『カニの本』 - 2010.02.08 Mon
正確にはありましたなんです。なぜなら30~40年前に絶版になってしまってもう手に入らないと思います。
ネットで検索しても、ひとつも引っかかりませんでした。
おそらく日本でも幼児教育の専門家など一部の人しかもう知らないような本だと思います。
たしかチェコスロバキアの育児書だったと思います。
チェコなんてめずらしいと思われるかもしれませんが、チェコは幼児教育文化のとても高い国です。
カレル・チャペックに代表されるような絵本の国として知られていますよね。
ハンガリーやドイツ、スウェーデン、デンマーク、フィンランドなど冬の長い国は子育てについて熱心なところが多いようです。
では、なぜ育児書が『カニ』の本なのでしょうか?
それは・・・
こどもを「横歩き」させる方法が書いてあるからです。
つまり、よくない子育てがこと細かに書かれているのです。項目ごとにほんとに短い文で具体的にかかれています。
なんともネガティブな本ですね(笑)。
まあ、そのへんが絶版になった理由なのかもしれませんが。
でも、「こうするとまずいから気をつけなさい」という感じで、育児経験の少ない人には実用性高いものだと思うのですけどね。
良い子育てをしようとひとつの考えにこだわってうまくいかないと試行錯誤するより、「とりあえずこうすることは避けよう」ってするほうがずっと簡単にできますから。
ネガティブだけれども、僕はそこにこそひとつの真実があるとつくづく思います。
なぜなら、「良い子育て」というのは断言できないのだけど、「悪い子育て」ならこれは良くないとはっきりいえるからです。
親の性格、こどもの性格、環境、人間関係そういったものも個々それぞれなので、「こうすれば良い」と1つのことを押し付けてもけっしてすべてが同じように良くなるとは限らないのですよね。
さらに言えば、社会のあり方や政治のあり方によっても「良いもの」って変わってくるんですよ。
僕は「叱らない子育て」を言っていますが、いまの日本が例えば軍国主義だったりしたらそうは言えないかもしれません。
親の権威や教師の権威は絶対、支配し、抑圧し、叱って、怒って、辱しめてそれでも立ち上がってくるようにするのが「良い子育て」になるかもしれません。現にそういう国はいまでもたくさんあります。
あくまで、必ずしもひとつのことが絶対的に正しいわけではないという例えです。
この頃、料理の話をしたり、コーヒーのお話になったりしていますが、決してネタ切れになったわけじゃないんですよ~。
小ネタ集のように「こうするといいよ」みたく軽く言えるものならばいいのですが、子育ての核心になるような話だとどうも『カニの本』みたく否定的な話でネガティブになっちゃうので、うまくまとめ切れないというか重苦しくなってしまうので、書こうとおもってもついつい躊躇してしまって、横道に逃げちゃってるんですよね。
ですが、なんとなく前々から気になっていたことについて言葉がまとまってきた感じなので、次回ご紹介したいと思います。
それは「現代の子育ての落とし穴」と僕が感じていることについてです。
既出の『日本の子育て文化』でみたような、「当たり前と思ってやっていることが、逆にこどものためになっていない」というお話です。
それはさておき、子育てにはしばしば「ムーブメント」があるというお話。
例えば『母乳』。いまはちょうど「母乳ブーム」の時期に入っています。
いまでている育児書をみれば、ほとんどがもっともな理由を列挙して「母乳で子育てするのがいい」と書いています。
でも、ほんの7~8年前は「母乳は環境ホルモンの悪い影響をベビーに与えてしまうのでイカーーン!」と言っているものもけっこうあったのです。
もっといえば、そのまえはやはり「母乳ブーム」があって僕自身がこどものころ30~40年前は「ミルクブーム」があったのです。
どれもそれぞれに正しい言い分があって、どれがよくてどれが悪いっていう問題でもないのですが、このようにまったく正反対のことがどちらも、こっちが正しいと主張していることが子育ての世界にはたくさんあって、これから知識を得て子育てしようとする人はとても迷ってしまいます。
