前向き抱っこ - 2014.06.17 Tue
抱っこと言ってもスリングでする前向き抱っこではなくて、要するに「リフト」として使われる前向きの抱っこのことです。
「リフト」に関してはこちら
乳児の遊び・関わり Vol.8 力で子供を動かしてしまうこと
具体的には両の脇の下に手をいれそこから抱え上げて、前向き(大人の進行方向と同じ向きに子供の顔が向いている)で子供を移動させたり、腰や足から抱え上げて前向きで移動させたりする、という関わりです。
これをここ最近になってとても頻繁に見かけるようになりました。
実はこのこと、1年半くらい前に親戚のおじいちゃんおばあちゃんが1歳の孫に頻繁にしているのを見てからいずれ記事にしようと気になっていることでした。
気にしていたものですから、周りでそうしている人がいると目ざとく観察していたのです。
どうにも最近特に多くなっているような気がします。
子供には個人差あるから一概には言えません。
でも、この関わりは「リフト」の中でもかなりよくない形のものです。
子供を抱えて動かすにしても、通常の抱っこ、つまり大人と子供が向い合わせになる形というのであれば、それがたとえモノ扱いのようなリフトであったとしてすら、まだ子供の方も大人に抱きつくという行動がとれます。
ある意味では、子供にとっても「抱っこしてもらっている」ことになります。
でも、前向きに抱え上げられる形だと、子供はなんにもできないのです。
大人に抱きつくことすらできません。
特に脇の下に手を入れて捧げ持つような形にしてしまっていると完全にそうなります。
動物を抱え上げる時に引っ掻かれたりしないようにそのように持ち上げることがありますね。
(あとおしっこ漏らしてしまった子供をお風呂場まで運んでしまうようなときにこれをしますね。その状態で抱きつかれたりするのは困るのでそういった時ならわかるのですが。)
あんな感じになって、子供はなにもできない状態でキメられてしまうのです。
抱きつくこともできないので、よりモノ扱いに近いです。
これを繰り返しして積み重ねてしまうと、その一年後くらいには大人と手をつないだりしない子、大人の言葉を聞かない子になっていく可能性というのが高くなっているのではないかと感じます。
子供の意思をまったく汲み取ろうとしない関わり、大人と意思を通わせないで子供に行動を強いるということになっているからです。
特に「弱い大人」タイプの人に多く見られます。
子供が行っては困るところに行こうとしているとき、有無を言わせず後ろから抱え上げて連れ戻したりするときや、素直に従おうとしない子供をトイレに連れて行ったりするようなときなどにこれを頻繁にしています。
そのときはそれで済んでしまいますが、もともと素直に従おうとしない子にこのようなリフトの経験を積み重ねていけば、余計に大人の意図に従おうとしない子になっていってしまうでしょう。
子供が大きくなってリフトもできなくなったとき、その人の子育てはお手上げになってしまわないとも限りません。
このことはその大人が、自分で自分の子育てをより大変なものにしてしまっているということです。
見ていてとても心配です。
「危険だと思う」、「してはいけないと思う」ということを子供がしているのならば、その行動を無理やりやめさせてしまえばいいのではなく、自分でやめるよう、少なくとも大人がそれはよくないという明確な意思を表していることが伝わるように関わっていく必要があります。
「弱い大人」タイプの人は、子供に毅然と対峙することが苦手なので、これを無意識に回避していってしまいます。
言葉で伝えたとしても、「あぶないあぶない」の繰り返し言葉であったり、子供の頭の上を通りすぎるだけの弱い言葉なので、子供に明確に伝わりません。
言葉で伝わらないので、そのうち物理的に動かす方へといってしまいます。
そこでリフトになります。
「弱い大人」や人とのコミュニケーションにストレスを感じる人は、相手が子供であっても目と目を合わせたりすることが得意ではありません。
なので、前向き抱っこになってしまうということがあるのかもしれません。
もうひとつあります。
「弱い大人」でなくとも、「過保護・過干渉」な人は指示的な関わり、子供に「どうすべき」という要求が多いので、どうしても「子供を動かさなければならない」という場面が増えてしまいます。
さらには子供がスルーしたりすることも多くなっているので、物理的に子供を扱ってしまうということがでてきてしまいかねません。
