柔道界の不祥事からいろいろ考える - 2013.09.12 Thu
今年に入ってからでも同様の問題がどれだけ明るみにでただろうか。
去年から見たらものすごい数である。
いくら格闘技に類するスポーツの世界の話だといっても、これは尋常ではないだろう。
僕はどこかスポーツのチームを贔屓にしてそこを応援して楽しむとかの気持ちのあんまりない人間なのだけど、柔道だけは好きでよく見ていました。
強化選手・代表選手たちにおける、暴行・体罰・セクハラ・パワハラ。
各学校の柔道部・授業における、上記のものに加えて、事故それもたんなる事故ではなく重過失によるものや、指導者や上級生からの「しごき」などから引き起こされる人為的とも呼べる事故が、近年のみならず過去からなんら改善されることなく多発しています。
よくいいわけや弁護として「スポーツだから事故が起こるのは仕方がない」というような意見がでるけれども、これらはそこでいう意味の「事故」の範疇から外れているでしょう。
だって指導法からして事故が起きることを内包しているのだもの。
他のスポーツと比べても柔道界のそれははっきりいって異常です。
根本的な問題として、あまりにそういった暴行やしごきが当たり前のものと柔道界では横行してしまっているので、柔道を指導する側やそれを学ぶ人間に、そういうことを問題視する意識がなくなってしまっていることが挙げられると思う。
その最も端的な例が、今年の1月に起こった「女子柔道強化選手による暴力告発問題」でしょう。
あれだけの大きな問題に対して、日本柔道連盟は当初なんの処分もせず監督留任という裁定を下しました。
ちょっと常識では考えられない対応だと思います。
それ以前からも暴行やハラスメントがあったことが明るみに出たにもかかわらず結果的には監督辞任という形でうやむやになりましたが、ようやく周りからの責任追及の圧力によってそれでもしぶしぶ関係者数名に戒告処分(ようするに注意だけ)という軽い裁定しかでませんでした。
しかし、このことをきっかけに柔道連盟関係者のハラスメントやわいせつ行為、助成金の不正受給などがわんさか出てきました。
やはり中央の柔道連盟がこれでは、学校における柔道指導などもなかなか是正されないでしょう。
指導する側が自浄作用を持たなければ、今後日本の柔道は衰退していく一方になってしまうのではないでしょうか。
いまのこういった状況で、とりたてて柔道に思い入れのある人でなかったら、子供に柔道を習いにいかせようなどと考える人は多くないはずです。
以前、教育関係に携わっているある人がこんなことを言っていました。
「子供に柔道習わせると態度悪くなったり性格悪くなったりするから、習わせるならば空手やボクシングの方がいいよ、よっぽど礼儀とかきちんと学んでくるから。」
そのときは、さほど実例を知っているわけでもないので、「ふーん、そんなもんかー」となにげなく聞いていました。
でも、よくよく考えるとなかにはそんな人もいたのを覚えています。
中学時代の同級生で都の代表になっていた人も、その人とは別人ですが高校の同級生でやはり都の代表選手になっていた人も、まあおんなじようなタイプで性格悪かった。
人を見下したり、力や威圧で我を通しでばかりだったり。
もちろん、そうではない人やむしろ立派な人格の柔道をしている知り合いや先生などもいたけれど。
僕はむしろ柔道好きな人間ですが、この一連の柔道界の不祥事を見ていると、いまの柔道界は自浄作用がないままオリや膿がたまったままよからぬ方へ来てしまっているのを感じざるを得ません。
さてそんな柔道が、文科省の方針で中学校における武道の義務化ということで、学校教育のなかで大きく取り扱われることになりました。
当時ずいぶんと反対の意見も上がりましたが、政治家の後押しもあってほぼそのまま決まっています。
きちんとした実績があるならばまだしも、こんな悪い実例ばかりで学校での柔道大丈夫だろうか?
