現代の子育ての落とし穴 「いい子・できる子」 - 2010.02.08 Mon
僕の親の世代、いわゆる団塊の世代以前の人はかならずしもそうではありませんでした。
兄弟が5人6人いるなんて普通のことで、親が仕事や家事をしている間、上の子が小さな子や赤ん坊のめんどうを見るということが当たり前だったからです。いまでは兄弟がいたとしても、年齢がちかく2人多くても3人くらいが普通になっているので、兄弟姉妹のおむつを換えた経験がある人はおおくないでしょう。
また、近所の子を預かってめんどうをみる、なんていう以前は良くあったこともいまではあまりないのでオムツ換えどころかこどもと関わる経験すらとぼしくなっています。
そういわけで、おそらくほとんどの人が自分にこどもが生まれて、初めてこどもの世話をするという状況になっているのではないでしょうか。
つまり、稽古も事前の準備も予行演習もなんにもなしでいきなり本番の舞台に立つようなものです。
実地に経験したノウハウがまだないので、とりあえず自分の持っている価値観で子育てに臨んでいます。
そこでけっこう多くの人が行き着いてしまうのが、「いい子、出来る子にしよう」ということです。
これがまず「落とし穴」の一つです。
僕がこれまでにもよく斜め目線で否定的に言っている「日本の子育て=しつけ&教育 になっている」
ということのその「しつけ&教育」の目指していきつくところがこの「いい子、出来る子」にほかなりません。
別に「いい子」「出来る子」が悪いわけではないですよ。そりゃ~「いい子」で「出来る子」なら文句ないですが、
ここでまさに落とし穴なのが、「いい子、出来る子」を目指して作ろうと思っても決して出来ない、作れないってことなんです。
残念なことに「いい子、出来る子」を目指して我が子をそうしようとする人ほど、深くて大きな落とし穴に落ちてしまうのです。
保育園では保育参観というものがあります。こどもの普段の保育園での様子を見てもらうという機会です。
0~2歳くらいならば隠れて見てもらいます。3歳くらいになると隠れていてもわかってしまうので、保育室に親にも入ってもらって参観ということもあります。親子で一緒になにかをしてもらう保育参加という場合もあります。
参観であれば、「普段の様子を見てもらうことが大切なので、あまり声かけたりしないで下さい」とお願いしたりするのですが、中にはこどもをよくしよう、良く見せたいと我が子にあれこれ指図したりフォローしたりする人もいます。
見ていてくれればいいと言っているのに、我が子に口出しせずにはいられないわけです。
こういう人の子は、噛み付きやひっかきなどが出ていたり、友達関係がうまく作れなかったりと「手のかかる子」になっていることが多いです。
また、普段ものすごく乱暴で荒れているのに親が保育参観に来たときは、そういういつもの様子をまったくださず「いい子」になってしまう子もいます。こういう子は親が家でとても厳しく接している(しつけている)ので親の前では「いい子」になってしまうのですね。
「家でいい子、外で荒れている子」というのは、人格形成上良いことではありませんね。本来なら、自分をさらけだしていいところで仮面をかぶっていて、社会にでてがまんしきれないものがあふれでているわけですから。
抑圧が大きい分、後になればなるほど大きい問題になっていきます。
「こどもは親がそうしろと言ったことをするのではない、親がしたことをするようになるのだ」と言われていますが、
たしかにその通りで、大人が何かを教え込もう、しつけようとしても、こどもが実際にするようになるのは、その教え込んだことではなく、大人がそこで言った「強い言い方」だったり、示した態度や感情だったり、イヤミな言い方や意地悪な態度こそを学び取って、それを他の人や友達にするようになるのです。
小言を好む人がいないのと同じように、こどもをああしようこうしてやろうと思って発せられる言葉は多くの場合、無意味な結果か逆効果しか生みません。
こういう使い方をする限り言葉は無力なんですよ~。
これは僕自身の経験でもあります。
保育士になったばかりのころは、まさにこの経験がないのに子育てに向かっている状態だったので、「こどもとしてあるべき姿」みたいなものを目指して、ビシビシやってたのです。
ずいぶんやってからようやく、それまでやってたことはなんにもなってなかったと気づきました。
長くなっちゃいそうなので、今日はここでいったんきります。
次回はもっと身近な具体的な「落とし穴」を見て行きたいと思います。
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● COMMENT ●
No title
さっちんさん
> 少し前に図書館で借りてきた本で同じようなことが書かれていました。
そうだったんですか~。偶然ですね~、やっぱり他にも同じようなこと言っている人がいたのですね~。
あんまり、育児雑誌とかじゃとりあげないテーマだけに珍しいですね。
> 普段の親子の関わりの中で子どもを尊重するようにしたいなぁと思っています。
> そこを基本にしていれば無理に何かを教えようとか抑圧してしまったりとかってことはないかなぁと思っているのですが。
たぶんさっちんさんなら大丈夫だと思いますよ。こういうことに関しては実は、経験とかじゃなくて最終的にはその人の人格によるところが大きかったりするので、できる人は気にしなくてもできちゃうし、できない人はよっぽど気をつけていかないとできない、という面もありますから。
> 親も子も楽しく過ごせることが一番かな~と思います。
↑けっきょくはそれに尽きると思います。
そしていつかそのお手伝いとかに利子(笑)がついて本当に役にたってくれる日がくるかもしれないし・・・なんて邪なことを考えてしまう自分もいるのですが(⌒▽⌒)アハハ!