これもリフトを多くしてしまうことに一役かってしまっているでしょう。
「弱い大人」に関してはこちらからシリーズ記事になっています
相談 「弱い大人」と「強い大人」
● COMMENT ●
ブログを拝見させて頂きました
育児書には書いてないですね
数ヶ月前「魔の2歳児」に疲れはて、検索していたところおとーちゃんさんにたどり着き、日々勉強させていただいています。
今回の記事を読んで、「こんなこと誰も知らない。どの育児書にも書いてない!誰か教えてくれたら良かったのに!」と、逆ギレのようになってしまいました(苦笑)
現在2歳9カ月の息子の乳児時期、「そっちに行って欲しくないから」「他人(他児)の迷惑になるから」等、何の疑問も持たず「前向き抱っこ」「リフト」頻繁にやっていました。。。
そして今(正確には、歩けるようになった1歳半からずっと)、
手を繋ぎません。スーパーでは好き勝手歩く、走る、商品を触る持ってくる(泣)
その都度、「道路や駐車場では手をつないで歩こうね。車とぶつかったらイタイイタイからね」
「お店では走らない。歩くよ。他のお客さんにぶつかって息子やお客さんがけがをするからね」
等、理由付けの説明をもう1年以上言い続けていますが一向にできません。
(おとーちゃんさんに出会ってからは「~だとママは嬉しいor悲しい
」等のフレーズも付けています)
2歳6カ月頃からは、少し言葉の理解が進んだのか2回に1回は手を繋ぐことができるようになってきましたが。。
おとーちゃんさんのblogに出会って、自分が過干渉、強い大人傾向であることに気付き、以後気を付けるようになりましたが、
なかなか実践は伴わず苦しんでいたところ、今回の記事でますます落ち込んでしまいました(泣)
過去記事で、「何度か説明してもできなければ、その子にそのやり方は合っていない」とあったので、1年以上言い続けてできないのであれば変えなければいけないと思っていたところ、今回の記事で、リフトをやっていたから他に方法はないのか?と思ってしまいました。。
あと気になるのは、食事中、お腹がいっぱいになってくると食べ物で遊びだすのが許せず、これも1年以上前から言い続けていますが直りません。
(これに関しては私も毎回感情的になってしまって(食べ物では遊ばないっっ!!!)等かなり強い禁止口調&睨み付けになってしまいます。。)
例えば、味噌汁の中に他のおかずを混ぜてぐちゃぐちゃかき回したり、半月形に切った大根の煮物を並べて「ギョーザみたい♪」と言ったり。。
強制的にごはんを下げると「食べる~!」と言うので出すと、ゆっくりですが食べます(この辺は弱い大人ですね。。)
私自身、「0か10か」「白か黒か」の人間で、「5」や「グレー」にすることが苦手です。おまけに一部潔癖症(汗)
そして、息子が0カ月の時から、イライラすると背中を叩いたり揺さぶったり、大きくなってからはお腹を叩いたり押し倒したり睨み付けたりしてきました。。(ほとんどが私都合のイライラ)
これらも全て今の様子に繋がっているんですね。。
でも私が結構酷いことをしてきたのに、不思議なことに、息子は基本的には陽気で天真爛漫、いつもニコニコしています。自分から挨拶できるし、好奇心旺盛でどんな遊びでも人一倍楽しそうにします。1日中陽気に話すか歌うかしています。
むーちゃんのように、0カ月から喃語を話し、1カ月には笑うようになりました。息子の持って生まれた気質の方が上回っていたのでしょうか。
ただ、自分が子供の頃、友達とのスキンシップが苦手だったので、息子にはそうなって欲しくなくて、生まれた時からスキンシップだけは心がけていたのでそれがよかったのでしょうか。
こうやって書いていて、息子の良い面はたくさんあるのに、上記の言うことを聞かない面が辛く、叩くことは何とかセーブできているものの、イライラは抑えられず育児が苦しいものになっています。
元々スキンシップやくすぐりは日常的にやっていて、会話も
基本的には肯定やおうむ返しですが、イライラしている時はたいして重要でないことでも強い禁止や指示口調になってしまいます。。
軽くコメントするつもりが、書いているうちに愚痴?悩み相談?になってしまいました。。すみません。。
お忙しいと思うので返信不要です。
書籍化楽しみにしています。
ちなみに私が目からウロコだった記事は、
おもちゃ
過保護と過干渉
満たされた子ども
です。
No title