実害がなければいいのだけど、予備知識の無いところに、「絶対~~しなければならない、~~すべき」という風に強く言われてしまうことで、うまくいかないという悩みを増やしたり、できない事で子育てが重荷になったり、育児ノイローゼになったりということも少なからずあります。
実際、保育園のなかでもある職員とある職員の子育てに対する考え方が対立していて、険悪な感じなんてことけっこうあるんです。どっちもそれぞれにいいところがあるんだから、すり合わせていけば良いとおもうのだけど、どうもイデオロギッシュというか自分の考えが正しくて相手はすべて間違っていると考えがちになることが子育ての世界には多々あるようです。
学者なんかはいいんですよ、自分の考えを主張するのが仕事ですからね。でも、人との違いを際立たせるためにどうしても極端になりがち。それを現場のひとがすべて真に受けてしまうと、多くのずれがでてきます。
最近あった大きなものでは、『ゆとり教育』なんかもまさにそれですよね。
それまで長いこと『受験体制、つめこみ教育』みたいなものに対抗する考え方が連綿とあって、あるとき考え方の変化に伴ってそれが採用されて、やってみたけど現実には通用しなかった。みたいなはっきりした例ですよね。
ものごとっていうのは1つの面だけではないですよね。
ある面では正しいことでも、ある面からは必ずしもそうではないということもあるし、またその逆も然り。
最近「離乳食」の開始時期はだんだん遅くなってきています。
保育園のカリキュラムではだいたい5ヶ月からあるのですが、(離乳食があるといっても最初は白湯1スプーンとかです、つまり離乳食の慣れみたいなもんですね) 最近では7ヶ月からでよいという考え方もあります。
栄養学的、医学的にはたしかにそれでもいいみたいです。
でも、こういう考え方も運用のしかたによっては薬にもなれば毒にもなってしまいます。
5ヶ月を前にして、食べる意欲も体の機能も整ってしまう子もいます。そういう子に7ヶ月まで待たせてしまえば、せっかく食べられる準備が出来ていたのに遅らせてしまうことになります。
また、逆に5ヶ月や6ヶ月を超えてもちっとも意欲も機能も整わない子もいます。そういう子に5ヶ月くらいから大人がなんとか食べさせようと必死の形相で無理やり食べさせてもいいことないですよね。
だからこういうものは「幅」と考えればいいんだ、と僕は思います。
「あ~~この子にはまだ早いようだから、無理しないでもうすこし見守ってあげていいんだ~」
「まだ5ヶ月なんだし、あせらないあせらない」
って考えてあげられますよね。
同様に「オムツ」や「指しゃぶり」「卒乳」「断乳」なんかも、本に書いてある知識や周りの子と較べるのではなく、また「まだオムツしてたらはずかしい」とかいった親の見栄とかエゴとかはちょっと脇に置いといて、余裕をもって見守ってあげられたらこどもに無理のない育ちをさせてあげられるのではないかと思います。
似たようなことはこれまでにも何度も述べてきたのですが、こういうことで子育て難しくしている事例があまりに多く心が痛むので繰り返してしまいました。長いこと読んでくださってありがとうございました。
では、また次回。おやすみなさ~い。
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● COMMENT ●
No title
No title
クーゲルバーンのは高くて自分たちではちょっと無理だったんだけど、義父母がお祝いに現金をくれたのでそれで(='m') ウププ
どれも娘が大喜びです。
クーゲルバーンのは、毎年クリスマスとお誕生日にひとつずつパーツをプレゼントしていこうかな~と思っています。
ちょっと高いけど(^^;)
いいおもちゃを教えてくださってありがとうございました♪
カニの本・・・
日本人って悪いことにフタをしてしまうところがありますよね(>_<)
いつもなるほど!と思いますが
『「良い子育て」というのは断言できないのだけど、「悪い子育て」ならこれは良くないとはっきりいえるから』
このフレーズは深くなるほど、なるほどと思いました!!
