生の数はあまり増えずに、10人も20人もの乳幼児を、1人の先生が常にみているような状況です。

3月で退職するので、もうあまり今の園の現状について、考えてもしょうがないのかな、と思いつつも、おとーちゃんさんがこのブログに書かれている通り、先生の余裕がなくなっています。

たとえば、おもちゃが欲しくてかみついてしまう子供。
事前に止められる時もあれば、かんでしまった後のこともあります。
私はそのたびに、かんではいけない、貸してって言うんだよ、と目を見て真剣に言いますが、やはり何度も繰り返す子がいます。
その子の成長段階なのだから、辛抱強く成長を待つしかないのだと思いますが・・・。
すると一人の先生が園の中の暗いところに閉じ込めます。
罰としてやっているのでしょうし、かみつきが多い子を隔離すれば確かにその間は平和です。
でも、それでかみつきがおさまるわけではありません。
でも、私のやり方でもかみつきがおさまるわけではないのです。
だから、胸が痛みながらもそのやり方がおかしいよ、とは言えない現状です。

また、園の中で子供が入ってはいけないところに入った時。
何度言い聞かせても子供が入ったりします。
いくら言っても集団になると、楽しいからと子供は夢中でいたずらをする時ありますよね。
もちろん言い聞かせたりしますが、ある先生はわざと出られないようにして、「出られないよ、もうおうちに帰れなくなるよ」と脅します。
子供たちは当然泣きますが、やはりその後も何度も繰り返します。

悪いことをした子は2歳であっても3歳であっても、ベビーベッドの中に入れてしまったり、園長はその様子をみて「あら~、隔離されちゃったの」と笑っています。

思うのは、そうやって罰を与えられても、子供は悪いことをしたから閉じ込められてるんだ、と理解はしていなくて、ただ閉じ込められて怖い、という感覚しか残らないんじゃないかということです。
それならやらない方がいいのに・・・となきそうになりますが、自分だって子供が悪いことをするのを止められないくせに、と思うので何も言えないです。
あとは、先生の人数が少ないので、手が出てしまう子は隔離した方が楽、というのもあるでしょうし、その先生もいらいらして子供に当たってるところがあるんだと思います。

そういう部分に心が痛むのは、私が甘いからではないですよね?
やはり自分の保育に自信がないのです。

ただ、思うのは、無認可でももう少し国の補助などが出て、先生を多くやとえるようになるとそういう部分も緩和されるのではないかということです。
私は、これからもっと色々な保育園をみて、将来自分で保育園を開きたいと思っています。子供たちをもっと穏やかに保育できるような保育園を作りたいです。実際に経営するのは大変でしょうが、目標です。

しらぼーさん

>そういう部分に心が痛むのは、私が甘いからではないですよね?


もちろん甘いからではありません。

昔は知らず、いまの保育の考え方でいけばそれは「虐待」であるとすらいえるでしょう。


日本の保育界は専門性が非常に低いということが言えます。
それが「保育」なのか、単なる「子守り」なのか当の保育士たちですらきちんと理解していないというのが、多くの現実だと思います。


せっかく就職したところを退職せねばならないのは大変心苦しいことと思いますが、経営側や施設長の意識・意図を超えて職員が保育を良くしていくというのは、実質的に不可能とも言えることです。

現在の日本に一定程度の保育の基準がどこにでもない以上、保育士は自分の働く施設をしっかりと選ばなければならないのが現状です。

納得のいく保育をしている良い施設にめぐりあえるといいですね。



>無認可でももう少し国の補助などが出て、先生を多くやとえるようになるとそういう部分も緩和されるのではないかということです。


たしかに人的リソースの面では人件費がそのまま保育の質にもなりえるのでその通りですが、しかしそれなりに補助金・助成金がでているはずの認可園でもしらぼーさんのところと同様の保育をしているところなども存在しており、必ずしも金銭面の問題だけともいえないようです。


良い保育をしている園は、例外なく明確な保育観や保育理念をもっています。
それが持てていれば、単なるニーズや時代の変化に左右されることもなく、しっかりと職員も育成できるし、当然ながら質の高い保育を展開し子供たちを成長させていけます。

どうぞ質の高い保育園をつくってくださいね。応援しています。

相談させてください。

こんにちは。
以前、保育園に通う息子のことで相談をさせていただいたことがあり、
そのせつはありがとうございました。

また、相談させていただきたいことがあり
コメントさせていただきました。

朝、子供を送っていったときの
1歳児クラスの教室での出来事なのですが、
ある男の子がお友達を蹴ってしまい、
子供たちに絵本を読んでいた男性の先生が
大声で「こらー、なにしてるの!蹴ったらダメでしょー!」と
すごい剣幕で怒鳴り、
その男の子をいきなり抱き上げ、すこし離れたところに
乱暴にどすんと降ろしました。
(その乱暴な扱いだけでも私はぎょっとしたのですが)
そして 足をばちんと叩いたのです。
「蹴るのは絶対にダメー!お友達にごめんねして!」
と、また怒鳴りつけるのですが、その子は大泣きしていて
ごめんねなどと言えるわけもなく、また数回足をばちんと
叩かれていました。そして、その先生は泣いているその子を放置して
絵本を読みにもどってしまいました。

えっ、叩いた?と私はとても驚いたのですが
子供がお友達を叩いたり、蹴ったりしたときに
手や足をばちんと叩くというのは
保育園ではよくあることなのでしょうか?

人によっては、そんなのは
叩くうちに入らないと思われるかも
しれませんが、
このご時世、しかもこんな小さい子を
保育園で叩いたりすることはないと
勝手に思いこんでいました。

私自身、どんなに小さい子でも
話せばわかると信じているので
叩く、というのはやめてほしいのですが
(もちろん大きな声で怒鳴るのもやめてほしいです)
今、ほかの先生に相談してみるか悩んでいます。
子供を預けるからには
保育園には何も言うべきではないのかな、とも
思ったり、、、、
おとーちゃんさんなら
保護者としてこういう現場に出くわしたら
どうされますか?
お忙しいところ申し訳ありませんが
お時間のあるときに
ご意見を聞かせていただけますでしょうか?



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楽しく無理のない子育てを広めたいと2009年ブログ開設。多くの方の応援があって著作の出版や講演活動をするようになりました。 現在は、子育て講演や保育士セミナーの他、『たまひよ』や『AERA with Baby 』等の子育て雑誌の監修やコラム執筆。『ジョブデポ保育士』の監修や育児相談などをいたしております。

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