喜怒哀楽と表情 - 2014.06.04 Wed
「子供に向き合っているつもりなのに、子供がアウトオブコントロールになっているのを変えられない」
子育てを一生懸命している真面目な人がしばしばこういう状況になっています。
僕が述べているような「受容」や「先回りした関わり」「くすぐり」などをしても事態が好転しているように感じられないという人もいます。
子育てというのはどうしても人間相手のことですから、言葉や行動だけを「こうするといい」というものになぞったとしてもその通りにいかないことがあります。
では、そこにはなにが足りないのでしょう。
言葉で説明するのは難しいことがらなのですが、「姿勢」「気持ち」「ニュアンス」というようなものでしょうか。
冒頭にあげた
「子育て精一杯頑張っているのにうまくいかない」
というような人は、子供に対した時の「感情の表出」というのが良い形でともなっていないことが多いです。
ネガティブな感情は伝わりやすいもので、ポジティブな感情は伝わりにくいので、「喜怒哀楽」のうち「怒と哀」はまあいいでしょう。
問題は「喜と楽」の部分です。
「子供に精一杯向き合っている」
という人は、確かにその通りに精一杯向き合っています。ときには無理を重ねてまで向き合おうとしています。
しかし、そういう状況になっている人の多くは、ポジティブな感情ほど硬直してしまっています。
例えば、笑顔がでなくなっていたり、表情が乏しくなっていたり、笑い声があげられなくなっていたり、などなど。
特に子育てがうまくいかないことで自分を責めていたり、自信を失っている人だと、これは端的に現れます。
僕は相談への返信なのかで、「自分を責めないでください」「責めてもマイナスになることはあってもプラスにはならないから」というようなことをたくさん言っています。
関わる大人がその気持ちから少しでも脱することができないと、なかなか子供が満足するような関わりというのをできません。
子供は大人の言葉には出さない、態度や表情、気持ちそういう些細な部分を敏感に感じてしまうものだからです。
そうなると、大人の方は「精一杯頑張っている・向き合っている」という思いとはうらはらに、子供の側からすると「お母さんは気持ちよく僕の相手をしてくれていない」というのが感じられるので、例えば「満たす」ということで考えても、なかなかそこの関わりからは満たされるというところまで行き着きにくくなってしまいます。
もともとの性格で笑ったり、感情を顔にあらわすのが不得意な人というのもいます。
そうでなくとも、子育てに疲れてしまったり、自分を責めていたりすると、ポジティブな感情というのはなかなかでなくなってしまいます。
しかし、こういうことは自分のことでありながらなかなか自分では気がつきません。
「子育て精一杯頑張っているのにうまくいかない」
こういう人は今一度、子供の相手をして楽しいとか、物事を子供と共感するとかのポジティブな気持ちをわかりやすくだしてみることで、案外簡単に好転させられるかもしれませんよ。
よしんば、これは演技であっても効果的に働くということもあります。
「もう子供の相手に疲れてしまってうんざり」という人でも、結局のところいつまでもその状態に大人がとどまっていては、事態は好転させられません。
「子供がネガティブ行動ばかりになっている。それに対して怒ってばかりになり、笑顔も出ない」
こういう事態になっていたとして、その状態を続けていれば子供のネガティブ行動が自然になくなって大変な時期は通過するわけでもありません。(なかにはそういうケースもありますが)
これを解決するには大人の方から関わり方を変えるしかないのです。
そういうときに少し一念発起して、自分のテンションをあげるなりして、演技でもいいからポジティブな感情をわかりやすく出していきます。
こういうことって慣れない人には言葉でいうほど簡単ではありません。
でも、自分を責め続けたり、うんざりという状況に耐え続けるよりも、そのときだけ頑張ってしまったほうがたいていの場合ずっと楽です。
わかりやすくポジティブな感情を子供に伝えていくことで、子供の姿というのはかなり変わってきます。
ネガティブな出し方が減り、可愛い姿というのを出しやすくなります。
(ただし、それまでの満たされない期間が長期にわたっていたりする場合は、一時的に溜め込んでいたものが吹き出すので、むしろネガティブな出し方が増加するというようなケースはある)
そのようになってくると、子供の相手はそれ以前よりも楽になるはずです。
すると、親の方にも余裕ができるので、良い感情を出しやすくなります。
なので、悪循環を好循環へと変えていくことが可能になります。
保育士とか幼稚園の先生とか、子供相手の仕事をしている人の中には、しばしばオーバーに驚いてあげたり、喜んであげたりする人がいますよね。