色々な子供がいるように、子育てもひとつじゃないんですよね(*^_^*)
でも保健師さんや子育て支援者さんによっても考えが違って、言われることが違うと迷ったりってありましたが、選択肢のひとつと考えて聞いたり試したりしてみたいと思います☆
ミルクの話はビックリです!!!
どこにいっても母乳を薦められ、でも母乳があまりでなくて混合→ミルクに変えたときには色々悩んだものです(>_<)
どこにいっても「母乳?」って二言目には言われていて「混合です」っていうと、「あら~、頑張って母乳ださなきゃだめよ~」とか「ミルクです」
「あら~、かわいそうに」って何度言われたことか・・・。
今は月齢も大きくなって聞かれることはなくなりましたが、前はあまり人に会いたくありませんでした。
でも赤ちゃん連れてると今はうれしいことですが、おばさんとか声掛けてくれるんですよね。
その頃このブログ記事を読んでいたら、もっと楽な気持ちになれたんだろうなって思います(*^_^*)
長々とコメントすみません(>_<)
さっちんさん
> あんまりこうしなくちゃ~とか真に受けてしまうと疲れるので自分が取り入れたいな~って思うところだけを取り入れるようにはしてますが・・・。
>
それでいいんだと思います。いくら良いことって言われていても自分に出来そうもないことだったら返って負担にしかならないんだし、共感できることだけ取り入れるのが一番ですよ。
> それにしてもカニの本、気になる~。
カニの本は以前勤務していた保育園の書庫にあって、長いことずーーっと誰にも読まれずにしまわれていたんです。僕がみつけて一度読んでまたしまっといたのですが、その後書庫の整理をしたときにどうも廃棄されてしまったようで、僕も持っているわけではないんです。ほんとにおしいことをしました、どうせ誰も読まないならあのときネコババしてしまえばよかった、と後悔;;
>
> 最近友達が保育士さんをやってる人にアンパンマンは刺激が強いから見せない方がいいよと言われたと聞いたところだったんですが、暴力シーンが多いということだったんですね。
>
暴力シーンもそうなのですが、実はほかにもちょっとあるのですよ、こんど「あそび」について書こうと思っていますのでそのときにでも紹介できたらと思います。
> いつもいつもまとめ読み&長~いまとめコメントごめんなさいね~。
いえいえ、コメントいただけると書こうっていうモチベーションがあがるのでほんとありがたいです。感謝です。
さっちんさん
> どれも娘が大喜びです。
喜んでもらえてほんとよかったです。だっこしては人によっては受けない人もいるかな・・ってちょっと思う部分もあったので、安心しました。
『だっこして』の「おかあたこ」たいへんそうだけど、ああやってこどもが大事にされて愛情一杯にもらって可愛い子になるんですよね。
> クーゲルバーンのは、毎年クリスマスとお誕生日にひとつずつパーツをプレゼントしていこうかな~と思っています。
ちょっとずつパーツを増やしていくのは夢があっていいですよね~。
そういうところが底の浅い日本のおもちゃには真似ができないとこですね。
あさみさん
> 日本人って悪いことにフタをしてしまうところがありますよね(>_<)
>
もしかしたら、どっかの図書館の書庫なんかに眠っているかもしれませんね~。
でも、多少時代が古くなってしまっているので部分的には違和感のあるところがあるかもしれません。子育てについての基本的なところはいつの時代も変わらないと思いますが。
僕もまた探してもう一度読んで見たいと思います。
> でも保健師さんや子育て支援者さんによっても考えが違って、言われることが違うと迷ったりってありましたが、選択肢のひとつと考えて聞いたり試したりしてみたいと思います☆
そうなんです、こういうお仕事をしている方はプロフェッショナリズムをもってやっている方が多いので、主張がとても強くなってしまい時として、子育てする人を振り回してしまうことがあるんです。けっこうたくさん(笑)。
基本的には、共感できることだけ取り入れていけば良いと思いますよ。
>
> ミルクの話はビックリです!!!