やらせるより一緒に楽しむのが「やれるようになる」近道なんだと思います。
きっとそういう子になってくれますよ~。
邪な思いを前面に出しさえしなければ(笑)
ちなみに、『だっこして』におかあたこが疲れたときちっちゃいたこがマッサージしてくれるでしょ、うちの子あれを教え込んだわけじゃないのに、「つかれたな~」っていってたら「エシ、エシ」って腕をつかんできたのです。なにかなって思ったらなんと『だっこして』のマッサージだったの~あのときは感動しました。
だからね、きっと大事にしてればそういう子になるんだとおもうよ~。
うまくやれてきています☆
なんとなくですが、試行錯誤しながら、思いやりながらバランスとってきています^^☆本当にありがとうございます。
「いい子」問題。読んでいて、うんうんと頷けるものの、私も子ども(保育園の)と接してる時は思わず口出しもしちゃうんですよね。でも、失敗が何よりの経験ですし、自分で会得していく事が何よりの成長なんですよね。
かわいい子だから、かまいた~い!!
でも、かわいい子には旅をさせろじゃないですが、きっと自分で色々と経験させる事がとっても大切なんですね。
えいこさん
> なんとなくですが、試行錯誤しながら、思いやりながらバランスとってきています^^☆本当にありがとうございます。
いえ、あんなのはちっともアドバイスじゃないですよ~(笑)
うまくいけてるのなら、えいこさんとだんなさんが出来る人だったというだけのことですよ。
しかし、もう軌道にのってるなんてすごいですね~。
No title
保育園に入る月齢・年齢の子ども達って親から色んな視線を貰っています。それが子どもにとってうれしい視線であればいいものを、親が子どもの視線のむく先を勝手に決めつけ子どもの主張ができないようになってしまうんですよね。
私は親が始まった時期に関わっていきたいと活動しています。とある先生が教えてくださった言葉、「親の価値観を変える事はできないけれど、子どもの価値観で親は変っていく」です。成長できるところへスポットをあてていければいいなぁ~と常日頃思っています。
続きも楽しみにしています
ぴよままさん
> 私は親が始まった時期に関わっていきたいと活動しています。とある先生が教えてくださった言葉、「親の価値観を変える事はできないけれど、子どもの価値観で親は変っていく」です。成長できるところへスポットをあてていければいいなぁ~と常日頃思っています。
そうですよね、こどもを育てていくんだけれども、結局行き着くところは「親の価値観」になるんですよね。そしてまたここが難しい(笑)。
ハマッてるなぁ(苦笑)
こどもが実際にするようになるのは、その教え込んだことではなく、
大人がそこで言った「強い言い方」だったり、
示した態度や感情だったり、イヤミな言い方や
意地悪な態度こそを学び取って、
それを他の人や友達にするようになるのです。
これはグサッときますね。
絶対にある。うん。
わかっているけど
あらためて背筋の伸びる思いです。
感謝!