今まで一生懸命やってきたこと、全部空回りしていたと気づかされました。なんで誰も教えてくれなかったんだろう。
わたしにはやっぱり、子育て向いてないどころじゃなく、できなかった見たいです。ありがとうございました。
なるほど
>なにもできない状態でキメられてしまう
本人にしてみればそのように感じていることがあるかも、、、なるほど、そういえばそうかもしれません。
子供の観察にあたって大変参考になりました。
人として尊重しているかどうか
一人の人間として尊重しているかどうか、ですよね。
娘がまだ0歳だった頃、
両親が気分転換にと外食に誘ってくれた時
娘が食事の途中でぐずってしまい
私と主人と交代で抱っこしてあやしていました。
「ちょっと外の景色見てくるから、ゆっくり食べてね」
と母が抱っこをかわってくれたんですが、
主人が奥に座っていたので
前向き抱っこでテーブルの上から娘を預けたんですよね。
その時「嫌だな」と感じて
「食卓の上をやめて」と言ったんですが
物扱いされていることへの違和感だったんでしょうね、今思えば。
あとは、前向き抱っこでお尻をくんくんして
「オシッコ(ウンチ)出てる~」
と大きい声で言われるのが嫌でした。
(特に外出先、飲食店などで)
主人も母も娘のことをとても可愛がってくれていて
物扱いなんていうつもりはなかったんでしょうし、
私が嫌だと感じることは以後気をつけて
声かけしてくれているのでありがたいですね。
話はそれるのですが…
保育園の園庭での布パンツでの水遊びについて
おとーちゃんさんはどう思われますか?
夏になるとプール遊びの他に園庭で水遊びが始まります。
下着(ランニング、布パンツ)だけを身につけて
水鉄砲やじょうろなどで遊ぶ姿を昨年見て、
私は違和感を感じ、娘にはさせたくないなと思いました。
園庭は道路沿いにあり、
外部からフェンス越しに中の様子がよく見えます。
そこまで人通り、車通りは多くはありませんが。
小さな子どもの姿だからかわいいじゃないかとも思いますが、
最近は変な人も多いですよね…。
それに自分が保育園に行っていた頃、
園指定の水着が男の子と同じ短パンだけだったのも
なんとなく嫌だった記憶があります。
子どもは案外気にしていないのかもしれませんが
園での活動としてはどう思われますか?
ゆうママさん
これはつまり規範や理屈に子供を当てはめるという関わりになってしまっているのですが、その前に親が子供を受け入れ「あるがままの姿を認めてあげる」というプロセスが必要になります。
このことが、子供自身の持つ「自己肯定感」と大人への信頼感というのを形成します。
そのためにできることは、認めたり、共感したり、褒めたりということの積み重ねです。
この部分が少ないまま「言い聞かせる」を重ねたとしても、それは過干渉になってしまいます。
ですから、まだこの段階ではたくさんの「できること」を子供に課す関わりではなく、それ以外の部分で一緒に楽しんだり、共感したりということに重点を置いたほうがスムーズに行くのではないかと思います。
No title
ありがとうございました。
おとーちゃんさんがご指摘の通り、規範や理屈に当てはめる関わりばかりしております。。
息子のありのままを認めるのは、私にとって苦しい作業で、
自覚はしていても、なかなか過干渉と強い大人から抜け出せずにいました。
でも、おとーちゃんさんに「今の段階で、できること を課す関わりではなく... 」と言われて、気持ちが楽になりました。
やはり気付かぬうちに「できること」を求めていたのだと気付かされました。
毎日イライラや怒りを抑えるための自分との闘いですが、
プラスの関わりをできる限り増やし、息子と向き合っていきたいと思います。
本当にありがとうございました。
書籍化に向けて、ご無理なさらず頑張ってください。
応援しています。
前向きだっこに関して
前向きだっこについて、あまりよくない記事に、残念に思い、コメントさせていただきました。
子が手をひいて歩けない小さい頃、よく前向きだっこひもを多用し、おしゃべりをしながら散歩をしました。ベビーカーよりもおしゃべりがしやすく寄り道も出来、おんぶよりも子が景色を見れて、雨の日も傘をさし、寒い日もベンチコートで一緒にぬくぬくと出来、また、力のない私でも、腕も腰も痛くならずに、私も子も、お散歩が楽しかったなぁと思い返します。
どのような道具でも一緒ですが、ようは使いかたですよね。身体の負担をかけにくく、それにより楽しく育児が出来たとても重宝した用品だと、この記事の内容を拝見させていただいた後でも感じています。