必ずしもそこまでする必要もないのですが、良い感情をわかりやすく出していると、子供は安心してすごしたり、満足してすごすということがしやすくなります。
以前、講演したとき「ギャルママ」の例を出したのですね。
その時はあんまり時間がなかったのできちんと伝えられなかったのですが。
普段はどちらかというと放任気味で、言葉遣いもせめて子供相手にはもう少し丁寧にしようねという感じなのだけど・・。
子供は割合にそれでも満たされてしまっています。
なぜかというと、
「それ、ちょーかっけーじゃん!」
などのように、感情の表し方というのがストレートというかわかりやすく子供にだせているからなのです。
なので、ぜんぜんきめ細やかな子供の相手などしていないのに、子供は安心と満足を見いだせてしまっています。
逆に、真面目で一生懸命子供に対しているような人の方が、その真面目さゆえに悩んでしまったり、心配が募っていたり、自分を責めたりなどで、ポジティブな感情というのが子供の望むほどにはでなくなっており、それゆえに子育てが難しくなってしまっているという状況が引き起こされることが多々あります。
そういうわけで、「頑張っているのに思うようにいかない」という人は、いまいちど自分の表情だとか、子供に関わる際の姿勢を点検してみるといいかと思います。
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● COMMENT ●
No title
加点方式
記事後半のギャルママ語?に思わず笑ってしまいました。
公園でもそんなママさんに出会ったことあります。
お子さんとってもいい笑顔してました。
それみて何考えすぎてるんだろ、と思ったりしました(笑)
自分を責める、ってとかくやりがちで責めてる間はなかなか
気付けないんですよね、色んな事が。
今日はもう無理だと、誰かにバトン渡したくても相手がいなかったり…。
一番しんどかった時、お父ちゃんさんがどこかで書かれていた
「子育ては加点方式」を読んで実践しました。
今考えれば、あれが私の悪循環ループから抜け出せたきっかけだったように思います。
マイナスの関わりをなくせないならプラスの関わりを増やすしかない、で日々過ごしています。
子供の一番
単純に子供だって好きな人(お母さん)が嬉しいと自然と自分も嬉しくなるんだろうなぁと思いました。そして同じように、そういう時は子供も良い部分の+αでちゃったりするうだろうなぁと納得しちゃいました。
子供には嘘つけませんね^^;
No title
一人遊びして欲しくて「ママ、カルタしよう」と言っても
「はぁ、じゃあカルタ終わったら自分で遊んでね」といやいややっていました。で、結局カルタ終わっても本人も駄々をこねながら一人で遊ぶといった感じです。
今日は、楽しくやってみようと思います。
友達が(50代)「笑顔で子育て」と教えてくれて以来、自分に笑顔がなくなるといつもその言葉を思い出していました。友達の子供はもう成人していますがとても素敵なお子さんです。
余裕をもっておおらかな気持ちで子育てしていきます。
前回、今回のコメントの返信は不要です。ありがとうございます!!
娘の変化
この記事を読んで「私だ・・・。」と思いました。
私は性格上喜怒哀楽を表に出しにくいです。
旦那や他人と喧嘩をするのが嫌で、言いたいことがあっても呑み込んでしまいます。その反動か、娘には結構きつく言ってしまうところがあります。
このブログを拝見するようになって、「受容」を頑張ってやっています。
意識的にやらないとスルーしてしまうので、いつも頭の片隅に置いています。
ぬり絵がうまくできたら「わぁ~!めっちゃきれいにぬれてるやん!いろんな色がつかえてすごいね!」頭をなでなで。
そんなことを繰り返していたら急に娘が甘えてくるようになりました。
弟のできたことをほめてハグしていたら、
「○○ちゃんもよしよししてほしいなぁ」(遠慮がちに小さい声で)
と自分も弟と同じようにやってほしいことを要求するように。
あぁー、娘は私に甘えたかったんだなと、5歳にもなるのに気づいてなかった自分に反省しました。
娘(5歳)は弟(2歳)にとても攻撃的で顔をつねったりして血が出るほどです。
そして内弁慶。
保育園ではとってもお利口で自己主張はほとんどしないと先生が懇談でおっしゃっていました。お母さんがお迎えに来てぐずっているのを見るとおうちでは違うんだなと思っていました。と言われました。
弟と娘は違う保育園に行っています。(2年間同じ保育園を希望しましたが無理でした)
園が同じならまだこんなに攻撃的にもならないのかなぁとも思いますし、園でのストレスを弟で発散しているのかなぁとも思います。
園とおうちでの様子が違うことは特に気にすることではないのでしょうか?