> 今は月齢も大きくなって聞かれることはなくなりましたが、前はあまり人に会いたくありませんでした。
あまり人に会いたくないって思うほどになるなんて、そのときとってもつらかったろうね。
なにげない一言なんだろうけど、自分にどうしようもないこと言われると傷つくんだよね。
でもさ、こどもが元気で健康に育ちさえすれば問題ないんだからさ。
> でも赤ちゃん連れてると今はうれしいことですが、おばさんとか声掛けてくれるんですよね
そうですよね~。こどもと一緒だといろいろ声かけてもらったり、お店でサービスしてもらったりたのしいですよね~。
> 長々とコメントすみません(>_<)
いえいえ、コメントもらうと励みになります。こちらこそ長い文を読んでくれてありがとう。
No title
本当にそう思います。なんで育児書が存在するのかいつも悲しくおもうんです。マニュアルなんて存在しないものなのにマニュアルを欲しがるでしょうね。
私の知りえる親子さまには必ずマニュアルより、わが子を見守り観察することが大事とそのように伝え続けています。
統計的に何ヶ月ごろにできるといわれている幅があるのは確かですが、それがみんなに適応するわけでなく、違いがあって全然いいのにと思います。
「立てば歩めの親心」ではありませんが、機能的なものは見てすぐわかるものですが、大事な心の成長も見逃さないでほしいなぁ~と少し本題から離れていきますが思います。
大事なものを見過ごさなければ、離乳食、断乳、おむつ、ゆびしゃぶりなど悩み抱えることはなくすむのになぁ~と思います。
ぴよままさん
> 「立てば歩めの親心」ではありませんが、機能的なものは見てすぐわかるものですが、大事な心の成長も見逃さないでほしいなぁ~と少し本題から離れていきますが思います。
>
ほんとにほんとにそうですよね、「なにができるか、できないか」ではなくてどう心が育っているかっていうことのほうがはるかに大切なんだけど、目に見えることでないので無過ごされやすくて、そういう親のかかわりにあっぷあっぷしている子のなんと多いことか・・
> 大事なものを見過ごさなければ、離乳食、断乳、おむつ、ゆびしゃぶりなど悩み抱えることはなくすむのになぁ~と思います。
ほんとに、すむのになぁ~と思います。
No title
ありがとうございました♪
おかげさまですっかり日常に戻っています。
マニュアル化した子育てに疑問を感じていたので
うなずきながら読ませてもらいました。
ノウハウに走りすぎちゃうんですよね。
まるで「いいもの」を買い求めているようで。。
広くながーい目で見ながらやっていきたいなぁ。
読んでみました。
でもこの本が始めに出たのが昭和30年と言うのに驚きです。原著の本は1780年に出ているとの事。そんな何百年も前に「子どもが子どもなりに理解され愛される必要(本文より)」が唱えられているのに、なぜそんなシンプルな事ができないんでしょうか…。私もおとーちゃんさんと同じ世代ですが、当然のようにしつけの名の折檻、おしおきの類いは当たり前のようにありました。もちろん時代背景等あるでしょうが、子どもに対する今も大して変わらない価値観に愕然としました。
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あんまりこうしなくちゃ~とか真に受けてしまうと疲れるので自分が取り入れたいな~って思うところだけを取り入れるようにはしてますが・・・。
それにしてもカニの本、気になる~。
そんな本を知ってる保育士おとーちゃんさんってすごい。
前の日記のアンパンマンに暴力シーンがあふれてる・・・のところ。
なるほど~って思いました。
アンパンマンのキャラは娘が好きなのでシール絵本を買ってあげたりしてたのですが、DVDは一度見せるとDVDばかり要求されて生活習慣に支障がでそうだったのでまだ見せてなかったんです。
最近友達が保育士さんをやってる人にアンパンマンは刺激が強いから見せない方がいいよと言われたと聞いたところだったんですが、暴力シーンが多いということだったんですね。
いつもいつもまとめ読み&長~いまとめコメントごめんなさいね~。