なので、前向きだっこ紐の利点も少なからずあることを了承していただければと感じました。
お忙しそうですので、身体に気をつけて、今後もご活躍くださいませ。
かわいい子の母さま
>抱っこと言ってもスリングでする前向き抱っこではなくて、要するに「リフト」として使われる前向きの抱っこのことです。
おとーちゃんさんが言われているのは「リフト」に対しての意見であって、前向き抱っこ紐のことではないかと思います。
私も対面・前向きどちらもできる抱っこ紐を重宝していたので
タイトルだけ見て「え!?」と思い、何度も読み返しました…^^;
前向きができる月齢になり、景色が見えてさぞ喜ぶだろう!と
意気揚々とやってみましたが、子どもの反応はそうでもなく…
結局、ほとんど対面抱っこでしたが笑
私もベビーカーよりも抱っこひもの方が好きでした。
いっぱいおしゃべりできますもんね^^
おとーちゃんさんからの返信はお忙しそうですし、
誤解されたままだと悲しいなと思って出しゃばってしまいました。
失礼いたしました。
myuさん
かつては子供関連の施設で、「子供だから」ということでこういう点に無頓着でした。
健康にいいからと、本当にパンツ一枚の上半身裸で町内をランニングして乾布摩擦してというようなことをしている保育園や幼稚園もありました。
それらは悪気はないにしても、大人とは違う基準を「子供だから」ということで適応しているということです。
myuさんの相談にあるようなプールのことや、裸身を写真にとることなど、現代においては無頓着にならずにきちんと考えなければならないことになっています。
しかし、無自覚な施設では昔のままの意識でそれらをなんにも考えずに未だにしているところがあります。
本当ならば施設側の人間が、指摘されるまでもなく自分たちの見識を高めて見直していかなければならないことです。しかし、そうでないところも多いので、そういうときは疑問として投げかけて行くしかないのではないかと感じます。
myu様、ご指摘ありがとうございました(^-^)
それにしても、私が手で前向きに抱っこ?をする人をもし見かけたら、「力のある人だなぁ、腕とか腰とか痛くならなきゃいいけど」と思いそうです(^_^;)
ありがとうございます
園から水遊びのプリントをもらって帰った日、主人に相談すると
「担任に相談してみては。対応してもらえないなら俺から話す。」
と、同じ意見だったので、担任に相談してみました。
「そうですよね…」と苦笑いをされ、
着脱しやすい半ズボンを履かせるということで
対応していただけることになりました。
自分としてはよその子が裸で走り回っていても
「あらあら、元気ね」とほほえましい気持ちで見ると思いますし、
保育士さんもそうだと思うのですが、
そのような親心で子どもを見ている人ばかりではないですよね。
うちの子は対応していただけることになりましたが、
また時間がある時に主任か園長先生に話をしてみようと思います。
ありがとうございました。
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ブログを拝見させて頂き、初めてコメントさせて頂きました。
株式会社ネクストビートの山口絵里奈と申します。
弊社は『少子化社会の解消にインターネット事業で貢献する』をテーマに、厚生労働大臣認可の
保育士専門転職支援サービスを運営しております。
・保育士バンク
http://www.hoikushibank.com/
保育士さんの役に立つサイトを目指して運営しており、様々なお役立ち情報の配信を予定しているのですが、
弊社サイト内で「保育士おとーちゃんの子育て日記」を、
ご紹介させて頂けませんでしょうか?
「保育士さんの参考になるブログ」といった形で、ご紹介させて頂けますと、大変幸いでございます。
勿論、掲載料などは一切かかりません。
また、掲載内容につきましても、必ず事前にご確認頂くように致します。
逆に、「このように紹介してほしい」といったご要望があれば、できる限りお答えさせて頂く所存でございます。
突然のご連絡で恐縮ですが、ご検討頂けませんでしょうか。
もし、ご検討の余地がございましたら、
ネクストビート山口まで、ご連絡を頂戴できますと幸いでございます。
(コメント入力フォームに、私のメールアドレスを記載させて頂きました)
何卒よろしくお願いいたします。