また弟に攻撃的なのは娘に「受容」を続けていくことで治まっていくのでしょうか?
お時間のあるときに返信いただけたら幸いです。
fugacoさん
そういうときはあらかじめ子供に、「今日は疲れているからあんまり相手できないよ」とか「ちょっとイライラしちゃってるからごめんね」などと自己開示してしまいます。
子供の方にも余裕がないとそうそううまくいかないこともありますが、普段から満たしている貯金があるのでそういうときもそこそこには通じてくれます。
>今日は上手に対応できなかったな、と思うことはありますか?
保育園の仕事で↑これがあると気にもし反省もするけれども、我が子に対してはあまり気にしません。
なぜならいくらでもフォローもやり直しもできるし、そのほかの部分でカバーすることもたくさんできるからです。
なおりんさん
ある部分では子供と関わる際の態度というのを保育士の経験を積む中で身につけてきました。
なので、そういう性格が悪いわけではありませんが、ある種のリスクとでもいうようなものが発生するということはあるだろうと感じています。
このあたりのことは、子育てでつまづいてしまっている人の共通項として多く見いだせるので、経験的な事実であると僕は判断しています。
なので、そういうのが得意でない人もある程度は意識して出していったり、表情で出すのが苦手ならばその分を言葉で伝えるなり、旦那さんや祖父母など身近な家族に肩代わりしてもらうなりの配慮というものがあるといいと感じます。
おそらくこの子供と関わる時の「表情」というのは世の人が思っている以上に子供の姿に影響を及ぼしていることでしょう。
ご相談の件ですが、
>園とおうちでの様子が違うことは特に気にすることではないのでしょうか?
家庭と外で姿がちがうのは当然のことです。
「家庭でいい子、外で問題児」であるよりも、家庭で問題を出している方がよほど自然であるとすら言えます。
ただ、娘さんは「溜め込むタイプ」のようですね、そこには留意したほうがいいでしょう。
例えば、そういう子には「否定的な関わり」というものが大きく響いたりすることがあるということ、よその人に謙遜したりするようなもの言いというのは通じないこと(謙遜でも子供を悪いようには言わない)、「おもちゃを貸してあげしなさい」「謝りなさい」などの指示的な過干渉というのは、自己肯定感を下げやすいこと などなど。
>また弟に攻撃的なのは娘に「受容」を続けていくことで治まっていくのでしょうか?
基本的にはそうですが、ほかの部分での関わり方の影響というものがないとは言えませんので、「受容」だけで改善するとも言い切れない部分はあります。
とは言え、なんにしても受容は基礎になりますので、するべきなのは変わりありません。
ほかの部分の影響というのは、例えば上でもあげたように「過干渉」などをしていれば、「受容」をいくらしたところで、過干渉により自己肯定感を下げていたら、受容でためた心の器の中の「満たされた」を過干渉により汲み出しているということにもなりかねません。
一方でいくら溜めても、他方でそれを汲み出していたら、「満たされる」は増えていくとは言えませんね。
そのような場合、結果的には「受容」だけでは改善されないということになってしまいかねません。
もう一つは、大人の方の態度です。
『喜怒哀楽と表情』のところでみたように、大人の方の姿勢・気持ちのあり方が、自信のなさや心配に支配されていたり、「弱い大人」としての姿勢になっていたりした場合、大人本人からは「たくさん受容しているつもり」であったとしても、子供の「満たす」にはつながらないということもあります。
これも「受容」だけでは改善されないことへとつながります。
それらの部分が完璧でなくとも、それなりにクリアされていくのであれば、受容を心がけることで子供の姿が良い方へ変わっていくというのは言えるだろうと思われます。
甘えを出してきたというのは、「甘えが出せるようになってきた」ということです、これはとてもいい兆候だと思いますよ。
それを通して、親子間の「信頼関係」と子供の持つ「自己肯定感」を高めていけるといいでしょう。
以前、おとーちゃんさんのブログのおかげで息子の笑顔を取り戻す事ができました!と喜びのコメントをさせてもらった者です!
(あれから同じお名前の方がいらっしゃったので、名前を変えました!
ひまわりのように笑っていたいという想いを込めて)
今回もまた感謝の気持ちをお伝えしたくてコメントさせてください!
見ていただけると嬉しいです!