子を持つ親としては気になります。
日本の柔道界は外国の柔道を「パワー柔道」といって否定しているのだけど、そのパワー柔道をしている国々の方が、圧倒的に事故が少ないのです。
学校によっては柔道をとりいれているところもあるフランスでは日本で起こるような、練習中の死亡事故などありません。
柔道の練習における事故率は日本がダントツに高いのです。
なぜそうなってしまうのか考えれば素人でも、指導者や指導法に問題があるということをだれしも思いつくでしょう。
しかし、当の柔道を指導する人たちはそれに気づいていないかのようです。
もちろん、十分に配慮している人たちもたくさんいることでしょうけれども、そうでない人たちが多すぎて世間からはとても努力している・是正に努めているとは認められない状況です。
この一連の事件のあとに、柔道関係の著名人の多くの人に「柔道指導における体罰について」の質問がたくさん寄せられたのだけど、みなさん歯切れが悪い。
大部分の人が、一応の体罰否定の意見を述べるのだけど、「ある部分では仕方がない」だとか「勝つためには強い指導も必要である」というような、「部分否定のあとの部分肯定」といった感じです。
こういう意見を聞くと、普通は「ああこの人たちも、体罰やそれに類することをやったりやられたり、自分がせずとも、周囲にあることを黙認してきたのだろうな」と感じることでしょう。
勝つために何をしてもよくて、指導者が暴言を吐いたりするような力に見合っただけの精神修養もしてこないのであったら、本来の武道の精神などそこにはかけらもないのだから、柔「道」などと名乗らなくてもいいのですよ。
最初から興行収入目当てのスポーツとしてでもやればいい。「J-1」とかでも作って。
僕は柔道ではないけれども武道をしている人間としてはそう思ってしまいます。
体質の中にもう染み付いてしまっているのでしょうか。
よほど本気にならなければ、日本の柔道はこの先衰えていってしまうのではないかと心配です。
当の柔道をやっている、本来ならば柔道が好きな人達によって、自滅の道を歩んでいってしまいかねません。
きっと心無い柔道指導よって一生の障がいを負わされてしまった人や、子供を事故死させられた人たちからすれば、自業自得だと映ることでしょう。
柔道連盟には運営側に独自の問題があって、ある学閥が権力を掌握してしまっているので権力側はやりたい放題で、本来ならば良心になるような人たちがあまり活躍できていないようです。
学校で子供たちにも教えるものなのだから上にはもっとしっかりしてもらいたいと思います。
しかし、日本のスポーツ関係の団体、○○連盟だとか、○○振興財団などには、天下りやなんやかやと不透明な部分や黒い部分があってなんだかなぁと思わざるを得ません。
柔道の話がでたので、以前から考えていた「学校における武道の義務化」についての問題を次回か次回以降に書きたいと思います。
この記事を書いてから読んだのだけど、今日付けの読売新聞によると天理大柔道部の暴行事件は4年生がやっただけでなく、さらに4年生が2年生に指示して1年生に暴行を振るっていたとのこと。
こういうのはまさに暴力の連鎖だね。
全員を共犯に巻き込むことによって、行っていることを正当化するというしばしば犯罪などで使われる手口と限りなく近いと言えるでしょう。いじめなどでも同様の手口というのは常套手段ですね。
こういうことをしているということは、「たまたま」ではなくかなり確信犯的であると普通に考えればわかることです。
柔道連盟は
「試合が近いから選手を集めて気合を入れようと、最初は口頭でやる予定が、熱くなりすぎて連鎖的に(暴力行為に)なったそうだ」「隠蔽はなかったと思う。常習的に行われたというのは天理大には酷だろう」 ― 近石康宏専務理事(64)
と、またなあなあ処分で望む気のようです。
蹴りや暴行の使嗾までしておいて、「ちょっと熱くなっちゃっただけだから、多めに見とこう」って、どんだけ甘いんでしょう。
本当に大丈夫なのかね柔道。
この一連の事件や不祥事で、僕自身もうあんまり気持ちよく柔道応援できなくなってしまったなぁ。
ほんと残念。
● COMMENT ●
必修化
そよかぜ号さん
こういった部分はたしかにありますね。
この前の生徒を自殺に追い込んだバスケ部顧問にたくさんの擁護の声が上がっていたのには驚かされました。
お上意識っていうのもいまだに残っていますね。
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