まさに
はっとしました
私はよく母のはらの立っている気持ちを表す態度、っていうんですかね、それがやだなーーって気になっていました
でも、いつの間にか自分もおんなじことしてました。(なぜかパパにだけついついしちゃうのです)
ほんと、いつの間にか みてならってるんですね
気をつけなくちゃ
みずきママさん
> はっとしました
> 私はよく母のはらの立っている気持ちを表す態度、っていうんですかね、それがやだなーーって気になっていました
> でも、いつの間にか自分もおんなじことしてました。(なぜかパパにだけついついしちゃうのです)
> ほんと、いつの間にか みてならってるんですね
はじめまして、訪問&コメントありがとうございます。
たしかに、いつのまにか親のイヤだと思ってたところに似ちゃってるのにきづくことありますよね。
そういうのイヤだと思ってたのに自分がするようになったりなんとも不思議ですよね~。
初めまして
私の母親は怒りっぽい人で小さい頃から褒められたり肯定されたりもなく母親を怒らせたら2,3ヶ月はまともに口もきいてもらえませんでした。
そんな母親が嫌いでしたが今は私も結婚して離れて住んでるせいなのかやっぱり母親は母親なのか好きなんですよね。
この年になっても自分ががんばっているのをお母さんに褒めてもらいたいなあという気持ちがあります。
でも自分は娘にそういう辛い思いをさせたくないからそうはならないぞ!
と思ってるんですがやっぱり母親が私に言ったようなことや態度がが娘にではなく旦那さんにときどき出ちゃうんです。
今義理の両親と住んでいて忙しい時は娘をみてもらえるのでそのときは旦那さんに対して余裕を持って接することができるのだけど私が娘にかかりっきりのときについあたってしまってあとでごめんね~って反省するんだけどまた繰り返してしまうという。。
やっぱりそういう姿を子供はきっと見てますよね?
娘に直接そういうことをしなくても私と同じことをするようになってしまうのかな?
もし差し支えなければ教えていただきたいんですけどおとーちゃんさんは家では奥さんに対しての話し方や態度はお子さんと同じようにされてますか?
sajiさん
僕自身も母親が大変ヒステリックな人だったので、ヒステリックに叱ったりすることを嫌悪していると言ってもよいほどですが、自分に余裕がなくなってしまうと、仕事でも我が子にもまれに出そうになることがあります。
幸い出さずにセーブしますが、それをするための心のエネルギーがとてもかかります。
ですので、余裕のない状況にまず自分自身をおかないように気をつけています。
>おとーちゃんさんは家では奥さんに対しての話し方や態度はお子さんと同じようにされてますか?
これは、普段から会話も多く衝突することもほとんどないので、まずこじれることなく接することができていると思います。
とても共感しています。
何度も申し訳ありませんが、こちらの記事もリンクさせていただいても
よろしいでしょうか。
どうぞよろしくお願いします。
奈緒美さん
トラックバックもリンクもフリーですから、もちろんかまいませんよ。
引用も引用元として記載して頂ければ大丈夫です。
また、時間のあるときにまとめて拝見しに行きますね。
ありがとうございます
今は娘も小さいのでまだ可愛いだけの感情しかありませんが
これから先私もつい娘に余裕のない態度を見せてしまうかもしれません。
そうならない為にも先回りした良い関わりをしたり、おおらかに物事を見ていくように心がけていきたいと思います。(旦那さんに対しても)
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少し前に図書館で借りてきた本で同じようなことが書かれていました。
忘れないようにブログにでもレポート書いておこうと思いながら二週間以上がたち、今朝、返してしまい、もうすでにメモしておきたかったことを半分くらい忘れてます(^^;)
これも奥が深いですね~。
普段の親子の関わりの中で子どもを尊重するようにしたいなぁと思っています。
そこを基本にしていれば無理に何かを教えようとか抑圧してしまったりとかってことはないかなぁと思っているのですが。
親も子も楽しく過ごせることが一番かな~と思います。
~させるとかじゃなく、一緒に~を楽しもう~なんて具合に余計に手のかかるお手伝いなんかでも邪魔者扱いせずに参加してもらったり・・・そうすることで親はちょっと面倒でも、子どもはお手伝いして喜んでもらえる嬉しさを感じたり・・・
そんなことの繰り返しでいろんなことを学んでいってほしいなと思います。
そしていつかそのお手伝いとかに利子(笑)がついて本当に役にたってくれる日がくるかもしれないし・・・なんて邪なことを考えてしまう自分もいるのですが(⌒▽⌒)アハハ!