実は、息子の笑顔が出てきたのは束の間、その後、また低迷期に•••
(嫌な事があった時、イヤッ!と言いながら、息子が自分を叩くようになったんです涙)
息子の状態に胸が締め付けられる思いでした。。
それから、色々試しました。
このままではいけない、落ち込んでいる暇はない、なんとかせねば!
と。真面目すぎる性格の私は、
こういう言い方ではうまく通じないのかな、とか、頭で考えて、考えて、考えて、こうして、こうやって、こう言って•••
と過ごしていました。
しかし、その間、全くそのネガティブ行動は収まりませんでした。。。
途方にくれていた時にこの記事に出会い、まさに私の事!!の状態で、
もう、頭で考えるのを一旦停止し、
笑顔に徹しました。そして、
ギャルママの言葉ももちろん実践です。「それ、チョーカッケェ〜」
そうすると、ピタっといったら大袈裟ですが、自分自身を叩くというネガティブ行動は全く無くなりました!泣きたい時は、ただ泣くという姿に戻りました。
「わかりやすくポジティブな感情を子供に伝えていくこと」
がこんなにも大切な事だったとは、
全く知りませんでした。。
まるで、息子からは、
何もいらないから、ママの笑顔が欲しい、と言われているかのような出来事でした。
笑顔の力、すごいですね。
そして、こうして、教えてくださったおとーちゃんさん、本当に本当にありがとうございます!!!!!
そして、こんなにも穏やかな気持ちで夜が迎えられるのは久しぶりなので、いい夢がみれそうです。
本当にありがとうございました!
ありがとうございます!
私の実母にも「言い方がきつい」「押さえつけたような叱り方」などなど指摘されていました。娘のぐずぐずにも「~しなさい!」と指示的な言葉ばかり発して悪いほうに雪だるまをどんどん転がしておりました。
娘が自己主張できないのは私が押さえつけた言葉を発し、ぐずぐずにも娘の気持ちを考えずに叱っていたから、自己主張できないのではなくて、
自己主張の仕方がわからないのではないかと思うようになりました。
最近では「~してほしいって言えばいいんだよ」と具体的説明するようにしています。
叱ったり嫌なことがあると、私をにらむようになっていた娘。
最近では私が笑って「○○ちゃんの怒った顔より笑った顔のほうがお母さん好きだな。だってかわいいもん。にこにこして~。」と言うと、最初はずっとにらんでいても途中からにこにこ笑顔をしてくれるように。
「わぁ~。やっぱり笑うと可愛いわ~」とほめるとずっと笑っています。
そして、叱ることも減ったのもあるのですが、にらむという行動は日々減ってきています。
雪だるまが方向転換していいほうに転がり始めたかなと思います。
こんなきっかけをいただいたおとーちゃん、本当にありがとうございます。
今回いただいた返信に書かれていたことに留意しながら子供と接していきたいと思います。
過去記事もしっかり読んで勉強しま~す。
返信ありがとうございます
自分の子どもならたまにの失敗はどうってことないというのは、少し気分が楽になりました。長い子育て人生なので、軸がしっかりしていれば大丈夫ですよね。ありがとうございます。
近頃は保育園から帰る行程がマンネリ化してきちゃって、私の態度がたぶんやっつけになっていたので、この記事を読んで初心に返ってみました。降園時はぐずぐずしてなかなか自転車に乗りたがらなかったのですが(一歳半です)、少しテンション高めで「会いたかったよー!(ハグ)」と迎えに行ったら満たされたのか、順調に帰って来ることができました。
ひまわりさん
どの子供も望んでいるのは、お母さんが穏やかな気持ちでゆったりと自分と過ごしてくれるというこの一点です。
「ああしなきゃいけない」「こうしなきゃいけない」というのは、ここが達成できればあとはだいたい勝手についてくるものです。
逆に、そこがちっとも達成できていないと、いっくら頑張ってもそれは空回りしてしまうのですね。
子育ては本当は単純です。
返信ありがとうございました!
>>どの子供も望んでいるのは、お母さんが穏やかな気持ちでゆったりと自分と過ごしてくれるというこの一点です。
「ああしなきゃいけない」「こうしなきゃいけない」というのは、ここが達成できればあとはだいたい勝手についてくるものです。
今回の事で、
本当に、強くそう感じました。。
気づかせていただき、
本当にありがとうございました!!!
あれから、息子の姿はどんどん
いい方向へ向かっています!!
本当に本当にありがとうございました!
明日もたくさんの息子の笑顔が見れますように。。。その事だけを願っています。。
蒸し暑い夏がやってきました。
書籍化などで、お忙しいとは思いますが、どうぞ、ご自愛くださいね。。
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